読書日和

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「プロカウンセラーの聞く技術」東山紘久

2016-07-27 23:50:20 | 心理学・実用書


今回ご紹介するのは「プロカウンセラーの聞く技術」(著:東山紘久)です。

-----内容-----
われわれは、真実の人間関係、嘘のない人間関係、信頼のできる人間関係をもちたいとつねづね思っています。
そのためには、相手の話を聞くことが必要になります。
「聞く」ということは、ただ漫然と耳に入れることではありません。
聞くことは理解することなのです(本文より)。

-----感想-----
本の帯に阿川佐和子さん推薦とあり、「この本を読むと、自分が今までどれほど人の話を聞いていなかったかに気がついて、思わず吹き出してしまう」とありました。
私は元々人の話を聞くのが好きです。
東山紘久さんは臨床心理士とのことで話を聞く専門家であり、話を聞く上で参考になることが沢山書かれていそうな気がしました。
なので自分の得意分野を伸ばすべく、この本を読んでみました。

P12「自分の話に耳を傾けてくれる人の言うことを、人はよく聞くものです」
これはそのとおりだと思います。
相手の言葉に耳を貸さず自分の意見ばかり好き勝手に喋っている人の話は聞きたくないです。

P16「消化できない話や納得できない話をじっと聞かされると、聞いた人が苦しむことになる」
母親から祖母や父親のぐちを聞かされ続けた子供についてを例にこのことが書かれていました。
これは私も経験があり、頻繁にぐちを聞かされるとうんざりとした気持ちになります。
ただし母親としても誰かにぐちを言わないとストレスが溜まり続けてしまうという問題があり、そこが厄介なところです。
母親か子供のどちらか片方に必ず精神的な負担がかかってしまいます。
本には「このことがプロのカウンセラーが必要とされる一番の理由です」と書かれていました。

P22「話がはずむためには、聞き手が話を肯定的に受け取ることが大切です。自分の話を否定的に聞かれていることがわかると、話し手は話す気がしなくなってしまいます」
これは私が普段自然にできていることです。
異様なことを言っていない限りは相づちを打ちながら肯定的に聞いています。
そしてプロのカウンセラーの場合は相手が異様なことを言ったり八つ当たり的な形でカウンセラーを非難してきたとしても相づちが打てるように鍛えられているとあり、そこが凄いなと思いました。

P29「相づちの高等技術、くり返し」
相手の話したことをくり返すことは、相手がただ聞いてもらった感じだけでなく、話の内容と自分の心情が理解されたと感じるため、素晴らしい相づちになるとありました。
これも普段特に意識せずに使うことがあります。
ただし本に書かれているような完全な形では使えていないようです。
くり返しの相づちは「明快に」「短く」「要点をつかんで」「相手の使った言葉で」というのが大切なポイントとのことです。
特に「相手の使った言葉で」は奥が深く、類似した内容でも話し手と違う表現をすると聞き手の解釈のように感じ、話し手は自分の言葉が正確には理解されていないと感じることがあるというのは興味深かったです。

P31「プロの聞き手は「わかる」「わかるわ」「よくわかる」という相づちは使わない」
これも興味深かったです。
相手の言うことがわかるというのは本当は至難の技で、「わかる」という相づちは聞き手が自分なりにわかったという自己満足の相づちとありました。
安易に「わかる、わかる」と相づちをくり返されると話し手は心のどこかで「そんなにわかられてたまるものか」という反発が起こるともあり、気をつけるべき点だと思います。
そして私の場合、「なるほど」とは言っても、「わかるわかる」とは安易には言っていないことに気づきました。
それは凄くよく分かるなという時にしか使わないです。
無意識の中で「そんなに簡単にはわからない」というのを理解していたのかも知れません。

P39「ここまで聞いたのだからとついでにもっと、と先を続けさせようとすれば、二人の人間関係まで壊れてしまう」
話をしていて、相手がちょっと話しすぎたと思い話をやめたのにしつこく聞こうとした場合のことです。
プロの聞き手はこれをよく分かっているとありました。
聞き手として話を聞く場合にも「引き際が大事」ということなのだと思います。
私は10代の頃は結構しつこく聞いてしまうことがあったのですが、20代になってからは相手が話したくなさそうなことは聞かないようになりました。
年を重ねて聞き手としての引き際を身につけたのだと思います。

P46「ぐちの聞き方は避雷針と同じ。自分にぐちを積極的に落としてもらう。そして自分の心の中にためこまず、そのまま地中へと吸収させる」
これは相手の言葉を真っ正面から受け止めやすい私にとっては苦手とすることです。
なので苦手だということを認識しつつ、横にひょいっと受け流してあげることを意識するようにしています。
そして私の父がこれを得意としていることに気づきました。
自分にぐちを積極的に落としてもらおうとは思っていないと思いますが、「自分の心の中にためこまず、そのまま地中へと吸収させる」が出来ているように見えます。

