読書日和

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エリザベト音楽大学 2019年度卒業演奏会

2020-10-22 18:36:55 | コンサート、演奏会


(卒業演奏会でチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲第1楽章を演奏する浦川莉緒さん。)

3月8日、広島県広島市にあるエリザベト音楽大学の卒業演奏会を聴きに行きました。
コロナウイルスの影響で何もかもが自粛になる前に聴くことが出来た、最後の演奏会でもありました。
卒業演奏会は音楽を学ぶ学校ならではの演奏会で、事前の審査で優秀な成績を修めた人だけが立つことが出来る舞台です。
これまで学んできたことの集大成を学生の代表として見せる場でもあり、昨年に続いて門出の素敵な演奏会を聴きに行ってみました




卒業演奏会は大学内にある「セシリアホール」で行われます。
写真は以前撮ったもので、これまでに何度もセシリアホールで演奏会を聴かせて頂きました。





1.声楽専攻(ソプラノ)の徳弘梓弓さんと、ピアノ伴奏の元迫洋さん。

シュトラウス:万霊節(Allerseelen)
木下牧子:おんがく
小林秀雄:すてきな春に




徳弘梓弓さんは2018年5月、世界平和記念聖堂に写真を撮りに行った時に遭遇したエリザベト音楽大学の大学祭で貰ったパンフレットに学生会長として名前が載っていたのを覚えています。
その人が卒業演奏会に登場したのを見て歌の実力も凄い人だったのだなと思いながら、当時のパンフレットが頭の中に思い出されました。
「この人はあの時の…!!」という場面に出くわすと気持ちが盛り上がります

1曲目「万霊節」を神聖な雰囲気でゆったりと歌い、さすがにソプラノという高い声が印象的でした。
2曲目「おんがく」は同じくゆったりでも今度は力強く歌い、この2曲目が凄く上手く感じ、良い声の人だなと思いました。
3曲目「すてきな春に」はどこかで聴いたことがあるなと感じ、颯爽とした歌い出しと声の力強さが印象的でした。





2.管弦打楽器専攻(ヴァイオリン)の浦川莉緒さんと、ピアノ伴奏の中島詩織さん。

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 二長調 作品35より 第1楽章




私は浦川莉緒さんが出演するのを期待して2019年度卒業演奏会に足を運びました。
事前に誰が出演するのか分かっていませんでしたが、何度も演奏会で演奏を聴いてとても上手い人だと分かっていたので、必ず出演すると思いました。
貰ったパンフレットに名前があるのを見た時は「やはり」という気持ちになり、来て良かったと思いました

まさか私の好きな曲でもあるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲(オーケストラと一緒に演奏する曲)が聴けるとは思っていなくて驚きました。
ピアノは「一台でオーケストラに匹敵する」と言われるほど出せる音が豊富にあるので、オーケストラの代わりとして伴奏を務めることが出来ます。
ヴァイオリンとピアノでの演奏用に曲は短めにアレンジしていて、冒頭ヴァイオリンの演奏前にピアノの演奏が始まる時、浦川莉緒さんが体をゆったりと揺らしながらリズムを取っていたのが印象的で、大舞台でも落ち着いていて流石と思いました。
演奏はやはり上手く、卒業演奏会の厳粛な雰囲気の中で華麗な音色を楽しませてもらいました





3.鍵盤楽器専攻(ピアノ)の田代萌水さん。

ラフマニノフ:楽興の時 作品16より 第5曲、第6曲




ラフマニノフはピアノ協奏曲第2番と第3番が特に有名ですが、これまで聴いてきた演奏会ではピアノ単独での曲が演奏されることもありました。
「楽興の時 第5曲」はゆったりと始まり安らぐ音色で、「第6曲」は対照的に力強く迫力のある音色で緊迫感もありました。
好対照な演奏が印象的で、それぞれの表現を楽しませてもらいました。





