もじもじ猫日記

好きなこといっぱいと、ありふれない日常

「罪の声」

2020-11-08 23:07:08 | 映画
2020.11.7

予告で感じていたが、
沢山の人物が出てくる原作のボリュームを刈り込んでいる為に
エピソードが少し変わっている。

幼い頃の自分の声がとんでもない犯罪に使われていたことを知った曽根俊也。
ただの街のテーラーとして家族と平凡に暮らしていた男が
恐ろしい事件と自分との関わりを探ってゆくことになる。
妻と子供との幸せを守るために。

原作だと父親の親友堀田氏の多大なる手助けにより
俊也は逡巡しながら様々な人に会ってゆくのだが
映画では
一人で真相に近づこうとするアクティブな人物として描かれている。

もう一人事件の真相を調べ始めた新聞記者、阿久津。
文化部でそれなりの記事を書いていた彼を
過去の未解決事件の特集担当として社会部のキャップが引っ張った。
あまり乗り気でなかった阿久津は
事件に使われた脅迫テープの声が子供であったことに引っかかり
取材に没頭してゆく。

阿久津がテーラー曽根にたどり着いたとき
自分の意志とは関係なく犯罪に関わらされた子供としての怒りと
家族に及ぼす影響を恐れた俊也が
阿久津と二人で
事件の真相、犯人像
そして声を使われたあと二人の子供の人生を探してゆくことになる。

息をひそめて見入ってしまう重いシーンの連続の中で
口の滑りやすい板長のシーンでは笑いがもれた。
じゅんさんさすがです。

映像で描かれるテーラー曽根の奥の生活スペースが
俊也の子煩悩さを感じさせたり
京都の街の雰囲気や
車移動の景色が
活字よりイメージを立体的にしてくれた。
個人的には
もう少し仕立作業をする源さん見たかった。


日本初の劇場型犯罪を描きながら
後半は
事件によって未来を壊された二人の子供に焦点を当てた
見事な作品になっていた。
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「スパイの妻」

2020-11-05 00:12:36 | 映画
2020.11.2

そうだね、スパイの”妻”の話だった。

貿易会社を経営する優作と妻の聡子の生活は
戦争が近づいてる時代にしては優雅で自由だ。
優作が妻を主人公に映画を撮影して会社関係者に披露するなど
文化的レベルも高い。

貿易を仕事にしている優作は外国とのつながりも多く
憲兵に目をつけられているが
それは夫婦のかつての知り合いでもある。
優作が甥を連れて満洲へ物資調達に旅立ったことから
信じていたはずの夫に不信を抱き
優作を想うことだけで暮らしていた聡子の人生が狂ってゆく。
そこには
聡子に恋をしていた昔(14歳のあなた、と聡子がいう場面がある)を
忘れていない憲兵が吹き込んだ毒も作用する。
優作への愛情が尋常ではない聡子
彼を守るために、と聡子がした行動は狂気である。
彼女は本気で”スパイの妻”になれると思ったのだろうか?
優作は彼女を愚かだとは微塵も思っていなかっただろうか?
二人の愛情はどのように紡がれ、すれ違い
最後の最後にはどうなったのだろう。

~本当は狂っていません。でも今の時代には私は狂っているのでしょう~
このセリフから読み取れる様々な意味。


高橋一生のスーツ姿がカッコイイのなんのって
沢山着替えてくれるので
ストーリーの重さと別に『かっこいい!』って何度も思った。
さらに妻も衣装持ちで
可愛らしいもシックも沢山ステキな洋服が眼福。
元がTVドラマなので恐ろしい場面は想像で補うのかと甘い考えでいたら
黒沢清だしね
そんなわけなかった。
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「ミッドナイトスワン」2回目

