マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

シュタイナー学校

2011年01月20日 | サ行
 東京都東久留米市にある、一見ふつうの民家が「南沢シュタイナー子ども園」だ。1階と2階に、異なる年齢の子どもたちが一緒に過ごすクラスが一つずつある。

 ドイツで活動した哲学者シュタイナー(1861~1925)は、7歳までの幼児期は体の基礎をつくる時期ととらえ、豊かな感覚体験と運動、信頼でき模倣できる大人の存在、そして生治のリズムが大切だとした。この園ではこうした思想にもとづき、子どもたちが生活を送る。

 冬休み明けの1月11日朝、1階のクラスには15人が登園してきた。来た子どもから、赤、青、黄の3色の水彩絵の具で絵を描いた。輪郭のない絵で純粋に色を体験する。

 絵を描き終わった子は室内遊びへ。部屋にあるのは木や布など天然素材の道具だけ。「お化け屋敷やろう」。男の子たちは、ついたてで囲って布で覆い、暗い空間を作った。担任の松村麻依子さん(43)は人形作りをしながら見守る。

 「ライゲン」と呼ばれる遊びは、物語を話しながら体を動かす。日本の昔話「ねずみ浄土」をもとにしたライゲンは、松村さんが詞と振り付けを考えた。「おむすびころころすってんしゃん ぽ一つぼつ」。子どもたちの声が響いた。

 体づくりを重視し、午前中におやつの時間がある。曜日ごとに違うおかゆを食べる。この日は大麦とタマネギ、ニンジンのおかゆだった。

 外遊びから戻ると、手にオイルをつけてマッサージをし、明かりを消してろうそくをともす。お話の時間だ。松村さんがゆったりと「こびとと靴屋」のお話を始めると、子どもたちは聴き入った。ライゲンやお話は2~3週間、毎日同じものを繰り返す。「毎日同じことで子どもは安心し、美しい日本語の響きが体に入っていくんです」と松村さん。

 シュタイナー教育では幼児期は具体的な体験が重要だと考え、文字や数字を教えることはしない。

 お弁当の時間は、太陽や大地、神様に感謝するお祈りをしてから木のお弁当箱を開く。松村さんは「左手お仕事してくださいね」「お話はお口が空っぽになってから」と呼びかける。注意する時に「~はダメ」と禁止する言葉は使わない。

 NPO法人が運営する同園は、公的な補助金はなく、月謝は3万7000円。保育時間は原則としてお昼過ぎまでだ。松村さんともう一つのクラスの担任は「準備や保育に多くのエネルギーを要するので、長時間の保育は難しい」と話す。

 シュタイナー教育というと、「テレビを見てはいけない」など制約が多いと思い、息苦しく感じる保護者もいるようだ。一方、日本シュタイナー幼児教育協会代表の入間カイさん(47)は「シュタイナーが大切にしたのは親や教師の自発性と創造性。押しつけではなく、日本の現実の社会状況のなかで、親と教師が勇気づけられるようなシュタイナー教育を発信していきたい」と話す。

 (朝日、2011年01月17日。吉川一樹)

  感想

 浜松市立浜北図書館に「シュタイナーの思想と実践」という5巻から成るビデオがあります。栄光教育研究会とかいうところが出したようです。1992年ころ、NHKが衛星放送で、子安美知子さんを監修者として取材した90分番組を流しましたが、それの元になったものを1時間5本、合計5時間のビデオに編集したもののようです。

  関連項目

シュタイナー

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