ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

労使委員会の構成は? 開催頻度は?

2023-07-23 15:59:32 | 労務情報

 「企画業務型裁量労働制」は、企画・立案・調査・分析の業務に就く者を対象として、業務遂行の方法や時間配分を大幅に労働者の裁量にゆだねることとしたうえで、「一定時間を労働したものとみなす」という制度であり、柔軟な発想による成果を期待できるうえ、残業代コスト削減のメリットも期待できることから、導入を検討している会社も多い。
 しかし、この制度を導入するにあたっての最も大きなネックは、労使委員会において出席委員の「5分の4」以上で決議し、それを労働基準監督署に届け出なければならないことだろう。

 では、その「労使委員会」は、どのように組織し、どのように運営していくべきなのかを以下に整理してみる
…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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従業員の熱中症に会社の民事責任が問われる?

2023-07-13 18:59:38 | 労務情報

 従業員が職場で暑さのため熱中症に罹った場合は、原則として、労働基準法施行規則別表第1の2(第35条関係)第2号8「暑熱な場所における業務による熱中症」に該当し、労働者災害補償保険(以下、「労災保険」と略す)で補償される。
 「原則として」というのは、例えば(極端かつ卑近な例になるが)、「休憩中に球技に興じていた」、「個人的な信念に基づいて意図的に水分補給を絶っていた」等を原因とする熱中症であったなら、「業務遂行性」または「業務起因性」が阻却されて補償の対象とならないからだ。

 一方、仮に「会社(経営者)が冷房の使用を禁じていたために熱中症になった」というケースであっても、労災保険は適用される。 しかも、会社は労災保険の保険関係当事者とされるので、国から求償されることも無い(20200330基発0330第33号)。
 つまり、会社は待期3日間の休業分(労災保険でカバーされない)さえ補償すれば、労働基準法による補償義務は果たしたことになる。

 しかし、こうしたケースにおいて、労災保険を使えたからと言って、民事上の責任まで免れるわけではない。
 熱中症になる蓋然性が高いことを承知していながら会社がその回避手段を講じなかったという「不法行為」として、あるいは、安全配慮義務(労働者が安全に仕事できるよう配慮すべき会社の義務=労働契約法第5条)を果たさなかったという「債務不履行」として、労災保険の補償を上回る部分の損害賠償を求める民事訴訟を提起される可能性があるのだ。

 事務所衛生基準規則第5条第3項は「事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上“二十八度以下”及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない」(引用符は筆者による)と定めている。 これは罰則の無い努力義務規定ではあるものの、裁判における判断材料の一つにはなりうるし、まして経営者が故意(未必の故意を含む)に労働環境を害したと断じられれば、裁判所は、慰謝料に関する事項を含め会社にとって厳しい判断を下さざるを得ないだろう。

 そもそも、会社としては、従業員には万全の体調で仕事に取り組んでもらうのが、事故防止の面からも生産効率の面からも望ましい。 会社へのロイヤリティまで考えれば、それらは、冷房に係る電気料金コストを上回る効果があるはずだ。
 職場の空調設定(特に事務所において)に関しては、人によって「暑い」「寒い」と感覚が異なり、それを一種のハラスメントととらえる向きもあるが、少なくとも「暑熱な場所」(室温28℃を上回る)になることのないようにはしておかなければならないだろう。


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従業員が逮捕された場合の対処

2023-07-03 11:59:52 | 労務情報


※前回の記事「無断欠勤のケース別対処法」のうち「逮捕・勾留」のケースにつき、少々説明不足の感がありましたので、その補足を交えて1本の記事に編集しました。


 従業員が私生活における犯罪行為の疑いで逮捕された場合、会社はどう対処したらよいか戸惑ってしまうかも知れない。
 しかし、そういう場面でこそ、冷静な判断が求められる。

 さて、逮捕されると本人は外部に連絡できなくなり、自ずと「無断欠勤」になる。
 とは言っても、誤認逮捕等、本人に非の無いケースもあるので、無断欠勤したことだけをもって拙速に懲戒処分その他不利益な取り扱いをするのは避けたい。

 もっとも、逮捕・勾留期間中は労務の提供がなされなかったのは事実であるので、「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づき、不就労時間に相当する賃金を不支給とすることは差し支えない。
 ただ、それも、年次有給休暇の事後申請を認める制度や慣習のある職場では、本人が申請したら有給扱いしなければならないことになる。 これは、本人に非のある逮捕だったとしても(会社の立場からは納得できないかも知れないが)同じだ。

 そして、釈放後または接見時に本人から事情を訊き、状況次第で懲戒処分を検討することになる。
 ただ、会社が懲戒権を行使できるのは職場規律を維持するためであるので、私生活における犯罪行為(それが事実であったとしても)を理由として会社が懲戒するのは、直接的には認められない。 その行為によって会社が有形または無形の損害を被った場合に限り制裁を科すことができる、と理解するべきだ。
 しかも、懲戒処分は、社会通念上相当なものでなければならない(労働契約法第15条)。 特に懲戒解雇・諭旨解雇等、取り返しのつかない処分を科す場合には慎重を期したい。
 また、就業規則等に懲戒委員会の議を経たり本人の弁明を聞いたりするべき旨が定められているなら、それらの手順を省いた懲戒処分は無効とされる(東京地決H23.1.21、東京地判R2.11.12等)ので、その点にも注意を払っておく必要がある。

 さらには、会社によっては「起訴休職」が設けられていることもある。
 これは勾留が解かれても確定判決が出るまでは出社させないという制度で、有給とするものと無給とするものがあるが、どうであれ、就業規則等の定めに従うことになる。 これの適用についても、本人に非のありなしは関係ない。

 以上を整理すれば、 ①「逮捕=犯罪行為」と短絡的にとらえてはならず、 ②犯罪行為が事実だとしても懲戒処分を科すには合理性・相当性を要し、 ③処分内容の決定も勤怠の取り扱いも社内ルールに則るべき、ということになる。
 従業員の逮捕という特殊案件に際しても、冷静さを失って訴訟に発展した場合の金銭リスクやレピュテーションリスクに会社を晒すことの無いよう、落ち着いて対処したい。


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