ハイハイハイハーイ、おまたせ、昨日は更新できませんでごめんなさいでした。
今日は天気が良く、そのためか先生の原稿が届きましたので、早速、小説に参ります。はい、では、開幕開幕!
368 嬉しき神の贈り物?
「えっ、ハンドベル?何だ、ハンドベルって?」
太郎が思わず怒鳴った。
「英語よ。だーから、村長さんが、手鈴って言ってるでしょ?」
ハナが怒鳴り返した。
「えっテスズっって?」
「だーから、手で鳴らす鈴よ、鈴って事よ」
ハナがまた言い返した。
すると今度はハナナが、
「そうよ、これは鐘じゃなく鈴って言う事よ、太郎さんが言ってた鐘じゃなく、私達が言ってた鈴が当っていたと言う事よ」
「いや、お前達は風鈴って言ってたぞ」
「だーから、手で振って鳴らす風鈴って言ってたのよ、風を取れば鈴でしょ?」
太郎が、また言い返そうとすると、エアロビクスの姉さんが口喧嘩を止めた。
「はーい、これはハンドベルです。外国で始まった楽器ですから日本語は鈴でも鐘でもどちらでもいいと思います、が私達はハンドベルと呼びましょうね、はーい、では、このハンドベルの説明をいたします」
小さなハンドベルを手に持った、三女のような幼い子供達は、素直にカッコいい先生の話に耳を傾けていた。
が、大きなハンドベルを持たされた爺さん達や大人の男達はかなり不満顔だった。
「ワシは、ハンドベルでも、手鈴でも手鐘でも名なんかどうでもいいが、要はこの重い物を振って鳴らすって言う事じゃろう?ワシはこんな重い物を振る事はおろか、持っているだけでも大変じゃ、説明って何じゃ?」
と長老と修験者達は、機嫌が悪く、ぶつぶつと不満を言い合っていた。
そんな事などおかまいなく、エアロビクスのお姉さんが、元気な声で、
「はーい、皆さんが手にお持ちのローソク台、これは実はローソク台でなく最新のハンドベルでした。
この中の空洞を覗きますと振り子が付いていますので、ガムテープを剥がして振り子が自由に動けるようにしてください。
その後は、ローソクを立てていた棒を手で握って横に振ってください。ベルの音が鳴ります」
この話を聞いて、皆が空洞のガムテープを外し、それぞれ自分のハンドベルを鳴らし始めた。
すると、次第に大広間が鈴の音や鐘の音で満たされていき、最後は大音響が鳴り響いた。
やがて、エアロビクスのお姉さんが、トコトコと自分が乗る高いピンクの立ち台と指揮者の持つタクトのような棒切れを持ってきた。
それが青白く光っていたので、皆は何だろう?と注目して静かになった。
「はーい、それでは、これから皆さんで音を出す練習をいたしましょう」
と立ち代の上に立って、その青白いタクトを振り始めた。
「はーい、それではまず小さなお子さん達の高い音から順番に鳴らしてみましょう。このタクトの青白い光が当った人達はハンドベルを振って音を鳴らしてください、はーい、ではそこの小さな皆さん達、鳴らしてください!」
と最前列の左端の三女の周りの子供達にタクトを向けた。
タクトからは青白いピカピカした光が出て、驚いた子供達が慌ててハンドベルを振った。
「キンキンキンキンキン!」
「コンコンコンコンコン!」
タクトが次第に大きな子供達へ移動すると、鳴らされるハンドベルも大きくなって、音も低くなっていった。
「ゴーンゴーンゴーンゴーン!」
タクトが最後列の大人達にまで移動すると、鳴らされる音も、バスからコントラバスの超低温のベルの音になった。
「はーい、大変良くできました。もっと音が揃うと、もっと美しく聞こえますが、初めてにしては大変良かったと想いますよ」
子供達は既に、初めて自分達が鳴らす音に感動していた。
その上にさらに褒められたので嬉しさで皆が頬を赤らめていた。
ところが納得が行かないのは長老と修験者の爺さん達や大人達だった。
「こんな鳴らし方で曲を演奏するには、かなり練習をしなければならないぞ」
「今夜はいったいどう言う方法で皆で曲を演奏するんじゃろう?」
「まさか、徹夜って事は無いと思うが、あの若い元気な姉ちゃんだから有り得るかも?」
大人達も加わって、列の後ろでザワついていると、ピアニストのお姉ちゃんが、小さなアプライトピアノのような、オルガンのような楽器を皆の前に運んできた。
そして椅子に座って、鍵盤を弾き始めた。
曲は「皆が知っている「古里ふるさと」だった。
「うさぎ追いし、かの山、こぶな釣りし、かの川、夢は・・」
ところが、驚いた事に、ピアニストのお姉さんが弾いた楽器からは、ピアノやオルガンの音ではなかった。
「えーっ、ウッソー!」「おーっ、ホントかい?」
