ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

タイムカード等は3年間の保存義務

2016-03-23 15:09:02 | 労務情報

 年度末を迎え、書類の整理・処分を予定している会社もあると思うが、「タイムカード」の廃棄について、若干ご注意申し上げたい。

 毎月の給与計算が終わった時点で言わば“使用済み”になってしまうタイムカード。しかし、労働基準法第109条に言う「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に該当するので、3年間は保存しておかなければならない。
 このことは紙の「タイムカード」や「出勤簿」だけでなく、例えば各人がPC上で会社に報告した「出退勤データ」についても同じであって、給与計算のために集計した後も、3年間は元データを保管する必要がある。また、盲点かも知れないが、「残業命令書」や「出張報告書」や「休暇届」等も、「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に該当することを忘れてはならない。

 なお、これらはスキャナーで「画像データ」として取り込んで保存しておくこと(e-文書法第3条「電磁的記録による保存」)は可能とされる。
 しかし、「給与計算のための集計データ」(編集の手を加えたもの)は、原本に代わるものとは認められないので、この点は誤解の無いようにしておかれたい。

 ちなみに、労働基準監督署の臨検に際してこれらの資料が提出できなければ、最高30万円の罰金が課せられる可能性があるうえ、たまたま違法な時間外労働が発見された場合などには意図的に資料を隠匿したものとして悪質性すら問われかねない。
 最低限、法定の保存期限は守っておくべきだろう。


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賭博行為に手を染めた従業員を懲戒できるか?

2016-03-13 17:09:03 | 労務情報

 野球選手が賭博行為で所属球団から契約解除されたり、鉄道会社における賭博行為が発覚したりと、ここのところ、賭博に関するニュースが取り沙汰されているが、一般の会社で、賭博行為に手を染めた従業員がいた場合に、それを懲戒することはできるのだろうか。

 これに関しては、その賭博行為が「職場外」で行われたのか、「職場内」で行われたのか、によって、若干扱いが異なってくる。

 まず、「職場外」で行われたものについては、原則として、懲戒の対象とすることができないものとされる。会社が懲戒権(従業員を懲戒できる経営上の権利)を有するのは職場秩序を維持する目的があるからであって、職場外の私的行為について会社は関知するべきでないからだ。
 とは言え、会社のレピュテーション面での悪影響が生じた場合等には、懲戒できるケースもある。
 職場外の違法行為を懲戒の対象にできるケースについて裁判所は、「当該行為の性質・情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等、諸般の事情から綜合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合」(最二判S49.3.15)という判断基準を示している。
 それこそ「野球選手の野球賭博」くらいの悪質さがあった場合にこれに該当すると考えられよう。

 一方、「職場内」で行われたものについては、懲戒の対象とすることができる。事実、職場秩序を乱したのだから、「懲戒できる」と言うよりも、「懲戒するべき」とすら言えよう。もちろん、就業規則等に「違法行為は懲戒の対象とする」などの規定を設け、また、憶測でなく事実に基づいて判断する必要はあるが。
 しかし、これが、単なる「懲戒」にとどまらず「懲戒解雇」となると、簡単な話ではない。従業員を解雇する場合は、それが懲戒解雇であろうとも、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効」(労働契約法第16条)とされているからだ。
 会社としては「職場秩序を維持するため」と一応の合理性を主張するかも知れないが、これを裁判所が認めるかどうかは微妙であるし、片や相当性の判断においても、「1回の賭博行為をもって解雇」はさすがに「厳しすぎ」との誹りは免れまい。「会社から数度にわたり注意指導を受けたにも関わらず悔悛の情が見られない」といった事情でもない限りは、解雇(懲戒解雇であれ普通解雇であれ)に処するのは難しいと考えておくべきだろう。
 それよりも、職場内で賭博行為が行われていたとすれば、会社の責任も問われかねない。従業員の懲戒も必要かも知れないが、会社としては、コンプライアンスの徹底と職場風紀の改善をまず先に考えるべきだろう。


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解雇でないのに整理解雇の法理で判断?

2016-03-03 20:59:46 | 労務情報

 経営上の事情により従業員を解雇せざるを得ない場合、その当否を判断するために「整理解雇の4要素」を用いることは、判例的にもほぼ固まっている。
 これは、(1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務の履行、(3)被解雇者選定の合理性、(4)解雇手続の妥当性、の4項目を言い、「整理解雇の4要件」とも呼ばれるが、一つでも“要件”が欠けると認められないというものではなく、これらを総合判断の“要素”として用いることから、近年では「整理解雇の4要素」と呼ばれることが多くなっている。

 ところで、この4要素は、必ずしも整理解雇の場面だけに限らず、他にもこの法理を用いて当否を判断するケースが見られる。

 例えば、内定取り消し。
 そもそも「採用内定」とは、解約権を留保された雇用契約であるところ、会社が一方的に解約権を行使することの合理性や相当性は、「整理解雇の4要素」により判断されるべき(東京地判H9.10.31)とされる。

 また、労働条件の不利益変更にあたっても、4要素が用いられることがある。
 過去には、経営上必要な労働条件変更による新たな雇用契約の締結に応じなかった従業員の解雇を、「変更解約告知」(労働条件を変更するための解約)という新たな類型のもと、(1)労働条件の変更が必要不可欠、(2)その必要性が労働者の受ける不利益を上回る、(3)新契約締結の申込みの必要性が解雇を正当化するに足りるやむを得ないものである、(4)解雇回避努力が十分に尽くされている、という基準を満たす場合に認める裁判例(東京地決H7.4.13)も出されたが、この1例を除き、他の類似事案(東京地決H10.1.7、大阪地判H10.8.31等)においては「整理解雇の4要素」によって労働条件変更の当否を判断する傾向が見られる。
 労働条件の不利益変更は、いわば「雇用を継続する」ことを意味するのに、ここで「整理解雇の4要素」を持ち出すのは、矛盾するように感じられるかも知れない。しかし、労働者がこれに応じなかった場合には解雇する(すなわち労働者にとっては「低下後の労働条件を受け容れる」か「解雇される」かの二者択一になる)ことから、その前提となる「解雇」の合理性・相当性を検討しなければならないのだ。

 「内定取り消し」や「労働条件の不利益変更」は、無論「解雇」ではないのだが、その当否は、整理解雇法理により判断されるべきものであることを理解しておきたい。


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