ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

実は怖い最低賃金法違反。事業廃止に追い込まれる事態も。

2017-09-13 16:59:03 | 労務情報

 今年10月(大阪府のみ9月30日)から改定される最低賃金は、「生活保護水準との乖離解消」を目的の一つとして、すべての都道府県で従前よりも1時間あたり22円以上の大幅アップとなることが公表された。
 これを受けて、多くの(常識的な)会社は自社の賃金を見直し、必要があれば臨時昇給等の措置を考えているに違いない。

 ただ、賃金の見直しにより最低賃金をクリアしたようでも、よくよく見ると、依然として最低賃金を下回っている事例が散見されるので、要注意だ。
 例えば、清算期間を1か月とするフレックスタイム制を導入している場合に、すべての月において所定労働時間を「171時間25分(30日分)」と設定して賃金を計算していると、大の月(暦日数31日)で不足が生じてしまったり、あるいは、「定額残業代」(「固定残業代」とも呼ばれる)を支払っている場合に、その前提とした見込み残業時間(1か月あたり30時間としておく例が多い)を実際の残業時間が上回ってしまったりして、割り戻した単価が最低賃金未満になってしまうということが起こりうる。
 このように最低賃金額を下回る賃金は、たとえ労使双方がその賃金額に合意していたとしても無効となり、会社は最低賃金額以上の賃金を改めて支払わなければならない(最低賃金法第4条)。そして、最低賃金法に違反した会社には、一部の例外を除き、50万円以下の罰金が科せられることとされている(同法第40条)。

 3年ほど前には、「最低賃金との差額については既に退職した者には支払わない」と主張し(もちろんこれは認識違いであり、退職者であっても在職していた期間については最低賃金の適用を受ける)、労働基準監督署による不払賃金を支払うよう求める行政指導に従わなかった都内の企業経営者が逮捕されるという事件が発生した。この経営者が支払いを拒否していた金額は、わずか97,940円(1人の賃金17,250円、もう1人の賃金80,690円)だったという。
 通常、最低賃金法に違反したとしても、是正勧告を受けるか、悪質なケースでは在宅のまま書類送検されることがあるくらいで、経営者が逮捕されて身柄を拘束されるケースは非常に稀とはいえ(この事案では、当該経営者が労働基準監督署による再三の出頭要求に応じず、罪証隠滅の恐れがあったことから、逮捕に至ったという)、こんな例を見聞きすると、労働基準監督官が逮捕権を有し、それゆえ、その勧告や指導には強制力があることを改めて思い起こさせる。

 また、さらに経営に支障の出そうな問題として、最低賃金法に違反して罰金以上の刑を受けた場合には、助成金(例えば、特定求職者雇用開発助成金、キャリアアップ助成金、職場意識改善助成金、介護事業者の介護職員処遇改善加算など)を受給できなくなったり、事業に必要な免許(例えば、労働者派遣業の許可、有料職業紹介業の許可、在宅就業支援団体の登録など)が取り消されることもある。
 助成金が受給できないのは諦めるしかない(それでも痛い)としても、事業に必要な免許を取り消されたら、事業を継続していくこと自体、困難になるかも知れない。実際、「最低賃金法違反により罰金刑を受けた会社が労働者派遣事業の許可を取り消された」というニュースは、枚挙にいとまが無い。

 「最低賃金に満たない額は後から払えば良い」という話では終わらないのだ。
 最低賃金法違反は“刑法犯”であることを認識し、コンプライアンスの徹底に努めたい。


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提出忘れは無い? “夫”の「養育特例」

2017-09-03 11:59:43 | 労務情報


 育児短時間制度の利用等によって標準報酬月額が低下した場合に、それが将来の年金受給に際して当人の不利にならないよう、年金額の計算においては「低下する前の標準報酬月額」を用いることとする措置が設けられている。
 この措置は「養育期間標準報酬月額特例」と呼ばれ、「3歳未満の子供を養育し、かつ、標準報酬月額が養育前よりも低下した場合」に対象となるものだ。

 ここで注意しておきたいのは、この特例が適用されるのは「“標準報酬月額”が養育前よりも低下した場合」という点だ。
 つまり、ただ「残業が減って収入が少なくなった」というだけでは「標準報酬月額の低下」に該当しないため、次の定時決定(算定基礎届)または随時改訂(月額変更届)により標準報酬月額が変更されるまでは対象にならない。

