ユキユキユキユーキ、はい、雪いっぱいでーす。誰でしたかね、今年は暖冬だって言ってたのは?
そのウチの先生、原稿が遅くて、体調悪いとか、61回だから、紅白の日にするとか、訳の分からない事を言って、結局、今年一階分を免れようと言う魂胆みたいで、はい、あっし弟子の飛騨の小路 小湧水が代わりにお詫びいたします。はい、今年最後の回と言うことで、よろしく願います。はい、来年ももちろん続きます。
ところで、ウちの先生、パソコンを新しくしたみたい。テレビを見てますよ。それに、光回線になったもんだから、図書館の本を直接ダウンロードして聞いているようです。
pcもソフトも古くなったから、と言ってましたが、脳細胞や体はどうなんでしょうか?まあ、様子を見ることにしました。
はい、長々と余分なことに時間を取りました。では、早速、開幕といたします。はい、では、開幕、開幕!!
61 鉱山のカラクリ
「ああ、ただいま!遅くなってしまった。ついでに大きい方もしてきた。お陰ですっきりした。なんだか、頭もさえてきたみたいだ。あれっ!ハナは?」
部屋にもどるや、太郎が聞いた。
夫婦と息子は、一瞬品のない太郎の話しぶりにたじろいたが、すぐ笑顔にもどり、
「はい、もうもどると思いますよ。女性用の化粧室へ案内していますので」
と奥さんが答えた。
すると、まもなくハナ達がもどって来た。ところが、一緒にもどって来た若い奥さんが、
「あれっ!この部屋って、なんだかケモノの匂いがするわ。そう、犬とか猿とかいう・・・」
と言って、鼻をクンクンさせながらフスマの方へ近づいていこうとした。
「あっ、ああーっ!それは、」
太郎があわてて遮った。
「あらっ、どうしたんですか?」
主人夫婦と息子や番頭夫婦が太郎の反応に驚いて問い詰めた。
ケンやゴクウがフスマの向こう側に隠れている。ハナもあわてた。
「ああ、太郎兄ちゃん、臭いわよ。もう何日も風呂へ入っていないわ。それに、着ている物も洗濯していないわ。そうだ、洗濯をしなきゃ。あの、風呂や洗濯ができますか?」
ハナは大声で言うと、話題をそらそうと、太郎の着物の匂いをかいで顔をしかめた。
両夫婦と息子は、少し驚いた様子で、顔を見合わせていたが、やがて奥さんが、
「ああ、そうでしたか?私は気づきませんでした。もう何日も?それなら、ここには温泉もありますから、どうぞ、ゆっくりつかって体を心行くまできれいにしてください。代わりの着る物も用意しますから」
と言って、若い奥さんに案内するよう指示した。
今は昼だから、温泉は誰も使わない。一応、兄弟だから、と言うことで、太郎とハナは、一緒に洗濯もできる大きな浴場に案内されることになった。
そこは、部屋から廊下を歩いていって、一番奥の場所にあった。
廊下から戸を開けると、天井も壁も岩で囲まれた大きな浴場となっていた。天井に開いた穴からは、光が射しこんでいて浴場全体を明るく照らしていた。
「ここが、温泉です。昼間は誰も来ないから、ゆっくり洗濯もしてください、終わったら部屋におもどりください。私はこれで失礼します」
と言うと、若い奥さんは退いた。
「ああ、やばかったな。ゴクウやケンの匂いをかぎつけられたぞ」
風呂の湯につかると、ひと安心した太郎がハナに言った。
「ああ、私もあせったわ。ケンもゴクウもここへ来て風呂に入らないと、また匂いで見つかってしまうわ」
とハナが答えた。
「心配しなくてもゴクウのことだ。すぐ、ここへ来るさ」
と言って、太郎が、のんきそうに湯で顔を洗っていると、案の定、岩陰から、黒い影が現れ、ケンとゴクウが姿を見せた。
「あっ、ゴクウとケンだわ、よくここが分かったわね」
ハナが声をかけると、
「ええ、私達は家の廊下じゃなくて、外へ出て、温泉の匂いを探してここまで来ました。早速、ケモノの匂いを落とします」
と言って、ゴクウとケンも風呂へ飛び込んだ。
「わーっ、洞窟の岩風呂だ、なつかしいな。前にもよく入ったよ」
ゴクウとケンと太郎は大喜びでふさげ合って遊んでいた。
ハナも昔を思い出して、すっかりその頃の気分にもどっていた。
「さあ、洗濯も終わったし、あとは乾くのを待つだけだわ。代わりの着物を着て、家の外を案内してもらいましょう」
とハナは機嫌良さそうに皆に言った。代わりの衣服は、絹のきれいな浴衣のようで、ハナはすっかり気に入ってしまった。
「ハナさん、太郎さん、気をつけてください。いつも一緒にいて、決して離れ離れにならないようにしてください」
とゴクウが真面目な顔で言うと、
