読書日和

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「幻想探偵社」堀川アサコ

2015-10-03 21:36:10 | 小説
今回ご紹介するのは「幻想探偵社」(著:堀川アサコ)です。

-----内容-----
野球部を休部中の中学二年生、海彦は落とし物をした同級生のユカリを追いかけて「たそがれ探偵社」にたどりつく。
そこは幽霊専門の探偵社で、海彦とユカリは、ヤンキー姿の幽霊、大島の頼みを解決することに。
ふたりの通う中学校に伝わる不思議な話も気になりはじめ-。
大人気「幻想シリーズ」4作目。

-----感想-----
この作品は「幻想郵便局」「幻想映画館」「幻想日記店」に続く幻想シリーズの4作目です。
今作は以下の構成になっています。

第一章 ようこそ、たそがれ探偵社へ
第二章 青空怪談
第三章 小さいママ
第四章 サラフィアのカルテ
エピローグ

中井海彦は白妙(しろたえ)東中学の野球部のエース。
父親に野球部での活躍を内申書を良くするための道具としか見られていないことにショックを受け、海彦はしばらく野球部を休むことになります。
これでだいぶ意気消沈してしまいました。
担任には「引きこもりの一歩手前」と親に報告され、げんなりした海彦はある日遠回りして家に帰ることにします。
この遠回りが海彦の運命を変えました。
作中には「これが彼が巻き込まれることになる本物の変てこな伝説への第一歩となる」とありました。

遠回りして普段とは違う道を歩いていた海彦は同級生の楠本ユカリの生徒手帳を拾い、そして本人が歩いているのを見かけます。
生徒手帳を渡そうと追いかけていくと、ユカリはビルに入っていきました。
ユカリは6Fにある「たそがれ探偵社」に行きました。

海彦もそこに行ってみると事務所にいたのはパンチパーマのおじさんで、これは幻想郵便局の女言葉の人と同じ人かも知れないと思いました。
すぐに名前が青木さんと明らかになり、やはり幻想郵便局の人と同じと分かりました。
幻想シリーズは作品全体で少しずつつながりがあります。
楠本ユカリも事務所に居たのですが、海彦は大変なあがり症で、女の人と少し話すだけで顔が真っ赤になってしまいます。

また、海彦が事務所に行く時、エレベーターで大島順平というヤンキーの青年と一緒になりました。
大島も「たそがれ探偵社」に行きます。
大島は既に死んでいて記憶喪失状態でもあり、「俺の体を捜してほしい」と依頼します。
「たそがれ探偵社」は幽霊専門の探偵社なのです。
大島は浮遊霊の状態にあり、成仏できず怨霊にもなっていない浮遊霊はやがて拡散して塵芥となり消えてしまいます。
その拡散してしまう不幸な亡者を救済するためにこの探偵社はあると青木さんは言っていました。

ユカリと海彦の二人は「無事に解決したら願い事を一つだけ叶えてもらえる」という条件付きで臨時雇用として大島の問題を解決するために働くことになります。
大島は無事に成仏するためにまず自分の死の真相を知らなければならず、その調査が始まりました。
ユカリ、海彦、大島の掛け合いはなかなか面白くて楽しく読めました。
楠本ユカリの祖母にして楠本観光グループの総帥である楠本タマエも登場しました。
他の幻想シリーズにも登場していて、出番は少なくとも非常に存在感があり軽いノリの会話が多い作中において良い重しになっていました。

大島の死について調査していくと、白妙東中学校にある「秋星の庭」というものが登場します。
園芸部の部長で造園の天才だった秋川福巳と園芸部顧問だった星野先生によって作られた庭です。
この庭が作られたのは15年前で、大島が在学していたのも15年前です。
当時秋川福巳と大島は仲が悪く、大島は秋星の庭を荒らした後、行方不明になってしまいました。
さらには有馬屋書店という本屋で本が100冊万引きされたのも15年前の1999年、須藤湖々菜という当時5歳の子が秋星の庭で恐ろしいものを見たのも15年前で、一体15年前に何があったのか、非常に気になるところでした。
湖々菜はあまりに恐ろしいものを見たために魂が肉体から離れる「幽体離脱」になりそのまま元に戻れなくなってしまうほどでした。
大島の死の調査が始まって早い段階である変死事件も起きていて、15年前に大島がどのようにして死んだのか、その真相に迫るのは危険なことと思われました。

15年前に万引きされた百冊の本のうち「サラフィアのカルテ」という本はかなり大きな意味を持っていて、この本の内容に心酔した人物が自身の目的を果たすため作品の終盤で本性を現します。
サラフィア自体は現実世界でも有名なようなのですが、私はあまり知りたくないなと思いました。
作品タイトルに「探偵」とあるだけに、幻想シリーズでは今までで一番の狂気の犯罪者と向き合うことになりました。

きっとまた続編が出るのではと思います。
シリーズごとに主役が変わり毎回先の展開が気になる面白い話を読ませてくれるので、続編が出るのを楽しみにしています。


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2 コメント

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Unknown (ビオラ)
2015-10-09 20:36:24
楠本観光グループって出て来て、どっかで聞いたような・・・と思い、タマエと言う名前も記憶の中に残っていたのですが、同シリーズに登場していたんですよね。

途中も恐そうですけど、
終盤が恐そうですね^^;


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ビオラさんへ (はまかぜ)
2015-10-10 23:25:42
シリーズに共通する人物が出てくるので、作品ごとにゆるやかにつながっています。
終盤はなかなか怖いものがありました(^_^;)
すらすらとリズムよく読んでいけるシリーズなので、毎回読み出すとハイペースに読み進めます。
次のシリーズではどんな話が読めるのか今から楽しみです♪

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