ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

従業員を解雇する前に「退職勧奨」を考えたい

2020-10-23 08:59:08 | 労務情報

 新型コロナウイルス感染症(というより感染拡大防止策)の影響で、経営に深刻なダメージを受けている会社は多いだろう。そして、その中には、従業員の減員を考えるべき状況にまで追い込まれている会社もあることと思う。
 しかし、そういう会社であっても、少なくとも「雇用調整助成金」の支給要件が緩和されている令和2年12月31日までは、助成金を受給しながら雇用を維持するのが、正しい経営者の姿と言えるだろう。

 さて、この事態が収束しても経営状況が元に戻らない場合には、その時こそ、従業員をどう減員するかを検討しなければならない。
 とは言っても、「整理解雇」は最後の手段であるので、その前に、諸経費削減(役員報酬の減額を含む)、従業員の配置転換(他社への出向を含む)、希望退職の募集等、各種の解雇回避措置を講じる必要がある。

 加えて、これらと併用して「退職勧奨」を行うことも考えたい。
 「退職勧奨」は、「解雇」とは異なり、解雇予告手当の支払い(労働基準法第20条)は不要であるし、労災休業中の者や産休中の者(いずれも労働基準法第19条で解雇が制限されている)にすることも許される。
 また、「職務遂行能力が低い者」など解雇の事由にはあてはまらない者を対象者としても、法的に問題は無い。
 そして、何より、本人が退職に同意した以上、後のトラブルに発展しにくくなるというのが最大のメリットと言える。

 しかし、退職勧奨にも次のようなデメリットがある。
 まず、雇用保険の離職事由は「会社都合」として扱われることだ。上述した雇用調整助成金も会社都合離職があった場合は助成率が下がる仕組みとなっているし、助成金によっては一定期間中に会社都合離職があると受給要件を満たさないものもあるので、要注意だ。
 また、懲戒解雇すべき事由がある場合には、退職勧奨によって合意退職させると「懲戒」の意味合いが薄れてしまう。本人に非があるなら、その責任は負わせるべきだ。
 さらに、退職勧奨自体がトラブルになるケースもある。 労働者を騙して“自己都合”での退職願を書かせたり(詐欺)、応諾を無理強いしたり(強要)するのは論外としても、ハラスメントのある職場であったり、労働条件の不利益変更と同時に提案したりすると、退職勧奨に応じたのが本心ではないとみなされるリスクがある。

 退職勧奨は、その字が示すとおり“退職の勧奨”であるのでそれを会社が強要してはならないことを肝に銘じたうえで、上手に活用するべきだろう。


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未使用有休の買い上げは違法

2020-10-13 08:59:08 | 労務情報

 労働基準法第39条に定める年次有給休暇(以下、本稿では「有休」と略す)は、本来はその年度内に取得することが求められるものであるが、現実的には取得しきれないことも多いだろう。
 そうした場合に、「未使用の有休を買い上げてほしい」と申し出てくる従業員がいるかも知れないが、有休買い上げは“違法”なので、認められない。

 一見、労使双方が同意すれば誰も困ることではないので問題は無さそうにも思えるが、「有休を買い上げる」ということは、「有休を取得しない従業員に一定の対価を支払う」ということに等しい…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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モラールからモチベーションへ、ロイヤルティからエンゲージメントへ。

2020-10-03 10:59:11 | 労務情報

 会社は、従業員には、やる気をもって仕事をしてもらいたいし、会社への帰属意識も高めてもらいたい。 それによって、生産性が向上し、また、事故も少なくなるからだ。
 この願い自体は、昔(昭和)も今(令和)も変わらないだろう。 しかし、その意味や手段は異なってきている。

 まず、従業員の“やる気”に関しては、昔は「モラール」(morale;士気)と呼ばれることが多かった。
 ちなみに、「モラール」と「モラル」(moral;道徳・倫理)とは混同しやすい(語源は同じとも言われる)が、日本の労務管理では両者を区別して用いている。

 さて、この「モラール」は、今では、リーダーシップ発現方法の一つとして示される例は残っているものの、企業全体の労務管理においては「モチベーション」(motivation;動機付け)という用語に取って代わられている。
 これは、生産性向上のカギを「強いリーダーシップ」から「個々の力の結集」にそのウエイトを移してきたことの表れと言える。

 また、会社への帰属意識に関しては、昔は「ロイヤルティ」(loyalty;忠誠心)という用語で示されることが多かったが、今は「エンゲージメント」(engagement;愛着を持っている状態)を重要視するようになってきている。
 エンゲージメントは、本来はマーケティング用語で「ユーザーによる自社製品の愛顧」という意で使われることが多いが、これを労務管理で用いた場合、従業員に「会社を好きになってもらいたい」という意図を含む。 日本語の「愛社精神」とは少しニュアンスが異なる概念だ。
 これも、会社への帰属意識を、「集団としての従業員」というより、「個々の従業員が会社との絆をそれぞれ感じている」ことを目指すようになった、と言える。

 昭和時代を知っている世代には、今の若者は「やる気が無い」とか「会社への帰属意識が薄い」と映るかも知れない。 しかし、そうではなくて、従業員が会社に求めるもの(逆に言うと、会社が従業員に提供するべきもの)の質が変容してきたことを理解しなければならないだろう。


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