ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

深夜の電話当番は「夜勤」? それとも「宿直」?

2016-04-23 18:59:01 | 労務情報

 「24時間サポート体制」を標榜する会社は今でこそ珍しくない。それは必ずしも「24時間営業」でなくても良いわけだが、そういう会社では、社員が交替で深夜の電話当番に就くことが多くなっている。
 さて、その“電話当番”は「深夜勤務」なのか、それとも「宿直」なのか? というのが今回のテーマである。

 「深夜勤務」であるなら、日中の勤務時間を含めて法定労働時間(原則として1日8時間・1週40時間)以内もしくは「時間外労働に関する労使協定(いわゆるサブロク協定)」に定める時間以内に収めなければならず、労働した分の賃金(法定時間を超える部分については割増賃金)も当然発生する。
 一方、「宿直」であるなら、法定労働時間の制限に関係なく(ただし原則として週1回まで)命じることが可能であり、賃金も1日分の3分の1以上を支払えば足りるとされている。
 したがって、会社にとっては「深夜勤務」でなく「宿直」として扱えたほうが好都合ではある。しかし、そのためには、労働基準法第41条に定める「断続的労働」として労働基準監督署の許可が必要であり、しかもそれは容易に認められるものではない。

 「宿直」としての許可を得るには、原則として通常業務からは解放され「定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態発生の準備等を目的とするもの」でなくてはならず、「相当の睡眠設備」(すなわち「仮眠できる」こと)も条件とされる。
 とは言え、仮眠できるとしても、精神的緊張を持続しなければならないものは認められない。ビル管理会社の仮眠時間を労働時間とした裁判例(最一小H14.2.28判)も参考にしたい。

 これらを踏まえて深夜の電話当番を考えれば、「顧客からの電話を受ける頻度が少なく、かつ、精神的緊張度が低い」業務であるならば「宿直」として許可される可能性があるが、そうでなければ「深夜勤務」として扱うことになろう。
 結論としては「業態によって扱いが異なる」としか言いようがないが、いずれにしても予め管轄の労働基準監督署に相談しておくのが、いろいろな意味において賢明だろう。

 なお、宿直として取り扱う場合であっても、顧客からの依頼等に緊急対応して労働しなければならない事態が発生すれば、その時間については紛う方なく「労働時間」であるので、その点は誤解の無きよう。


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事業所の『所在地変更届』、提出忘れはありませんか?

2016-04-13 15:59:07 | 労務情報

 都道府県健康保険協会(協会けんぽ)が交付する被保険者証(以下「健康保険証」)の券面から、「事業所所在地」の表示が消えて久しい。
 かつては、健康保険証には「事業所名及び事業所所在地」が記載されていたが、5年ほど前に健康保険法施行規則が改正され、「事業所名」も「事業所所在地」も記載を要しないこととされた。これを受けて、協会けんぽでは、当面は「事業所名」のみ残して、「事業所所在地」は表示しないこととしたものだ。

 この様式変更により、事業所が移転した場合でも、同一都道府県内であれば健康保険証を書き換える必要がなくなるため、保険者・被保険者・事業所の三者とも負担が軽くなったことは目に見えるメリットであった。

 しかしながら、気を付けておかなければならないのは、会社の事務手続きとしては、事業所が移転したら『適用事業所所在地変更届』を提出しなければならないのは従来と同じということだ。むしろ、健康保険証の券面から事業所所在地の表示が消えることにより、この届け出を失念するリスクが高まったとも言える。
 事業所が他の都道府県に移転した場合は、保険者が変わることになるため、手続きの漏れは発生しにくいのだが、同一都道府県内での移転において、手続きが簡素になったが故に却ってミスが出やすくなったというのは、何か皮肉な話ではある。

 ここ数年の間に所在地の変わった会社では、間違いなく届け出てあるかどうか、再度確認しておくと良いだろう。


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事業者に義務づけられた「障害者への合理的配慮」とは?

2016-04-03 17:38:38 | 労務情報


 この4月1日から障害者雇用促進法が改正施行された。今般の改正は、障害者差別解消法(平成25年法律第65号)の施行と相まって、「障害者差別の禁止」と「合理的配慮の提供義務」の2つが大きな柱とされている。

 まず、「障害者差別の禁止」については、
(1)労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない(改正法第34条)、
(2)賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない(同第35条)こととされた。
 なお、労働能力などの適正な評価によって採否を決定したり賃金等に差異を設けたりすることや、著しく労働能力の低い者について都道府県労働局長の許可を受けて最低賃金額より低い賃金を設定すること、あるいは、積極的差別是正措置として障害者を有利に取り扱うこと(ポジティブアクション)は、ここで言う「差別」には該当しない。

 さて、企業経営者にとっては、「合理的配慮の提供義務」の方が問題となりそうだ。
 労働者の募集及び採用について、障害者から申し出があったら、均等機会確保の支障となっている事情を改善する措置を講じなければならず(改正法第36条の2)、採用後は、施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない(同第36条の3)。
 誤解しがちだが、これらは、「努力義務」ではなく、「義務」とされる。罰則規定こそ無いものの、都道府県労働局の指導や勧告の対象であり、また、トラブルに発展した場合には義務を果たしていないことだけで訴訟において不利になるので、甘く見るのは危険だ。

 ただし、これに関しては、「事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」という例外規定が設けられている。
 過重な負担であるかどうかは、次の6要素を総合的に勘案して判断される(厚労省『合理的配慮指針』より)。
  ①事業活動への影響の程度
  ②実現困難度
  ③費用負担の程度
  ④企業の規模
  ⑤企業の財務状況
  ⑥公的支援の有無

 建物の改築を要するもの等は事業主の負担が過重と言えそうだが、軽微な段差の解消とかソフト面での配慮であれば、実現できそうなことも多いのではなかろうか。
 ソフト面での配慮の具体例としては、出退勤時刻等の勤怠管理を柔軟に運用する、業務指示に筆談やメールを利用する、会議資料をデータ化する(文字を拡大したり、音声ソフトで読み上げさせたりできる)、困っているようだったら声を掛ける、といったことが挙げられる。

 障害者への合理的配慮は、法的義務である以上に、CSR(企業の社会的責任)の一環としても考えなければならないことかも知れない。


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