4.鍵盤楽器専攻(ピアノ)の岡崎清香さん。

シューマン:謝肉祭 作品9




聴いていた限りでは、一つの演奏を終えて次の演奏を始めるのに間を空けた回数が12回もありました。
そしてそれぞれの演奏ごとにスピーディーになったりゆったりしたりと変化が印象的でした。
派手な雰囲気やミステリアスな雰囲気、明るい雰囲気、軽やかな雰囲気、安らぐ雰囲気になったりもして、めまぐるしく様々な音色が姿を現しました。
六つ目の演奏の時、速いスピードでの「タンタンタン タタタン!」というリズムの演奏が良いと思いました。
かなり上手いと感じ、またどこかの演奏会でこの曲を演奏してほしいなと思いました





5.管弦打楽器専攻(クラリネット)の谷口里菜さんと、ピアノ伴奏の末政優衣さん。

バッシ:ヴェルディの《リゴレット》によるコンサートファンタジア




この人もかなり上手いと思いました。
ややミステリアスに始まり、そこからややコミカルな演奏になりました。
音の伸びが良く、躍動感が凄かったです
クラリネットの独奏があり、音をピョロロロローと唸らせるのが上手かったです。
最後もかなり良く、スピードも凄くて盛り上がりました。





6.鍵盤楽器専攻(オルガン)の菅原菜穂子さん。

レーガー:《神はわがやぐら》によるコラール幻想曲 作品27




(演奏時の全景。銀色の小さな煙突のように見えるのは全てパイプオルガンの「パイプ」です。)



神聖な雰囲気で始まり、一気に音が力強くなる場面がありました。
神の祝福のような音色だと思いました。
聴いていてパイプオルガンは柔らかい音が四方八方に広がっていくイメージがあるなと思い、その音が心に染み入って来ます。





7.声楽専攻(ソプラノ)の龍緋花里さんと、ピアノ伴奏の中島詩織さん。

ロッシーニ:フィレンツェの花売り娘
ベッリーニ:オペラ《清教徒》より〈あなたの優しい声が…来てください、愛しい人〉

「フィレンツェの花売り娘」は明るい曲で、声にも明るさがありました。
終盤にソロ演奏があり、凄く大きな声でそれでいて華やかだと思いました。
「オペラ《清教徒》より〈あなたの優しい声が…来てください、愛しい人〉」はやや控えめな雰囲気の曲でした。
最後が盛り上がり、大声量になっていながら踊っているようでもあり、大声量でも華やかさや踊っているような雰囲気をはっきり出せるのはこの方の強みな気がしました。





8.管弦打楽器専攻(サクソフォーン)の廣本穂乃さんと、ピアノ伴奏の小林知世さん。

トマジ:サクソフォーン協奏曲

廣本穂乃さんの演奏は他の演奏会で聴いたことがあり、上手い人なのが分かっていました。
ゆったりした雰囲気で演奏が始まり、ややミステリアスになってから力強くなりました。
高音の伸びがとても良く、やがてかなり激しい雰囲気になって行きました。
ミステリアスさと力強さが交代で現れる場面の演奏が良いなと思い、終わりが近づくとスピードと迫力が出てかなり良かったです。





9.鍵盤楽器専攻(ピアノ)の加々見祐典さん。

ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 作品36(1931年版)



加々見祐典さんの演奏も他の演奏会で聴いたことがあり、やはり上手い人なのが分かっていました。
ショッキングな雰囲気で演奏が始まり、そこからスピードが出て音色も華やかでした。
とても上手いと感じ、そして作品世界に深く入り込む演奏者でもあるなと思いました。
そこからは一瞬途切れてまた始まってを繰り返す独特な曲調になりました。
その間、盛り上がったりゆったりとした雰囲気になったり、最後の方では力強くもなり、様々な雰囲気を楽しませてもらいました。



10.卒業生合唱(コロナウイルスの影響で中止)

松下耕:きょうこそ神がつくられた日(詩編 118編) オルガン:中川千慧
イェイロ:Ubi caritas
松下耕(詩:山崎佳代子):出発  ピアノ:室川桃子 指揮:寺沢希

昨年の卒業演奏会では聴けた卒業生合唱が、今年はコロナウイルスの影響で中止になりました。
卒業生全員がステージに上がっての合唱になるので、三密を回避するにはやむを得ないと思いますが、卒業生にとっては無念だったと思います。
一日も早く特効薬ができ、コロナウイルスに演奏会を妨害されることがなくなってほしいと思います。



