飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

ようやく梅雨明け! 初台風の後

2019-07-30 11:09:39 | 俳句日記の部屋

頭の上 どかんと一発 大夕立ち  湧水

飛騨空に 太鼓とどろき 大夕立ち  湧水

美濃飛騨の 鬼門開きし 令和夏  湧水

山鬼門 祭りて飛騨に 梅雨明けかな  湧水

夏休み 迎えぬ今年の きりぎりす  湧水

きりぎりすに まだ来ぬ今年の夏休み  湧水

せっかちに 揃って早鳴き ひぐらしかな  湧水

梅雨の終わり 初鳴き前に ひぐらしかな  湧水

御前の山 梅雨雨清め 鎮座祭  湧水

御前山 野分清めて 鎮座祭  湧水

足指で 大地踏みしめ 夏の朝  湧水

膝癒えて 朝も涼しき 山散歩  湧水

古屋去りて 夏空ひろき 山寺道  湧水

梅雨明けど 毎日午後の 雷鳴かな  湧水

ぱらぱらと 屋根音うれし 夕立ちかな  湧水

紫に 似ぬ柔らかさ 初茄子  湧水

獲り遅れ 巨大胡瓜に もらい手なし  湧水

夕立ちの 日々密林の わが庭かな  湧水

川柳

牛肉塊と うなぎ供えし 土用の丑  飛騨牛じゃないし、うなぎは中国産


イチビョウ息災 一病息災の生き方?

