飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

(続)連載小説 「幸福の木」 その239話 五万年先から五万年前?

2020-04-03 12:16:43 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす、いやいや新型コロナウイルスが世界中で大変です、東京もジリジリと、かつてのような大不況になるとか?
でもいい面もあります、三重大学では授業すべてをオンラインでするとか、小中学校でもオンライン開始したとか、いづれ田舎にいながら大学卒業もできるようになるかも?
はい、なぜか今週はウチの先生の原稿も小説が先です、あっ、よく考えたら、先週サボリでした。
ナーンダです、はい、余談はこのくらいにして、早速、小説に参りまーす、では、開幕開幕!

239 五万年先から五万年前?


「長老さん、今度は使う薬草を間違えないでね、大事な私の命がかかっているんだから」
ハナが、からかい口調で言った。
「もっ、もちろんじゃ、前回は、もう何十年ぶりじゃったから、置き場所を勘違いしていただけじゃ、こっ、今度は大丈夫じゃ」
あわてた長老が額に汗をかきながら答えた。
「長老さん、それに、薬草の量もね、多過ぎると命が無くなるんでしょ?この前、あたいは、危うく死ぬところだったんだから」
ハナナが口を尖らせて言った。
タタロや太郎も、全くその通り!と言う厳しい目を向けた。
「もっ、もちろんじゃ、この前の失敗は全く以て弁解の余地もない、この通りじゃ、素直に謝る」
と長老はペコッと頭を下げた。
あまりにも早く長老が自分の非を認めたので、太郎達も予想外と顔を見合わせた。
「だが、もう大丈夫じゃ、襟の中から薬草と一緒に昔のメモ用紙が出て来た、だから、今度は間違いなく使う量は大丈夫じゃ、ほれっ、これっ、これがメモ用紙じゃ」
と長老は、折りたたまれた小さな布のような物を出して、手渡そうとした。
太郎とタタロは、長老の掌の上の物を見たが、如何にも汚れていて汗臭そうだったので、手を出さなかった。
「そんな物は、俺達にはどうでもいいんだ、それよりも今度はちゃんとやってくれよ、最近、あんたはかなり信用を落としているんだから、長老としての誇りを持ってしっかり対処してくれよ」
太郎が、いつもとは違い、まるで年上の隊長のように注意した。
長老は、お前にそこまで言われたくない!とムッとしたが、ここは我慢して、その事はおくびにも出さなかった。
「それじゃ、ハナちゃん、準備はいいわね?ちゃんと水もたくさん飲んだし、食べ物も食べたし、それに、大婆ちゃんの姿も憶えたし、大地から大婆のいる宇宙のイメージも、あたいの話ではっきり憶えたから、後は思う事と念ずる事だけよ、他の事なんか思ったら駄目よ」
ハナナは、まるでお姉さんのようにハナに言い聞かせていた。
「あの、いいかの?今回はそんなに長い時間の旅じゃないから、長くても半日ほどじゃ、だから食べ物まで腹いっぱい食べなくてもいいと思うけど、・・まあ、いいや・・」
長老が二人の話に口をはさんだ。
「でも、万が一と言う事があるでしょ?もし何かが起こって帰れなかったら、どうするの?肉体はどんどん痩せていくのよ」
ハナナが、キッ!と怒った顔で言った。
驚いた長老は黙ってしまった。
「それじゃ、始めましょう、では、」
ハナナの威厳に満ちた指図に、ハナは長老が準備した薬草の煙を吸い込んだ。
やがてハナは、頭がフラフラしてきて倒れ込んだ。
太郎とタタロが慌ててハナの体をかかえ込み、床の布の上に横たわらせた。
皆が、前のハナナの時のように、ハナの周りを取り囲んだ。
「あれっ、今回は、前のように大婆は迎えに来ないのかな?」
太郎が長老に聞いた。
「うっ、あー、さあー、?」
長老は答えに窮した。
「今回は来ないわよ!前は長老さんの失敗であたいが死にかけていたんで、見るに見かねて大婆が助にきてくれたのよ、今回はそんな状況じゃないから来ないわ」
ハナナがキッパリ言った。
「ワンワンワンワン!」
突然、おとなしくしていたケンが天上に向って吠えた。
ゴクウも顔を上げて天上を見つめた。
この時、案の定、ハナは肉体を抜け出して、天井付近から皆や周囲の様子を見ていた。
(ああ、そうだ!時間があまり無いから、先を急がなきゃ!)