卒業して演奏家の道を突き進む人も居れば、音楽関係の会社に行く人も居たり、あるいは別の業種に行く人も居ます。
全ての学生にこれまで学んできたこととこれからへの思いがあり、卒業演奏会は門出への一つの区切りになると思います。
この舞台に立った人が学生達の代表として渾身の演奏をするのはもちろん、この舞台に立てなかった人も、その演奏から感じ取るものがあるのではと思います。
学生の演奏会の中でもやはり卒業演奏会は特別な印象があり、神聖な雰囲気の中で行われる素敵な演奏会をぜひまた聴きに行きたいです



関連記事
エリザベト音楽大学 2018年度卒業演奏会


※「コンサート、演奏会記事一覧」をご覧になる方はこちらをどうぞ。

「DIVER-特殊潜入班- 第二話」

2020-10-13 19:11:37 | ドラマ


(演技をする山口真帆さん。写真はネットより。以下同じ)

今回ご紹介するのはドラマ「DIVER-特殊潜入班- 第二話」です。

-----内容&感想-----
9月29日、ドラマ「DIVER-特殊潜入班-」の第二話が放送されました。
「DIVER-特殊潜入班-」は身分を隠して犯罪組織に入り込み、組織の闇を暴く兵庫県警の潜入捜査官チーム、通称”D班”の物語です。
昨年アイドルから女優に転身して活動し始めた山口真帆さんが、第二話のゲストで登場すると知り興味を持ちました。
山口真帆さんのドラマ出演は今年1月の「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」の第一話ゲストに続いて二度目、また今年9月には舞台「走れメロス ~文豪たちの青春~」にも出演しています。

冒頭、暗い屋内で女性が息を切らしながら、丸い飴玉のようなものを食べるシーンで物語が始まります。
食べると息切れが収まっていて禁断症状に見えました。
すぐに女性は飛び降り自殺をして亡くなってしまいます。




(左から兵庫県警本部長(県警トップ)の阿久津洋子(りょう)、潜入捜査官黒沢兵悟(福士蒼汰)、潜入捜査官佐根村将(野村周平)、D班の班長伊達直哉(安藤政信))

阿久津洋子から伊達直哉に、女子大生の自殺者がこの半年間で兵庫県内だけで5人目と語られます。
今回亡くなったのは烏鷺谷大学の学生で、5人は通っていた大学はバラバラですが同じ高級風俗店に勤務していた共通点があります。
この場面を見ていて安藤政信さんもりょうさんもかなり演技が上手くて驚きました。
一つの台詞を言っている中にもしっかり濃淡があり、声に表情が宿っているかのようでした。




(犯罪組織に入り込むので捜査官は危険と隣り合わせになります。)

阿久津洋子は伊達直哉に烏鷺谷大学のことを調べるように言います。
さらに匿名で通報が入り、5人とも烏鷺谷大学の学生が主催するグルメサークルに所属していたことが分かります。
グルメサークルを主催しているのは小野原光生(鈴木仁)という参議院議員の息子です。
サークルは週に何回か会合を開いていて、物語の主人公にして問題児でもある黒沢兵悟が大学で潜入捜査をします。




(黒沢兵悟に声を掛ける井川エリ(山口真帆))

黒沢兵悟が問題のグルメサークル「ワールドグルメキャンプ」のポスターを見ていると、「これー、興味ありますよね?」と井川エリが声をかけてきます。
にこやかに声をかけていて甘い雰囲気が出ていました。
一人ではなかなか行く勇気がなくて、もし良かったら一緒に行かないかと言い、黒沢兵悟は「良いですよ」と承諾します。
黒沢兵悟の雰囲気が伊達直哉と話していた時の不遜な態度から、はにかんだ穏やかな大学生の雰囲気になったのが印象的で、流石に潜入のプロだと思いました。

二人が席についた時、黒沢兵悟の左手の腕時計にカメラ付き通信機が仕込まれていて驚きました。
カメラに映った映像はD班のメンバーの居る部屋にリアルタイムで送られ、闇医者の皆本麗子(片瀬那奈)とIT担当の宮永壮一(浜野謙太)が見ていました。
やがて小野原光生が現れて挨拶をし、爽やかな好青年に見えました。




