時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~

2009-10-25 | 映画
戦後混乱期の東京
ある夜
酒代を踏み倒した上に
その飲み屋から
五千円という大金を盗んで逃げ出した
放蕩者の小説家・大谷を追いかけて
飲み屋夫婦の吉蔵と巳代が
大谷の自宅までやってきた

夫・大谷と飲み屋夫婦の言い争いに
妻の佐知が割って入った瞬間
大谷はその場から逃げ出してしまう



翌朝
佐知はなんとか
察沙汰だけは許してもらおうと
吉蔵と巳代が営む飲み屋・椿屋へ出向く
そこで
思いがけず

「お金は私が綺麗におかえし出来そうですの」

と明るく言い切ってしまう



窮地にあっても
不思議な生命力を発する佐知
夫が
踏み倒した過去の酒代の肩代わりに
佐知は
その日から椿屋で働くことになる

水を得た魚のように
生き生きと働く佐知



佐知の美しさ
明るさに惹かれて
椿屋はお客でいっぱいになる

お客から
チップをもらった佐知は
自分に魅力があると気付き
あっけらかんと

「私、お金になるんですね」

と言い放つ

外の世界に出て
佐知は
どんどん輝きを増していった



大谷は
お酒を飲み歩き
借金を作り
浮気を繰り返し
たまに家に帰ってくると
何かに追いかけられているようにわめき
佐知に救いを求める

そして
魂が抜けたように
ふらりと出て行くのであった

小説家の仕事はしているが
家にお金を入れることはほとんどなかった



家では
あまり会うことのなかった夫と
椿屋では
会うことができるようになった佐知
佐知は
そのことがとても嬉しく
幸せだった
佐知がそのことを大谷に話すと
大谷は

「女には、幸福も不幸もないものです。男には、不幸だけがあるんです。」

と返すのだった



椿屋で働く佐知の前に
佐知に対して好意を持つ
真面目な工員・岡田や
かつて
佐知が思いを寄せていた弁護士・辻が現れる

佐知の心は揺れる



そんな佐知の気持ちを知ってか知らずか
大谷が親しくしていたバーの女
秋子と姿を消してしまう

何故
佐知はどんな状況でも
明るく振舞うことができるのか

何故
佐知は放蕩夫の大谷を許し
一筋に愛し続けるのか

                    「CINEMA TOPICS ONLINE」より引用



A>何故
 佐知はどんな状況でも
 明るく振舞うことができるのか

Q>かつての日本女性には
 ‘耐え忍ぶ’とか‘堪忍する’
 と云う習性が身に付いていたんですかね~

A>何故
 佐知は放蕩夫の大谷を許し
 一筋に愛し続けるのか

Q>大谷と別れて
 子連れで自立出来なかったからでしょうかね~
 しょ~もない男を好きになる性質なんでしょうか…
 かつて自分の窮地を救ってくれた時の大谷を忘れずにいるのからでしょうか…



松さん演ずる佐和の
儚げな中にも
芯のある強い女性を見事に演じていたと思う

松さんは
スクリーンの中で
ダントツ光を放っていたと思います

浅野さんも堤さんも伊武さんも室井さんも
それぞれのキャラクターを
実に味わい深く表現していたと思うし
映像も綺麗だし
日本文学の雰囲気が
スクリーンから溢れていたと思います

太宰治の描いた世界を
丁寧に美しく映像化しているので
これは評価に値すると思います
まして
世界で認められたと云うのは
大変名誉なことだと思います


         

ですが
好きか嫌いかは
また別のお話なのです

まず
佐和さんの行動や心情が理解できません
っと云うか
この夫婦理解出来ない
いやそれ以前に
太宰治の世界観を理解する感性が
小生には
ないのかもしれない…

昨今
赤の他人
別々の人生を生きてきた男と女に
価値観の相違があるのは当たり前だと思うのですが
それを理由に
安易に分かれる夫婦があまりにも多い

そう云う意味で
ここで描かれている
佐和と大谷夫妻は
かつて
日本に存在した
世界遺産のような夫婦?

‘情に薄い’世の中になったと云うことか

仮に
大谷が現代に現れたら
確実に女に捨てられるだろうな~