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「プロカウンセラーのコミュニケーション術」東山紘久

2016-08-14 17:02:50 | 心理学・実用書


今回ご紹介するのは「プロカウンセラーのコミュニケーション術」(著:東山紘久)です。

-----内容&感想-----
※「プロカウンセラーの聞く技術」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

「プロカウンセラーの聞く技術」の続編である本作も読んでみました。
タイトルに「コミュニケーション術」とありますが内容は「こう喋りなさい」と会話術を指南するものではなく、臨床心理士である著者が心理学の観点から会話の中で発する言葉にどんな意味が込められているのかなどを書いていました。

P9「屁理屈を言うのは、その人にそれ以上の手がないとき」
これは興味深かったです。
理屈での話し合いになると分が悪いため屁理屈に頼るようです。
また、屁理屈を言う相手に「屁理屈を言うな」と言うのは最も駄目な方法で、「相手の言う理屈に合わないこと(屁理屈)を相手の責任で押し進めさせるのが良い」とありました。
理屈に合わないことを押し進めれば必ずどこかで論理破綻するとのことです。

P22「「女・子ども」といわれるように、女性と子どもの心性には似たところがある。子どもと似た心性があるからこそ、子どもの心が理解できる。子ども心がないと、子どもの心はわからない。」
女性と子どもの心性は似ているとのことです。
これは「男は理性が先に立つ、女は感情が先に立つ」と言われるように、男性は論理型の人が多いのに対し、女性は感情型の人が多いのが関係している気がします。
子どもの場合は感情が全開なので、女性のほうがその心の内を理解しやすいのだと思います。

P32「交渉は、論理的なやり取りも必要ですが、心の納得が重要です。心が柔らかいと相手の主張を理解でき、そうするとお互いの心が開かれて、かたくなだった心も柔らかくなるのです」
これは大事なことだと思います。
相手がたしかに理屈に合うことを言っていたとしても、感情無視でひたすら理屈で押すだけだと相手はどんどん頑なになっていくと思います。
そして仮にその場では相手を押し切れたとしても相手の心には大きなしこりが残り、以降無理矢理押し切った人に対して心を閉ざすことになります。

P36「「でも」は、相手の話に同意せずに、自分の主張をするとき、相手に対して否定的なときに使われます。自分の意見を否定されたうえに、相手の意見を一方的に聞かされたら、その人と話をしたくなくなるのは当然でしょう」
私も会話の中で「でも」を連発する人には良い印象を持たないです。
なので私自身も会話の中では極力「でも」や「が」「けれど」など、逆説の接続助詞は使わないようにしています。

P40「日本文化は、母性文化だといわれています。母性文化は、年功序列や終身雇用のように個人差を明らかにせず、みんないっしょの文化です」
これは「面白くてよくわかる! ユング心理学」(著:福島哲夫)などにも書かれていました。
女性性の強い(年功序列な)日本社会に対し、欧米は男性性の強い(実力主義な)社会です。
21世紀になった頃から「日本も欧米を見習え」という声がどんどん強まりましたが、私の場合は「女性性が強い」という日本国民の元々の特性を無視してまで無理矢理欧米化させなくても良いのではと考えます。
「面白くてよくわかる! ユング心理学」のレビューに漫画「HUNTER×HUNTER」の念能力を例に書いたように、強化系(女性性の強い社会)の人が具現化系(男性性の強い社会)を極めようとしても相性が悪いため上手くはいきません。
それよりは自分の系統を極め、その自分の系統の補助として他の系統を学ぶほうが余程良いです。
なので「女性性が強い日本社会は悪い社会」と切って捨てるのではなく、女性性が強いという元々の日本国民の特性を理解してその良い面を生かしつつ、そこからより完成度を上げるために補助として欧米の良い面を取り入れるやり方のほうが良いと思います。

P43「自己主張をはっきりさせるのは日本では非常識ですが、世界の常識です」
これはそのとおりです。
ただし「自己主張と相手を無視して「我」を主張することとは別物です」ともあり、気を付けるべき点だと思います。

P71「夢ばかりの人は、人格のなかに幼児性をもっています。幼児性は、非現実な性格をもっていますので、うまく活用しますと、発明や発見につながります。発明や発見は、常識では生まれないからです」
幼児性は悪いことではなく、上手く活用すると凄い力を発揮するようです。

P77「現実吟味は本人にまかけないと、現実を正しく認識できない、これが心理の真理です」
興味深い言葉でした。
難しい高校に「行きたい」と言う生徒に対し、「君は何を寝ぼけたことを言っているのだ。君の成績ならA高校どころかB高校でも危ない。もっと現実を見なさい。そんなことを言っているひまがあれば勉強しなさい」と夢を壊して説教するのは逆効果で本人の勉強する意欲もなくなってしまうとありました。
そうではなく、「行きたい」という夢が叶う方向に乗ってあげ、本人にそれは叶うことなのかどうか現実吟味させたほうが良いとのことです。

P84「心理学では自分のなかに住んでいる悪魔のことを「影」と呼びます。影とは、自分のなかにある、自分自身が認めがたい自分です」
影はユング心理学の本によく出てきます。
影も自分自身を形作っている一部分だと認めてあげることが大事だと思います。

P87「人格の陶冶」
陶冶は普段聞かない言葉だったので印象的でした。
調べてみたら「人間形成」のことをいう古い表現とのことです。

P119「家族にとって、否定的にお互いを見ることは悲劇です。否定的家族のなかで育った人は、職場や集団でも、否定的見方で周囲を見がちになります」
これも印象的な言葉でした。
そうならないように気をつけたいと思います。

P132「「この人はひどい人です」と言った場合、女性が男性に対してこの表現を使うときは具体的な内容「ひどい言動」が相手に見られる場合が多いが、男性が言った場合はトータルでひどいと感じている」
同じ言葉でも女性と男性では意味が違う場合があります。
これを理解しておかないと言葉への誤解から互いに不信感を募らせることになります。

P157「心の侵犯のことを、心理的侵襲と呼びます。いわゆる「他人の心に土足で入る」のがこれです」
他人の心に土足で入るのは野蛮なことです。
かけた言葉が相手の心を踏みつけている場合があるので注意が必要です。

P183「信念は成熟とともに柔らかくなります。成熟しない信念は頑固で凝り固まった確信に至ります」
信念と頑固の違いを表す言葉で興味深かったです。
成熟した信念を持つ人には柔軟性がありますが、信念が成熟しない人は単に頑固になりその考えで凝り固まってしまっています。

P196「ストレスの解消にはおしゃべりが最適」
これは女性が自然にやっていることだなと思います。
カフェなどに行くと女性数人のグループがあちこちでお喋りをしています。
たしかにお喋りして心の中に溜まっているものを吐き出すのは凄く大事だと思います。
ストレス解消は女性のほうがしやすいのかも知れないと思いました。

今作も興味深いことが色々書いてありました。
人との会話を論理だけで押し切ろうとするのではなく、相手の心に気を配りながら言い方に気を付けることも大事だと思います。
もう一冊、作者は変わりますが同じシリーズに「プロカウンセラーの共感の技術」という本があるので、そちらも機会があれば読んでみようと思います。


※「プロカウンセラーの共感の技術」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

※図書レビュー館(レビュー記事の作家ごとの一覧)を見る方はこちらをどうぞ。

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