飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

いよいよ大型連休入り! ヒトの群れ?も離れて家籠りに

2020-04-29 14:58:43 | 俳句日記の部屋

帰り門 降りだす春の 夕雨かな  湧水

コロナ渦の テレビを出でて 春の山  湧水

群れ好きも 離れ離れに コロナ春  湧水

寒暖も 程よき頃や うぐいす山  湧水

コロナ春 人とつながる ユーチューブ  湧水

雨ごとに 陽はあたたかく 春山路  湧水

百鳥と 子供の声や 春山路  湧水

春風や 昼の屋内の 落ち着かず  湧水

春風や やけにか細き ふくらはぎ  湧水

窓ごしに かえるの声の 夕湯かな  湧水

気満る かえるの声や 夕湯窓  湧水

菜飯膳 妻待つごとき 独り湯かな  湧水

膳ふたつ 妻待つ春の 夕湯かな  湧水

バイク音 響かぬ春の 飛騨路かな  湧水

うぐいすの 気まぐれ声や 午後の山  湧水

コロナ列島 テレビを切れば 春野山  湧水

春風の 昼間落ち着く 畑かな  湧水

川柳

ホーホットケ! と聞こゆる春の 午後の山  ケセラセラ!なるようになれ!

防草の シートを買いし 十万円  これをラッキー!と言えるのか?

かめ虫の 臭いに飲めぬ 高級茶  お供えの茶も謝って下げたよ

景品に マスク並べる パチンコ店  このアイデアでもダメ!やっぱり休業に

(続)連載小説 「幸福の木」 その241話 平行(パラレル)宇宙?

2020-04-27 12:41:15 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、いやいや、日本はとんだ大型連休になりそうでーす。
何か、他県へ行くと、車のナンバーを見て嫌がられるとか、来て来て!と言ってた地方が今やころな、ころなで、いえ、来るな、くるな!で三平じゃないけど(旧いね?)いやいや大変でーす。
山登りや海の潮干狩りや春の花見ならいいと思ったんですが、トイレへ行ったりコンビニェへ寄ったり店へ寄るとかで、「ステイホーム!」と注意されるとか、いやいや、想ってもみなかった事態になりました。
ウチの先生は、元々引き籠り人種で、「温暖化や憲法改正や強権には防止になっていい薬だ」とか言ってますが、長引くようで、世の中が大きく変わりそうですとか。
そうそう、飛騨では車のミニスーパーが遠隔地へ時々行ってお年寄りに喜ばれていましたが、今や市内でも大人気だとか、昔の豆腐売りのようにラッパを吹いて通りや家の前で最新行商をしたら、店も客にもいいんでは?なーんて。
そうステイホーム!だから、キーワードは配達とかオンラインでーす、まあ、皆でいろいろアイデアを出し合いましょう!
はい、余談はこのくらいにして、早速、遅れ遅れの小説に参りまーす
では、開幕開幕!

241 平行(パラレル)宇宙?

