徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

伝説のビート

2024-03-04 22:31:02 | 音楽芸能
 水前寺成趣園能楽殿で行われた「翁プロジェクト熊本公演」を観てからやがて3年経つ。能楽の頂点といわれる「翁」をナマの舞台で観たのは初めてだったのでいまだに感動冷めやらない。熊本ゆかりの友枝昭世師(人間国宝)による「翁」もさることながら、主役とも言える「三番叟」の「揉みの段」「鈴の段」は農耕儀礼に始まる日本の芸能の原点を感じさせて印象深かった。 


「翁プロジェクト熊本公演」における三番叟(山本則重さん)

 その三番叟の舞を見ていると、鼓が刻むリズムの中にどうしても思い出すリズムがある。下の映像の1分40秒あたりから注目して聞いていただきたい。

野村萬斎さんの三番叟

 5年前に世を去ったアメリカの名ドラマー、ハル・ブレインがザ・ロネッツの「Be My Baby」のイントロで刻むビート「thump-thump-thump-crack」は「伝説のビート」といわれ、ブレインが音楽史に残した足跡の一つとされている。僕はそのビートを聴きながら「三番叟」のリズムを連想する。ブレインの死を報じたニューヨークタイムズがこのビートをいみじくも「心臓の鼓動」と表現しているがそれはまさに800年も昔に始まった「三番叟」にも言えるのではないかと思うのである。