2019-07-25 22:53:34 | エッセイの部屋

イチビョウ息災と言う言葉を聞いた。
一秒息災かと思って、どう言う事なのかと思案した。
無病息災ならば、よく聞く言葉で誰もが知っている。
今回のように時々、自分の常識を疑うような言葉に出会う。
例えば、あの有名な時鳥についても、
鳴かないなら切ってしまえホトトギス 信長、
鳴かないなら、鳴かせて見せようホトトギス 秀吉、
鳴かないなら、鳴くまで待とうホトトギス 家康、
と言う三通りの生き方と思っていたら、次の四番目があった。
鳴かないなら、それもまた良しホトトギス ??。
この四番目の生き方を聞いた時は、私は視覚障碍者になったばかりの時だった。
そのため感動した。
他にも、左甚五郎の三猿について、
見ざる!言わざる!聞かざる!だけと思っていたが、
見ざる!言わざる!聞かざる!思わざる!の四番目がある。
等々、さて話を元にもどすと、
確かに、無病息災のまちがいでなく一病息災と言う言葉があるようだ。
それは、無病の人よりも一病、つまり何か病気を持っている人の方が、常日頃から健康に心がける生活をするため返って長生きすると言う意味のようである。
この、何となくありきたりな、インパクトのない、どうでもいいような、この言葉を思い出す状況に、先ごろ私が陥ってしまった。
と言っても、私自身の事ではなく、親しい知り合い女性達の事である。
ある病気になって、やむを得ず大きな手術をした。
手術もその後も何とか乗り越えて、最近ようやくやや安心しかかっていたら、再び異常が見つかったのである。
本人はもちろん、私もわが家族のように心配し、祈りつつ期待していただけにショックだった。
まるで懸命によじ登っていた断崖を、再び崖下まで落とされたような想いだった。
それまでのすべての希望の光が闇の荒海の中に沈んでしまった。
そんな鬱々とした暗い気持ちが続く中で、何とか小さくてもいいから希望の光を見つけなければと思った。
時々投げやりな気持ちになったりしながら、当てもなく、おぼろげな記憶を辿っていた時、ああ、そうだ、この言葉だ!と思いついたのが、この「一病息災」と言う言葉だった。
考え始めると、確かに、今までは「無病息災」が常識だった。
それは他にも「五体満足」と言う言葉も同様だ。
無病息災も五体満足も、元々「足るを知る」庶民の身分相応の生き方を示す言葉で、決して裕福な生活や美人イケメンに生まれたい等と言う高望みした言葉ではない。
しかし、今は「五体不満足」と言う本が出て有名になった。(タイトルは知っていたが、まだ読んでいなかったので、この機会に読んだ)
そうだ!今は世の中の常識が単一性から多様性に変わりつつあるのだ。
だとすれば、一病息災こそ、無病息災に代わる今後の人の生き方のお手本かも知れない。
そう思うと、腑に落ちる事が頭に浮かんできた。
最近はネット等で日本人の若い人たちの病気の話が多い。
乳癌や白血病になった芸能やスポーツの若い有名人達もマスコミやネットの話題にのぼっている。
そして、その闘病生活が赤裸々に公表され、多くのファんや同世代の人たちの共感を呼んでいる。
人は、自身や家族に命にかかわるような重大な病気が発見されると、途端に途方に暮れる。
それまでの晴れた青空が、突然雷雲や暗い雨雲で覆われた感じである。
目の前に病気の苦しみや死が現実に迫って来るからである。
今までに、知人や周囲の病気や死の話を聞いていたとしても、それ等は、所詮他人事であった。
それは、毎日の自分の生活には全く影響しない事、話題が変われば忘れられる事だったからだ。
しかし、それが現実に自分自身や家族に迫ると、途端にそうではなくなる。
苦痛の闘病生活や死が、現実に目前に迫り、逃れられないからだ。
それまでの大きな心配の無かった生活が、如何に恵まれた幸せな生活だったかが、改めて身に染みる。
その元の生活にもどる事ができるとすれば、正に夢のようである。
もしそうなれば、心から神仏や周囲に感謝し、今までの自分の生き方を改めるだろう。
・・・・
と、ここまで綴ってきて、冒頭の知人の親しい命に関る病気は、やはり私にとっては、まだ他人事だと感じた。
忘れよう、避けよう、逃げようと思えば、それは可能だからだ。
もし、本当に自分や自分の家族に起った事だったら、こんな落ち着いた文章など書いておれないと思った。
と言うのも、私事になるが、先日の三年ぶりの人間ドッグで異常が見つかった。
心臓と肝臓と腎臓と高血圧だ。
そして、近くの内科医院へ行き再検査をする事になった。
その時に高血圧の一番初期の薬も二週間分もらって来た。
昨日(7月24日)、再びその医院へ血圧の薬と臓器の検査結果を聞きに行った。
青天の霹靂のように、もし、大病院で精密検査が必要等と言われたらどうしよう?
等々、あまり深刻には考えないように、しかしそれなりに心配していた。
幸い、そんな事にはならなかった。
「数値が少し前より良くなっているので、このまま経過観察して、数値が悪くならないように生活改善しましょう」
と医師に軽い口調で言われ内心ほっとした。
そして、後でしみじみ安堵した。
現在わずかに飲んでいる夕食のアルコールも、しばらく禁止しようと思った。
しかし、その結果を聞くまでは肝臓癌など命に関る病気の心配をした。
それと言うのも、最近になって癌で入院する人が身近にも増えてきたし、私自身も高血圧や膝痛や頭痛など体調が長期に悪かったからである。
そんな自身の病気の心配に加え、前述のように親しい知人の、異常の再発見を知らされた。
まるで私の目の前にも命に関る病気や死が迫っているように感じ、前述のように心が闇に陥った。
その中で思いついた「一病息災」とは、多分こうした難関を超えた後の生き方だろう。
その前に、この難関を越えなければならない。
もし、いざとなったら、こう考えるしか道はない!
と、私なりの、ある考えに行き着いた。
その考えとは、次のようである。
今までに、何人もの親しい人達の死に際にも接してきた。
昨年の今頃は、ぴんぴんと元気で車を運転して温泉通いしていた癌のステージ五のt爺さんが、突然動けなくなり入院した。
そして、「わしはこれから天国へ行く」と言ってやがて家族が見守る中でコロリと亡くなった。
私が見送った多くは年輩の人達であったが、中には同年輩や年下の後輩もいた。
亡くなった年輩の人達の年齢に、今の私も近づいてきた。
人間は誰でも生まれてきた以上、死ぬ事は免れ得ない。
だとすれば、死ぬ事は潔く、わが寿命!と受け入れよう。
後はどうなるかは、まな板の鯉のように神の手に委ねる気持ちで家族や医師などの周囲の状況にまかせよう!
そして、自身は健康面や生活面を振り返って、ああすれば良かったとか、こうすれば良かったとか過去の生活の仕方を悔やむより、何のために私は生まれてきたのかと言うような精神面の事を考えたり学んだりしよう!
私ならば、きっと、
「自分の物と思っていた私の命も魂も、創造主の主神からいただいたものだ。
だから、苦しみも喜びも不安も命も魂も神に委ねよう、すべてを神にお返ししよう。
そうすれば、もう自分の物は何もない」
と言う心境になれば難病や死に向き合っても安らかな気持ちになるのではないかと思う。
自分はと言えば、神の元に一体化(神の家に住む)している存在である。

そして、深刻な病気を抱えていても、何とか食べられたり起きたり歩けたり話せたりできれば、一日一日が生かされていると言う感謝の心で過ごせるのではないか?
これこそが、「一病息災」の生き方の精神ではないかと思うが、いかが?