「あの、大婆さん、どうして私とハナナちゃんが枝分かれした別々の世界にいるのですか?」
ハナが大笑いしている大婆に聞いた。
「どうして二人が別々の世界にいるかだって?ホホホホ、逆じゃ、お前達が二人になったから別々の世界ができたんじゃ」
「えっ、別々の世界ができたって?世界って、そんなに簡単にできるんですか?」
「そうじゃ、元々ひとつの世界じゃったんじゃが、それが二つに分かれたんじゃ」
「世界が二つに分かれた?えっ?どう言うこと?」
ハナは何が何だか分からなくなった。
「ああ、お前の頭では、説明するワシの方が大変じゃ、そう、直接自分の目で見る方が手っ取り早い、もう一度見に行ってこい、ワシはもう説明するのが嫌じゃ」
「嫌って?・・・・」
「さあ、どうぞ、ご自由に!行って来たら?覗き込むだけじゃろ?ワシはちょっと他にやる事がいっぱいあるから」
と大婆はコーヒー休憩でもするような嬉しい顔をした。
(えーっ?いったい何が起こったのかしら?見るのがちょっと怖いけど、それを知るには枝分かれする直前の世界へ行って、その様子をこの目で見ればいいんだわ、まあ、そう言う事ね)
とハナは納得し気を取り直して点滅している小さな氷玉を覗き込んだ。
大婆が、この小さな氷玉は4個で一年分と言ってた、それは一個一個には三か月分が含まれていると言う事になる。
「それなら、直前の氷玉に入って三か月分の様子を観察すれば分かるはずだわ」
ハナは、再び枝分かれ直前の氷玉を覗き込んで、その世界へ入って行った。
そこは、前に覗き込んだ時と同じ、ハナ達が旅に出たばかりの昔の懐かしい世界だった。
ハナと太郎とケンが長老やお婆さんやお爺さんに見送られて村を出て半年ほど経った頃だった。
持って出た食べ物も尽きかけて、行く先も決まらず途方に暮れていた時期だ。
「ああ、そうそう、思い出したわ、この時は、お婆さんが握ってくれた最後のおにぎりを食べていた時だわ、穀物と木の実の長持ちする美味しいおにぎりだったわ」
ハナは、空の少し高い位置から、大きな木陰で横になっている若い太郎とハナ自身の姿とケンを見下ろしながら、その時の気持ちを思い出していた。
やがて夜が来て、二人はぐっすり眠り、明け方になった。
その時に、木の枝にリスが現れた。
「あっ、そう、リリーだわ、そうそう、この時に大切に少しづつ食べていたオニギリをあげたんだったわ」
ハナは、その時の事をはっきりと思い出した。
枝の上のリスは、ハナや太郎の寝ている上から、チョコチョコ覗いていた。
寝ていたハナはその気配に気づいて目を醒ました。
「あっ、リスさんおはよう、何を覗いているの?あっ、分かった!この私の穀物や木の実のオニギリね、でも、これはお婆さんが私のために心を込めてにぎってくれた大切な、しかも最後の宝物よ」
と言って、ハナはリスに謝り、再び眠そうな眼を閉じた。
「あれっ、私って、こうだったかしら?確か、リスさんにオニギリをあげたはずだけど」
空から覗いていたハナが、思わず口に出した。
覗いているハナには、二人の心の想いが手に取るように分かった。
リスに謝って再び寝ようとしていたハナは、心の中で迷っていた。
(リスさんもお腹を空かしているわ、やはり私のオニギリをあげた方がいいのかも、私はもうたくさん食べたんだから)
(いえいえ、これは最後のオニギリよ、しかもお婆ちゃんが私のためににぎってくれた物よ、それを動物にあげるなんて駄目よ)
枝の下のハナは、眼を閉じたままかなり心の中で迷っていた。
「ああ、そうそう思い出した、この時、私は生まれて初めて真剣に決断を迫られたんだわ、あげようかあげないかをまるでこの世の終わりのように悩んだんだわ」
空から見ていたハナが懐かしく思い出した。
その時、奇妙な事が起こった。
枝の下で寝ていたハナが、どう言う訳か、重なり合った二人に見えてきた。
「あれっ、変だわ!妖精や幽霊でもないのに?」
とハナが訝しんで見ていると、重なり合ったハナの二人の内の1人が、起き上がった。
もう一方の1人は、そのまま寝ていた。
起き上がったハナの1人が、胸から最後のオニギリを取り出して、頭上の枝の上に置いた。
そして、また重なるように寝ているもう1人の体にもどった。
喜んだリスは仲間を呼んで皆でオニギリを食べ尽した。
仲間が立ち去った後、リスは枝の上を行ったり来たりしてハナを呼んでいた。
すると、オニギリをあげたハナの1人が、また立ち上がってリスと向かい合った。
するとリスが、枝を伝わって招くように森の方へ駆け出した。
ハナの1人も、慌てて荷物を持って、そのリスの後を追いかけた。
ケンも、ハナに先立ってリスを追いかけた。
出かける時に、太郎に声をかけたので、太郎が目を醒ました。
しかし、太郎はあまりにも眠かったので、すぐ起きられなかった。
