(前回からの続き)
前記から想像されることは、金融マーケットに今後、米国債が大量に供給されそうだ、ということ。中国や産油国といった主要な米国債バイヤーが買わず(というより、買う余裕を失い)、いっぽうでアメリカがこれを吐き出し続けるわけだから当然の現象です(アメリカは先日、債務上限を引き上げている)。加えて現在はFRBのQE(量的緩和策)が停止されており、最後の貸し手も不在です。そもそも・・・QEをやめて利上げに移る!なんて大見得を切った手前、FRBはそうやすやすとQE(債券買い入れ)再開を言い出せない・・・。で、まごまごしているうちに買い手のつかない債券が市場にあふれて金利の上昇圧力がジワリと高まって・・・
・・・もっとも実際にはアメリカの長期金利が大きく上がることは当面はない、つまり米国債価格がそれほど下がることはないでしょう(あくまで「当面は」ですよ!?)。むしろ短期的にアメリカが懸念するのは大規模な「質への逃避」が起こること。すなわち米国債だけに資金が集中する(長期金利が下がる)代わりに、(米国内外の)株やジャンク債などのリスク資産が大量に売りを浴びることでしょう。こちらの記事に書いた「双子のバブル」(株&債券)崩壊の絵になります。事実、債券市場では2014年6~7月(双子のバブル&原油価格ピーク期?)以降、スプレッド(もっとも安全とされる国債と他の債券の利回り差)がじわじわと拡がっていることなどから、すでに同崩壊は始まったとみるべきでしょう(?)。これによっていまのアメリカ経済の原動力である資産効果が剥落し、肝心の不動産価格まで下がり始めたら、アメリカがもっとも恐れる資産デフレの幕が切って落とされることに・・・
このあたりも何度か綴っているところですが、おさらいの意味で振り返っておくと・・・アメリカで資産デフレが始まったら、たとえば―――双子のバブル破裂→これらの含み益を当てに購入された住宅が大量に売りに出されて不動産バブルまで崩壊→金融システム内の住宅ローン債券や担保不動産の多くが不良債権化→銀行が債務超過に陥り、公的資金投入が不可避の事態に―――で、ついに長期金利急騰!といった感じ。まあそうなったら、あるいはそうなる直前にFRBはなりふり構わずジャンク資産を買い支えるべくドルを無限に刷り散らかすのでしょうが(?)、これによりドルの価値と信認は吹き飛んでアメリカの覇権「パクス・アメリカーナ」そのものが風前の灯に・・・
・・・みたいなこと、つまりドル覇権を揺るがす資産バブル崩壊を絶対に食い止めたいアメリカは、その発端になりかねない株や債券の価格急落を防ぎたいところ。そのためには・・・やはり危機が顕在化していない現時点からドル・米国債を誰かに買ってもらいたいはずです。ところが上記事情から、頼みの中国も、サウジアラビアやロシアなどの産油国も(ついでにいえば、欧州中央銀行のQE[国債買い支え]に頼る欧州も)当てにできそうにない、だからといって金融引き締めに動くそぶりを見せている(見せるしかない?)FRBに頼るわけにもいかない、といったありさまで、世界のどこにも買い手がいないわけです、たった一人の例外をのぞいては・・・
その一人こそ―――いまの世界で唯一、米国債を買い増すゆとりがあるバイヤーこそ―――わたしたち日本・・・