小雨。
シトシトと小糠雨が降っています。ついさっきまで止んでいたのですが。
「タンポポ」の綿毛が今にも飛び立とうとしている…と、見ていたのに、この雨です。しかも、昨日に比べかなり気温も下がっています。「寒の戻り」と天気予報のお兄さんは言っていましたが、もう「鯉のぼり」の姿がマンションのベランダからも見えている今日この頃、今時「寒の戻り」でもあるまいに。それなのに、明日、明後日はもっと寒くなるとか。こうなりゃ、「寒の戻り」以外の言葉が(4月末から5月初めにかけての時期のために)必要になってくるかもしれません。
さて、学校です。
よく勉強し、しかも知識欲に溢れた、ベトナムからの留学生がいます。これまで、この学校に来ていたベトナムからの留学生達とは、ちょっとタイプが違うような気がします。ベトナムからの学生も、大半は、気分もいいし、きちんと学校に来るような人達だったのですが、どちらかというと、勉強に集中するというよりも、どうも「楽しむ」方に心が傾いていたような気がします。ベトナムでの習慣がなくならなかったのでしょうね。思わず、勉強するために留学したんだろうがと言ってしまいそうでした。
ところが、彼は、こう言うと何ですが、ある意味、「見慣れた、真面目な日本の学生」みたいな人なのです。
6月の「日本留学生試験」の総合科目も数学も受験したいということなので、そのための補講を、この4月第三週から始めました。当初は、「総合・数学」、「英語」共に週一の予定でした。が、「総合」を、いざ始めて見ると、これが進まない。いくら「N2」の漢字が書けるし、読めると言っても、やはり敷居が高いのです。簡単な単語の読みや意味を説明するだけでも、かなり時間がかかってしまう。(本を)読んで(問題を)やるだけでは、意味がないなと思われました。
「数学」のことを聞くと(基礎的な問題集は渡してあります)「日本語が読めないから、あまりやる気になれない」…。確かにそれもそうだ。しかし、週一では、「総合」も全く時間が足りないのに、「数学」までは読んでいけない。ということで、急遽、「数学」だけは、午前の授業終了後、20分くらいをかけて、毎日読み進めていくことにしました。
もちろん、問題は自分でやることに。ついでに、「私は文型だし、数十年前に高校の勉強は終わっている。自分で復習をしても、わかることは限られている。自分で頑張れ、聞かれても答えが出せないことがたくさんあると思うよ」とも付け加えておきました。これも、月曜日と金曜日は、午後、5,6時間目に「総合」「英語」を予定しているので、できません。それで、火・水・木にするだけです。
ところが、一昨日の、水曜日のこと。「もう、次の授業の人達がくるから」と終わろうとすると、「木曜日もアルバイトがありません。勉強出来ます」と言い出したので、ん…。で、木曜日も「留学生試験」のための勉強をすることにしました。午後の5,6時間目は私の方で授業があるので、それが終わってから、3時からと言うことに。
英語は他の先生に任せてあるので、安心なのですが、この「総合」が大変。
今週の月曜日(「総合」の第1回目です)には、問題を説明して、その都度教科書を開かせて、その部分を読んでいくつもりだったのですが、最初の「地理」で、転けた。
主要国でも、それらの国のある程度のイメージなりがないのです。それで、軽く流していくつもりが、高校の資料「タペストリ」や教科書の力を借り、「絵」や「写真」で印象づけながらやり始めると、90分という時間はあっという間に過ぎてしまいました。午後の後半には(私の)授業が入っているので、時間は伸ばせません。…だから、木曜日も来ると言ったのでしょうかしらん。
それで、2回目となる昨日、少しは心の準備が出来ていたので、「よし、このやり方でやろう」と臨んだのですが、どうも、また、最初から躓いてしまった…。
少し話しているうちに、こりゃあ、まず「物語」が必要だなと思いだしたのです。
「何も知りませんね。本は読みますか」「(ベトナムにいた時)読みません」「学校に図書館があったでしょ。借りて読むとかしなかったのですか」「学校に図書館はありません。あっても、みんな借りる手続きが面倒だから嫌です。借りません。」「……」。
けれども、彼はいわゆる、何でも知りたい、勉強したいタイプ。また、その言葉通り、餌(知識)を与えれば、すぐに食らいついてきます。
「高校生の時、本当に歴史が嫌いでした。『何年に何があった』で終わり。つまらないです。覚えたくないです」
昨日は、例の「タペストリ」を使って、まずはスリランカでの自爆テロの話題から「IS」の話をし、シリア、イラク、イラン、トルコなどの地図を見ながら、近現代の話をし、そこから、アメリカに飛んで、「小さな政府」「大きな政府」の話をし、そうこうしているうちに、「フランス革命」のことを聞くと、「知りません」。でも、ナポレオンは知っていたので、フランス革命のページを開き、まずは写真です。「部屋に戻ってから、空いた時間があったら、とにかく本を開いて、写真を見ておくように」
そうこうしているうちに四時半に…(この日は、午後5.6限目に授業があったので、3時からしました)。二人とももう四時半か!で、びっくり。
慌てて、とにかく教科書の「経済」のページを少し読んでおきました。専攻したいのは経済なので。
(彼は)聞きながら、メモをとったり、線を引いたりしているのですが、イメージが湧かないことには流れが見えなくて、どこか、頼りなく感じられることでしょうね。けれども、いろいろなことが知りたいと思っていることはよくわかりました。こういう学生には、「お話」をして、点でもいい、なんでもいい、どこか歴史の中にストンと腹に落ちる部分が見つかれば、スッと流れが自分なりに見えてくるものです。だから、むやみやたらに覚えるよりもこの方がいいのだろうとは思うのですが、なにせ、時間が足りない。
「フランス革命」や「アメリカ独立戦争」、「スペインやイギリス、フランスなどの植民地」に関する知識、知識どころか、アメリカがイギリスから独立したことさえ、知らなかった…。
知識欲に溢れていることはよくわかります。私の「お話」を一生懸命に聞いていましたもの。90分も集中していられただけでも、それはわかります。「いろいろなことを知りたいけれども、勉強する気になれなかった」
じゃあ、この学校にいる間に、少しでも穴埋めしていこう。ただ、私も年ですからね。それほど彼だけのために時間を割いていくわけにはいかないのです…体力が続かない。それが難しいところです。彼のように知識欲に溢れ、勉強したいと思い、アルバイトの時間も調節できる学生が、10人ほども来てくれたら、正規の時間割の中に入れ、もっと濃い授業をしていけるのに。
ちょっと、残念ですね。なにせ、小さい学校ですから。
だいたいは、真面目だけれども、少々不器用、あるいは頭はいいけれども、テキトーにやる習慣がついていて真面目にやらない…の人が目立っていたのです。もちろん、これはベトナム人だけではありませんが。
日々是好日