そして、ハナの場合と同じように心の中で二人の太郎が格闘した。
(おい大変だ、ハナとケンが森へ駆け出した、早く追わなきゃ!)
(何だ何だ、まだ眠い、そんなに慌てる事はない、すぐもどって来るさ)
すると、不思議な事に、太郎の体も次第に二重に見えてきた。
その内の1人が、ゆっくり立ち上がって、荷物をまとめてハナ達の後を追いかけた。
もう一方の1人は、そのまま寝続けていた。
結局、二人に別れたハナと太郎の一方がケンと一緒にリスを追いかけた。
そして、残りのハナと太郎が、そのまま眠り続けていた。
「あっ、分かった!きっとここだわ!ここで私達とハナナちゃんタタロさんが別れたのよ」
ハナはそう理解し納得した。
リスを追いかけたハナとケンと太郎は、その後に老フクロウに会って北へ行くよう教えられた事を思い出した。
「私達の事は思い出せばいいんだからどうでもいいわ、問題はハナナちゃんとタタロさんの事よ」
空から覗いていたハナは、このままハナナとタタロがどうするかを観察する事にした。
やがて朝日が射しこんで、木の下のハナナとタタロが目を醒ました。
ハナナは起き上がるとすぐに、胸に納めていた食べかけのオニギリを一口食べて隣の太郎に言った。
「明け方に変な夢を見たわ、リスがこのオニギリを欲しがって枝から覗き込んでいたの、危うく取られるところだったわ、気をつけなきゃ」
そう言うと、タタロも言い出した。
「俺も明け方変な夢を見た。お前とケンが急に森へ駆け出したので、追い駆けようと思ったが、あまりにも眠いので、もっと後にしようとやめたんだ、本当に変な夢だった」
そう言って二人は顔を見合わせた。
「あれっ、ケンがいないわ、どこへ行ったのかしら?まさか、夢のように・・」
と言って二人はケンを呼び続けていた。
しかし、ケンはいつまで経っても帰って来なかった。
「もしかしたら、神隠しかも、それとも穴に落ちたとか、まあ、片足が不自由だから仕方ないさ」
タタロがそう言うと、ハナナもあきらめがついた。
空から見ていたハナは、どうなるかハラハラしていた。
「ああ、そうだったの、そ言う訳で、ハナナちゃんとタタロさん達にはケンがいないのね、なるほど」
とハナは納得した。
しかし、何かが心にひかかり、気持ちが落ち着かなかった。
「でもでも、変だわ、考えて見れば、ハナナちゃんって元は昔の私なんだわ・・・昔の私が二人に分かれて別人のように出会うなんて、どう言う事になるのかしら?これって、やっぱり分身って言う事でしょ?」
その時、天からまた聞き慣れた大婆の大声がした。
「娘よ、それは違う!お前達は他に大きな間違いを起こしたからだ。本来、お前達は分かれた時点で別々の世界に住み始めるから、出会う事は有り得んのじゃ、だから、別の世界に分かれた事など知る由もないんじゃ」
大婆の声が言い終わらない内に、ハナはあっと言う間に、元の大婆の傍にもどっていた。
瞬間的に無意識のうちに小さな氷玉の世界から抜け出していた。
「おお、娘よ、ずいぶん速くなったもんじゃ、やはり若い者はワープに慣れるのも速い、そうそう、よく見て、分かるかの?お前がいたのは、その目の前の枝分かれした左の氷玉じゃ」
ハナの目の前の巨大な氷玉の壁には、枝分かれした小さな氷玉が点滅していた。
ハナの背後には漆黒の壮大な宇宙の光景が広がっている。
ハナは、この壮大な宇宙の中の、ごく小さな氷玉の宇宙の不可思議さを改めて感じていた。
「分かるかの?娘よ、ケンとか言う犬がいるのは右の氷玉の世界じゃ」
「・・と言う事は、右の氷玉には私達がいて、左の氷玉にはハナナちゃんとタタロさんがいて、・・」
「そうじゃ、あの大きな木の下が別れ目じゃった。その後は時間が過ぎて、二つの世界に枝分かれして、それぞれ別々の世界に住んでいるから互いに知る由もないのじゃ」
その説明を聞いている時、ハナはフと思った。
「枝分かれした世界に生きている私達が出会ったと言う事は、もしかしたら?枝分かれしたビーズのような氷玉の列が再び結合したのでは?他に私達が出会う方法がないはず」
とハナは、二つの氷玉の列の先を目で追った。
「ホホホホ、やはりお前もそう考えたか、なかなか賢いのう、ワシもそう思って、先を見ようとした、しかし、他の氷玉がぎっしり詰まっていて、どの氷玉が繋がっているのかが、さっぱり分からなかった、もしかしたら、枝分かれした氷玉どうしが、どこかでくっつき合っているのかも知れん」
と大婆は少し残念そうな顔になった。
ハナが、氷玉の壁に寄って、点滅している氷玉の列を見ようとしたが、ぎっしり込み合った小さな氷玉がからに合っていてどうなっているのか分からなかった。
その時、ハナは疑問に思った。
「でも、大婆さん、なんで、氷玉って、こんなに沢山あるんですか?こんなに沢山宇宙があったら、宇宙って訳が分からなくなるわ?」
「・・・」

