飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

「木の国」の日本を見据えて! 石油の代わりに木炭のカーボンボールを!

2011-02-28 23:30:17 | アイデア

最近、世界中で石油、鉄鉱石、コーヒー、小麦等、あらゆる物が値上げしているようだ。中東の民主化運動やオーストラリアやロシアの小麦の不作等、直接の要因はさまざま上げられるが、根本的には、今までお金がなくて買えなかった中国やインドやブラジルの多数の国民が、産業の発展によって収入が増え、日本や欧米の先進国並みの消費ができるようになったからである。
しかも、この消費は、まだ一部の増えた、やや富裕層達で、今後さらに、日本の人口を越えて、増えることはまちがいない。それによって、世界的な大災害でも起こらないかぎり、今後も値上がりが続く。
と言うことを考えると、今のように安価に灯油を使える時代も案外早く終わるかもしれない。
それなら、灯油の代わりに電気をと、電力会社は原子力発電計画を発表しているが、原発は地震や環境面から良くない。一時的なco2対策としてはやむおえないが、やはり、永続的なエネルギーとなると、太陽光や風力潮力、地熱等を利用した自然エネルギー、または植物動物などのバイオマスエネルギーだろう。
今、世の中、特に世界の状況をながめると、予測より早く変化が進んでいるように見える。
と言うことで、私はすぐには無理だろうと思って控えていたが、やはり今から着手しておくべきだろうと思い直して、このアイデアを述べてみることにした。
それは、木の利用に関してである。
以前に「木質ペレット」について述べた。(発明アイデアの部屋 山のモルヂブ?宣言!)
この木質ペレットは、現在、すでに市販されていて、つい最近、テレビでも紹介されているのを垣間見たことがあった。
しかし、その時、ユーザーや近所の感想の中に、ストーブの値段が高価なことと、多少煙がでて、匂いや近所の洗濯物干しなどに気を使うと言う難点があるとのことだっった。
そこで、ここからが私の提案であるが、木質ペレットはまだ木の状態であるから、燃える時、煙や匂いが出る。その匂いに人は慣れてしまえば気にならないが、初めはかなり敏感に反応する。
そこで、それらの問題を解決する方法として、木を木炭にしてしまい、それを燃焼や運搬に最適の形にして固めると言うアイデアである。
多分パチンコ玉くらいの楕円体がいいと思う。(球体だとこぼした時散らばって大変、角があると、ストーブ内移動や運搬時につかえやすい)
こうした状態だと、一般のガソリンスタンドでも販売でき、灯油タンクに入れて取り扱うこともできる。
木炭にして固める方法は、木質ペレットに比べ品質が安定する。それに、燃料としても体積の割りに長持ちするので少量ですみ、しかも火力が強いので温かくできる。
さて、ここからが問題であるが、現在の木質ペレット用のストーブは、国産の物がなく、イタリア等のヨーロッパ製しか無いため、かなり高価らしい。
おそらく、パテント等も取得していることだろう。
そこで、日本で、将来を見越して、木炭ボール利用の家庭用ストーブや家庭用ボイラー等を、新しく開発したらどうだろう?
そうすれば、大量生産して現在の灯油ファンヒーターのように2、3万円で販売できるようになるのではないでしょうか?
また、この木炭ボール(仮称カーボンボール)の利用は、生産から運送、販売、使用等すべてに渡って、システムとして、開発しなければ普及しない。そこで、もうひとつ大切なことは、生産方法である。
私が考えるには、かつての製剤所くらいの規模で、木材を集めて木炭にして整形する大型機械と、もうひとつは、個人規模でも、木炭を作り、それを整形できる小型の機械も開発することが必要だと思う。
小規模でも大規模でもできる機会を開発すれば、個人でも、小さな村でも、また大きな町でも生産できる。そのようになれば、普及も進むと思う。
(例えば、交通の不便な山奥でも、小型ならば持ち運びができ、昔の炭焼きのように周囲の利用できる木がなくなったら、移動できる)

と言うことで、昔の炭焼き窯のように、木を木炭にする金属製の窯と、できた木炭を粉にして糊と一緒に整形し乾燥する機会を開発しなければならない。
言わば、小型炭焼き機と小型隅団子機の開発である。最近は、竹炭等が流行しているから、開発もそうしたメーカーの延長栓上でできると思う。
また、隅の粉末は、昔、よく石炭鉱山で炭塵爆発事故が起こったくらいだから、さらに研究して、より細かくすれば、エンジンの燃料として利用できるかもしれない。
こうした木材の石油に代わるエネルギーとしての、新しい利用は、安値のため間伐が進まない全国の山林対策や過疎化に悩む山間地の雇用対策や村起こしにもつながる。
いづれにしても、脱石油として、木の国の日本では、木を利用し、暑い砂漠の国では太陽発電パネルを、風の強い国では風力発電を、と言うように、各国や地域の特徴を生かせば、将来石油が値上がりしても、また入手困難になっても困ることがなくなると思いますが、いかがでしょうか?
以上