 また、意外な盲点であるが、この特例は、妻が専業主婦である夫も(夫婦とも被保険者であれば夫婦揃って)適用対象となりうる。
 それともう一つ、これも盲点と言えそうだが、必ずしも育児短時間制度を利用した場合だけに限らず、例えば転居に伴い通勤手当の額が変更され、そのため標準報酬月額が低下したような場合も対象となることにも要注意だ。

 ところで、この特例措置を受けるためには、事業主経由で「特例申出書」を提出しておかなければならない。会社は、該当する従業員から申し出が有ったら、管轄年金事務所にこれを届け出る義務を負う。
 もし担当者がこの制度を知らなかったために当人が将来受け取れる年金の額が少なくなってしまったら、大問題となるだろう。訴訟沙汰に発展したトラブル事例はまだ無いようだが、会社としての責任を問われる事態になる話でもあるので、担当者の認識不足の無いようにしておきたい。


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従業員の他社役員就任を是認できるか

2017-08-23 16:19:01 | 労務情報

 自社の従業員が他社の役員に就任していることがある。無論これが会社が命じたものであれば(後述の税務処理・社会保険手続きは必要であるものの)特段の問題は無いが、会社の業務とは関係ない私的なものであった場合、会社がそれを認めて良いのかどうかは悩ましい。

 まず、他社の役員に就任したときにその旨を会社に届けさせることは、社内規程に必ず定めておくべきだ。
 それによって源泉所得税の課税方法が変わる可能性があるし、当該他社でも社会保険に加入する場合は「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」(複写用紙)の提出と保険料按分の手続きを要することになるからだ。

 では、従業員が他社の役員に就任した旨の届け出を会社が受け取った場合に、それを認めないというのは許されるのだろうか。もちろん会社が「あちら(他社側)の役員を退任せよ」と強制することはできないので、自社側でそれを理由に当該従業員を解雇することが可能かどうか、という議論になる。
 ちなみに、従業員でなく自社の役員である場合は、他社役員の兼任を理由に解任するもしないも株主の総意(株主総会の決議)によるので、これは従業員に限っての問題と言える。

 結論としては、「他社役員への就任によって会社の業務に支障が出るかどうか」が判断の分かれ目となる。
 それが競合他社であった場合はもとより、十全な労務の提供ができない、業務命令(配転命令を含む)に従わない、会社の信用を失墜させる等の行為が見られたなら、解雇も視野に入れて処分しなければならないが、そうでない限りは、他社役員就任の事実だけをもって懲戒その他の不利益処分を科すことはできないと考えるべきだ。
 むしろ今日的には、私生活を含めた従業員の多様性を会社は受け容れるべきとする「ダイバーシティ」の理念を鑑みれば、会社への届け出を徹底することを前提に、条件付きで他社役員への就任を是認していくのが賢明と言えるかも知れない。

 今後、マイナンバー制度が本格稼働するに連れ、こういったケースが明るみに出てくる可能性が高いと思われる。会社としては、感情的にならずに、会社にとってのメリットとデメリットを見極めて、冷静に判断したい。


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断続的業務には最低賃金の減額特例も

2017-08-13 12:59:45 | 労務情報

 例えば「顧客からの修理を受け付ける部門」のように、通常は業務閑散だが突発事態に備えて待機していなければならない仕事もある。こういった従業員については、「断続的労働に従事する者」として労働基準監督署の許可を受ければ、労働時間に関して労働基準法の適用から除外されることになっている(労働基準法第41条)。

 この労働時間に関する適用除外が許可されるというのは、断続的労働従事者には、法定労働時間(原則として1日8時間または週40時間)を超えて労働した場合でも“割増賃金”を支払う必要が無いことを意味する。しかし、割増分が不要になると言っても、労働時間数に相当する“通常の賃金”は支払わなければならない。
 この点、誤解されている向きも多いので要注意だ。

 また、労働時間に関する労働基準法の適用除外が許可されても、最低賃金法については適用除外されないことも覚えておきたい。
 以前は最低賃金法に関しても「適用除外」の申請が可能であったが、現在は、適用除外ではなく「減額の特例」を申請する仕組みが設けられている(最低賃金法第7条)。具体的には、断続的労働を「実働時間」と「手待ち時間」とに分解し、そのうち「手待ち時間」の部分について通常の時間単価の4割まで減額できる(最低賃金法施行規則第5条)。
 なお、この減額特例申請の提出先は都道府県労働局長であるが、所轄労働基準監督署を経由しての提出になるので、実務的には、労働基準法の適用除外申請と同時に手続きするのが良いだろう。


