拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

テオ・アダムのバリトン独唱(コンヴィチュニーの第九)

2017-02-25 11:35:07 | 音楽
初めて小遣いでレコードを買ったのは小学生のときで第九だった。当時LP1枚は通常盤で2000円、廉価盤は1000円で財布の中には900円しかなかったがきっと買えるだろうと根拠のない確信をもって町のレコード店へ。すると、あったあった、900円の第九が。しかも二種類。一つはベーム&ウィーン響(シンフォニカ)。もう一つがコンヴィチュニー&ゲヴァントハウス管。両方ともグロリアシリーズという廉価版シリーズで、ベートーヴェンの交響曲は1番から9番までコンヴィチュニーのがラインアップされていたが、第九だけはベームのもあって二種類だった。で、買ったのはベームの方。当時、ベームなんて名前は知る由もなかったが、ベーム盤のジャケットが見開きで立派だったので(その解説を書いてたのが某官能小説家とよく似た名前の評論家で、ベームのレコードなのにカラヤンの悪口ばかり書いてあった)。そのレコードはすり切れるほど聴いて(実際、すり切れて、数十年後に同じLPを買い直した。ジャケットはシンプルなものに変わっていた)、その演奏は、しばらく私にとっての第九の定盤となった(最近聴くとあれっと思うような箇所がある)。さて、その「最初のお買い物」から数十年経った今、急にそのとき選ばなかったコンヴィチュニー盤が聴きたくなった。もしかしたら私はそっちで「育った」かもしれないのだ。NAXOSで検索。おおおおっ!(ふろいんで)バリトン独唱がテオ・アダムだ!当時の私が今の私だったら絶対こっちを買ってた。で、聴く。いい!正攻法の横綱相撲。元、フルトヴェングラーの元でヴィオラを弾いていた人らしく、ところどころ大見得を切るような箇所があるが、ぐだぐだにはならず、どこまでもどっしりしている。そして、お目当てのバリトン独唱。弦も加わった二度目のファンファーレが「ジャン」と終わった後、ながーい沈黙(これまで聴いた中でいちにを争う沈黙の長さ。カラヤンと正反対)。で、いよいよ「O!Freunde!」。まさにテオ・アダムの声だ。しびれる。フリッチャイ盤のフィッシャー・ディースカウと双璧。

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