読書日和

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「チア男子!!」浅井リョウ

2014-07-22 23:42:17 | 小説
今回ご紹介するのは「チア男子!!」(著:浅井リョウ)です。

-----内容-----
柔道の道場主の長男・晴希は大学1年生。
姉や幼馴染の一馬と共に、幼い頃から柔道に打ち込んできた。
しかし、無敗の姉と比べて自分の限界を察していた晴希は、怪我をきっかけに柔道部を退部。
同じころ、一馬もまた柔道をやめる。
一馬はある理由から、大学チアリーディング界初の男子のみのチーム結成を決意したのだ。
それぞれに事情を抱える超個性的なメンバーが集まり、チームは学園祭での初舞台、さらには全国選手権を目指すが…。

-----感想-----
浅井リョウさんの作品を読むのは「桐島、部活やめるってよ」以来2冊目となります。
ネットのレビューで『三浦しをんさんの「風が強く吹いている」を楽しめた人はこの作品も楽しめるはず』とあって、興味を持ったので読んでみることにしました。

主人公は坂東晴希、命志院大学に入学して三ヶ月の大学一年生です。
最初、晴希は柔道部で活動していました。
しかしエースとして勝ちまくる姉の春子に比べ晴希はあまり強くなく、本人も自分は姉のようにはなれないことを自覚していました。
しかし晴希は「応援」では誰よりも熱く、いつも立ち上がって応援してしまい、他のメンバーに座らされるくらい熱くなります。
この熱い応援ぶりがチアリーディングへと繋がっていきました。

チアリーディングと聞くと、大抵の人は女子を思い浮かべると思います。
チアガールとも言いますし。
しかしこの作品では男子のみによるチアリーディングという、かなり珍しいものを題材にしています。
作者の浅井リョウさんが当時通っていた早稲田大学に実在する男子チアリーディング・チーム「SHOCKERS」に取材して、物語を作っていったようです。

肩を怪我していた晴希は、それを機に柔道を辞めることを決意します。
坂東道場という、命志院大学の練習場にもなっている道場の跡取り息子で、そのコネでスポーツ推薦枠で大学に入っていた晴希。
柔道を辞めることに、むなしい心境になっているようでした。
また晴希が柔道を辞めることにショックを受けた姉の晴子との関係もギクシャクし気まずくなってしまいました。
その頃時を同じくして、晴希の幼馴染の橋本一馬も柔道部を辞めることを決意。
ずっと辞めるタイミングを図っていたらしく、晴希が辞める今、一緒に辞めることにしました。
そして一馬は春希と新たに始めたいことがあって、それがチアリーディングでした。
「一発おもしろいことしようぜ」
昔からの、一馬が晴希と何かを始める時の誘い文句です。

メンバーも二人のほかに溝口渉、遠野浩司(トン)、総一郎(イチロー)、弦、徳川翔と、一馬が最初の目標としていた7人になります。
この7人で学園祭に出てそこから羽ばたいていこうとなり、張り切って練習していきます。

チアリーダーとは、観客も選手も関係なくすべての人を応援し、励まし、笑顔にする人のこと。そして、そのために自らの努力を惜しまない人のこと。
これはすごく良い言葉でした
素晴らしい競技、そして素晴らしい存在だなと思いました
作中にほぼ同じ言葉が何度か出てきました。

ちなみに徳川翔はチアリーディングの経験者であり、相当な技量を持っています。
しかしそんな翔にも悩みがあります。
登場人物7人全員が何らかの悩みを持っていて、一人ずつ心の悩みを綴る形で物語が進んでいきました。
一馬は自身の中にある葛藤も、晴希の背負っている姉への罪悪感も、溝口が名言で隠している本音も、トンの自分に自信がなさすぎるところも、翔が誰にも言えないで抱えてることも、色々なものを壊したいと考えていて、そこからチーム名は「BREAKERS」になりました。

その「BREAKERS」が学園祭でそれなりの成功を収めて、物語は新たな局面を迎えます。
「BREAKERS」のチアリーディングを見て自分もやりたいという人達が集まり、チームは7人から16人に。
さらには翔の過去を知る高城(たかぎ)さんという女の人が「BREAKERS」の専属コーチになります。
そして1月30、31日の神奈川予選から3月27、28日に千葉県の幕張メッセで行われるチアリーディング全国選手権への出場を目指すことになります。
もともと高城さんは「DREAMS」という晴希達と同じ大学にある全国屈指の強豪チアリーディングチームのOGで、コーチの経験もあり、腕は確かです。
スパルタ指導のもと、全国大会を目指すというバリバリの青春スポーツ物語になりました
最近青春小説を読みたい心境の私にはピッタリな作品でした^^

翔の過去の話で、8月末に行われる全国高校チアリーディング選手権、通称「サマーカップ」というのが出てきました。
このサマーカップが行われるのは国立代々木競技場の体育館で、私は毎年チアリーダー達の姿を見かけています。
同じ時期に原宿では「スーパーよさこい」があって、それを見に行くと自動的に全国大会に来ているチアリーダー達の姿も見かけるというわけです。
何だかこの小説を読んでいたら私も代々木体育館で行われるチアリーディング全国大会を見てみたいものだなと思いました^^
そう思わせてくれる楽しさがこの作品にはありました。
特にラストが圧巻で、あれを読んでいたら2分30秒間の躍動をぜひ生で見てみたいなと思いました
人は苦悩を突き抜けて歓喜を勝ち得る。
色々な偉人の名言を言うのが好きな溝口の、本人が最も気に入っているこの言葉。
まさにこの言葉のようなラストでした。

チアとは、戦うスポーツではない。世界でたったひとつだけ、人との関わりの中で生まれた競技であり、誰かを応援するという姿勢が評価されるスポーツだ。
これもまた、すごく良い言葉でした。
誰かを応援する姿勢が評価されるスポーツ、素晴らしいなと思います


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2 コメント

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何者 (latifa)
2014-07-24 16:39:10
はまかぜさん、こんにちは!
これは読んでいないのですが、朝井君がダンスサークルや、これらのサークルに通じているというのは何かで見聞きしていました。
朝井君の本では「何者」が面白かったです。
ちょっとダークな部分も含めて、いまどきの就活生や(早稲田くらいのレベルの)学生さんのお話が、とてもリアルに伝わって来て、興味深かったです。

ps みたま祭り、行かれたのですね^^
噂には聞いていたものの、実態を知らなかったので、お写真とか記事、楽しく拝見させてもらいました。
返信する
latifaさんへ (はまかぜ)
2014-07-24 23:45:16
こんにちは!
「何者」は直木賞受賞作ですね
いまどきの就活生の話とは興味深いです。
まだ読んだことはないのですが私もいずれ読んでみたいです^^

みたままつり、行ってきましたよ
東京では最大規模の夏祭りで、今年も賑わっていました。
フォトギャラリーが参考になったようで良かったです。
latifaさんもいつか機会があれば行ってみてください

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