2020-10-03 00:12:18 | 映画
本気でネタバレです。



ちょっと開けてみました、が、どうだろう。


赤いライターから始まり4羽の白鳥が揃って履く赤いトゥシューズ。
深紅が象徴的に使われる冒頭のシーンがとても好きだ。


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~~ ~ ~ ~ ~~ ~ ~ ~ ~ ~

ねぇ
私は産んでって頼んでない
お母さんと一緒にいたくないって言ってない
東京の親戚に預かられるなんて聞いてない
学校が面白いわけじゃないけど転校したいなんて思ってない
親戚はみんなお母さんが新聞沙汰になったりしたら迷惑だって思ってるだけじゃん。
どうして皆「あなたの為」なんて嘘ばっかり言うの!
一度も名前を呼ばなかったけれど
凪沙さんがくれた光が言葉をくれた。
バレエにも出会えて生きるのもいいな、って思えた。
りんに出会えて友達っていいな、って思えた。
でもやっぱり私に幸せなんてやってこないんだね
一度見えた光が消えるのは何も無かった時よりツライよ。
凪沙さんまで「あなたの為」なんて言わないで、頼んでない!
男の人の姿になんてさせてごめんなさい。
そしてお母さんが迎えに来た
お母さんには私が必要なんだ
凪沙さんごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
一果って名前を呼んでくれたのにごめんなさい。


中学を出たらバレエ留学したいと思ってる。
踊ることは続けられたから。
その前に
凪沙さんに会いに行くよ。
なんて言ってくれるかな、喜んでくれるかな。


~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~


お金が貯まらないだけじゃなく何かがその一歩をとどめていた手術を受けたのは
一果のお母さんになりたかったんだろうけど
違うよ、凪沙。
お母さんじゃなくても愛せていたじゃない。
ちょっと間違えたね。
あなたがいなくなったら一果がそれを背負わない訳がないのにさ。



謎だったことがいくつか。
凪沙が貯めていたお金。
あんな丸見えだったら盗っちゃうよ、大抵。
特に最初のお互いに心を開いてない時気になった。
なんのこだわり?監督。
りんの父も母も「今日学校どうだった?」と聞いた。
りんの学校生活には何か問題があったのか、いじめにあってたりしたのか
そこは描かれない。
りんはどうして跳ばなければならなかった?
手術のあのカットは二つも必要だったのか
何より服がはだけるあのシーン。
下着はどうなってんだ?
酷い言葉を凪沙が浴びせられるためだけにしか思えない。


孤独な人しか出てこない作品。
ショーパブの同僚も
少女を性的搾取している大人の男と風俗の客は孤独な上に歪んでいる。
りんもその親も。
バレリーナも舞台の上では孤独だ。
それを知りながら人は寄り添おうとする、光を求める。
そういう作品だと思う。
傑作。
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「ミッドナイトスワン」

2020-09-25 21:54:02 | 映画
ネタバレありです。

光さす方向へ歩いて行けたのは一果だけだったけれど
いちばん多くの傷を負ったのも一果だったんじゃないか。
そこが辛かった。

草彅剛の演技力を書き表すのは難しい。
熱演、憑依、カメレオン俳優
そういう形容詞は当てはまらないのだが
その人物にしか見えない。
スクリーンの中にいたのは
女ではない身体に苛立ち、そんな生活に倦み
それでも心にぴったりそう身体を求める凪沙だった。

心のままに生きようと故郷を出て
仲間たちと働ける場所のある東京で暮らしても
孤独は形を変えただけで消えるわけではなかった。
ある日
真実を明かしていない母親から親戚の子供について相談の電話が入り
ネグレクトをうけている一果を預かることになる凪沙。
「子供なんて嫌い」と言い放ち
世話をするどころかワンルームの開いてる場所で寝ろと言いつける。
冷たくするというより
自分のこと以外考える余裕が全く無いようだ。
一果も、誰かに何かをしてもらえるなんてことを考えなくなって久しいのか
口を開かず
ひとりの時間に物に当たり自分を傷つけるだけで
自分の気持ちを外に出さずに凪沙の部屋に住み始める。

大人の都合であちこち行かされ
あれこれ噂にさらされて生きる一果の辛さはどうなるのだろう?
(凪沙に預けたのも世間体を優先してだった)
そう思っていたら一果はバレエに出会った。
おかげで友達も出来たし
踊ることで身体がどんどん開いてゆき、心も徐々に開き始め
光りの兆しをつかんだように見えたが深い影をもつかんでしまっていた。
孤独な者同士が引き合うのは必然だが
マイナスをかけあわせてプラスに転じることは数学ほど簡単ではない。