(微笑む井川エリと黒沢兵悟。山口真帆さんの笑顔の良さが発揮された場面だと思います。)

北海道産の小麦粉とアメリカ産の小麦粉で作られたパンの重さを両手に持って比べることになり、井川エリが「微妙に違うよね」とここでも甘い雰囲気で黒沢兵悟に聞いていました。
そのパンを食べてみてくださいと言われ、黒沢兵悟は皆本麗子と宮永壮一の「食べるな」という忠告を聞かずに食べます。

グルメサークルでビュッフェパーティーが始まり、黒沢兵悟は楽しむふりをしながら周囲を見回します。
その目の演技が潜入捜査官というより闇世界の住人の雰囲気が出ていて上手いと思いました。

井川エリが「また来週もこの会が開催されるらしいから、一緒に参加しない?」と聞き、黒沢兵悟が「うん、そうだね」と言うと「ほんと?やったー!」と喜びます。
終始可愛らしく甘い雰囲気で、こんな美人さんに甘い雰囲気で来られたら一般の人はなかなか断れないかも知れないなと思いました。




(戦う黒沢兵悟と佐根村将。)

グルメサークルの中に一人不審な男が居て、黒沢兵悟と男子トイレで激しい戦いになりやがて男を取り押さえます。
男は佐根村将といい、伊達直哉の指示で動いていた味方だと明らかになりますが黒沢兵悟は協力する気は全くないです。

その夜、黒沢兵悟、佐根村将、皆本麗子、宮永壮一でグルメサークルについての話をします。
黒沢兵悟はとても態度が大きく、佐根村将に役に立たないから出て行けと言い、宮永壮一にも偉そうな態度を取っていました。
しかしとても頭が良いようで、グルメサークルで行われていたことが「スタンフォード催眠感受性スケール」という、暗示にかかりやすい人を選別するものだと見抜きます。
皆本麗子が「早くしないと次の犠牲者が出る」と言っていました。
さらに、佐根村将が「一緒に居た女の子(井川エリ)も危ないんじゃないか」と言うと黒沢兵悟は大笑いし、「あいつは引きだよ」と言います。
声を掛けてきた人が偶然高級バッグを持ち、200万円以上する時計を付けているなんてことがあるか?と言い、よく見ているなと思いました。
皆本麗子が「相当悪事を働いて稼いでいるってことか」と言うと、黒沢兵悟は見当外れなことを言っていた佐根村将に「わーったろ?お前には無理なんだよ」と不遜に言い、佐根村将は出て行きます。

出て行った佐根村将のところに伊達直哉がやって来ます。
佐根村将は伊達直哉に頼まれ、匿名で通報したのが誰なのかを調べていたことが明らかになります。

2回目のグルメサークルの会合が開催されます。
今回はABC三つのカップが用意され、小野原光生が出汁が入っているので飲み比べて一番美味しかったものを前に出してと言います。
通信機で宮永壮一が「味違うの?」と聞くと黒沢兵悟は「全部一緒だよ。全部水だ」と答えます。
しかしどれかのカップを前に出す人が続出し、これが「ABCは味が違う」という暗示をかけ騙されやすい人を選別しているのだなと思いました。
黒沢兵悟は迷っているふりをして一つを前に出します。




(モニター越しに会合の様子を見る井川エリ。それまでの甘い雰囲気から一転して悪の組織の女性幹部の雰囲気になります。)

井川エリが黒沢兵悟の様子を、悪女顔でハンバーガーを食べながらモニター越しに監視していて驚きました。
「やっぱこの人、ハマりやすいかもなー。誘おっかなー」と不気味な笑顔で言っていて、豹変ぶりが印象的でした。
この場面を引き立てるためにそれまでをことさら甘い雰囲気にしていたのかも知れないと思いました。




(不気味に微笑みながら「誘おっかなー」と言う井川エリ。山口真帆さんの演技が新たな一面を見せたと思います。)