(おわり)

梅雨さなかの大暑 西には線状降水帯?

2019-07-23 22:22:25 | 俳句日記の部屋

梅雨冷えに 暦どおりの 大暑かな  湧水

ただ一日(ひとひ) 梅雨の晴れ間の 青草刈り  湧水

延び延びし 助っ人現わる 梅雨晴れ間  湧水

梅雨雲下 始まる子等の 夏休み  湧水

寺広場 集まる子無き 朝体操  湧水

夏休み 朝のラジオに 質問っ子  湧水

隙間草 一面覆う 梅雨芋田  湧水

酷暑前 草刈り終えし 曇り日かな  湧水

先の日曜日に、ようやく友人のシルバーが来て、薩摩芋や里芋田の草取りや草刈りをやってくれた。
前日も翌日も大雨だったが、幸い当日だけは雨も降らず曇天で暑くもなかったので終日作業ができ草刈りがほぼ終わり、やれやれ!

破裂して 裸になりし 焼き茄子(なすび)  湧水

川柳

夕拝後 ガリガリくんと 寝室へ  毎晩クセになってしまった!

高校の 娘さん喜ぶ キュオレジュース  巨大キュウリとオレンジのミックスジュース

三分の二 ならず安堵の 梅雨選挙  平和を上皇様も願っている

分かりやすく 「積乱雲の列」に 線状降水帯  気象用語は庶民に分かりやすく!


まもなく夏休み 梅雨冷えはいつまで?

2019-07-17 12:17:04 | 俳句日記の部屋


血圧を 測ってばかりの 梅雨の日々  湧水

血圧を 測っている間に 梅雨末期  湧水

思いがけず 茄子の収穫 ヘルパー日  湧水

植えもせぬ 朝顔伸びる 梅雨の雨  湧水

放棄され 出でし朝顔の 宿根かな  湧水

夏草取 方向失い 茄子木抜く  湧水

つる草が 家に攻め来る 梅雨末期  湧水

胡瓜を まっすぐ育てる 梅雨の雨  湧水

干し布団 わずかに膨らむ 梅雨の晴れ  湧水

風のごと 秋蚊が入りし 梅雨の夕  湧水

こっそりと 蚊の忍び込む 梅雨の冷え  湧水

一匹の 蚊音に家中 線香かな  湧水

梅雨の晴れ 村の家々に 草刈り音  湧水

飛騨谷に 草刈り音や 梅雨の晴れ  湧水

知らぬ間に こぶし大五個の 西瓜かな  湧水

川柳

伸びしツル 芋付いてるかと 猿が掘り  友の初上の薩摩芋

トグロ巻く ニセヘビ置きし 芋畑  ニセヘビは元々私のアイデア

夏さかりの 一日千秋 助っ人待ち  三日遅れれば雑草は倍になってしまうよー!

獲ってもらって そのままあげし 梅雨胡瓜 1人じゃ食べきれないから



冒険小説「幸福の樹」(その 30 ) 火と水と土!

2019-07-14 21:28:44 | 小説の部屋

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水でーす。はい、梅雨の雨が続いてます。
涼しくていいのですが、何でもフランスやインド?だったか、はい、四五十度の熱波だそうで、はい、反動が心配でございます。
ウチの先生も、見渡したら膝痛の人ばかりだった!なんて皆の心配をして忙しそうです。
が、何とか原稿が参りましたので、はい、早速、小説に参りたいと思います。
はい、では、開幕開幕!

30 火と水と土!