連載小説「幸福の木」 その69 話 黄金の洞窟

2011-02-26 18:29:48 | 小説

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水です。今回は、あっしが先に書いてます。ええ、先生の原稿は明日みたい。
そう、驚いたことがあったんですよ。ええ、今朝テレビを聞いていたら、あのjrの高山線で、いや違った高山本線の、ええ、本を抜かすとうるさい地元の人がいまして、ええ、その本線に何と鹿がぶつかって来て、列車の時間が遅れたとのことで。
チョコチョコ起こるそうで、バレンタインじゃないんですから、ええ、でも、そこまで鹿が増えているとは!で、ウチの先生に言ったら、「将来、奈良公園みたいに鹿や猿や猪や熊を餌付けして触れるようにしたら観光客も増える」だって。パンダじゃあるまいし、「噛み付いたらどうするんですか!」って噛み付いてやりました。
はい、では、開幕かいまく!と言っても、明日か明後日ですが、

69 話 黄金の洞窟

「ちょっと番頭、よくも騙してくれたな!ここへ来て謝れ!」
太郎は許せなかった。それに主人も息子も許せない。思い出すとどんどん腹が立って来た。
「まあまあ、太郎兄ちゃん、袋に入れられただけなんだから、それに、お酒もいっぱい飲ませてもらったんだから、寝袋に入っていたと思って許してあげてよ」
ハナが傍に来て、太郎をなだめた。
「太郎さん、ごめんなさいね。それもこれも昔からのこの洞窟の慣習で、主人達も私達も心では悪いとは思いながらも、従うほかはなかったのよ。許して」
と主人の奥さんが謝ると、番頭の奥さんも他の者達も深々と頭を下げた。
「太郎さん、私も謝らなくてはならないわ。この人達は私のおばさんやおじさんですもの。本当にごめんなさい、許してあげて」
と太郎の前に来て、麗子が涙ながらに謝った。これには、さすがの太郎もこたえた。
「まあ、そう言うことなら、まあ、済んだことだし、これから気をつければな。それに、ちゃんとお詫びの印の物でもくれれば、・・・」
と太郎が怒りもおさまった声で言うと、
「そうだ!そうだ!俺達も黄金でももらわないことには納まらないぞ!」
と金堀の男達が叫んだ。
「これ、お前達!何ですか、みっともない、静かにしなさい」
と村長があわてて叱ると、
「いえいえ、ごもっともです。そのくらいのことはさせてもらいます。はい、もうたった今から、黄金の場所にご案内させますので、どうぞ、ご遠慮なく好きなだけ持っていってください」
と言って主人は番頭に案内するよう命じた。
「やや、物分りのいい頭だ。早速、遠慮なしにもらうぜ。おい、俺達が代わってもらってくるから、皆はここでご馳走になって待っていろ!」
と大声で言うと、村の男達はひやかしの歓声を上げた。
「ちょっと待ってよ、俺がもらうんだぞ。お詫びとしてな、皆はついでなんだぞ。間違うなよ」
と、太郎は、もうすっかり番頭達への怒りも消え、頭の中は今度は黄金のことでいっぱいだった。
「あなた、そんな大きなことを言って、そんなにたくさん黄金が有るんですか?」
と奥さんが聞くと、
「ああ、有るさ。と言っても、いつもの置き場所じゃない。奥の奥の、あの場所だよ。おい、番頭、あの奥の場所へ案内しろ!」
と主人は厳しい口調で番頭に命じた。
「えっ、あの奥ですか?」
番頭も奥さんも驚いて真っ青な顔になった。
「さあ、太郎さんや村の男達が黄金を持って来るとは、大変楽しみだ。我々年輩は、ここでお酒や料理をご馳走になりながら、ゆっくり待つことにしよう。美味しい酒になりそうだ。のう各々方」
と村長が、ご機嫌な顔で言うと、村の年寄り達や女性、子供達は嬉しさを満面に浮かべてうなづいた。
「太郎兄ちゃん、気をつけて行って来て、ゴクウもケンも行くの?」
とハナが聞くと、ケンがワンワン吼えた。
「まあ、お前達はそんなに荷を持てないから、役には立たないが、勝手にしろ」
と太郎がはき捨てるように言うと、番頭の背をつついて、早々に出発した。
太郎達の後姿が遠くなると、村人達は、主人や奥さんや洞窟の人達の接待で宴会を始めた。
番頭を先頭に太郎と金堀の男達数人が洞窟の奥へ進んで行った。ゴクウとケンは少し離れて付いて行った。
かなり奥まで進むと、倉庫のように広くなった洞窟があった。そこに、砂金の袋や箱が数個置いてあった。
「ああ、あそこだな。黄金が置いてある場所は」
と太郎が叫ぶと、
「いえ、ここじゃないです。ここは確かに黄金の置き場ですが、今回は、さらに奥へ行きます。そこにはもっとたくさん有るのです」
と番頭は言いながら、空の袋を男達に渡し、大きな箱の中から何かを取り出していた。
「何を探しているんだい?鍵か地図でもあるのかい?」
