☆一日だけ早い先行上映で、シャマラン監督の『ハプニング』を観に行く。
私はよく、この監督の作品を「能天気だ」とか言っているが、実は、この監督の作品は、『シックス・センス』しか見たことがない。
それも、ビデオで観た^^;
この監督を好きな人は多いようだが、『シックス・センス』が余程、心のツボにはまってしまったのだろう。
「あの感動をもう一度」「あのどんでん返しをもう一度」とばかりに、続作を見に行ってしまうのだろう、と思っていた。
私は、『ジェイコブス・ラダー』を十年以上前に見ていたので、『シックス・センス』を見ても衝撃はなかった・・・。
◇ ◇
で、『ハプニング』だが、非常に面白かった。
全編これ、謎が覆っていて、手応えとしては、ジョージ・A・ロメロ風味の『クローバー・フィールド』って感じだった。
ふいに、町の人間たちが、呆然と立ち尽くし、おって、自殺をはじめるのだ。
その、人間が神経を狂わせたかのような現象は、疫病のように、ニューヨークから隣りの州に伝染していく・・・。
シャマラン作品はオチが肝なので(まあ、今回はオチは不明瞭なのだが…)、語らないことにするが、ミステリーとホラーの境界線を綱渡りするような絶妙な演出で楽しかった。
「謎の、目に見えぬ伝染」は、人知れず人を蝕む。
これが第一の格調高き恐怖。
だが、人々は自殺するわけで、主人公たちは危険地域から脱出する中で、数々の方法での自殺現場を見せられる。
これが、下世話な第二の恐怖だ。
そのバランスが絶妙で、実に怖くておもちょろい^^
しかも、下世話な直接的な恐怖を描いているのだが、
高層ビルの建築現場の足場から、多くの労働者が飛び降りてくるシーンや、
田舎の通りの、枝振りのいい街路樹から、何人もの首吊り死体がぶら下がっているシーンなどは、
前衛芸術を見ているようで、よござんした。
・・・人々は、ゆっくりと着実に自殺していく。
白昼で行われるその様は、シュールである。
◇ ◇
ただ、なんか気になる点もあった。
登場人物たちが総じて、なんかおかしいのだ。
特に、主人公の奥さんなど、私は「神経病み」なのかと思っていた。
夫婦の不和の解消の物語にしたいみたいなんだけど、奥さんの初登場のシーンの挙動や、主人公の兄弟との感情的な諍いも、シーンシーンが妙に突出しているので、物語上の大きな伏線のようにも感じられ、しかし、それが、あまり物語に生きてこないので、違和感がありありだった。
途中で知り合う苗木飼育場を営む夫婦も、奇矯で、妙にキャラが立ち過ぎている。
ホットドッグの話の意味のない繰り返しや、道の遠くに死体が見えて、それを見たいと思う主人公に、「隣りの家を覗くのに使っている双眼鏡があるわ」などと脚本に加えられているところなど、コメディみたいだ。
最後の舞台にいる、電気の通っていない、よってメディア機器もない中で暮らす孤独な老女の異常性なども、物語の本筋から外れているのに、怖い。
ああ、これが、第三の恐怖だ。
シャマランは、こうした「世界に潜んで暮らす異常者」の姿などを描いて、世界を襲った異常事態の根本原因としてフィードバックさせたかったのかな。
好意的に解釈すると気持は分かるが、成功しているとは言い難い。
◇ ◇
主人公夫婦と逃避行の動向をする作中8歳の娘ジェス(アシュリン・サンチェス)がいる。
これが、美少女であった。
やや南米風の顔立ちで、服装も民族的な首飾りをしていて、それが似合っていて、可愛かった。
物語の最初こそ、回りの大人は、悲惨な状況をジェスに隠す気遣いを見せていたのだが、物語が進むに従い、そうもしてられなくなり、ジェスは何度もショッキングな場面に直面することになる。
私にとっても強烈なシーンが続くので、私は、物語内のジェスの教育的な精神衛生上にとても不安を持たされた。
と、私が思わせられる程のリアルな演出力が、この作品にはあった・・・。
(2008/07/26)
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あっても不思議じゃないコワさばかりだったからでしょうか?
月並みですが、身近なところで起こる異常事態であるからでしょうね。
いつもの風景でも、一つの死体で状況が一変しますからね。
例えば、この間、お祭りがあったらしく、近所を半裸ふんどしの人が一人だけで歩いていまして、もう、それだけで日常が崩壊しましたよ^^;
これからもよろしき!