(つづく)

ハイハイハイハーイ、いやいや、だんだん分けが分からなくなってきました、はい、物語じゃなくて宇宙の構造です、パラレルワールドって、本当にあるんですかね?神隠しとか、本当でしょうか?はい、ステイホーム中では小説やお笑いを楽しみましょう!そうそう、宣伝広告なしの日本版ユウチューブを立ち上げて、大学の講義や授業もオンラインで公開してもらえませんでしょうか?
とウチの先公が言ってます、はい、では、またのお運びを願いまして、バイバイバーイでーす!


原発汚染水対策(その 4 ) トリチウムの半減期は12年! 逆ピラミッド貯蔵池

2020-04-23 22:01:48 | 発明アイディアの部屋


前回大切な事を書き忘れていた。
それは、問題になっているトリチウムの半減期は12年だと言う事だ。
この半減期は、原発から出る放射性物質の中では比較的短いものだ。
例えば、セシウム137は約30年、ストロンチウム90は約29年なので、それに比べれば短い方である。
(ちなみにプルトニウム239は2万4千年、ウラン235は7億年、ウラン238は45億年と言われる)
トリチウムの半減期が12年と言う事は、12年経てば放射能は1/にに半減し、24年経てば1/4に減り、36年経てば1/8に減少すると言う事だ。
先日たまたまnhkテレビの「サイエンスゼロ」を見ていたら、福島原発の汚染水問題を取り上げていた。
その中で、現場では処理後の汚染水のトリチウムの放射能を測定していた。
その値は1リットル当たり95万ベクレルで、海に流してもよいと言う国の基準値の16倍だと言う。
これが、6万ベクレル以下ならば海に流せるそうだ。
ああ、これだ!と思った。
もし、現在16倍の放射能の汚染水を12年貯めておけば半減して8倍に減り、24年蓄えればさらに半減して4倍になり、36年後には2倍の量に減る。
2倍の汚染水ならば同量の水で薄めて海に流す事ができる訳だ。
つまり、36年貯蔵しておいてから海に流す、と言う事である。
ここまで努力すれば国内外からも理解が得られ地元で心配されている風評被害も起こらないと思う。
この解決方法が今のところベストだと思う。
この実現のために、それほどコストのかからない前回に提案した逆ピラミッド貯蔵池を検討してみたらいいと思うが、いかが?

(つづく)

春の山、春の野 春のコロナ列島!