やけに甘い雰囲気の人は腹に思惑があると思った方が良いのかも知れないと思いました。
小野原光生が飴で一度口の中をリフレッシュしてと言い、今度はお茶の飲み比べで一番濃厚だと思うものを選んでと言います。

匿名で通報したのは立花という非常勤講師で、伊達直哉が話をします。
冒頭で亡くなったのは立花のゼミの子で、同じサークルの人が5人も亡くなっているのに大学側が動かないのは、小野原光生の父親が地元選出の国会議員だからだと言います。

グルメサークルの会合が終わって黒沢兵悟が外に出て歩き始めると、目の前を歩いていた女性が具合が悪くなって倒れそうになります。
黒沢兵悟が助けますがその時に何か異変を察知していました。
すると小野原光生がやって来て「あっちで休みましょう」と女性を連れて行きます。




(黒沢兵悟に声をかける井川エリ。)

今度は井川エリが「佐藤君!」と声をかけてきて、「やっぱ間に合わなかったかー。だったらご飯行かない?」と誘い、黒沢兵悟は「え、急だね」と戸惑った素振りを見せます。
「ダメー?」と聞かれ「今日はちょっと…」と言うと、佐根村将が高校の時からの同級生のふりをして近付き、それなら俺と行かないかと誘います。
井川エリは当初「あなたには言ってないんだけど」と冷たい雰囲気でしたが、佐根村将の腕時計を見て金づるになると見たのか良いよと言います。

その夜、黒沢兵悟、伊達直哉、皆本麗子、宮永壮一で話をします。
黒沢兵悟は倒れかけた女性の様子から、薬物の影響だと言います。
出汁や飴の中に入っていたと思われ、宮永壮一が「でも兵悟君は大丈夫じゃないか」と言うと「薬物くらい慣れてる」と答えていて、やはり闇世界の人だなと思いました。
ただし皆本麗子が検査すると黒沢兵悟は陰性になり、なぜなのかとなります。
すると佐根村将がボロボロになって現れ、ぼったくりバーに連れて行かれてボコボコにされたと言います。
さらに、ボコボコにされてしばらく店の前に倒れていると、倒れかけた女性と小野原光生がその店に入って行くのを見ます。
女性は少しボーッとした様子だったと言い、ぼったくりバーで高額な請求をされ男性は払えなければボコボコにされてお払い箱になり、女性は風俗に沈められる構図が浮かび上がります。
小野原光生達は風俗への女性の紹介料で稼いでいて、薬物漬けにすれば被害を訴えにくくなり、そして薬物欲しさにまた借金を抱えることになります。
黒沢兵悟は「負の連鎖にはめていくってことか」と言っていました。
佐根村将がボコボコにされた時の様子をボイスレコーダーに記録していて、それが傷害の証拠となりバーに伊達直哉率いる兵庫県警が逮捕状を持って踏み込みます。

立花が伊達直哉を訪ねて来て再び話をし、娘を持つ父親としてこれ以上犠牲者を増やすわけにはいかないので出来る限り協力すると言います。
立花がワールドグルメキャンプの部室の鍵を開け黒沢兵悟と佐根村将が忍び込みます。
金庫に大量のお金があるのを突き止め、飴もあったのでサンプルに持って行きます。
お金の一部を「ほらよ」と渡す黒沢兵悟に、佐根村将が「亡くなった彼女たちが稼いだお金をよく取れますね」と言うと、「世の中騙される奴が悪いんだ」と言います。
これは違うなと思い、やはり騙す人が悪いと思いました。

金庫に8800万円あり飴からはコカインが検出されたことを伊達直哉が阿久津洋子に報告します。
小野原光生の逮捕状を取るにあたり、父親が国会議員であることから県警トップの阿久津洋子の身を心配すると、次のように言います。
「(逮捕する)それは正義でしょう?ならば躊躇なくやるべきよ。国会議員がいくら喚こうが、事実は変わらないでしょ。忖度するような警察官は、すぐにでも辞めるべきね」
堂々たる態度で印象的な場面でした。
台詞に胆力があり、りょうさんの演技はかなり上手いと思いました。