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内定者インターンシップは無給で良いのか

2017-08-03 16:02:37 | 労務情報


 そろそろ来春卒業予定者の採用内定(「内々定」と言うべきか?)を出している会社もあるだろう。
 ところで、内定学生に対して、現場実習等をさせる場合(※)、参加した学生に賃金を支払う義務はあるのだろうか。

※これを「内定者インターンシップ」と称する例もある。
 採用活動(就職活動)における「インターンシップ」という用語には、
  ① (主に学校主催の)単なる職業体験
  ② 企業が優秀な学生を見極めるための採用活動の一部
  ③ 内定者に対して入社前教育の一環として実施するもの
  ④ 採用後の見習い期間
 といったさまざまな意味があるが、本稿では③の意味として「内定者インターンシップ」と呼ぶこととする。

 さて、内定者インターンシップを有給とすべきか無給でよいかは、「会社の指揮命令下にあるか否か」という基準で判断される。すなわち、会社の指揮命令下にあるなら賃金支払いが必要となり、会社の指揮命令下になければ賃金は発生しないことになる。

 具体的に見れば、まず、参加を強制され、欠席・遅刻・早退に対し何らかのペナルティーが科せられるなら、「指揮命令下にある」と言えるだろう。
 そして、実作業に携わったなら、それはもう、労務の提供に他ならない。会社としては「まともな仕事はやっていない」と言いたいかも知れないが、業務に必要な知識・能力を習得するのも労働であるから、そこに賃金は発生する。
 また、「現場での注意事項を入社前に説明しておく」というケースも多く見られるが、これも、その“説明”が労働安全衛生法第59条の「雇入れ時の安全衛生教育」に該当するなら、労働時間とするべきとされる(昭47.9.18基発602号)ので、要注意だ。

 逆に、参加が任意であって、見学や体験程度のもの、あるいは親睦を目的とするものであれば、「指揮命令下にない」ということになり、賃金支払いの義務は生じない。
 ただ、そういったものを「内定者インターンシップ」とは呼べるのかは甚だ疑問ではあるが。

 内定者の入社前教育に関しては、会社ごとに方針が異なって然るべきだ。
 しかし、会社の指揮命令下に置く以上は、内定者と言えども「労働者」であって、最低賃金以上の賃金(当該内定に係る雇用契約は未発効であるので初任給額に基いて算出した賃金でなくてもよい)を支払わなければならない。また、労災の対象になることも、覚えておきたい。


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失業給付の増額が助成金にも影響

2017-07-23 21:59:46 | 労務情報


 平成29年8月1日から雇用保険の基本手当日額が改定される。これは、雇用保険法の規定に基づき、「毎月勤労統計」の平均定期給与額の上昇又は低下した比率に応じて、毎年自動的に変更されるものだ。
 具体的に「45歳以上60歳未満」の基本手当日額で見てみると、現行では「(最低)1832円~(最高)7775円」であるものが、変更後は「(最低)1976円~(最高)8205円」に増額される。

【参考】厚生労働省サイト > 雇用保険の基本手当日額の変更
 ↓
こちら(新しいタグまたはウインドウが開きます)

 このことは、失業者ばかりでなく、実は、雇用に関する助成金を受けている会社にも影響する話だ。
 例えば「雇用調整助成金(※)」は、会社が休業した場合に休業手当の一部を助成するものだが、その支給額は、1日あたり「基本手当日額の最高額」を上限としている。したがって、8月1日以降の申請分については、助成金の支給額も増額される可能性がある。
 ※かつて中小企業向けには「中小企業緊急雇用安定助成金」があったが、現行制度では「雇用調整助成金」に統合されている。

 ほんの数日待てば助成金の受給額が増えるなら、申請のタイミングを調整することを考えても良いだろう。

 なお、このサイトでも何度か書いているように、助成金制度は上手に利用するべきものであって、あてにし過ぎてはならないので、ご注意あれ。


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社内恋愛を禁じ、あるいはそれをもって懲戒することは可能か

2017-07-13 15:59:58 | 労務情報


 従業員同士の恋愛に頭を悩ませている経営者もいることだろう。
 従業員間の恋愛関係が業務にプラスに働くケースも無いではないが、周囲の目をはばからずにいちゃついたり、当人同士の感情を業務に持ち込んだり、何かと業務に支障の出るケースの方が目立つからだ。