火打石と豆粒を見ながら、ハナは村の事を思い出していた。
祖父母や長老様や村人は今頃どうしているかしら?と思うとすぐにも会いたくなった。
ゴクウは、どうやってこの火打石と豆粒でこの洞窟から抜け出せるかを考えていた。
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ」
また、タカコが頭上で輪をかきながら鳴いた。
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ」
「ハナさん、トビのタカコが何か伝えようとしてますよ」
ゴクウが小さな声で言った。
「えっ、ほんと?」
ハナが聞き返すとゴクウは目を閉じてトビの声に集中した。
ハナも目を閉じて、長老の顔を思い出しながら声に耳を傾けた。
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ!」
その声を心の中で無心に聞いていると、ある声が聞こえてきた。
ゆっくりとした穏やかな老人の声のようだった。
「・・この世は火と水と土で万物が造られた・・」
「えっ、これってタカコの声?それとも長老様の声?」
ハナが驚くと、ゴクウがシッ!と唇に指を当てた。
(ハナさん、口で話しては駄目です、心で話すのですよ)
ゴクウがハナの目を見て何かした。
(えっ、今心で話したの?)
ゴクウは、うなづいた。
すると、また声が聞こえてきた。
「・・そうじゃ、心で聞くんじゃ、もう一度言う。この世は火と水と土で万物が造られた・・分かるかな?」
(はっ、はい!)ハナは心の中で返事をした。
「・・火は水によって炎え、水は火によって流れる。火と水が結んで土ができる。
火と水と土はこの世のすべての生き物を育む。火と水と土によって植物が育まれ、その植物によって動物が育まれる。
これが、この世の掟じゃ。
そして、育まれた物はすべて、その使命が終わると火と水と土にもどる。
葉から火と水が抜ければ土だけが残る・・分かるかな?
残った土に陽と水が加われば葉に育つ・・分かるかな?」
ハナは何の事を言われているのか、いまいち理解できなかった。
やがて声は聞こえなくなった。
同時にタカコの鳴き声も聞こえなくなり、天井の空からもその姿が消えた。
「あっ、分かった!火打石を使って燃やすんだ」
ゴクウが叫んだ。
「えっ、燃やす?何を?・・あっ、分かった!彼はを燃やすんだわ」
ハナが叫んだ。
「そうそうそれよ!」
二人は床の枯れはや木の枝を一か所に集め出した。
「これをお「これを火打石で燃やせばいいんだわ。燃やせば火と水が抜けて土ができる。そこに豆の種を蒔けばいいんだわ」
ハナが大声で言うと、ゴクウもその通り!と合槌を打った。
そして小刀で木の枝を削って夢中になっている太郎に言った。
「太郎兄ちゃん、もっとたくさん木を削って。その木屑を焚き付けにして枯葉を燃やすのよ。湿っている枯れ葉も、そこにこの豆の種を蒔くのよ」
「えーっ、何だって?驚いた、急に何を言い出すのかと思ったら、そんな事かい。
まあ、どっちみちやる事も無いんだからいいけど。豆を作ろうって事かい?久々に豆料理を食べようって言うのかい?しかし、気の長い話だな。収穫はいつ頃だい?」
太郎は、面白がって皮肉を言っていたが、興味が湧いたのか、すぐ木を削り、その削り木屑を集めてくれた。
そして、待っていたかのように、長老さんがくれた火打石を使って火を起こし始めた。
「カチカチ!」
左手で持っている石に、右手で鉄片を強く打ち続けると、パチッパチッパチッと花火のように白色黄色の火が飛び散った。
「おーっ、すげえー、たまげたな、この火花の出方は何だ。これこそ本物の火打石だ」
太郎が驚いている間に、もう火は焚き付けに燃え移って大きな焚き火になった。
「はなさん、ここを枯葉で覆いましょう。そうすれば、火が枯れ葉の山全体に移ります」
たちまち枯れ葉の山全体が燃え出した。
「ぼーっ!」
枯れ葉の山は大きな火柱となって、底の湿った枝や葉まで燃え出した。
「ワンワンワンワン!」
ケンが炎に怖がって吠えた。
もう火が消える心配は無くなった。
「太郎兄ちゃん、今度は水が要るのよたくさん」
「えっ、水だって?防火用かい?まさか、この火を消すんじゃないだろうな?」
「いえ、そうじゃないの。この焚火が燃え尽きた後に、あの豆の種を蒔くの、その時に水がいるのよ」
「えーっ、何だい、そう言う事かい、それならここの窪み水を入れればいいや。水は洞窟の小川から持ってくればいい」
早速、全員でそれぞれの器で水を運んだ。
「あーっ、疲れた!もう水も窪地にいっぱいになったから休憩しよう。ずっと働きぱなしだ。腹も減ってきた。まだ残っている干し栗でも食べよう」
と言って太郎は腰を下ろし、袋の中から栗を出した。
ハナ達も腰を下ろした。
水でいっぱいになった窪地の横では、枯れ葉の焚火が青い煙を出して燃え続けていた。
「この分じゃ、枯葉が燃え尽きて灰になるのは明日の朝までかかりそうだ」
横目でチラッと見ながら、太郎がつぶやいた。
「あ、そうだ!ちょうどいい。豆の種を蒔く時は、まず一晩水に浸して水を吸わせるんだ。この窪地の水の中へ今晩中豆の種を入れておけばいいんだ。そうすれば、明日の朝、種蒔きができる。ハナ、それでいいんだろう?」
太郎がいい案だろう!と言わんばかりに言った。
ハナは、初めから灰の中へ豆の種を蒔くものだと思っていた。
が、経験のある太郎の言う事に従うことにした。
豆の種は五個あった。
天井の空が暗くなる前に、ハナとゴクウは大切そうに豆の種を窪地の水の中に浸した。
そして、ネズミ等に食べられないように、その近くの床に敷物を敷いて、その上で寝た。
あっと言う間に、皆はぐっすり寝入った。
天井の空からは、まん丸のお月様が覗き込んでいた。
ハナや太郎やゴクウ達は、それぞれに豆の夢を見ていた。
太郎は豆飯や豆餅を腹いっぱい食べる夢を見て口を動かしていた。