3回目のグルメサークルの会合が開催され、黒沢兵悟と佐根村将が行きます。
井川エリも現れますが佐根村将にはよそよそしい態度でした。
黒沢兵悟が井川エリと二人で話し、「あいつ酔っ払って何も覚えてないんだってさ」と言うと少し安心した様子で、自身は喧嘩が起きる前に先に帰ったと言います。
ただし前回までのような甘い雰囲気はなくなりぎこちない笑顔になっていて、動揺が隠せていませんでした。

AとBの飴を食べ比べているところに伊達直哉率いる兵庫県警が突入すると、驚きの展開が待っていました。
黒沢兵悟という人の悪を潰すためなら手段を選ばない狂気を感じた場面でした。

佐根村将がお前は人を殺すために潜入をやっているのかと詰め寄ると、黒沢兵悟は「狩るか、狩られるかだ」と言います。
黒沢兵悟がなぜダークになったのか幼少期の回想で明らかになり、「俺は、騙す側の人間になる」と言っていて、現在の姿を形作る言葉だと思いました。

終盤、検査に引っかからない麻薬の謎が明らかになります。
また、黒沢兵悟が実は小野原光生達の命を助けてあげていた可能性が浮かび上がり、これは意外だなと思いました。
根っからの悪人ではないのかも知れないと思いました。




(山口真帆さんが所属する芸能事務所「研音」の大先輩、りょうさん。元々はモデルとして活動し、現在では演技力の高い女優と評されています。)

注目していた山口真帆さんの演技は、悪女に豹変する場面と気まずそうな雰囲気の場面が印象的で、今後に向けて演技の幅が広がったのではと思います。
先輩方との差を感じたのは、「罪のない嘘」での菅原りこさんと同じく台詞の緩急でした。
特にりょうさんや安藤政信さんなどは一つの台詞の中でもスピードが変わったり声のボリュームが変わったりして凄く上手いと思いました。
これは経験を積みながら身に付けて行くもので、特にりょうさんは事務所の大先輩でもあり芸能活動の途中から女優になった点も共通していて、その姿から得るものがたくさんあるのではと思います。
同年代では松岡茉優さんも途中から女優に転身して若手きっての実力派女優になっており、似た境遇での大成功例は心強いです。




(頬杖をついて穏やかに微笑む山口真帆さん。)

山口真帆さんは派手さと上品さを併せ持つ美人な佇まいに加えて「利発」な印象もあり、教師や弁護士のような知的な役柄にも向いている気がします。
まだまだ女優として駆け出したばかりの存在で、台詞の緩急のような演技力も経験を積むごとに上げて行けると思います。
山口真帆さんのこれからのさらなる活躍を楽しみにしています



-----山口真帆さん登場作品の記事-----
「山口真帆 1st写真集 present」
「DIVER-特殊潜入班- 第二話」
「ショコラの魔法」(主演:山口真帆)


-----関連記事-----
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「四畳半タイムマシンブルース」森見登美彦

2020-10-04 18:13:02 | 小説


今回ご紹介するのは「四畳半タイムマシンブルース」(原案:上田誠、著:森見登美彦)です。

-----内容-----
炎熱地獄と化した真夏の京都で、学生アパートに唯一のエアコンが動かなくなった。
妖怪のごとき悪友・小津が昨夜リモコンを水没させたのだ。
残りの夏をどうやって過ごせというのか?
「私」がひそかに想いを寄せるクールビューティ・明石さんと対策を協議しているとき、なんともモッサリした風貌の男子学生が現れた。
なんと彼は25年後の未来からタイムマシンに乗ってやってきたという。
そのとき「私」に天才的なひらめきが訪れた。
このタイムマシンで昨日に戻って、壊れる前のリモコンを持ってくればいい!
小津たちが昨日の世界を勝手気ままに改変するのを目の当たりにした「私」は、世界消滅の危機を予感する。
史上最も迂闊な時間旅行者(タイムトラベラー)たちが繰り広げる冒険喜劇!
「宇宙のみなさま、ごめんなさい…」