それは何と、ハンドベルの音だった。
初めて聞く、ハンドベルの「ふるさと」だった。
皆は驚きながらも本物のハンドベルを聞いているような気持ちになった。
そして味わうように耳を傾けていた。
「はーい、皆さん、今の音をよくお聞きになりましたか?私達も皆でうまく合わせて弾けるようになると、このような美しいハンドベルの「ふるさと」になりますよ、はい・・・」
そう言われても、皆はこんな風に弾くためにはいったい何日練習しなければならないだろう?とため息をついた。
そんな皆の顔を見て、エアロビクスのお姉さん先生が、また大笑いをした。
「ホホホホホ、まあまあ皆さん方、そんな心配顔をしなくても大丈夫ですよ、ご安心ください。
皆さん、私が初めに、今回は今までにない試みだと言った事を憶えていらっしゃいますか?ホホホホホ」
そう言って彼女は、今度は発明兄ちゃんをタクトを振りながら呼んだ。
「さあ、これからが、今までにない世界初の音楽会の始りです。
その発案者はこの発明兄ちゃんですので、彼に説明してもらいましょう」
と言って、指揮台を譲り、司会を発明兄ちゃんにまかせた。
発明兄ちゃんは、指揮台の上に乗って、全員に呼びかけた。
「皆さん、手持ちのハンドベルをよく見てください。
そして、手で持つ棒の上を右に回してください。
するとスイッチが入り、小さな赤い光が点きます。
これで、ピアニストの私の妹が弾く楽器の鍵盤と無線でつながります。
妹が曲を弾くと、その鍵盤から電波が出ます。
すると、鍵盤と同じ音の皆さん方のハンドベルが、明るい光を点滅させて小さな振動をします。これが合図です。
なので、皆さんは、この合図の光と振動を感じたら、すぐにハンドベルを揺らしてください。
そうすると、妹の弾く曲と同じ曲が弾ける事になります。
もちろん、皆さん方のハンドベルの方が音も良いし、数も多いので、妹の弾く演奏よりも素晴らしさも迫力も違います。
さあ、では、早速、さきほどの「ふるさと」の曲で一度練習をしてみましょう」
と言うと、ピアニストの妹が楽器の音を小さくして弾き始めた。
「さあ、では、電波のスイッチを入れます。皆さんは自分のハンドベルの点滅光と振動に集中してください」
全員がそれぞれ夢中になって点滅光と振動を感じると、慌ててハンドベルを振って鳴らした。
すると、大広間には壮大な大音響の「ふるさと」の曲が流れた。
三女達子供達も大人達も、ほぼ全員が自分達の演奏する「ふるさと」の迫力と調べに感動して、胸を振るわせていた。
演奏が終わっても、皆は感動でしばらく沈黙していた。
「皆さん本当に素晴らしい演奏でした。ここで私からの野暮なお願いですが、データを取るために、もう一度全く同じ「ふるさと」の演奏をお願いいたします。
これは皆さん方一人1人が光と振動でハンドベルを鳴らしますが、一人1人早い遅いの個人差があります。そのデータを取って、その個人差に応じて、光と振動をちょっと早くしたり遅くしたりして皆が同時に音が出せるように調整するためです。はい、では、また演奏をお願いいたします」
再びピアニストのお姉さんが鍵盤を弾きはじっめ、演奏が始まった。
始めは少しバラバラだった音も、次第にピッタシ揃うようになった。
その時、突然ピアニストのお姉さんの手が、左右に忙しく鍵盤を弾き始めた。
すると、全員のハンドベルの点滅光と振動も急に忙しくなり、皆もその動きに付いて行こうと必至に振り続けた。
その結果、単純だった「ふるさと」の曲には様々な伴奏が加わって、以前の壮大さを超えてフルオーケストラのような素晴らしい音楽が大広間を満たした。
曲が終わると、演奏していた皆も大感激の涙を流すくらいだった。
「パチパチパチパチ!」
エアロビクスのお姉ちゃんが感激して、頬を紅潮させて惜しみない拍手を送った。
すると皆もお礼を言うように、ハンドベルと片手手を叩いて拍手?した。
「本当に素晴らしい演奏でした。この今回の演奏のレベルは一流の楽団にも勝るとも劣らないと私は思います。
それで、私からの最後のお願いですが、これから同じ方法で演奏してほしい曲があるのです。
それを録音して多くの人達に聞いてほしいのです。きっと、皆さんも気に入る曲ですので、皆さんは弾きながらお楽しみください。はい、では、ピアニストのお姉さん、演奏を願います」
と言って、エアロビクスのお姉さんが指揮台の上に乗って、タクトを振り始めた。
皆はハンドベルを振りながら、思った。
「あれっ!この曲って、確かどこかで聞いた事があるわ、どこだったかしら?」
(つづく)