と言うと、ハナは天に向かって吸い込まれるように消え去った。
「ああ、今、いなくなりましたね、たぶん天へ行ったんでしょう」
天井から皆に視線を移してゴクウが言った。
「えっ、ゴクウ、お前は見えるのか?」
太郎が驚いて聞いた。
長老も驚いて、ゴクウの答えを待った。
「いえ、見えないですけど、感じるだけです」
「感じるって?えっ?・・どう感じるんだ?」
太郎がしつこく聞いてきた。
「ええ、・・だから、何と啼くいるような、または何となくいなくなったような、そう言う感じです」
太郎達には、期待していた答えとは違っていた。
「ハナちゃんがいなくなった事は、あたいにも分かるよ」
ハナナが、ごく当たり前の事よ!と言わんばかりに話に割り込んできた。
「だから、そう言う言い方はやめてくれ、分かるじゃなくて、そう思っただけだろう?何かはっきりと見たような言い方はやめてくれ、誤解をするじゃないか、なあ、長老さん、そうだよな?」
太郎が怒ったように言った。
「えっ、そっ、そうじゃな、まあ、ああ安心した、まあ、皆は似たようなレベルじゃから、感受性の問題じゃろうか?」
こうした洞窟内のハナナ達の口論を後目に、ハナは天に向かっていた。
そして、まっしぐらに星々の見える宇宙の大婆のいる場所へ飛んでいた。
「大婆さーん、大婆さーん!」
小さな声で呼び続けながら、前へ前へ飛んでいると、前方の闇の中に光のオブジェのようなラセン状の物が見えてきた。
「あっ、あそこだわ、ハナナちゃんが言っていた場所は!」
そう思って、ハナが回りを見渡すと、漆黒の暗闇の中に楕円状の光り輝く大きな銀河が見えた。
「ああ、あれだわ、天の川銀河だわ、聞いていた通りだわ、ここに間違いないわ」
ハナは、ようやく安心した。
「大婆さーん、大婆さーん!」
安心した大きな声で呼びながら、ハナが光の螺旋状のオブジェに近づいた。
光のオブジェは見上げるほど大きくなった。
すると、その手前に、ポツンと腰かけているような婆さんの小さな後ろ姿が見えた。
「あっ、あの人だ、あれが大婆さんだ、間違いないわ」
ハナが嬉しくなって傍まで近づいた。
大婆は振り向きもせず、何かを考え込んでいるような様子だった。
「あの、もしもし、大婆さん・・」
ハナは、自分の高まる心を落ち着かせて、その後ろ姿に声をかけた。
「・・・・」
大婆は、まるで聞こえないのか微動だにしなかった。
「あの、大婆さん、初めまして、私はハナと言います・・」
ハナは改めて声をかけたが、後ろ姿の大婆は何の反応もしなかった。
(えっ、どう言うこと?)
