カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

激しい権力闘争と社会問題化するリアル   白い巨塔

2024-03-08 | 映画

白い巨塔/山本薩夫監督

 言わずと知れた山崎豊子原作の名作映画。その後何度もドラマ化されている重厚な社会派作品であり、人間ドラマである。
 優秀な腕を持ち、誰もがその存在を認める外科医の財前だったが、浪速大学医学部教授になるべく野望をもっている。しかしながら現第一外科教授の東は、財前の独善的な性格を良しとせず、外部の大学の菊川を擁立して対立するようになる。大学医院内の激しい権力構造の中にあって、次期教授選挙をめぐって各人の思惑が交錯することになる。一方財前が執刀した患者の容体が悪く、再度精密な検査が必要だと同期の内科医里見から再三の助言を受けていたにもかかわらず、財前は自身の選挙の忙しさやプライドが邪魔をして、それらの検査を怠る。結局患者は亡くなり、これが後半の裁判の火種となるのだった。
 この小説や映画などにより、医局界の激しい権力構図が表面化し(原作の山崎は、緻密な取材をもとにフィクションを練り上げることで有名な作家で、当然これらの物語の土台になっている問題は、事実をもとにしているのである)社会問題化したともいわれている。また後半の裁判の問題においても、後のインフォームドコンセントが日本に広がる問題意識となった。今の医学界や我々の生活に、鋭くメスが入れられた作品と言っていいだろう。
 そういった社会的な影響力があったのも当然で、物語自体が非常に面白いのである。映画的にも田宮二郎演じる財前をはじめとして、それぞれのキャラクターが非常に個性的に描かれている。まるで漫画でもあるが、同時にリアルなのだ。財前自身は苦学して医者となり、資産家の開業医の婿養子として、権力闘争の後ろ盾を持つに至る。そうして自分はクラブのホステスの愛人を持ち、奔放さを発揮しながらも、大変な窮地に何度も陥るのである。
 僕の生まれたころの作品なので映画はリアルタイムに観ることは無かったのだが、その後田宮はテレビドラマでも同役を再度演じたようである。おそらくそれを子供のころに観たことがあるのだと思う。田宮は国民的に人気を博する俳優で、その姿は脂が乗りきっているという感じである。その後のスキャンダルもだから、さらに衝撃的だったわけだ。
 改めてこれを観たのは、家で洋画ばかり見ているので母がつまらなそうにするので、たまには古い日本映画なら興味を持つかもしれないと考えたからだった。しかしながらこの複雑な構図のドラマでは、難しすぎたのか母まったく食指を動かさず、結局僕だけが熱中して観てしまった。誠に申し訳ない限りであった。
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2 コメント

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Unknown (はじめちゃん)
2024-03-08 09:04:08
半沢直樹と肩を並べるくらいに大好きなTVドラマ!
田宮二郎、唐沢寿明のどちらもはまり役だったと思うよ。
Unknown (マサアキ)
2024-03-08 11:46:05
はじめちゃんさん>
唐沢版はまったく知りませんが、凄い話ですよね。他のキャラクターも素晴らしく個性的であります。

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