(前回からの続き)
前述のように、EU圏ではインフレが高進するなかで欧州中央銀行(ECB)は先般、利上げを決定したわけですが、それとほぼ同時に、EU加盟国債のうち、イタリアを筆頭とする重債務国の国債のほうをより多く購入することも決めました。これ、ECBがそれなりに?守ってきた「キャピタル・キー」のルールから逸脱する、相当にリスキーな決定とみるべきでしょう。つまり・・・上記諸国の国債を市場価格よりも高く買い支えてしまうことで、各国の財政放漫化を助長してしまう、ということ。これで金利が下がった彼ら彼女らは、財政再建なんてそっちのけ、安心して国債を振り出してはECBに売りつけ、それで得たユーロで公務員給与を引き上げたりする、みたいなことやりまくる・・・?
で、そのあたりイタリアですが、前述のように、その長期金利は現在(日本時間27日21:00頃)も3.4%前後と、引き続き(本来はユーロ圏最弱のはずの)ギリシャ(同3.0%前後)よりも高い水準にある・・・どころか、25日よりも両者間の金利差は(少しではあるものの)拡大しているような有様です。これ、ECBに対して市場がイタリア国債をもっと買え!とせかしていることの表れでしょう。こうしてプレッシャーをかければ(イタリアがこんな高金利で保つわけがないことを知っている)ECBは容易に屈してイタリア国債をもっと買う・・・って、ギリシャの利回りよりも低い利回りになるくらいの高値になるまで買う・・・に違いない、ということで。となれば現在の低価格でイタリア国債をしこたま買った投資家は大儲けができそうですね・・・???
とまあ、イタリアをネタに、マーケットでは様々な思惑がうごめいている様子が窺えるのですが・・・何の話をしていたか、といえばインフレです・・・が、このあたりからもEU圏でインフレを抑え込むことが至難の業であることが分かりますね。つまり、インフレに対抗するには利上げを進めていかないといけないのに、ECBも市場参加者も、みんなこうしてインフレ・・・じゃなくて金利の上昇のほうを抑えよう抑えようとしている・・・というより、イタリア等の債務を持続可能にする(イタリア等の債権者が借金を返してもらえるようにする)には、そうするしかないわけですから。かくしてユーロ圏もまた(アメリカと同じく)、実質金利(=名目金利-インフレ率)がマイナス圏に深く沈んだ状態から浮上することができなくなる―――インフレ高進が止まらなくなる(って、せいぜい物価高止まりが継続)―――という次第でしょう・・・
となれば、このほど辞任を表明したマリオ・ドラギ首相も含め、リーダーが誰になっても、どの政党が第一党になっても、イタリアがインフレの脅威から逃れることはほぼ不可能でしょう。せいぜい同国にできることは・・・こちらの記事に書いたように、経済制裁やぶりの疑い濃厚を承知で相対的に安価なエネルギーを調達する・・・ってロシアから、ってことくらいしかないような気が・・・