ハナは不安になって、横から大婆の目の前に移動した。
しかし、それでも大婆はハナの姿を見ようとしなかった。
「あの、大婆さん、大丈夫ですか?私ハナと言いますが、今回、初めて・・」
ハナは改めて正面から挨拶をしようとした。
しかし、奇妙な事に、それでも大婆は目の前のハナをまともに見ることなく、表情も変わらなかった。
「あの、お婆さん、どうかしたのですか?」
驚いたハナは、膝まづいて大婆の顔を覗き込んだ。
それでも大婆は黙ったままだった。
「えっ?おっ、お婆さん、どうしたんですか?・・生きてますか?」
とうとうハナは、両手で大婆の両膝を掴み、顔に息が吹きかかるほど近づいて聞いた。
その時、大婆の眼が初めて動いた。
「えっ?生きてますかって?おおっ、冗談じゃない、もちろんじゃ」
その声は力強く厳しかった。
「あっ、よかった、よかった!・・あの、ハナと言いまして、今回・・」
ハナは安心して優しい声で挨拶を始めた。
「ああ、娘よ、そんな事は分かっている、また来る事などとうの昔に分かっていたわい」
大婆は、面倒臭そうな不機嫌な口調だった。
「いえ、お婆ちゃん、違うんです、前に来たのはハナナちゃんで、今回は私、ハナです・・」
「ああ、そんな事も分かっている、似たようなもんじゃ、どっちでも大差はない」
大婆は口の悪い人だとハナは思った。
「いえ、私達はよく似てますが、姉妹でも親戚でもない、全然別の他人の別人格です」
口の悪い人にははっきり言わなきゃと、ハナは言い切った。
「えっ?驚いた、別人格だって?おお、別人格とはズイブン大袈裟に言ったもんじゃ、ふん!、まあいいじゃろう」
と矛を収めたように、大婆は、言い争う事をやめた。
「あの、今回、私はどうして私とハナナちゃんの兄妹が似ているのかを知りたくて来たんです、大婆さんがその方法を知ってるとハナナちゃんが言ってたので、是非とも、教えてください、お願いします」
ハナは、膝まついたまま襟を正して頭を下げた。
「なに、何かと思えば、そんな事かい、そんな事はたやすい事じゃ、お前達の数年前の過去を覗けばすぐに分かる事じゃ、ほんのわずかの時間じゃ、ははははー」
と大婆は、少し機嫌が治ったように大笑いした。
「ああ、よかった、それじゃ、大婆さん、お願いですから、すぐにも教えてもらえませんか?実は私、あまり時間が無いんです」
ハナがせっついた。
「えっ、なに、時間が無いって?別にお前は何か月も何年もいる訳じゃないから、そんなに慌てる事はあるまいに」
「いえ、長老さんが、今回は薬草の量が少ないから、半日もしない内に目覚めると言ってました、なのでそれまでに帰らないと」
ハナは懸命に説明した。
「えっ、なに、あの爺さんが?・・・ああ、あの爺さんの言う事は当てにならないのじゃ、大丈夫じゃ、そんなに心配したことじゃない」
と大婆は、また大笑いした。
「えっ、そうなんですか?」
ハナが少し驚いた。
「ああ、そうじゃ、別に薬草が切れてもどうって事はない、二、三日は大丈夫じゃろう、お前が帰らなければ肉体は目覚める事はない、それだけの事じゃ」
「はあ、そうですか、それなら安心ですけど・・」
ハナが嬉しそうに答えた。
「娘よ、ワシは今は少々疲れている、ちょっと休憩させてくれ。一服してから、お前の事に取りかかろうと思う、それでいいじゃろう?」
しかし、ハナは腑に落ちなかった。
「あの、大婆さん、疲れたって?先ほどまで、ただジーッとしてただけでしょ?何か難しい事でも考えていたので疲れたんですか?」
大婆は少し苦笑いして、
「ああ、お前はしつこく聞いてくるじゃろうから、始めから詳しく説明してやろう、よく聞くがよい。実は、ワシはお前が近づいて呼ぶまで、未来の世界を観察に行ってたんじゃ」
「えっ?でも大婆さんはここに腰かけていたんですよ、まさか姿を残して、その未来の世界へ行ってたんですか?」