-----感想-----
この作品は「サマータイムマシン・ブルース」という演劇作品を原案にしています。
森見登美彦さんの小説でタイトルに「四畳半」が付くのは「四畳半神話大系」「四畳半王国見聞録」に続いて3作目となります。
作品の舞台は京都、主人公は大学3回生の「私」で、「四畳半神話大系」の時と同じ主人公のようです。
「京都に住む大学生」が主人公なのは森見登美彦さんの作品の王道だと思います

物語の最初の2文に「ここに断言する。いまだかつて有意義な夏を過ごしたことがない、と。」とあり、自信満々な雰囲気で悲観的なことを言っているのが森見登美彦さんらしいと思いました。
あまりの暑さで今年も有意義な夏を過ごせない無念さを「嗚呼、夢破れて四畳半あり。」と言っていて、「国破れて山河あり(国が滅びても山や川は変わらずにある)」のパロディにしていたのが面白かったです。

「私」が住んでいるのは下鴨幽水荘という四畳半アパートで、森見登美彦さんの作品に何度も登場しています。
森見登美彦さんは正方形の「四畳半」にかなりのこだわりがあるようで、何らかのアパートの部屋が登場する時は大抵四畳半です。
「私」の隣の部屋には樋口清太郎というおおらかで世の中を達観した雰囲気の人物が住んでいて、他の作品にも登場することがあります。
「四畳半にウッカリ墜落した天狗」「樋口氏のごとき天狗的人物」といった描写もあり超人のように見られています。

「私」には小津という悪友がいて、小津も他の作品に登場することがあります。
小津の不気味さの描写が面白く、次のようにありました。
「夜道で出会えば、十人中八人が妖怪と間違う。残りの二人は妖怪である。弱者に鞭打ち、強者にへつらい、わがままであり、傲慢であり、怠惰であり、天の邪鬼であり、勉強をせず、誇りのかけらもなく、他人の不幸をおかずにして飯が三杯喰える。およそ誉めるべきところが一つもない。」
「残りの二人は妖怪である」が面白く、そして全部が酷い言われようだなと思いました

下鴨幽水荘には「私」の住む209号室にだけ先住民が大家に無断で設置したクーラーがあります。
ところが真夏の8月11日、小津がクーラーのリモコンにコーラをこぼして壊してしまい、部屋が物凄く暑くなります。
物語の冒頭はその翌日の8月12日で、「私」が部屋で小津に文句を言い、小津が反論して二人でじゃれ合いのような言い争いになっているところに、明石さんという二人の一年後輩の女子がやって来ます。
登場シーンが面白く、言い争う二人を見て「仲良きことは阿呆らしきかな」とクールに言っていました。
明石さんと小津は学内映画サークル「みそぎ」に所属していて、明石さんはクールな佇まいとは裏腹に全くクールではないポンコツ映画を作ることで知られています。
そして二人とも樋口の弟子を名乗っていて、特に小津はよくアパートの樋口を訪ねて来るのでそのついでに「私」を訪ねることがあります。

映画サークル「みそぎ」は城ケ崎という男がボスをしていて、「私」は尊大な態度で振る舞うこの男が嫌いです。
また、近所の歯科医院に務める羽貫さんという陽気な女性も登場し、樋口、城ケ崎、羽貫の三人は古くからの友人とのことです。

森見登美彦さんの文章には「偉そうでありながら滑稽」の他に「古風」という特徴もあります。
隣の部屋の樋口を「隣室の怪人」と表現していたのは面白かったです。
「怪人」表現は他の作品にも登場することがあり、私が読む作家さんでは変わった人のことを怪人と表現するのは森見登美彦さんだけです。
さらに他の作品にも登場する「先刻ご承知」という言い回しがこの作品にも登場していました。
また京都についての印象的な言葉もよく登場していて、今作では「下鴨神社糺(ただす)ノ森」や「五山送り火」などが登場しました。

明石さんが誰かと五山送り火見物に行くことを知り「私」と小津は驚きます。
「私」は明石さんから見た自身を「路傍の石ころ的存在」と思っていて、明石さんのことが好きでそこからの脱却を目指しています。
「路傍の石ころ的存在」も「夜は短し歩けよ乙女」という森見登美彦さんの作品で初めて見た面白い表現です。