2020-04-22 16:02:32 | 俳句日記の部屋

花さけど コロナ列島 風寒き  湧水

うぐいすの 鳴きてまだまだ 寒き飛騨

父と子の 昼の散歩や コロナ春  湧水

コロナ渦に 籠もる天窓 春の月  湧水

スーぱーむーん 今を盛りと さくらかな  湧水

月明り 盛り静かに 花さくら  湧水

人は無く 月風愛ずる さくらかな  湧水

コロナ渦も どこ吹く風と 若菜つみ  湧水

卵配る 婆さんくれる 摘み若菜  湧水

コロナ列島 全村はやばや 春灯り  湧水

膝のみが ふれて添い寝の 春灯り  湧水

川柳

来てほしき 来てほしくなき 客とコロナ  来るな!なんて言うと来年困ることに?

新時代の 先がけだった ひき籠り  学校も仕事もオンライン時代到来か!

開村して 人口もどそうコロナ村  限界村、廃村の復活ができないかな?


命か経済か?  コロナと文明

2020-04-20 18:29:14 | エッセイの部屋

日本中に新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出た。
そして、人々が戦々恐々としている。
五月の大型連休は、いつものように田舎や地方に移動して感染を広げたりしないように。
また、娯楽施設などに集まって感染しないようにと言う事のようだ。
今までマスコミでは、感染防止が先か、それとも経済維持が先かが議論されていた。
が、今回の緊急事態宣言で命の方が経済よりも優先と言うことになった。
経済面では全国民に十万円を支給してダメージを多少とも補う事となった。

