老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
“老い”を身近に感じつつ、近況や色々な思いを記します。

面白い語源の言葉  その⑧  ~有象無象・森羅万象~

2018年06月04日 19時37分35秒 | 面白い言葉や語源など
 今回は「象」が付き、何となく判っているが、詳しくは説明しにくい二つの言葉にふれてみます。

<有象無象(うぞうむぞう)>
 種々雑多なつまらない人々や、群がってくだらない連中を卑しめていう言葉で、“多くの価値のない人やくだらない物”のことを意味します。

 元々は仏教の用語である「有相無相(うそうむそう)」に由来しているようです。
 「有相」はかたちのあるもので目に見える物体や現象をいい、「無相」はかたちのないもので現象として顕れるものの本質をさします。

 「かたちのあるもの」とそれ以外の「かたちのないもの」でこの世のすべてのものを構成することになり、仏教でも「有相無相」で宇宙に存在する有形・無形のすべてのもの、森羅万象すべてをいうようで、それが転じて、おおぜいの者ども、つまらない烏合の衆をさし、「有象無象」と書かれるようになったようです。

 姿や形を意味する「相」が、「象」という字に変化したのは、「相」という言葉が一般的ではなく、同じ意味を持ちより一般的な「像」を用いるようになったが、同じ音の「象」に変ったという説が有力なようですが、詳しくは不明なようです。

 この世のすべてのものが、ろくでもない役立たずであるといわれるようになったのは、なかなか含蓄のある変化であるように思われますが、この言葉を聞くと昨年の東京都知事選の時に安倍首相の「こんな人たちに負けるわけにはいかない」という言葉を思い出します。
首相の価値基準から見ると、私たちは有象無象の輩ということになるのでしょう。


<森羅万象(しんらばんしょう)>
 あらゆる現象、宇宙に存在するすべての物事を意味します。
 「森羅」はたくさんの樹木が茂って並ぶさまを表すのが原義で、転じて数限りなく並び連なるものの意になり、さらに万物の意を表し、「万象」の「象」は上記の有象無象の「象」と同じく有形物のことで、「万」が付いてあらゆる有形物となり、すべての形の意を表し、あらゆる現象の意に転じた。

 この2つの語が合わさって「森羅万象」となり、当初は「しんらまんぞう」と読まれていた。

 そう言えば、安倍首相はこの言葉も大好きなようで、自分が把握してないことの言い訳をする時に“私が森羅万象全てを把握している訳ではないので…”というような言い方をされるのをよく耳にしますが、自分の言ったことや、少し前の記憶も忘れる人が森羅万象を把握しておられるなどとは誰も期待もしておりません。(まさ)