なんだかうまくまとめられないので凪沙の印象的な場面を。
・店のステージで踊り始めた一果を見つめる凪沙の瞳
・石段で一果に踊りを教わる凪沙
・稼げる力仕事をしようと男になろうとするが無理だと思った時の凪沙
・コンクールで一果をうらやむ声を聞いて微笑む凪沙

後半にショッキングな場面が多いがそこは挙げない。
「この描き方必要かな?」と思ったシーンもあるし
これじゃ一果が色々背負ってしまうじゃないか!監督!
そう感じたシーンは泣くどころじゃなかった。


孤独で悲しい人しかいない世界で
海で自分が海パンを履いてることに違和感を感じた少年が「凪沙」として心のままに生きようとし
『あんたのために』と殴ってくる言葉から解き放たれる為にバレエを手に入れた少女・一果
この二人の物語だった。
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「ワンダーウォール 劇場版」

2020-09-06 23:33:38 | 映画
2020.9.3

NHKで観たドラマの劇場版。
渡辺あやの脚本が好きなのでドラマも観たけれど

本当の敵が見えない仕組みって消耗するよね。

伝統のある学生寮を取り壊すという大学と交渉をすすめてきた寮生
話し合いの場は設けられなくなり出向いていた学生課のカウンターに
ある日壁が作られていた。
責任者はいつも不在で向き合うのは派遣社員。
取り換えがきくうえに大学とも無関係な人間と話をすることが
無意味なんじゃないか
大学は話を聞く気なんてないんじゃないか
寮生たちは無残に悩み、翻弄される。

寮の決まりは
全学年タメ口・ジェンダーレストイレ・話し合いは全会一致
それだけ。
なんかいい
ボロボロの建物のそこかしこで寮生が好きになにかやっている。
これは京都に現存する寮の話なんだけれど
北大の恵迪寮ってうちら年代はこういう木造のボロボロだったんだよなぁ。
やっぱり建て替えに自治会が反対して
でも結局鉄筋コンクリートになって
まあ、今の北大生も「あそこはきったないですよ」という環境になってるようですが
昔はもっと汚かったんだってば。

じゃなくて
寮生に歩み寄ろうとした人物は大学を去ることになり
大学側が議論に応じると思って構築され受け継がれた議事録は
そこに派遣社員が立たされることにより役に立たなくなる
大学側は法的手段を取ることもいとわない
こんなの戦えないじゃないか
そして
吐き気がするくらい身近にもある状況だ。
勝たなくてもいいけど負けないでくれって思いながら観てた。

そうしたら映画には応援団が出てくる。
みんなで太鼓を叩いてラッパを吹き鳴らして楽しそうに演奏している。
ああ良かった。
私の心もそこにいる。
勝たなくてもいいから
負けない。
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「ファンシー」

2020-06-15 00:57:20 | 映画
2020.6.11

ソーシャルディスタンディングの映画館はお初
観てる間は喋らないと思うんだけどねぇ。

永瀬正敏と窪田正孝を観たかった。
ダブルワークが彫師と郵便配達ってのも尋常じゃないが
氷の風呂に入るペンギンという名の詩人も
浮世離れどころじゃない。
なんだこの町?
郵便局の局長は副業も人柄もやばい
ヤクザとホテルの支配人もダブルワーク
ただのしけた温泉街ではなさそう。

ペンギンのファンが押しかけ妻としてやって来てから
郵便配達とペンギンの関係のみならず
町のあちこちで歪みが表面に現れてくる。

交差しそうでしない暴力と郵便配達
押しかけ妻とペンギンと郵便配達の奇妙な関係と
それにより
1度終わってしまったようなペンギンの世界

ペンギンの書く詩がいまいちなんだよなぁ。
詩人の集いも酷い描写だし。

嫌いじゃないが
ひとにお勧めはしないかな。
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「ラストレター」