アパートに全体的にモッサリした雰囲気の若い男が現れます。
モッサリ君はアパートの住人ではないのになぜか樋口のことを知っていて、しかし樋口はモッサリ君のことを知らず不思議がっていました。

「私」、小津、樋口、城ケ崎が近所の銭湯「オアシス」に行った時に次の言葉がありました。
我々は広い湯船につかってポカンとした。
短い文章の中に森見登美彦さんの特徴がよく出ていて、「我々は」の部分は少し偉そうにも見えますが「ポカンとした」で途端に間抜けな雰囲気になり、独特な文章を形作っています。

やがてアパートの物置きにタイムマシンのようなものが現れます。
その段落の終わりの文章が良く、次のようにありました。
やがて明石さんがぽつんと言った。
「タイムマシンだったりして」
恥じらうように小さな声だった。
物干し台の風鈴がちりんと鳴った。夏であった。

以前も段落の終わりに似たような、線香花火が消えていくような雰囲気の文章を見たことがあり、森見登美彦さんは段落の区切り方も上手いと思います。

小津が試しにタイムマシンを操作してみると「私」達の前から姿が消え、やがて戻って来てタイムマシンが本物だと分かります。
そして「私」達はタイムマシンで昨日に行き、リモコンを持ってくればまたクーラーを使えるようになると思い立ちます。
樋口、羽貫、小津の三人がまず先発で昨日に行くことになりましたが、「思いつくかぎり最悪の人選だった」とあり波乱が予感されました。

再びモッサリ君が現れ、タイムマシンに乗って25年後の未来から来たことを明かします。
モッサリ君は田村と言い、下鴨幽水荘のみんなでタイムマシンを作ったとのことです。
田村の父親も「私」達と同じ時代に京都に居て銭湯オアシスに通っていたとあり、父親が現在での誰なのかが気になりました。

「私」達は田村と話すうちに、リモコンを昨日から持って来るとリモコンにコーラがこぼれた結果としての「今日」が存在しなくなり、「私」達が消滅してしまうのではという懸念を抱きます。
そして「今日」の消滅はそのまま全宇宙の消滅になるのではという考えになります。
タイムマシンは帰って来ますが樋口達が乗っておらず、昨日が変われば全宇宙が消滅する危機を感じた「私」と明石さんも昨日に行くことになります。

昨日にタイムトラベルしてクーラーのリモコンで騒動になるのはくだらないことですが、宇宙が滅びかねない危機があるので「滑稽な緊張感」のような面白い雰囲気になっていました。
この作品では「今日」の中で謎の部分がありますが、タイムマシンで行った「昨日」で謎が解けていくのが面白かったです。
昨日と今日をタイムトラベルするので全く同じ文章が繰り返される構成になっていた場面は「既視感」が印象的でした。

「私」が大嫌いなはずの城ケ崎に共感した場面も印象的でした。
ともに逆境に立ち向かう仲間というものは、立場や性格の違いを超えて強い絆で結ばれるものである。
これは逆境に立ち向かっている間は共通の目的があるので、立場や性格が違っても共感する場合があるのだと思います。
そして逆境を切り抜けると共通の目的はなくなり、再び立場や性格の違いが顕著になるのではと思います。

終盤では田村の正体が明らかになり、「未来は自分で掴み取るべきもの」という良いことを言っていました。
この作品は終わり方が美しく、「成就した恋ほど語るに値しないものはない。」という言葉がとても印象的でした。
言葉自体が森見登美彦さんらしい偉そうな雰囲気が出ていますが、時空を越えた言葉でもあり、タイムトラベルを題材にしたこの作品を象徴していると思いました。


森見登美彦さんは好きな作家ですが1年近く読書が思うように出来なかった時期もあり、作品を読むのはかなり久しぶりになりました。
久しぶりに読む作品が森見登美彦さんの王道的な作品だったのは良かったです。
楽しく読むことができ、独特の文章を読んでいるうちに小説を読む楽しさを感じました
しばらく森見登美彦さんの作品を読めなかったうちに発売された作品が他にもあるのでいずれ読んでみたいと思います


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