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あげず(上げず)

2008年03月30日 | ア行
     あげず(上げず)

 1、(連語)。日と日の間を置かないで。(学研「国語大辞典」)

 2、用例

 01、手紙と贈り物とが3日にあげず私のところにとどくのです(宇野「蔵の中」)
   (学研より孫引き)

 02、キャバクラ~に、8年前から週に3日とあげず通いつめるようになった。
  (朝日、2008年03月29日。「愛の旅人」)

 3、感想

 問題と思ったのは2つあります。

 第1は、「3日にあげず」か「3日とあげず」か、です。つまり助詞は「に」か「と」
かということで、あるいは両方ありかもしれません。もう少し用例を集めてみましょう。


 第2は、元々これは事実上、頻度を表すことになっていると思いますから、02のように
「週に3日とあげず」と言うと、頻度表現が重複してしまって拙いのではないか、という
ことです。

 「週に」と言ったら、「週に3日は通いつめた」くらいでしょう。

 しかし、これも「週に3日は」と「通いつめた」が重複しています。「週に3日は通っ
た」か、ただ「通いつめた」で十分です。

 要するに、この文は重複が3重になっていて、あまり好い文とは言えないと思います。

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租税特別措置

2008年03月20日 | サ行
     租税特別措置

 特定の政策を後押しするために設けられた税制上の特例。多くは租税特別措置法で定められ、同法に基づくものは295件ある。

 ガソリン税の暫定税率上乗せや所得税の住宅ローン控除など分野は幅広い。

 企業向けでは期限つきの減税が中心。租特法1条では、特例を設け各期間について「当分の間」としているが実際は2~5年ごとに更新されるものが多い。

     問題点の説明

 特例として国税の減税を認める企業向け租税特別措置(租特)約60件のうち創設から20年以上たつものが、2007年04月時点で全体の半数強にのぼることがわかった。

 租特には「延長が繰り返され、特定業界の既得権になりやすい」との批判が出ている。

 租特法改正案は02月19日にも審議入りするが、民主党は租特の政策効果を検証する法案を準備中で、「税制の例外」のあり方が論議になりそうだ。

 財務省などによると、国税の企業向け租特は2007年度で61件。創設からの経過年数は50年以上が3件、40~49年は12件、30~39年は7件、20~29年は11件。20年以上たったものは計33件にのばる。

 最も古いのは「船舶の特別償却」だ。海運会社が、一定の機能を持つ貨物船についての減価償却費を上乗せし、課税所得を圧縮できる特例措置だ。日本がサンフランシスコ平和条約を結んだ1951年にできた。

 当時、敗戦で船や船員が不足したこともあり、少ない人手で動かせる「合理化船」の導入を後押しするため創設された。その後も「日本製品の輸出振興」「船の近代化」「環境への負荷低減」などと大義名分や対象を変え、続いてきた。2005年度は19隻に適用され約10億円の減税効果があった。

 特別償却は、設備の更新を促すための優遇税制で、ほかに医療機関や工場向けの措置も創設から長期間続いている。

 将来の負担に備えて積み立てておく準備金を課税所得から除外できる特例も目立つ。対象業界は保険や資源開発、電力、鉱業などさまざまだ。

 企業向け租特については、政府税制調査会が以前から「公平・中立・簡素という租税原則に反する」と整理・縮小を提言。

 政府・与党も見直しを進め、2000年度以降、件数は減っている。ただ、小泉政権下の2003年度に研究開発費の税額控除が拡充されたことで減税規模は膨らみ、2007年度で1兆1420億円に達する。

 財務省出身で税制に詳しい森信茂樹・中央大大学院教授は「予算案として毎年国会で審議される歳出に比べ、租特はいったん法律化されると監視が甘くなり、既得権化しやすい。定期的に政策効果を検証できる仕組みが望まれる」と話す。


  創設からの経過期間が長い企業向け租特一覧表

 創設   項目                  主な対象業界
1951   船舶の特別償却               海運業
1953 災害に備えて積み立てる異常危険準備金の損金算入 保険業
1957   植林費の損金算入の特例           林業
1961 原子力保険・地震保険の異常危険準備金の損金算入 保険業
   鉱工業技術研究組合等の所得計算の特例      製造業など
1964   漁業協同組合等の留保所得の特別控除     漁業など
     海外投資等損失準備金の損金算入       資源開発業
1965   新鉱床探鉱費の特別控除           資源開発業
     探鉱準備金の損金算入            資源開発業_
     倉庫用建物等の割り増し償却         倉庫・物流業
1966   中小企業等の貸し倒れ引当金の特例      中小企業

