ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

5年超でも無期転換しない特例を(労働契約法特別措置法案)

2014-03-23 21:29:30 | 労務情報

 昨年4月から改正施行された労働契約法の第18条には「通算5年を超えて反復更新された有期契約は、労働者の申し出により無期契約に転換させる」旨が定められており、現行法文上は、これがすべての期間雇用者に例外なく適用されるものとされている。しかし、これに関しては、特に経営サイドから見直しを求める声が上げられていた。

 これを受けて、2月14日、労働政策審議会は、この無期転換ルールに特例を定めるべき旨、厚生労働大臣に建議した。
 それによれば、特例の対象労働者は「高収入かつ高度な専門的知識・技術・経験を有する者」と「定年後に同一の事業主等に継続雇用される者」の2種類で、具体的には、前者については、企業内の期間限定プロジェクトが完了するまでの期間(ただし10年を上限とする)は無期転換申込権が発生しないこととし、後者については、定年後に同一事業主または特殊関係事業主に引き続いて雇用されている期間は通算契約期間に算入しないこととする。
 これらは、雇用期間の上限を原則3年のところ「5年まで可」とする労働基準法第14条第1項の例外規定に準じたものと言える。ただし、1つ目に関しては、相応の高収入が条件となる点(対象労働者の範囲や収入要件等は法案成立後に改めて労政審が検討する予定)、2つ目に関しては、満60歳以上の労働者すべてが対象となるわけではない点が、労働基準法の定めとは異なるので、注意を要する。

 また、建議では「この特例は、厚労省が策定する『対象労働者に応じた適切な雇用管理の実施に関する基本的な指針』に沿った対応を取ることができるとして厚労大臣に認定された事業主のみを対象とすべき」としている点も、押さえておかなければならない。

 政府は、この建議の内容を踏まえ、3月7日、特別措置法案を取りまとめ、国会へ上程した。これが可決成立すれば、来年4月1日から施行される見込みだ。今後の動静を注視していきたい。

【参考】労働基準法第14条第1項
 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては、5年)を超える期間について締結してはならない。
  1  専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
  2  満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)


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法人役員の業務上傷病に健康保険が使える?

2014-03-13 16:28:04 | 労務情報

 国民健康保険は、業務上・業務外にかかわらず「すべての傷病」を保険給付の対象としている。
 一方で、健康保険(健保協会または健保組合管掌のもの)は、従来、その給付対象を「業務外の傷病のみ」としてきたが、先般の健康保険法改正により「労災保険の給付対象とならない傷病を給付対象とする」と、微妙に変更された。この法改正の背景には、健康保険の被保険者・被扶養者が副業としての請負業務中やインターンシップ中に負傷した場合など、労災保険でも健康保険でも救済できないケースが頻発したことがあった。

 ところで、この点に関して、法人役員は(特別加入していない限り)そもそも労災保険の対象ではないことから、「法人役員の業務上傷病」についても健康保険が使えるようになった、と認識している例が一部に見られる。
 無論、これは誤解だ。被保険者数5人以上の事業所においては、従来通り、法人役員の業務上傷病は健康保険の給付対象とはならない(健康保険法第53条の2)。法人役員の業務上傷病は使用者側の責めに帰すべきものであるため、労使折半の健康保険制度から保険給付を行うことは適当でないとの考え方によるからだ。

 しかし、ややこしいことに、被保険者数5人未満の事業所においては、平成15年の厚労省通達により「一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している法人役員の業務上傷病」について保険給付の対象とする運用がなされてきた経緯から、今般の法改正後も、引き続き同様の措置が講じられている。
 ただ、これに関しては「一般の従業員と著しく異ならないような労務」という部分には要注意だ。つまり、経営者としての固有業務(例えば、資金繰りのための銀行折衝や同業者団体の会合への出席など)に起因する傷病は、やはり健康保険ではカバーできないのだ。

 こういった点を正しく認識したうえで、経営者自身の対策としては、労災保険の特別加入や民間の保険を活用するなど、自社に合った対応を考えるべきだろう。


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パートタイマーの雇用保険加入の再点検を

2014-03-03 15:29:29 | 労務情報

 従業員のうち「31日以上の雇用見込みがあること」かつ「所定労働時間が週20時間以上であること」の要件にあてはまるものは、「入社時に65歳以上であった者」や「昼間部学生」を除き、雇用保険に加入させなければならない。
 逆に言えば、雇用保険に入らないのは、「31日未満」・「週20時間未満」・「65歳以上」・「昼間部学生」に限る、ということになる。社内では「パート」と呼ばれていようと、賃金が時給制であろうと、親や配偶者の被扶養者となっていようと、関係ないのだ。

 これに関して、「短期のアルバイトは雇用保険に加入しなくて良い」と認識している人も少なくないが、それは必ずしも正確ではない。
 ここで言う「短期」が「31日未満」の意味であれば正しいのだが、もしかしたら、平成22年4月の法改正より前の雇用保険加入要件であった「6か月以上の雇用見込み」から知識のアップデートが追いついていないか、あるいは、社会保険において適用除外とされる「2か月以内の期間を定めて使用される者」と混同していることも疑われるからだ。

 ところで、「31日未満の雇用契約を繰り返して雇い続ければ雇用保険への加入義務を免れる」と考える人もいるかも知れないが、そういう方法は認められない。雇用契約を単純更新している場合はもとより、契約と契約との間に数日間の空白があったとしても、実態として継続雇用されているなら、「雇い始めた日」に遡って雇用保険に加入しなければならないのだ。

 平成28年4月から予定されている社会保険(健康保険および厚生年金保険)の適用拡大(週20時間以上で社保加入)を見越してか、この件に関して、行政当局の調査・指導がここのところ厳しくなっていると聞く。正しい知識を得て、適正に処理しておきたい。


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