「ほほほほほ、そんな期用な事はワシにはできない。お前がここへ来る事が予め分かっていたので、ここにワシの分身を置いて、もう1人のワシの分身が観察に行ってたんじゃ」
「えっ、分身って?」
「だから、1人のワシを二人にしたんじゃ。もう1人のワシは、今もまだ未来の世界の中にいる」
「えっ、どう言う事なの?魔術なの?そんな事ができるの?」
ハナが驚嘆した。
「ああ、ちょっと難しいかも知れないけど、できるのじゃ。ちょうど、お前とハナナの関係みたいなもんじゃ」
大婆は少し得意顔だった。
「えっ、私とハナナ?どう言う事?私とハナナちゃんは分身どうしなの?」
ハナは、慌てた。
「ああ、その話は、今はよそう。それは後で分かる事じゃからな、ああ、それよりも疲れた、疲れた!」
と大婆は、少しやつれた顔に変わった。
「ええーっ、どうしてそんなに疲れたんですか?ただ見物に行ってただけでしょ?何に疲れたんですか?」
ハナは、気になり知りたかった。
「ああ、実に、ワシ達の未来は荒海や嵐のような大変な山あり谷ありの道のりじゃ、お前達もワシも、これからの未来は艱難辛苦の連続じゃ、ああ考えるだけでも疲れてしまう」
と大婆は口を結んだ。
「えーっ、そうなんですか?そう言えば、洞窟の昔の絵に山が水に沈んだり、火山が噴火している絵があったけど、あれは本当に実際に起こった事ですか?」
「そうじゃ、この先もそう言う事が起こるのじゃ。と言っても、何万年も先の事で、今住んでいる人達には、全く関係ない事じゃけど・・」
「えっ、それじゃ、今住んでいる私達や村の人達は大丈夫なのね?」
「そうじゃ、これはお前達の子や孫の、ずっとずっと未来の子孫の話じゃ、そうそう、そう言えば、面白い事が分かった」
と大婆は、明るい顔になった。
「えっ、面白い事って、どんな事ですか?」
ハナが何かは分からないが、少し期待した。
「それは今から約五万年先の話じゃ」
「えーーっ、五万年って?そんな先の話ですか?」
「そうじゃ、今から約五万年先に、イエス、キリストと呼ばれる偉人が生まれる。そして、後にその年から西暦と言う年を数え始める。その2000年後の話じゃ、つまり五万二千年後の話じゃ」
と大婆が言うと、ハナはがっかりした。
「大婆さん、そんな遠い先の話なんて、私はあまり興味が沸かないわ」
「娘よ、よく聞くがよい、実は、お前達の事を小説に書いた人がいるのじゃ、いや、書く人が出て来ると言うか・・」
「えっ・・小説?、話のことですか?私達の事を?」
ハナは、さっぱり理解できなかった。
「いや、書く人が現れると言った方が正しいかのう?もっとも、その人から見れば、お前達は五万年前の先祖達と言う事になるが」
「えっ、私達が先祖なの?」
「そうじゃ、そう言う事になる。後(のち)に、お前達の時代の特徴はネアンデルタール人と呼ばれる人達も住んでいたり、ナウマン象がいたり、あの御岳の大噴火が起こった事と言う事になるのじゃ。お前も自分の眼で噴火を見たじゃろう?」
大婆にそう言われてハナは、その時の事を思い出した。
「はい、あの年は、美しい円錐状の富士山の上部が吹き飛ばされて、真っ赤な溶岩が流れてきて、とても怖かったです、鳥や獣達も逃げてました」
ハナは大自然の怖さを思い出していた。

(つづく)

ハイハイハイハーイ、そうですね、大自然は怒ると怖いですね、私達人間も大自然を敬い大切にしなきゃ、火山噴火や地震や津波が、ああーっ、最近のゲリラ豪雨や巨大台風もそうかも?そうそう、今のコロナウイルスも人間への警告かも?
ナーンテ、ウチの先生の説教ウイルス?が移ってしまいそう!
そうそう、テレビもサクラ前線どころか、今はコロナ前線?ばかりです。
はい、では、くれぐれもコロナには気をつけて!はい、では、またのお運びを願いまして、バイバイバーイです!