カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

王国の没落と日本人の意外な関係   ハワイ王朝最後の女王

2014-09-17 | 読書

ハワイ王朝最後の女王/猿谷要著(文春新書)

 ハワイ王朝がどのようなものだったのはまるで知らなかった。カメハメハ大王の歌くらいしか知らない。のどかでのんびりした王朝だったのではなかろうか、くらいの認識だったわけだが、1800年末に米国の州となることから、かなり近代化の波の中で、国際社会ともそれなりに関係がありながら、米国に強引に併合され滅亡したということが分かる。大国の都合により侵略に屈した王国の最後に君臨したのは、女王だったようである。
 ハワイ王朝というか、ハワイの歴史そのものに、日本人の移民の役割が大きかったことも初めて知った。ハワイ住民の中で、もっとも人口の多かったのは他でもなく日本から来た移民で、人口比で言っても約半分は日本人だったこともあるようだ。多くはサトウキビ農場などの労働者として入植し、出稼ぎとして帰国するものも無いではなかったが、多くはそのまま定住したということのようだ。しかしながら当時は白人社会が島の政治を牛耳っており、参政権などは当然無かった。原住民すら統治に参加できずにいたらしく、事実上政治的には既に白人に支配されていた社会だったようだ。結果的にそのようないびつな統治の末に、強引な米国への併合の道を歩んだわけで、メキシコの国土などと同じく、侵略により奪われた王国だったのだ。
 また、ハワイ王室と日本の皇室との関係が深かったことも初めて知った。結果的にうまくいかなかったが、ハワイ王朝から姫を迎え入れる話もあったようだ。交流的なものは当然あったし、皇室自体もハワイ王国に対してはずいぶん親しみを抱いていたようだ。後の日本人移民は政治的な思惑もあったようだけれど、このような皇室間の関係が土台にあったことは間違いなかろう。
 さて、主人公は題名の通りハワイ王朝最後の女王リリィウォカラーニの生涯を中心にまとめてある。愛称のであるリディアの名で親しまれた女王さまだが、時代の波に翻弄され、英国人の夫と死に分かれた後、さらに王国の滅亡後にも、ハワイの地で最後まで事実上の女王だった。ハワイの原住の民には、最後まで慕われた人物だったようだ。のんびりとした土地柄にあって、しかしその優雅さとおおらかな栄華の中で育ち、血縁には短命なものに囲まれて、最終的には重責に耐えながら王国の最後を見守らなければならなかった女性の生涯を通して、現在まで続くハワイの成り立ちの最初を生きた重要人物として立ち回らざるを得なかった運命を知ることになった。
 ハワイが米国に併合されなければ、軍事的な拠点として重要な地理にあって、どのような運命を辿ったかは不明である。英国をはじめとする列強は、多かれ少なかれハワイの地を狙っていたとも見て取れる。また、当時重要な位置を占めつつあり、脅威とも見られていた日本とその移民という背景から、当然日本との関係が強まっていた可能性もある。現在も日系移民が多く住む土地柄にあって、観光やリゾート地としても、日本と大変意馴染みの深い場所として、ハワイの存在はそれなりに大きい。しかしながらそのような背景を知っている日本人がどれだけいるというのだろう。自分のことを棚にあげて言ってみれば、ある程度ハワイの歴史を知るだけでも、日本人としてのリテラシーのようなものとして、重要なことになるのではないだろうか。
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