ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

在宅勤務制度の全社的導入は難しいのでは?

2015-11-23 21:33:51 | 労務情報

 先ごろ、某大手企業が在宅勤務制度を導入することを表明して話題となっている。在宅勤務制度自体は特段目新しいものではないが、今回のケースが特徴的なのは、特定の部門や職種に限定するのでなく、全社的に適用させるとしている点だ。

 ではまず、在宅勤務制度のメリットとデメリットを整理しておこう。

 メリットとしてまず挙げられるのは、当然、通勤に要する時間が不要となることだろう。そして、その時間を、休養に充てるも良し、家族とのふれあいに充てるも良し、地域活動に充てるも良し、もちろん仕事に充てても良い。つまり、文字通り「ワーク・ライフ・バランス」に即した働き方ができるようになることが、在宅勤務の最大のメリットと言えそうだ。
 また、会社にとっては、「通勤手当」という労務の提供を受けない部分に対する賃金を支払わずに済むほか、事務所の維持費や水道光熱費等の削減も期待できるという側面もある。

 一方、デメリットとしては、フォーマル・インフォーマル両面において社内コミュニケーションが取りにくくなることが第一に挙げられよう。在宅勤務であっても最小限必要な会議等に出席させることは可能だが、それだけでは職場の一体感は自ずと希薄になり、モラールも低下しがちだ。加えて、他部門との連携が難しくなることもあって、会社全体として知識・情報・ノウハウの蓄積が図りにくくなることが大きなデメリットと言えるだろう。
 また、在宅勤務制度を導入すると、実は、労働時間管理が煩雑になる。「在宅勤務=事業場外みなし労働時間制」と考えがちだが、そうとは限らない。労働基準法38条の2は「事業場外で業務に従事し、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間(または通常必要な時間もしくは労使協定で定めた時間)労働したものとみなす」と定めているのであって、例えば、テレビ電話等の機能を用いて随時業務連絡が可能になっているなら、「みなし」は使えず、労働時間を算定しなければならないのだ。
 さらには、在宅勤務では、いきおい過重労働になりがちなのも問題だ。深夜労働や法定休日労働には割増賃金の支払い義務が発生することを含め、在宅勤務制度の逆効果が生じないよう、個々の労働時間を綿密にチェックする体制を整える必要がある。

 そう考えてみると、在宅勤務制度は、多くの会社が実行しているように特定の部門や職種に限定して導入するのが無難と言え、全社的に導入するのは困難を極めるのではなかろうか。
 もっとも、今回のケースは、このように(本稿を含め)各所で話題に上ったお蔭で、企業PR面での効果があり、それだけでも会社としては成功だったと言えるのかも知れないが。


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正社員とパートとの役割分担を明確に区分してありますか

2015-11-13 17:38:40 | 労務情報

 パートタイマーを雇用している会社において、通常の労働者(以下、本稿では「正社員」と呼ぶことにする)との役割を明確に区分していないため、法令違反を指摘されたり、労使トラブルに発展したりするケースも見受けられる。
 パートタイム労働法第9条は、正社員と同視すべきパートタイマーについては、「賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない」と定めている。
 この「正社員と同視すべきパートタイマー」とは、次の要件を満たすものだ。(ちなみに、以前は「雇用期間の定めが無い」という3つ目の要件が有ったが、法改正により、平成27年4月1日から以下の2要件になっている)
  (1)業務の内容や責任の程度が正社員と同一
  (2)配置変更その他の人材活用の仕組みが正社員と同一

 ここで注意を要するのは、勤務時間が短いことや有期雇用であることは、差別的取扱いを正当化する理由にはならない点だ。すなわち、「パートタイマーだから」という理由だけで、同じ業務に就いている正社員より低廉な賃金で働かせるのは違法ということになる。
 無論、勤務時間が短い(もしくは有期雇用である)がゆえに、あるいは他の理由があって、業務の内容や責任の程度が正社員とは異なる場合は、その「業務の内容や責任の程度」に見合った賃金額を設定するのは問題ない。しかし、そういう場合は、正社員とパートタイマーとの「業務の内容や責任の程度」を明確に区分しておく必要がある。それには、「要素比較法」や「要素別点数法」といった「職務評価(役割評価)」の手法が役立ちそうだ。
 ※「職務評価(役割評価)」に関する詳説は、別の機会に譲り、本稿では割愛させていただきます。

 そもそも、「正社員に任せるべき業務」と「パートタイマーに任せるべき業務」とは異なるはずなのであって、もしも「低廉な賃金で働かせられるから」という理由だけでパートタイマーを雇用しているのなら、その考えは改めるべきだろう。
 そして、正社員であれ、パートタイマーであれ、会社への貢献度を正しく評価して、賃金その他の待遇に反映させる仕組みを作ることが、ロイヤリティの醸成やモラールの向上に寄与するのではなかろうか。


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「女性登用」はダイバーシティへの第一歩

2015-11-03 11:48:41 | 労務情報

 日本人は“同質”を重んじる文化を持ち、他人と異なることを嫌う傾向がある。特に典型的な日本企業においては、「日本人・男性・新卒・正社員」(さらに、これらに「健常者」を加えて論じられることも)をモデルとした人事システムが構築されていて、それがさも当然のことであるかのように機能している。
 この「一様性」が「終身雇用制」・「企業内労働組合」とともに高度経済成長を支えたとする見方もあるにはある。しかし、低成長かつグローバル化の進む現代においては、むしろ同質であることが今や経営の妨げにすらなってきているのだ。実際、市場には多様な消費者がいて様々な生活を送っているのだから、そのニーズを把握できなければ、売上も、利益も、ひいては企業成長も見込めない。

 こうしたことに危機感を持っている企業では、中途採用枠を設けたり、女性を活用したり、外国人を雇用したりして、多様性(ダイバーシティ)を意識するようになってきた。それによって競争力を高め、また、市場の変化にも迅速に対応していこうというのが狙いだ。

 中でも、「女性管理職ポストを増やす」というポジティブ・アクションは、企業にとって取り組みやすく、厚生労働省も推奨している施策の一つだ。
 そのためか、経営者の中には「ダイバーシティ・マネジメント=女性登用」だと思い込んでいる節も少なからずあるようだ。
 しかし、本来、ダイバーシティ・マネジメントとは、「男性・女性」という区分すらせず、性的指向(同性愛を含む)についても理解し、もちろん人種や出身地や宗教や障害の有無でも差別することなく、すべての多様性を受け容れることであって、「女性だから管理職に」というのは、ダイバーシティ・マネジメントとは一線を画するものだ。

 とは言え、敢えて女性を登用するのも、現に男性優位の職場にあっては一定の効果があるのも事実であり、職場の価値観を変えるきっかけともなりうるので、これを安直に否定するべきではないだろう。「本来のダイバーシティ・マネジメント」とは異なるとしても、それまで“一様性”に拘ってきた企業にとっては、「女性登用」もダイバーシティ・マネジメントに向けて踏み出した大きな一歩と言えるからだ。
 今後への期待も含めて、これを評価したい。


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