翌日朝早く、ハナが目覚めると、足元にひんやりした物があった。
何だろう?とよく見ると、びっくり。
それは、あの豆の白い根だった。
「あれっ、大変!お豆さんがもう芽や根を出しているわ。でも土が無いからグニャグニャしてひっくり返っているわ」
ハナの声に皆は突然起こされた。
ケンは、もう起きて待っていたのか、皆が目を開けるとシッポを振って喜んだ。
「えーっ、もう朝かよ?こんな早くから何だって?・・・えーっ、あれっ、すごい、豆がもう芽を出している。それに根も伸びている」
太郎も目覚めるや驚いた。
「隊長、それにハナさん、早く燃え残った灰に水を撒いて、豆を植えてあげましょう。灰や土の養分を吸うようになれば、もっと伸びますよ」
ゴクウの言葉に、ハナも太郎もあわてて枯葉の灰の山にたくさんの水をかけた。
そして、発芽していた豆の根をその中に埋めた。
豆の頭は既に二つに割れて緑色の葉になっていた。
その下の茎や根はモヤシのようにヒョロヒョロ伸びていた。
ハナが自分の三つ編みの髪のように、五本の茎を倒れないようにからませた。
やがて、豆は待っていたかのようにたちまちに灰土の中の白い根から毛根を出して、養分を吸い始めた。
すると、瞬く間に茎が急に伸び始めた。
「わーっ、すごい!頭がどんどん伸びていくわ。それに茎もどんどん太くなっていくわ。あっ、大変!、灰の中の水分が無くなりそう、太郎兄ちゃん、早く水を汲んできて」
ハナの勢いに、太郎はあわてて水を汲みに行った。
薄暗い洞窟の中の豆の芽は、天井のお日様に向かって互いに茎をからみ合わせながらどんどん伸びて行き太くなっていった。
長老さんがくれた豆は、まるで魔法の豆の木の種のようだった。
(おーっ、すごい!このまま伸びて洞窟の外に出て、木や枝にからみついてくれれば、この豆の茎を登って外へ出られる。体重の軽いゴクウが先に行けば、あの絹のロープで俺達も外へ出られる)
食料として長老がくれた豆かと思っていた太郎は、予想外の展開にすっかり興奮していた。
そして嬉々として、せっせっと水を汲んで来ては豆の根元にかけた。
「おーっ、ますます茎が太くなってきたぞ、しめしめ!おい、ゴクウ、まずお前から登ってもらうからな。でも慌てるなよ。豆が外の樹木にからみ着く前に引っぱると、せっかくの苦労も台無しになるからな。用心のために明日ぐらいまで伸びるのを待とう」
太郎は上機嫌で言った。
ハナもゴクウも豆の成長には驚いていた。
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ!」
「あっ、タカコの声だわ。きっと様子を見にきたんだわ。ターカーコ」
ハナは手を振って大きな声をあげた。
やがて夕方になった。
豆の茎はもう太くなって互いに絡み合い、それに外の木々に絡み付いたのか、引っぱってもビクともしなかった。
「よし、もう良さそうだ。この分なら明日にはゴクウが登っても大丈夫だ。念のために、今夜もしっかり水をかけておこう。さあ、いよいよ洞窟から脱出だぞ!明日に備えて今日は皆早く寝よう」
太郎はゴクウと一緒に水を汲みに行った。
ハナとケンが大きく成長した豆の茎を見上げていると、洞窟の穴の外からハナ達を覗いている姿が見えた。
「あれっ?」
ハナとケンは驚いた。
「誰?そこで覗いているのは?」
ハナは声を上げた。
ケンもワンワン吼えた。

(つづく)

ハイハイハイハーイ、いえいえ、アッシは「ジャックと豆の木」の話を思い出しました。
今は朝顔やインゲンマネも同じように伸びてますが、世界中を探せば実際にこの小説のような豆の木が見つかるかも知れません。
はい、てな訳で、次回のお運びを・・あっ、ちょっとここで休憩して反省会などしたいナーンテ思ったりして・・はい、ではバイバイ!