ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

「ノーワーク・ノーペイ」=「ノーペイ・ノーワーク」

2018-06-13 19:17:07 | 労務情報


 会社は、労働者から労務の提供を受け、その対価として賃金を支払う。逆に、労務の提供を受けていなければ、原則として(年次有給休暇・休業手当など法令で定められているものや就業規則等で賃金を支払う旨の特約を設けているものを除き)、賃金は発生しない。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」と言う。
 端的な例を挙げると、従業員が遅刻した場合に、その時間数の分の賃金を支払わないのは、遅刻した理由がどうであれ(体調不良はもとより、肉親の危篤であろうと、公共交通機関の遅延であろうと)、特約の無い限り有効だ。育児休業や子の看護休暇を取得する場合でも(会社は拒否できないが)、あるいは法定の健康診断を受診する場合でも(その費用は会社が負担すべきとされているが)、就労しなかった分の賃金まで支払わなければならないわけではない。さらに加えて言うなら、業務上の傷病により就労できない場合ですら(労働基準法は6割以上の「休業補償」を義務づけているものの)、「賃金」としては支払う必要が無い。

 しかし、このことは、その裏返しである「ノーペイ・ノーワーク」もまた真であることに通じる。すなわち、賃金を支払わずに労務を提供させることはできないのだ。
 これに関しては、賃金不払い残業(「サービス残業」とも呼ばれる)は論外として、例えば「朝10分間遅刻した従業員の賃金を30分間分差し引く」というようなことをしていないだろうか。あるいは、例えば「不祥事を起こした従業員に自宅待機を命じて、その間の賃金を支払わない」といったことを考え無しにしてはいないだろうか。
 これらについても、就労した分の賃金は支払わなければならないことになる。ちなみに、自宅待機のケースでも、従業員は就労している(「自宅で待機せよ」との業務命令に従っている)のだから、そこに賃金が発生する理屈だ(名古屋地判H3.7.22等)。

 こうした場合に賃金を控除できるのは、懲戒処分として「減給」や「無給の出勤停止」を科す場合に限られる。そのためには、就業規則等にその旨を(もちろん労働基準法が認める範囲内で)定めておかなければならない。仮に、従業員の過失により会社が損害を被ったというケースであっても、それは民事上の損害賠償を求めるべき話であって(裁判所がそれを是認するかどうかは別にして)、その分を只働きさせることにはなりえないのだ。

 結論として、不就労分に賃金を支払うのも、就労分の賃金を支払わないのも、法令に特段の定めがある場合または就業規則等に特約がある場合に限られ、それ以外は、原則どおり「ノーワーク・ノーペイ」であり、また「ノーペイ・ノーワーク」でもあることを忘れてはならない。


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