「ああ、ゴクウも疑い深いな。親切な人達ばかりだから、心配ないよ」
と太郎は笑って相手にしなかった。
「じゃあ、私達は行くわ。、いつでもゴクウさん達を皆に紹介してあげるから、その気になったら、姿を現してね」
とハナも安心しきっている様子で、ゴクウとケンを残して、太郎と一緒に廊下に出て、部屋にもどった。
「あらあら、お帰りなさい。まあ、なんてお似合いでしょう。とてもきれいだわ。ちょっと皆さん、ハナさんを見て」
と奥さんの言葉に、皆がハナを見つめた。
ハナは真赤になりながらも、息子の熱い視線を感じていた。
「では、早速、この家の外、まあ洞窟の中ですけれど、ご案内いたしましょう。ハナさんには息子が、太郎さんには番頭が説明します」
と主人が言うと、ハナと息子を先頭に、太郎と番頭が、そして若奥さん、主人夫婦との順で廊下に出て、家の玄関から外に出た。
外はとても大きな洞窟だった。上の方には所々穴が空いていて、光が射し込んでいた。暗い所には松明のような灯りがあって、歩くのに不自由しなかった。
「この先は二つに分かれています。右の洞窟には、花畑や動物園や魚園があります。左の洞窟には、鉱石から金や銀を取り出す仕事場があります。私は右側の花畑を担当していますので、是非ハナさんに見てもらいたい物もありますので、右の洞窟へまいりましょう」
と言うと息子は、ハナの手を取って、右側の洞窟へと案内した。
ハナは、後ろの太郎を振り返って、ついて来るよう目で合図すると、息子の手に引かれて進んで行った。
太郎もその後を付いて行こうとすると、番頭が手を引いて、
「太郎さん、この二つの洞窟はすぐまた一つになります。太郎さんは、花なんかより、金や銀に興味ありませんか?もし、ほしければいくらでも差し上げますよ。やはり男なら、金や銀の取り出し方の方が興味あると思いますが・・・」
と言って左の洞窟を勧めた
太郎は男ならと言われ、さらに金をくれると聞いて、迷うこと無しに、
「そっ、そりゃそうだ。花より金だ。さあさあ、俺達は左の洞窟へ行こう」
と、太郎が先頭に立って急いで行ってしまった。
残された若奥さんと主人夫婦は、満足そうに微笑んで目と目で見つめ合うと
「さあ、これでひとまず安心だわ。私達は次の準備をいたしましょう」
と言って、家の方へもどってしまった。
しばらくすると、ゴクウとケンが姿を現した。
「あれほど言ったのに、本当にしょうがない太郎さんだ。ケン、お前はハナさんの方を頼む。私は太郎さんの方を見に行くから」
と言うとゴクウとケンは左右に分かれて洞窟へ入って行った。
ハナの案内された右の洞窟には、天井から光が射し込み、水が小さな滝のよう
に注いでいた。さらに、温泉熱のためか洞窟全体が温かくまるで温室のようだった。そこに、無数の花や緑の葉が茂っていて、細長い洞窟全体が花の街道のようだった。
「わーっ、きれいなお花がいっぱい!」
ハナは、生まれて初めて見る花々に、もう夢中になって見とれていた。そこは、まぎれもなく花の天国だった。
「わーっ、きれい!これも、これも!」
ハナの歓声は止まらなかった。
「あの、よかったら、好きな花をこれに持って帰りましょう」
息子は優しい声で、籠を差し出した。
「ええーっ、ほんと?それじゃ、この花と、うーん、あの花も」
ハナは少し甘えたような声で、指さした。息子はそれ等の鼻を鎌のような刃物で切ってハナに渡した。
「わーっ、いい香り!」
ハナはうっとりして、目を閉じてその花の香りをかいでいた。
その様子を遠くから見ていたケンは、うなり声を出そうとしたが、がまんした。
一方、太郎はと言えば、
左の洞窟をどんどん自分から先頭に立って進んで行った。洞窟はそんなに大きくなかった。天井も手を上げれば届きそうな高さだった。。暗い洞窟内には一定間隔で松明が燈してあって、壁の所々が黄金色に光っていた。
「あれっ!番頭さん、これって金ですか?小さいけれど」
太郎が立ち止まって壁を覗き込んだ。
「はい、そうですよ。この洞窟はもう掘り終わったものです。掘っていた時は、もっと大きな金塊が出ましたよ。拳ぐらいの塊もありました。このずっと先に未だ掘っている場所があります」
と番頭が説明すると、太郎は俄然やる気が出て、
「ええーっ、このずっと先?本当ですか?それじゃ、急ぎましょう」
と、まるで駆け出していた。
洞窟は下り坂になっていたため、駆け足の太郎も疲れなかった。が、それだけ山の中の地下深くに進んでいたのだった。
