ワンダーボーイズ/カーティス・ハンソン監督
あちらの大学では現役の作家が大学の講義をやるらしく、そのクラスでそれぞれに書いてきた小説の講評を言い合っている。辛辣なものもあるし、温かいものもある。何のためにクラスに来ているのか、分かりにくい者もいるようだが。
主人公はこの作家兼教授だが、過去に名作を書いているようだが、その後は何も発表していない。都会から編集者がやって来ることになっており、恐らくもう作品ができそうとかなんとかいって、胡麻化している。作家は大学の学長(女性)と不倫しており、その学長の夫が自分の上司だ。大学では文学的なお祭りのようなことをやる時期で、他の作家などを呼んで講演会やったり夜中までわいわいディスカッションしたりしている。そんな夜に喧噪から離れて外でマリファナをやっていると、小さな拳銃を持った自分のクラスのふしぎな教え子がいることに気づく。なんとなく気になって、家に一緒に忍びこんで、学長の夫のコレクションであるジョー・ディマジオのグローブとマリリン・モンローのジャケットを青年に見せるのだった。
まあ、そこで事件が起こり,ちいさな逃避行が始まる。若い青年の話を聞いていると、作家志望らしく面白いが、恐らくそのほとんどは嘘なのだ。だが、そういう話を聞くにつれ、なんだか自分にもイマジネーションが刺激されるような感覚になっていく。間に麻薬を吸って酒を飲み、車を運転して、いろんな人に会う。物事はなかなか前に進んでいかず、しかし作品は書き足されていく。若い女性(教え子。元トム・クルーズの奥さんのケイティ・ホームズ。要するに古い映画なんだな)からは言い寄られ、でもそれなりに振り切って、自分が妊娠させてしまったらしい学長に、何とか自分の気持ちを伝えようとする。
文学的作品が映画になっても、その文学的な空気感のためか、あまり成功することは無い。そうした残念な作品には違いないのだが、文学だけでなく、他の映画のオマージュなども取り入れている様子で、少し興味がわかないではない作品だった。少し昔の映画だから、当時の旬の俳優がそれなりに変な役どころを見事に演じていて、そこまでひどくはないからかもしれない。まあ、面白い映画では無いのかもしれないが、この不思議感に身を浸して、時間をつぶす覚悟があるのなら、悪くない映画だろう。不倫に同性愛、人種差別にドラッグ、もうごちゃごちゃである。でもまあ、それらがちゃんと問題提起されている訳ではなく、日常化しているということを言いたいのだろう。だから、アメリカなんだろう。そうして今に至る多様化文化、という話なのだろう。