対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

今年の数字100429

2017-12-28 | 楕円幻想
100429の出現
100429の数学的背景
100429の歴史的背景
100429の個人的背景

100429の出現
100429は『新天文学』第56章に出でくる。
(引用はじめ)『新天文学』(ケプラー著、岸本良彦訳、工作舎、2013)
全く偶然に最大の視覚的均差を測り取った5°18´という角度の正割に思い至った。この値が100429であることを見たとき、まるで新たな光のもと、眠りから目覚めたかのように、以下の推論をし始めた。平均的な長さを取る所で均差の視覚的部分が最大になる。平均的な長さを取る所で三日月形つまり距離の短縮分が最大になり、ちょうど最大の視覚的均差の正割100429 が半径100000 を上回る分になる。したがって、平均的な長さを取る所で正割の代りに半径を用いると観測結果のとおりとなる。
(引用おわり)
100429とは1/cos(5°18’)を10万倍した値である。

100429の数学的背景
離心円上にある火星と太陽の間の距離を離心アノマリアβを使って求め、べき展開して、離心率eの2次までとった近似式は次のようになる。
r=1+ecosβ+e2/2・sin2β
これが100429の数学的背景である。これは山本義隆が『世界の見方の転換1』の付記で示している式である(注)。 
この式を基礎に山本義隆は「太陽中心系で表したプトレマイオスの離心円・等化点モデルにおける惑星の軌道と運動を表す方程式」を導いている。しかし、山本義隆はこの式とケプラーの楕円軌道発見の関係について着目していない。
この式にβ=90°を代入すると、「平均的な長さを取るところ」での火星―太陽間の距離に対応する。
r= 1+e2/2
そして、ここに火星の離心率e=0.09265(ケプラーの値)を代入すると、ケプラーを覚醒させた1.00429が出てくる。
ここが山本義隆の盲点になっている。

(注)
「離心円に内在する楕円1」参照

100429の歴史的背景
プトレマイオスの等化円の特徴は、遠日点で離心円に内接していて、離心円の中心が等化点と離心点を二等分していることである。離心円の半径を1、離心率をeとすると、等化円の半径は1-eである。ケプラーが楕円を発見する火星の軌道に、プトレマイオスが金星で導入した等化点と等化円を描いてみる。ここから100429の歴史的背景が見えてくる。

Fは離心点、Cは離心円の中心、Eは等化点である。等化円は細い線で描いてある。Hは遠日点、Iは近日点である。PとKは楕円軌道発見の現場で、「平均的な長さを取るところでは正割の代わりに半径を用いる」箇所である。Pは離心円上の点、Kは楕円上の点である。
長さの関係は次のようである。離心円の半径CH=CP=CIを1、離心率をeとする。CF=CE=e、EH=1-e、EI=1+eである。

PE は直角三角形PCEに三平方の定理を適用して
PE =√(1+e2)となる。
この PE は「離心距離の二等分」より PF に等しい。ケプラーが使った火星の離心率eは0.009265で、√(1+e2)を計算してみると1.00429になる。
100429の歴史的背景とは、ケプラーを目覚めさせた正割の値が、遠日点から90°離れた離心円上の点Pとプトレマイオスによって導入された等化点Eとの距離に対応することを指す。


100429の個人的背景
『新天文学』第56章を読んでみると、『世界の見方の転換3』12章14「楕円軌道への道」の推論はケプラーの推論と違っているのではないかと思われた。「平均的な長さを取る所で正割の代りに半径を用いる」(ケプラー)推論の端緒が抜けているのではないかと思われたのである。
また、『世界の見方の転換1』の付記「金星軌道のパラメータの決定」と『アルマゲスト』第10巻第3章を対照させてみると、「離心距離の二等分」は強調されているが、等化円が欠如しているのではないかと思われた。『アルマゲスト』(プトレマイオス著、薮内清訳、恒星社厚生閣、1982)参照。

β=90°を代入した「平均的な長さを取るところ」での火星―太陽間の距離
1+e2/2
に、火星の離心率e=0.09265(ケプラーの値)を代入すると、ケプラーを覚醒させた100429が出てきたときは感動した。
また、遠日点から90°離れた離心円上の点とプトレマイオスが導入した等化点との距離
√(1+e2
に、火星の離心率e=0.09265(ケプラーの値)を代入すると
1000429が出てきたときも嬉しかった。
山本義隆の推論に疑問をもち検証していく過程で、100429の数学的背景と歴史的背景を示すことができた。
わたしにとって、100429が今年の数字という理由である。