かなり進んで、もう飽き飽きした頃、何か、水が大きな部屋を落ちるような音が響いて来た。
「あれっ!番頭さん、あれは何の音ですか?」
「ああ、あれこそが、ここの鉱山の最大の秘密場所です。金塊ばかりならいいんですが、石の中に含まれている金は取り出すのが大変です。昔は大勢の人が金槌でその石を砕いて、砂のようにして水で重い金を底に沈めてという方法で集めていましたが、私達の先祖がこの洞窟を発見してからは、そんな面倒なことをしなくても、大量の金を取り出すことに成功したのです。それ以来この鉱山には私達の親族だけでやってゆけるようになったのです」
と番頭がまるで暗誦しているように説明した。
太郎にはそれが、どう言うことなのか、さっぱり分からなかった。口をポカーンと開けたまま立っていると、番頭は苦笑しながら、
「いえ、これは、失礼しました。何はともかく、その洞窟をお見せいたしましょう」
と言って、洞窟の脇にある通路からその音のする方へ案内した。
通路を出ると、大きな空間の洞窟になっていた。しかも縦長である。上から光が射していた。
「わーっ!何だ、ここは、まるで立てた大きなドングリの中みたいだ。わっ、深い、こわい、底に落ちたら命はないぞ」
太郎が叫んで、底を覗いた。
「立てたドングリの中、とは、うまく言ったものです。本当にその通りです。ここは昔はあの天井の穴から水がすごい勢いで落ちて来ていたのです。底は滝壺なんです。今は少しの水が流れて底の穴から出ていってますが、・・」
と番頭は説明しながら、近くの穴に重ねてあった縄のような物を出して来た。
「何ですか、それは?」
と太郎が聞くと、
「はい、これは下へ下りる縄梯子です。私達はこれで底に降りて金を集めるのです」
と言って、それを放り投げると、梯子が底に達した。
「ええーっ!このドングリ底に金が有るの?でも、どうして?」
太郎はいまいち婦に落ちなかった。ひょっとしたら自分をこの底に置き去りにする罠ではないかと頭をよぎった。
「ええ、実は梅雨時になると、この上の穴から水が勢いよく落ちてきて、ここは地下の滝になるのです。私達はその頃、この滝壺に金の含まれた石を投げ込んでおくのです。すると、この滝壺に水が落ちてすごい勢いで石を拡販します。石同士が互いに砕き合って砂になり重い黄金がこの底や水の出口の底に貯まるのです。今年はもう作業も終わりました。今は誰もいませんが、確か、未だ底には取り残した砂金があるはずです」
と言うと、番頭は黙って立っている太郎の前の縄梯子をどんどん下りて底に着き、何かを探し始めた。
「あっ、やっぱり、あった!」
と言って、掌いっぱいの砂を太郎に向かって広げた。それは黄金色だった。
「ええーっ、それって金?」
驚いた太郎は、あわてて縄梯子を下り、滝壺の底をまさぐり始めた。底には薄く水が張っていた。その底の表面の砂をよけると、まさしく黄金色の砂が出て来た。
「わーっ、金だ、金だ!」
太郎は夢中になって、掌で砂金を集め始めた。
「ああ、けっこうたくさん残ってますめ。太郎さんもずいぶん集めましたね。そうだ、何か入れる袋を持って来ます。確か上に置いてあるはずですから」
と番頭が言うと、太郎は、
「袋?それはいい。はっ、早く取って来て」
と番頭を急かした。番頭は、、梯子を上り始めたが、太郎はわき目もふらず、夢中になって砂金を集めていた。
ところが、番頭は縄梯子を上り終わると、腰をかがめてゆっくりとその縄梯子を引き上げ始めた。太郎は全然気づかないで相変わらず砂金を集めていた。
その頃、主人夫婦は部屋をきれいに飾りながら、話し合っていた。
「あの男の子は、かわいそうだが、仕方がないな。本来なら、女の子だけが来る予定だったんだから、まあ、これも運命と思ってあきらめてもらうしかない。昔なら、鉱山労働者として生かしておく手もあったが、今では、人手もいらないからな。ここの秘密を知ったからには外でしゃべってもらっては困るからな」
その主人の話しに奥さんは黙っていた。
「それよりも、息子はうまくあの子の心を掴んだかしら?でないと、こうした今夜の宴会も無駄になるから」
と少し心配そうだった。
ハイハイハイハーイ、とうとう時間となりました。いや、太郎さん気をつけて、ハナさんもだまされないように、てな訳で、今年も以上でおしまいにいたしたいと思います。はい、多くのお運びをいただきまして、厚くお礼を申し上げます。
来年もより以上のお運びをお願いいたしまして、ごきげんよう。はい、よいお年を!!