読書日和

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「共生虫」村上龍

2007-03-10 16:28:27 | 小説
今回ご紹介するのは、「共生虫」(著:村上龍)です。
引きこもりの青年の中にいる「共生虫」という不気味な虫をめぐる話です。
この小説ではあまり会話がありません。
主人公が引きこもりなのでそうなってしまうのだと思います…。
主人公がインターネットで色々調べる場面が目立ちます。
この青年はインターネットを通じて、自分のなかに共生虫という虫がいると知ります。
また、戦争時代に使用された防空壕に興味を持ち、調べに行きます。
主人公は防空壕の中で猛毒を見つけます。
さらに、ネットで知り合った人に殺人をやるから見に来いと言うのです。

この小説を読んだ2004年のころは、内容が現実離れしていると思いました。
引きこもりの青年が猛毒を使って殺人をするなんて、どう考えてもありえないとおもいました。
しかし最近のニュースを見ていると、20歳前後の人の凶悪犯罪が目立ちます。
中でも恐ろしいと思ったのは、娘が実の母親を毒殺しようとした事件です。
しかも毎日毒で弱っていく母親の様子をインターネットで日記にしていたというのです。
まともな神経ではないと思います。

僕はこの毒殺未遂事件と共生虫という小説が重なりました。
小説の世界でしか起きないようなことが現実世界でも起きているという事実に驚愕しました。
どこかの雑誌で、村上龍は時代を先読みすることに長けているとありました。
確かにそうかも知れないと思いました。
僕は現在22歳ですが、同じ年代の凶悪犯罪が多いのは心が痛いです。
中高年世代は何かと「最近の若い者は…」と言いたがりますが、そういう時代にしてしまったのが自分達だということをもう少し考えて欲しいものです。

この小説はクライマックスで主人公が殺人を犯します。
非常に生々しく書かれていて、読んでいて現場が思い浮かぶくらいです。
しかし主人公自身は、殺人を大したことだとは思っていないようです。
これも今の世の中と重なると思います。
小説のラストで主人公が都会の人ごみに消えていくのは、なんとも言えない後味の悪さがあります。

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