ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

高度プロフェッショナル制度は使いにくいのか

2021-03-23 08:59:43 | 労務情報
 労働基準法第41条の2に定める「高度プロフェッショナル制度」(以下、「高プロ」と呼ぶ)は、この4月で施行後2年を経過するが、その使い勝手の悪さからか、実際に適用された労働者はまだ少ないようだ。 今般の新型コロナの影響で在宅勤務が増えたことにより高プロ制度の採用を検討したという企業も、あまり聞かない。

 高プロは、元々「ホワイトカラーエグゼンプション」と称され10年以上も前から議論されてきたもので、ようやく「働き方改革」の柱の一つに経営側からの要望を盛り込む形で日の目を見たという経緯がある。 経営側にしてみれば“悲願”であったはずだ。
 しかし、蓋を開けてみれば、導入するためのハードルが高すぎて、非常に使いづらい制度となってしまっている。

 使いづらさの具体例としては、
  1.対象労働者の職種(特定の5職種のみ)・収入(1075万円以上)が限られている
  2.制度導入手続きが煩雑である
    (1) 労使委員会で5分の4以上の賛成による決議
    (2) 管轄労働基準監督署への届け出
    (3) 本人からの個別同意
  3.健康管理時間(社内外での労働時間の合計)を把握する措置を講じる必要がある
といったことが挙げられる。

 中でも「3」は、高プロを導入する(経営側にとって)最大のメリットと考えられていた「労働時間管理からの解放」を覆すものと言える。
 そうであれば、社会にあまり好印象を持たれていない「高プロ」を無理して導入するよりも、ほぼ同じ手続きによって、ほぼ同じメリットを受けられる「企画業務型裁量労働制」を導入しようという企業が多いのもうなずける。
 ただ、企画業務型裁量労働制は、高プロと異なり、「みなし労働時間」を設定し、つまり「労働時間」という概念が取り払われるわけではなく、また、深夜労働に対しては割増賃金を支払わなければならないといった点には要注意だ。
 ちなみに、企画業務型裁量労働制に関しては、対象労働者の範囲拡大も議論されてはいたが、働き方改革関連法には盛り込まれなかったので、今後の動きに注目しておきたい。

 一方で、高プロには、対象労働者に誇りと意欲を持たせる点で大きな意味があることを忘れてはいけない。 言わば、高プロは労働者としての「最高位」であって、これを超えるにはフリーランスになる(=労働者でなくなる)しかないということだ。

 これらを踏まえたうえで、高プロを活用できる企業は、せっかくの制度であるので、大いに使うべきだろう。 上に「社会にあまり好印象を持たれていない」とは書いたが、「従業員に高給を払っている」のは胸を張って公言できることではなかろうか。


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休職命令は慎重に

2021-03-13 19:59:12 | 労務情報

 就業規則に「休職期間が満了してもその事由が止まない場合には自動退職とする」と定めている会社は多いが、この「休職期間満了による自動退職」の無効を求めて訴訟にまで発展するトラブルが頻発している。

 そもそも「休職」というのは、労働者が労務の提供ができない状態になった時に、本来なら「解雇」されるところであるが、その事情が一定期間を経過すれば消滅する可能性がある場合に、その一定期間は「解雇を猶予する」ということが基本的な意義だ。
 したがって、会社が休職を命じるに際しては、その事由がそもそも「解雇」に相当するかどうか、慎重に見極めておく必要がある…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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国と企業とで「中途採用」に期待するものが異なるか

2021-03-03 09:59:12 | 労務情報

 「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の改正により、常時300人を超える従業員を雇用する企業は、今年(令和3年)4月から、中途採用者の比率を公表しなければならないこととされた。
 この「中途採用」とは、新規学卒者を4月または3月に入社させるために行う、いわゆる「新規学卒採用」でないものを言う。 この定義自体は常識的に理解できるところだが、国が推し進めようとしている「中途採用」は、一般企業がイメージする、もしくは期待するそれとは少し意味合いが異なる点には注意を要する。

 労働政策研究・研修機構(JILPT)による「企業の多様な採用に関する調査」(平成29年12月26日)によれば、「新規学卒採用と中途採用とのどちらに重点を置いているか」との問いに対して、新規学卒採用に重点を置く企業が33.2%、中途採用に重点を置く企業が27.4%、両者ほぼ同じ程度が32.0%と、採用担当者の意識の上では概ね三分されている。
 その一方で、同じ調査で、“勤務開始時期”を「4月又は3月の定められた日のみ」と回答した企業は81.5%に上っていて、「春季採用」に偏っている現状も見える。
  ※)労働政策研究・研修機構「企業の多様な採用に関する調査」(平成29年12月26日)
   → https://www.jil.go.jp/press/documents/20171226b.pdf

 国は、この「春季採用」から「秋季採用」や「通年採用」に重点を移せないか、を検討課題としている。 つまり、卒業までに就職が決まらなかった既卒者や、留学して帰国した者や、入社直後に離職した者等の受け皿を企業に用意させたいのだ。
 しかし、企業の側は、新規学卒者を一括採用して自社内で育てることを基本に据え、中途採用では欠員の補充や新規事業への参入等のため即戦力を求めるのが一般的だ。
 このあたりに、国の目論見と一般企業の認識との齟齬がある。

 とは言え、新規学卒者を4月(または3月)から採用することは、学校を卒業して失業を経ずに就職させることができ、また、「社会人として教育する」という企業の社会的存在意義の一つを果たしてもいる。
 そして、このような雇用慣行は、企業経営者だけでなく、学校関係者を含む社会一般での“常識”として、根付いている。

 もっとも、国もまだ模索中のようであり、そのような状況の中で、今般の「中途採用比率の公表義務づけ」が課されたととらえることもできそうだ。
 ただ、大きな流れとしては日本的な雇用慣行を見直すべき時期になってきたのは事実と言える。 企業経営者には、従来のやり方に拘泥することなく、柔軟に考える姿勢が求められよう。


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