2020-02-11 23:26:32 | 映画
2020.2.4

岩井俊二作品で豊川悦司が出てるんじゃ観ないとね。
好きな監督なんだけど、
作品によっては途中で『ん?』ってなるんだよなぁ。
今回も出ちゃった。

娘宛の遺書ってお姉ちゃん自殺なの?
元旦那がクズすぎて病んでしまっていたとはいえ
不在の理由として病死ではダメだったのだろうか。

姉の死を伝えようと出かけた同窓会で
高校のマドンナだった姉と間違えられて
行きがかり上壇上であいさつしちゃう裕理という人は
その後の展開をみても
どこか鈍くて考えが浅い
そこが魅力でもあるという不思議な人物。

高校時代姉に恋をしていた鏡史郎の手紙を運んでいた裕理
大人になって再び始まる二人の手紙のやり取りから物語は本筋になるのだが・・・

これは、
母に残された鮎美と未咲の思い出に縛られていた鏡史郎を
明るい場所に連れ出す物語だった。

豊川さんのクズっぷりが鏡史郎と合わせ鏡のような複雑さを持っていて
さすがでした。
高校時代の輝きは
遠くなってからみるからこんなに切ないんだよね。
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「THE UPSIDE 最強の二人」

2020-02-03 23:57:40 | 映画
2020.1.17

オリジナルの感想を書いてなかったので
遠い記憶を辿ってみます。

事故によって身体が不自由になった
お金持ちのダンディな紳士の介護者に
間違いでまぎれこんだ前科持ちの黒人デルが採用される。

車椅子が乗らないからって
かっこいい車に乗らないなんて信じられない!
デルはフィリップをスポーツカーに乗せてでかける。
ホットドックを一緒に食べる。
同情なんてしない。
クソな人間関係はクソだし
女性にもアプローチすればいい。
そんなデルとフィリップに友情が芽生えて
影響し合うことによって
人生そのものが変わってゆく。

この、デルが社会的に立派になってゆくのが
オリジナルには無かったような気がして
良い話すぎると思ったんですね。
アメリカっぽすぎるというか。
どうなんだろ?

でも
やっぱりいいお話です。
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「ロマンスドール」

2020-01-30 00:19:50 | 映画
秘密を抱えた若い夫婦の物語。
夫が隠している職業はラブドール職人。

ということで「空気人形」っぽさがあるのかも
そんな思い込みは木っ端みじんのラブストーリーでした。
そんで、笑える場面も多々あって
涙ぐむ場面もあって
好きな映画でした。

人が恋に落ちる瞬間を見てしまった~ハチクロにあったセリフだけれど
スクリーン上で哲雄が園子に告白するのをみてそう思った。
結婚式で緊張のあまりぶるぶると震える哲雄の手
そうそう
新郎の方が緊張してること多いんだよ、ふふふ。

新居で段ボールに囲まれて笑い合う微笑ましい新婚さんが
仕事に没頭し過ぎる哲雄によってどんどんずれてゆく様が
切なくて切なくて。
園子の変化に気がつかないのは哲雄の甘えだ。
あんなに心を奪われた相手なのに。

でも
手を振りほどこうとする園子を最後まで離さないでふんばった哲雄がいたから
二人の生活が戻って来た。
小さいけれどとびきりの光を放つ日々の行く先は、、、


この声ネバヤンじゃーん、兄弟共演かよ
と密かに笑い
高橋一生の手が大きいのか蒼井優ちゃんの顔が小さいのか?
キンキンって相川金次だったらそう呼ぶよね
クララが立ったで笑ったの私だけ?
などなどありましたが
仕事・生活・日常・愛・肉体・感情
それら全てがこんがらかって間違いながら
人は生きてゆくのですね。
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「去年マリエンバートで」

2020-01-24 22:16:43 | 映画
伝説の作品じゃあないか。
一週間上映の最終日に駆け込みました。

凝った装飾のホテル
ループする言葉
美しいブラックドレスの女性たち
突然静止する人々

ストーリーがあるのか
そんなことを考えるのは無意味なのか知りませんが
瞬間的に寝ちゃうこと5回ほど。
寝息を立ててる方もいたりして。

途中から
これは美しさだけを味わえばいんじゃない?
そう思い
モノクロームでも感じられるドレスの質感
もしや銀糸の布で仕立られている?
などを堪能いたしました。
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