 しかし、だからと言って、「社内恋愛は禁止」などと就業規則に定めるのは、“愚策”の部類に入るだろう。
 なるほど、就業規則は、その内容も含め会社が一方的に制定することができるものには違いない(従業員の意見聴取にあたり反対意見が出されたとしても就業規則の成立には影響しない)が、現実にその規定を運用するにあたっては、そもそも「社内恋愛」を定義することからして難しく、まして、それを理由に懲戒を科すのは公序良俗違反として無効となる可能性が高いからだ。加えて、従業員間に、人間の自然な感情に会社が口出しすることへの是非論やそれをきっかけとする会社への不満が湧き出してしまうおそれすらある。
 これが実際に、職場の風紀を乱したり、会社に有形無形の損害を与えたりしたなら、社内恋愛とは関係なく、その事実に対する責任を問うべきではある。それが就業規則の懲戒事由に該当するなら、それを適用して粛々と懲戒処分を科せば良い。無論、就業規則が適正に制定され、その内容が従業員に周知されていることが前提の話ではあるが。

 さて、では、それが不倫関係であったらどうだろうか。
 不倫すなわち配偶者がありながら他の異性と交際することは、社会的には非難されるべき行為であるとは言え、私的行為に他ならない。そのため、裁判所は、就業規則に違反しない限り、会社がこれに対する懲戒を科すことはできないとしている(旭川地判H1.12.27、類似:東京地判S45.4.13等)
 とは言うものの、特に不倫関係の場合は、社内外で悪い評判が立ちやすく、関係者から苦情が入ることもありがちなので、そうした時こそ、就業規則に則って厳正に処分すれば良い。ただし、その場合でも、“懲戒解雇”となると、行為と処分とのバランスにより、その妥当性について裁判所の判断もケースバイケースで分かれている(肯定:東京高判S41.7.30、否定:岡山地判S41.9.26等)ので、要注意だ。

 なお、通常の恋愛関係であれ不倫関係であれ、目に余るような行為があれば、上司や同僚がインフォーマルに、節度を保つようたしなめるのが、最良の対処法であろう。
 もっとも、それが容易でないからこそ、頭を悩ましておられたのかも知れないが。


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その「出向」は「違法派遣」に該当しないか?

2017-07-03 22:50:14 | 労務情報


 従業員を自社に籍を置いたまま他社での業務に従事させるには、「在籍出向」(以下、本稿では単に「出向」という)か「労働者派遣」(以下、単に「派遣」という)のいずれかによることになろう。
 このうち「出向」は、「派遣」と異なり労働局の許可を受けなくても可能(※)であるうえ、期間の制限(派遣は原則として最長3年)も無いので、出向元にとっても出向先にとっても使いやすい制度と言えるが、ともすると、「違法派遣」として労働局の指導を受け、刑事告発されるケースまであるので、両者の違いを正しく理解しておく必要がある。
※自社で雇用する従業員を他社に派遣する「特定労働者派遣事業」(労働局への届出のみで可)の制度は平成27年の法改正で廃止された(当面は既得権保護措置あり)ので、ここでは考えない。

 そもそも出向は、経営や技術の指導、職業能力の開発、人事交流等を目的として、多くの場合は同一の企業グループ内で行われている。もちろんグループ外企業へ出向させられないわけではないし、逆にグループ内企業への出向が必ずしも適正なものとも言いきれないが、少なくとも、「業」として行われていないことが要件だ。
 業として行われているかどうかの判断材料の一つに、「労働者に係る費用の負担先」が挙げられる。出向者の賃金支払いや社会保険の加入は、通常は出向先で行われるのに対し、派遣では、これらは派遣元の負担となる。まれに、「片道切符ではない」ことを出向者に意識させる等の目的で、これらを出向元が一旦負担したうえで掛かった費用の全部または一部を出向先に請求する例も見られるが、その請求額が実費を上回っている(出向元がそれで儲けてしまう)と、業として行われている(=派遣)と見られる可能性があるので、要注意だ。

 また、出向者には出向先の就業規則が適用されることも、気を付けるべきポイントだ。すなわち、労働時間も、懲戒に関する事項も、出向先のルールに従わなければならない。ついでに言うと、時間外労働も出向先の三六協定に従うこととされ、その三六協定の締結(過半数労働組合または過半数代表者との間で締結する)にあたっては、出向者も出向先事業場の労働者として数えなければならない。

 以上を踏まえれば、会社は就業規則等による包括的同意のみで本人の個別同意が無くても出向を命じられるとされてはいる(東京地判S45.6.29、新潟地高田支判S61.10.31等)ものの、最低限、本人と出向先との雇用契約書は交わしておくべきであるし、費用負担その他の取り決めを出向元と出向先との間で明文化しておくことも必須と言えよう。
 これらを整備しておけば、関係三者(本人・出向元・出向先)がみな当該出向に係る条件を認識できるとともに、労働局の調査に際しても派遣に該当しないことを説明するための材料となりうるだろう。


