ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

従業員の在籍照会に会社は回答して良いか

2023-09-23 07:59:13 | 労務情報

 従業員が在籍しているかどうかを照会する電話が会社に入ることがある。 相手によっては、所属部署や勤続年数や、退職者に関しては退職日や退職理由まで尋ねてくることもあるが、会社は、こういった問い合わせに対し、どこまで答えて良いのだろうか。

 結論を先に言ってしまえば、基本的には、「一切許されない」と考えるのが正しい。
 所属部署や勤続年数や退職日等はもちろんのこと、「X氏がA社に在籍しているか否か」ということからして個人情報に他ならないからだ。
 個人情報は、法令に基づく場合や人命保護のために必要な場合などを除き、原則として、本人の同意が無ければ第三者に提供してはならないことになっている(個人情報保護法第27条)。
 とは言うものの、例えば「Xさんはいますか」という電話が入ったときに「Xは離席中です」と答えただけで、X氏の在籍情報を開示したことになってしまうのだから、「在籍しているか否かについてすら回答しない」というのは、現実的には無理な話だ…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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言動のおかしい従業員への対応

2023-09-13 12:59:54 | 労務情報

 他人から見て奇異な言動(例えば、独り言が多かったり、常に体を動かしていたり、些細な事で癇癪を起こしたり…)を示す従業員がいると、職場環境を害するばかりでなく、顧客や取引先に迷惑を掛けてしまうかも知れない。
 このような従業員に対して会社としては何らかの対処を講じたいところだろうが、こうした言動は精神疾患が原因であることが多いので、慎重を期したい。

 では、どのような精神疾患が考えられるか、代表的なものを4つほど挙げてみる。
  A:発達障害(アスペルガー症候群、自閉スペクトラム症、ADHD等)
  B:うつ、双極性障害
  C:認知症、MCI(軽度認知障害)
  D:統合失調症

 このうち「A」は元々その者の気質であるが、最近になって様子がおかしくなったのであれば「B」「C」「D」(すなわち病気)である可能性が高い。
 病気ならば早期に治療を受けるのが本人にとっても望ましいには違いないが、拙速に話を進めようとすると本人の反発を買ってしまうおそれもある。
 なので、会社(上司)としては、まず本人と面談し、「悩み事でもあるのか」を聴いてあげることから始めたい。 「B」のケースでは、この“傾聴”だけで改善することもありうる。

 然る後に、問題になっている言動を本人に伝える。
 その際、上司自身の感情や評価を交えるのは禁物だ。 事実のみを伝えて本人が自覚していたなら、治療を勧めれば良い。

 しかし、厄介なことに、この類いの病気は本人に“病識”が無いことも多い。
 特に「C」や「D」のケースでは、幻覚(幻視・幻聴)を現実に起きた事象だと思い込んでいると、それに呼応した言動も本人にしてみれば何らおかしなものではないのだ。 そうした場合は、その場ではそれを否定せず、同様の言動が見られた時に再度面談の機会を設けて、本人が自ら気付くのを待ちたい。

 これを繰り返しても本人が自覚しない場合には、その時にこそ医師の診断を受けるよう勧める(または命じる)わけだが、この時点ではまだ病人と決めつけてはならないことに気を付けたい。 それを判断するのは医師だからだ。

 そして、精神疾患と診断されたら、会社は、医師の意見を踏まえて当該従業員の処遇を見直すことになる。
 とは言え、疾病に罹患したというだけでは処遇変更の理由とならないので、「治療しながら同じ職務を続ける」のを基本に考えるべきだ。
 もしそれが叶わない場合でも、「軽易な職務に変える」、「所定労働日数を減らす」等の措置を講じる余地があるかを模索したい。

 なお、どうしても労務の提供が難しい状態であれば解雇もやむを得ないが、トラブル防止の観点からは、できれば退職を勧奨して合意退職に持ち込むことを考えたい。


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即時解雇の手続きと注意点

2023-09-03 16:59:08 | 労務情報

 従業員をその責めに帰すべき事由(例えば、社内での犯罪行為、会社の名誉や信用を著しく失墜させる社外での犯罪行為、2週間以上に及ぶ無断欠勤など)に基づいて解雇する場合、解雇予告または解雇予告手当の支払いは必要でない(労働基準法第20条第1項但し書き後段)が、そのためには行政官庁の認定を受けなければならない(同条第3項)。

 具体的には、事業所を管轄する労働基準監督署に以下の書類を提出して、解雇予告除外を認定してもらうことになる。
  (1) 解雇予告除外認定申請書 [様式第3号]
  (2) 労働者の生年月日、雇入年月日、職種(名)、住所、連絡先等が明らかになる資料
    (一般的には「被申請労働者の労働者名簿」)
  (3) 申請に係る「労働者の責に帰すべき事由」が明確となる疎明資料
   ① 事由の経緯について時系列に取りまとめた資料
   ② 本人の自認書・顛末書等
   ③ 懲罰委員会など懲戒処分関係の会議の議事録
   ④ 新聞等で報道された場合は、その記事の写し
  (4) 就業規則(解雇・懲戒解雇等の該当部分)
  (5) 解雇通知をしている場合は、解雇予告日及び解雇日が分かる書面
 この手順を踏まずに会社の判断で即時解雇すると、労働基準法第20条第1項本文に違反し、6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性がある(同法第119条)。

 解雇予告除外が認定されたなら、解雇の効力は即時解雇の意思表示をした日に遡って発生する(昭63.3.14基発150号)。
 しかし、労働基準監督署が必ずしも認定してくれると限らない以上、認定前に即時解雇するのはリスクが高いので、もし当該従業員を出社させたくない事情が存在するのなら、自宅待機(通常の賃金が発生)または休業(平均賃金6割以上の休業手当支払いが必要)させたうえで、解雇予告除外認定手続きを進めるのが間違いないだろう。

 また、解雇予告除外認定を受けたとしても、それは解雇の正当性を保障するものではない。 民事訴訟を起こされ解雇の当否を争われる余地は残っているのだ。

 加えて、業務災害による休業後30日間または産休後30日間は解雇が制限される(同法第19条第1項)ことにも気を付けたい。
 もっとも、解雇予告除外認定を申請しても、労働基準監督署はこの期間を経過した後でないと認定してくれないので、自ずと即時解雇できないことにはなる。

 即時解雇は、あまり喜ばしい事ではないが、もし必要な事態が生じたら、正しい手続きにより毅然と対応したい。


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