さて、この命か経済かの選択が、最近私の身の回りでも起こっている。
つい先日、知り合いの高齢の男性の車に乗せてもらう機会があった。
田舎の国道を走っていた時、その運転手の男性が日頃の苦言を漏らした。
「近頃、年寄りが横断歩道や信号機のある場所を渡らず、横着してあちこちで横断していて危なくてしょうがない。
っつたく、規則を守らない奴が悪いんだ。
事故になって命を落としても、自分が悪いんだからしょうがない」
と憤懣やるかたのないと言う様子だった。
この時、私は、命に関して私とは根本的な違いがある事を感じた。
私も視覚障害者になるまでは、おそらく彼と同じ考え方の持ち主だったかも知れない。
規則を守らない方が悪い!と言う近代的?日本的?な考え方である。
こんな話を聞いた。
ある視覚障碍者が、1人で岐阜の町の中のいつもの道を歩いていた。
いつもの信号付の交差点の横断歩道をひとり渡っていた。
その時、一台の車が猛スピードですぐ前を横切り、彼は咄嗟に驚いて尻もちをついた。
「あなたが悪いのよ、信号は赤なんだから!」
走り去る車から女性の叱声が聞こえたと言う。
どうやら、視覚障害の彼が何かの勘違いで、赤信号を青と思って横断していたらしい。
危うく命を落とすところだったようだ。
私も同じような経験があった。
それは、まだ視覚障碍者になる前の大学生の時の事だった。
名古屋の中心街の栄の丸善本屋へ高齢の飛騨のおじさんと行った時の事だ。
細い裏道路の向こう側に本屋の入口が見えたので、その道を横切ろうとした。
のんびりした田舎から来た高齢のおじさんと一緒なので、横断歩道を探したが、三廿メートルほど先の本堂しか見当たらなかった。
裏道で車も来なかったので、一気に渡ろうと私が先導して走り出した。
その時、本堂から一台のタクシーが突っ込んできた。
私も後ろのおじさんもまだ渡り切っていないのに、そのタクシーの運転手は怒った顔で、むしろスピードを上げて突っ込んで来た。
あわてて駆けたが、危うく引っかけられそうになった。
二人とも肝をつぶし汗びっしょりになった。
明らかに、運転手は、悪いのはそっちだ、ひかれても文句言えないぞ!と言う感じで殺意さえ感じた。
それ以来、私は都会の車には用心する事になった。
その後にブラジルに住んだ時は、皆は優しい人達ばかりだったが日本ほど信号を守らなかった。
なので、青信号を渡っていても、通る車の方を注意する癖がついた。
しかし、そんなブラジルでも日本より優れた点があった。
例えば、国土の広いぶらじるでは、町と町は広い無料の高速道路でつながれていて、皆はかなりのスピードで走っている。
ところが、町や村へ入る道には、その入口付近の道路には、必ず緩やかな凸部が設けられていた。
なので、車はスピードを二、三十キロほどに落とさないと、ガタンとまるで石に乗り上げたような衝撃を受ける。
「この先は住宅地だから、スピードを落とせ、ここは歩行者優先だからゆっくり走れ!」
なんて、村人や警察が口うるさく言わなくてもよい。
ガッタン!と言う一度の大衝撃が、運転手の体に一生忘れないほどその掟を教えてくれる。
日本に帰ってきた時、このブラジルの凸部が有ればよいとつくづく思った。
と言うのは、私の住む村では、国道を走っていた車が、住宅地の県道や町道に入ってもスピードを落とさずに、同じスピードで走っているからである。
特に、夜中には、国道の信号待ちを嫌って、並走する私の家の前の旧道をバイパスのようにすっ飛ばす車がある。
危なくて家の前でも歩けない。
これなどは、ブラジルのように村の出入り口付近に緩やかな凸部を設ければ、口うるさく言わなくても車のスピードは確実に落ちる。
特に日本人は車を大切にするから間違いない。
この凸部は、ここから住宅地で歩行者優先だと言う無言の宣言?である。
なので、守りそうもない表示看板よりも安上がりで、効果は実証済みである。
子供やお年寄りの歩く住宅地の人身事故を避けるためにも、是非とも日本でも設置してほしい。
もし、こんな凸部を日本中の町や村の住宅地区に設けたらどうだろう?
冒頭で述べた運転手の爺さんは烈火のごとく怒る事はまちがいない。
なぜなら、彼の言い分は次のようだったからだ。
「日本の道路は俺達運転手達の払うガソリン税で造られているんだから、車優先が当然だ。それにちゃんと信号や横断歩道まで設けてやっているんだから、規則を守らずに横着して勝ってに横断する歩行者が悪い、ひかれて死んでも仕方ない」
これは、前述の女性ドライバーやタクシー運転手と同じ考え方であると思う。
車優先!だけが彼等の頭全体を支配していて、他の多様性的な考え方が入らない。
彼等は、高齢者や障碍者や子供達弱い立場になった事がないから、自分の考え方が正しいと思い込んでいて疑わないのである。
これからは、そんな考え方は改めてもらわなきゃ!と私は、先の知り合いの高齢運転手に反論した。
「それは間違っている。規則を守らないから車にひかれても仕方ないなんて!日本は生活道路と車用道路がはっきり分かれていなくて混然としているから勘違いする人が多いけど、生活道路は歩行者が優先だ。だから例え規則違反でも人をひいたら車が悪い、高速道路は車のための道だから車優先だが、それ以外は生活道路だから人が優先だ。あなたももっと高齢になれば遠くの横断歩道よりも近くを横断するようになる。認知症になれば規則も守れなくなる。だからと言って、わざとひいたとすれば、それは車が悪い」
と言うと、案の定、彼は言い返した。
「いや、そんな風になったら、車は飛ばせなくなり、予定の仕事もできなくなる、経済がめちゃめちゃになる。車を飛ばすためにガソリン税を払っているんだ、車が優先だ」
私は、彼のためにも、この議論に負ける訳にはいかなかった。
「だから、これはお年寄りの命か、車や経済かと言う問題だ」
「・・・」
「あの、何のために車があるのか、何のために経済があるのかだ。すべて人のためにあるんだ。車も人のためにあるんだ。それが、人よりも車の方が大切だとしたら、それは本末転倒だ、本当の文明じゃない。真の文明とは人の生命の安全が保障される文明だ、人の命が軽く扱われるとしたら、それは野蛮な文明だ」

(つづく かな?)