異国トウキョー漂流記/高野秀行著
アフリカのコンゴに謎の怪獣を探しに行く計画を立てたせいで、現地で通じるとされるフランス語を勉強するために、日本で不思議な舞踊をする集団の中のフランス女性を先生として習いに行く。ちなみに彼女は先生としてはまるでやる気は無いが、金はとるので必死で勉強し、さらにその仲間たちとの英語での雑談でいろんなことを学ぶことになる。
さらにやはりコンゴ国内で広く使われているリンガラ語を習うためにコンゴ人を探す。コンゴ人は見つかったがリンガラ語には文字が無いらしい。仕方ないから、似たような音に対応するアルファベットで文字を作ることから学ぶことになる。
さらに探検ばかりでせっかくの日本の彼女から愛想を尽かされそうになって、その彼女をつなぎとめるために一緒にスペイン語を習いに行く。この先生は教えることは非常に上手いのだが、肝心の彼女との関係の方は…。
父親とギリシャに行った帰りに知り合ったペルー人との交流や、中国現地で中国語を習ったことのある先生の息子との交流(日本に仕事で来日したのだ)。コンゴで世話になった上にその人の著書を翻訳したことがあった為に、日本でも連れて歩いた珍道中の話。イラク人の日本語を覚えない半亡命中東人との関係。スーダンからやってきた盲目の野球解説者(もちろん野球を見たことは無い)との野球観戦記。などが記されている。
日本に来た外国人が英語が上手いのは、外国人同士がコミュニケーションするために日本に来てから英語を勉強する場合が多いという事実に驚いてしまったり(結局日本で初めて英語を覚える人は多いらしい。でも日本語はあんまり覚えない人が多かったりする。ちなみに日本語が話せる人もいるので、日本語が難しいためだと考えがちな日本人には注意が必要だろう(日本語が特に難しい言語であるというのは、日本人だけがもっている幻想である)。単に日本語を覚えるインセンティブより外国人同士コミュニケーションをとるために日本という国での英語の必要性が高いということを言いたいのである)、外国人と一緒に東京を歩いていると、外国人目線でのトウキョーが見えてくる感覚もわかるような気がする。東京に住んでいながら渋谷のことは興味なかったり(というか知らない)、アメリカと敵対する中東人は実はマクドナルドが好きだったりする。外国の僻地や奥地は探検でどんどん行ってしまうのに、日本では三畳の間で暮らす極貧生活を送っていたりする。
まあなんというか普通に無茶な話が多いが、大いに笑える。こんな日本人がいるんだな。でもまあ、外国人の間でもそれなりに浮くだろうから、国際人というのはなかなか難しいものである。いろんな失敗も素直に書かれているし、しかし普通ならもっと大失敗しそうな危機的な状況を何とかすり抜けていくスリリングさもある。言語のことをいろいろ学べるということでは無いが、しかし言葉を習得する実際がよく分かる。ある意味で大変に実用的な気もするが、しかし同時にそんなことを気にせずに笑い飛ばしてもいいだろう。面白かったが、本当に感心することしきりの凄い本であった。