鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

2007.冬の常陸茨城・取材旅行「那珂湊~日立助川 その4」

2008-01-12 08:47:27 | Weblog
取材旅行に出かける前に目を通した本の1冊に、『茨城の史跡は語る』(茨城新聞社)があります。全国的に展開する古書店でたまたま見付け、1750円で購入(定価3500円)したものですが、取材先を絞る際にたいへん参考になった本。冒頭の、茨城地方史研究会会長瀬谷義彦さんの「はしがき」によれば、この本は昭和61年1月から同63年5月まで、百回にわたって「いはらき」新聞紙上に連載されたものを一本にまとめて上梓したもの。「茨城県内各地域に残る史跡のうち、会員が日頃もっとも親しんでいるものを選んで、執筆分担した」とあります。「水戸周辺の史跡」「県北の史跡」「県南・鹿行の史跡」「県西の史跡」と、合わせて100の史跡が紹介されています。詳細な解説とともに美しい写真や案内図も掲載されており、とてもすぐれた「郷土本」です。取材後、読み直してみると、水戸市本町の「備前堀」も柳が揺れる美しい写真付きでちゃんと紹介されていました(6)し、「笠原水道」についても(10)で詳細に説明されていました。日立市内で紹介されている史跡は、「泉ケ森」(33)・「助川海防城」(34)・「旧久原本部」(35)〔日立鉱山開発の拠点〕・「諏訪の梅林」(36)・「郷校暇修館」(37)の5ヶ所。その中三つは徳川斉昭の「天保の改革」に関係するもの。今回実際に行くことが出来たのは「助川海防城」の史跡だけですが、「天保の改革」がかなり積極的に、しかも広範囲に展開されたものであることをうかがい知ることが出来ました。この本の面白さは、「あとがき」で「茨城地方史研究会副会長」の佐久間好雄さんが述べられているように、執筆を「その史跡の近くに住み、日頃みずからよく観察し、地元の伝承等にも通じている人に依頼」したことと、瀬谷会長から「史跡の説明の中に、往時の人々の声が聞こえるように留意してほしい」という注文があって、そこに留意して執筆されたことによるものだと私は思いました。「往時の人々の声が聞こえるように留意する」という一文は、心に強く残るものでした。そう言えば、帯には「時代の息吹に心傾ける時 先人たちの声が聞こえてくる」とある。茨城県の他の地域をめぐる機会が訪れたら、またぜひ目を通してみようと思っています。 . . . 本文を読む