P52「昔の主婦はプロのカウンセラーと同じようなテクニックを持っていた」
昔の主婦の井戸端会議では次々交代で軽いぐち話をしながら、あまり深刻な話にはならないように「話を聞き流し、自分サイドに引きつけない」という知恵を持っていたとのことです。

P56「人間は話を聞くより話をするほうが好き」
これはそのとおりだと思います。
自分のことを話そうと思っているときは、心(頭)はすでに聞き手のモードから話し手のモードに切り替わってしまっているとありました。
「子どもや配偶者や身内や部下が悩んでいるときにも、聞き手モードからうっかり話し手モードにならないようにいましめておかなければ、悩みを聞いてやろうとするあなたの思いは役に立たない」というのが印象的でした。

P67「「私この間、⚪⚪のような目にあったのよ。どう思う」のような質問には、聞き手のあなたはほとんどの場合、答える必要はない」
形式は疑問文でも、聞き手に求めている反応が答えではない場合として紹介されていました。
そんな時は「同意するか、考えるためにちょっと間をおけばすみます」と書かれていました。
この聞き方は自然と身についているものでした。
私も「どう思う」と聞かれることがありますが、何か答えるか考え込むかすると必ず話がその先へと進んでいきます。
先に進むことが大事なので、「どう思う」に対して長々とではなく簡単に答えるのが良いと思います。

P85「聞き手は話し手より偉くはないことを自覚しているべきです。それでもついつい人の悩みを聞くと、自分がその人より偉いと感じ、助言をしてしまうことが多いものです。話し手との平等性を確保している聞き手は、尊敬していい人です」
これはかなり印象的でした。
悩みを話す話し手との平等性の確保は難しいことだと思います。
偉そうに助言するようなことがないよう、意識を持つことが大事です。

P91「共感とは相手の気持ちで話を聞くことで、自分の気持ちで聞くと、どこかで相談者の気持ちとズレが生じる」
相手の気持ちで話を聞くのも言葉にすると簡単そうですが実際には難しいと思います。

P95「その人の心は、その人しかわからない」
これもそのとおりだと思います。
どんなに共感したとしても、完全に相手の心が分かっているわけではないです。

P133「「相手のことは相手のこと」が、温かい気持ちでできるためには、相手の心に対する理解が必要です。家族や友だちなど自分にとって大切な人を失わないためには、つねに相手を理解しようと心がけることが第一なのです。自分の立場を主張するのでなく、相手の気持ちになって、しかも相手と自分を混同しないことが大事」
相手の気持ちになって、しかも相手と自分を混同しないのは、母の愚痴に対してできていないなと思いました。
母が怒りながらこぼすぐちに対し、私も聞いているうちにその対象に強い怒りを感じるのですが、これはP91の「共感とは相手の気持ちで話を聞くことで、自分の気持ちで聞くと、どこかで相談者の気持ちとズレが生じる」に当てはまると思います。

P137「評論家は正論を言い、相手に対しても正しいことをするように言います」「正しいことを言うのは評論家か傍観者」
これは正しいことを言う人が正しいとは限らないということです。
会社である人がある人に対し、「正しいことを言いますね」と言っていたことがあります。
これは褒めているのではなく、呆れているニュアンスがありました。
「こうすべきだ」と言った場合に、それが正論であり正しかったとしても、とてもそんなことをしている時間がない場合があります。
そんな時に自分がやるわけではない人が「こうすべきだ」と正論を言ったとしても、「そんなことは分かっているが現実的ではないからやめているのに、何を言っているんだこの人は。それならあなたが自分でやれ」と反発される可能性が高いです。
家庭でも同じように、例えば奥さんが旦那さんに近所付き合いの不満を言った場合に、「そんなことを言っても付き合いをしないわけにはいかないだろう」と正論を言ったとしても、奥さんはうんざりすると思います。
正しいことをひたすら言えるのは自分の身に降りかかっていないからだと思います。
相手の心情を考えることが大事です。

P154「話し手のリズムに合わせて、話しやすい返事を返す」
これは普段自然にできていると思います。
相手が話しやすいように、話のテンポを微妙に変えたりすることがあります。


P171「人間は頭で理解していても、感情が拒否するような行動はとることができない」
これは私も経験があります。
「こうすべきだ」と頭では理解していても、強い拒否感情があるとなかなか「こうすべきだ」ということを実行できないものです。

P176「部屋の違い一つで、話の内容が影響を受ける」
窓のない部屋で話をすると気づまりになり、全面窓の部屋も話しにくいものではあるものの話の内容は明るくなるとのことです。
たしかに部屋の雰囲気は大事だと思います。
窓のある明るい雰囲気の部屋のほうが自然と明るく話せると思います。


この本を読んでみて、結構普段できていることがあるなと思いました。
そしてできていないこともありました。
人の話を聞くのは好きなので、聞く力をより伸ばしていきたいと思います。


※「プロカウンセラーのコミュニケーション術」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「プロカウンセラーの共感の技術」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

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