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宅直(オンコール当番)に対して賃金を支払わなくて良いのか

2017-06-23 19:39:02 | 労務情報
 医療機関や介護施設等において、「宅直」(「自宅における当直」を略した造語)もしくは「オンコール当番」などと称する制度を採りいれている例が見受けられる。これは、医師や職員が当番制で、緊急時に対応するため電話を受けられる状態で待機するものだが、この待機している時間は、労働時間(すなわち賃金支払いの対象)と見るべきなのだろうか。
 結論を先に言うと、これは一概に「労働時間である」とも「労働時間でない」とも決めきれず、ケースバイケースで判断するしかない。何とも歯切れの悪い言い回しではあるが、要は、「使用者の指揮命令下にある」と見るべきか否かによって扱いが異なるのだ。

 宅直制度に関して訴訟に発展した事案では、裁判所は、会社側に有利な判断を示している例が目立つ。しかし、それは会社にとっての安心材料にはならないだろう。
 実際、裁判所が「使用者の指揮命令下になかった」と判示した代表事例(大阪高判H22・11・16)は、「宅直制度は医師たちがプロフェッション意識に基づいて自主的に取り決めたもの」、「待機場所を定めておらず(自宅でなくても良い)、場所的に拘束されていない」、「緊急事態にはまず宿直医師が対応し、応援が必要な事態にのみ宅直医師に連絡することとしている」、「宅直制度が無ければ、医師全員が応援要請を受ける可能性があり、精神的負担はむしろ大きい」などの事情を勘案したうえでの判決であった。逆に言えば、こういった事情が認められなければ、「使用者の指揮命令下にある」と断じられる可能性が高いわけだ。加えて、この大阪高裁判決は、同じ訴訟のもう一つの争点であった「医師の宿直」については原告(労働者側)の言い分通りに「断続的労働には該当しない」と判じていることも、併せて読み込まなければならないだろう。

 また、宅直中に電話で呼び出されて通常業務に従事した場合は、当然、その実働時間数に対して本来の賃金(深夜割増および法定労働時間を超過する場合には時間外割増を加算)を支払わなければならない。
 さらには、その頻度が高く、精神的緊張を持続しなければならないのであるなら、電話を待っている時間すべてが「労働時間」となりうる。

 そう考えてみれば、宅直を賃金支払いの対象からまったく除外するのは「きわめて黒に近いグレー」と言えそうだ。せめて「宿直手当」と同等の「宅直手当」を支給することとしておくのが、少なくとも民事的なトラブルを予防する観点からは賢明ではなかろうか。


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正社員が10人未満であっても就業規則を届け出る義務?

2017-06-13 10:59:29 | 労務情報

 労働基準法第89条は、「常時10人以上の労働者を使用する事業場」に、就業規則の作成と届け出の義務を課している。
 これを「“常用労働者”が10人以上の事業場は就業規則を作成しなければならない」と誤解している向きもあるが、それはちょっと違う。「常時使用する労働者」と「常用労働者」とは意味が異なるのだ。

 「常用労働者」とは、「期間を定めずに、もしくは1か月を超える期間を定めて雇われている者」または「前2か月にそれぞれ18日以上雇われた者」と定義される。すなわち、「パートタイマー(長期雇用)」はこれに該当するが、「短期アルバイト」は該当しないというイメージだ。
 一方、「常時使用」は、事業場の規模を考えるうえで「常態として何人雇っているか」を見るものであるので、こちらには「短時間労働者」も「短期雇用の労働者」も要件に合致すれば含めることになる。

 具体的な数字を挙げて説明してみよう。
 例えば「正社員3人+短期アルバイト7人」の事業場があったとする。もし、この短期アルバイト7人全員が1か月以内の期間を定めて雇用されているなら、「常用労働者」は「正社員の3人だけ」ということになる。
 しかし、仮に、顔ぶれは毎月変わるとしても、常に7人の短期アルバイトを雇っている状態であるなら、「常時使用する労働者」は「10人」と数える。そうなると、この事業場は、就業規則を作成して所轄労働基準監督署へ届け出る義務があることになる。

 もっとも、労働基準法上の義務をあれこれ考えるよりも、就業規則は、労働条件や服務規律を明文化しておくこと(流行りの言葉で言えば「ルールの見える化」)が最大の目的なのだから、常時使用する労働者の人数に関わりなく、作成しておくべきだろう。


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