  (朝日、2008年02月17日)
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石堂 清倫

2008年03月18日 | ア行
     石堂 清倫

   失敗から学ぶ明噺な思索力
     評論家・石堂清倫氏を悼む(鶴見俊輔)

 石堂清倫(きよとも)氏がなくなられた。私は一度もお会いしたことがないが、近年、その著作を読んで、すがすがしい風にさらされた。私より二十歳ちかく年長。これから学びつづけてゆきたい人である。

 日本には、日記と私小説の伝統があり、その集積は、みずからもあやまちにまなぶ道をつくる。個人として、自分のあやまちにまなびつづける文人、学者、商人はこれまでにいた。しかし、集団として、民族として、国家としてあやまちにまなびつづける道はつくられていない。

 石堂清倫(私にとっては歴史上の人物なのでこう書く)は、学生運動家、編集者、研究者、政治運動家としての百歳近い生涯を、明晰な思索をもってつらぬき、最後の著作として、『二〇世紀の意味』をのこして、ゆかれた。九十七歳の著作。なくなる一ヵ月半前の発行だった。

 自分の失敗をみとめ、その失敗からまなぶことができるかどうかが、思想の試金石である。その力が、石堂清倫の著作に、うしなわれない若さをあたえた。『わが異端の昭和史』正続、『中野重治と社会主義』は、社会主義運動の内部にいたものとして、その時、その時の失敗を記録し、分析した。その分析は、当然に国境をこえて、日本の運動に命令をあたえたソヴイエトロシア政府の思想におよび、世界さまざまの場所にうちたてられた在権マルクス主義の批判におよぶ。

 このようにひろく同時代を見わたすまなざしは、どこで養われたのか。

 この人は、四高、東大英文科出身であり、同時代人として夏目漱石の影響を受けている。漱石をとおって入ってきたイギリスの気風で、権力を手中にしたマルクス主義の中に見いだすことのできない特色は、権力が腐敗することに対する感度である。

 「すべての権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」というアクトンの警句に煮つめられたこの知恵は、ひろく、イギリス人の中に、高い地位にのぼるものをふくめて共有され、イギリス人の政治感覚として、のこっている。

 二十世紀のさまざまな国の権力を掌握したマルクス主義理論家の著作には、この考え方は共有されることがなかった。

 一九〇五年に、日本は対露戦争を負けることなく終えた。このあと百年近く、先進国としての日本という幻想の中に、政府も国民も住みつづける。

 夏目漱石は、その幻想の外にいて著作をつづけたまれな日本人の一人である。その気風は、石堂清倫の中に流れこみ、日本の全体主義とソヴイエトの全体主義の激突の中におかれた一九三〇年代の彼の思索を養いつづけた。

 1945年敗戦の混乱の中で、満州(現・中国東北部)にのこされた日本の知識人が、ソヴィエトについたり、それに反発したり右往左往する状態を見すえる力を彼はもった。その時その場だけでなく二十世紀の終わりまで、国家権力に弱い日本の知識人のあいだにあって、明晰に現代を見渡すまなざしを石堂漕倫は保ちつづけた。

  (朝日、2001年09月05日)
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ある

2008年03月09日 | ア行
     ある

 物は「ある」で、人は「いる」と言うものだ、と言われてきたと思います。

 01、その本はあそこの本棚にある。
 02、その植物園には珍しいバラがある。
 03、あの動物園にはコアラがいる。
 04、彼は今、事務所にいる。

 こう見てくると、植物までは「ある」で、動物以降が「いる」のようです。

 しかし、このところ、何となく、人についても「ある」という言葉を使う例が
出てきているように思います。

 意識したものとしては2例ですが(最初の例は記録しませんでした)、今後、
集めてみようと思います。もちろんきちんとした書き手のものに限ります。

 人について「ある」を使った用例

 01、昔々ひとりの王様がありました。
 (関口存男「冠詞」第2巻 164頁。執筆は1956年頃)
02、この寺には母の懺悔を聞くフラア・マルチノという僧があった
  (安野光雅「絵本即興詩人」講談社、06頁。2002年刊)
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会戦

2008年03月04日 | カ行
     会戦

 ほぼ予定さた戦場において、両軍それぞれができるだけ多くの人数と火力を集中し、ほぼ想像のつく期日を期して大衝突を行い、それによって戦いそのものの運命を決する戦争形式のこと。
 (司馬遼太郎「坂の上の雲」4)
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