と太郎が冗談のつもりで男達に舌を見せながら番頭に聞いた。
「ええ、そんな物じゃないんです。もっと大切な物なんです。我々の命に関わる物なんです」
と言って、取り出したのは、大きな毛糸玉のような物だった。
「何ですそれは?それが、そんなに大切な物なのかね?俺には、猫がじゃれて遊びそうな物にしか見えないが」
と太郎は男達に笑顔を見せて番頭をからかった。
男達はドッと笑った。
「まあ、そのうちに分かることですから、さあ、出かけましょう」
と言うと、番頭は松明とその毛糸玉のような物を持って、奥の洞窟へ進んだ。
その奥は洞窟も小さくなっていて、頭がぶつかりそうなくらい天井も低くなっていた。
「さあ、これからが問題です。この先は、言ってみれば、迷路のように多数の洞窟に分かれています。この玉は絹糸でできています。この玉が道案内をしてくれるのです。これが無ければ迷って生きて帰って来れません。所々にそう言う人達の骸骨が転がっていますから、足元に気をつけてください」
と番頭が寒々とした言葉でいった。
旅行気分でいた太郎を初め、男達も顔色を失った。
と言っても、暗い洞窟の中である。松明の灯りに照らされた顔の目玉だけが緊張気味に光っていた。
番頭は洞窟の横の石に絹糸の端を結びつけた。そして、糸玉をほどきながら洞窟を進んで行った。その後を太郎や男達が金魚の糞のように続いた。
「あの、くれぐれもこの糸を踏まないように、もし、切れたら、我々の命もおしまいなのです。帰りはこの糸だけが頼りなのですから」
と番頭が言うと、太郎や男達はあわてて足元を見た。
「わっ、骨がある!人の骨だ」
誰かが叫んだ。
「ああ、きっとここまでもどって来たのでしょう。あとわずかだったのに、本人はそんなことは分からないから、ここで息絶えたんでしょう」
と番頭が言うと、全員が背筋が寒くなった。
「あっ、あの、番頭さん、俺が想像していた場所とずいぶん違うけど、これってかなり危ないことですよね。また騙しているって言うことはないでしょうね?」
太郎は少し丁寧な言葉使いになった。
「はっはっ、とんでもない!私も一緒ですよ、命がかかってます」
と番頭は冗談とも真面目とも分からない口調で答えた。
太郎が振り返ると、そこの男達も普段の元気はどこやら、緊張顔で黙ったままだった。
番頭が絹玉をていねいにほどかなければならないので、ここからは太郎が松明を持って先頭に並んで進んで行った。
洞窟内はせまい上に、天井からしずくがポタポタと落ち、背中や頭をヒヤッとさせた。
松明の火の中に落ちると、ジュウッと音を立て、恐る恐る歩いている太郎や男達をギョッとさせた。
洞窟の分岐点に来ると、番頭が絹玉の糸を見た。そこには、右左とか、右から何番目の洞窟を進めと言う印が付いていた。番頭はそれをよく調べて、慎重に路を選んで進んでいった。
「ああ、もうわずかですね。絹玉もあとわずかです。一応今の所、絹糸の印と洞窟の分かれ道も一致していましたから、今まで歩いて来た道は間違いないでしょう。だとしたら、もう目的地に着くはずです」
と番頭が言うと、太郎も男達も生き返る思いだった。
「おい、まさか、ここまで来て、間違いだったなんてこたないだろな?」
初めて男達のひとりが、口をきいた。
松明の火ももう燃え尽きて終わりかけていた。
「ああ、松明も一本がかろうじてもってくれた。よかった」
番頭が安堵の声を出した。
その時、前方が薄明るく見えた。
「あれっ、明るいぞ。黄色の明るさだ!」
男達が叫んだ。近づくと、そこは洞窟の壁が黄色く輝いていた。
「あっ、黄金だ!洞窟全体が黄金でできている!」
太郎も思わず大声を出した。
洞窟は奥へすすむほど、広く大きくなり、壁の黄金の色も濃くなっていった。そして、最期にドーム状の大きな部屋大広間になっていて、そこが行き止まりのようだった。
「わーっ、すごい!黄金の広間だ。壁も天井も床も全部黄金でできている。まぶしい」
駆け寄った太郎や男達は驚きと嬉しさで走り回って歓声を上げた。
「さあ、急ぎましょう!時間は余りありません。床や壁の取りやすい黄金を早く袋に詰めてください。すぐ、出発します」
番頭が、太郎達の喜びに水をさすように言った。
「ええーっ、番頭さん、何で、そんなに急ぐの?せっかく着いたんだから、ゆっくりしようよ」
と太郎が言うと、
「とんでもない!問題は、あの絹糸です。洞窟内のコオロギやネズミがかじって切れたらおしまいですよ。我々も迷路の骸骨になってしまいます」
と番頭が緊張した顔で怒ったように言った。太郎や男達は、床に転がっていた骸骨を思い出してゾッと背筋が寒くなった。
「おい、何だか体が冷えてきた。早くここをずらかろうぜ!」
男達も太郎もあわてて黄金を袋に入れ、帰途についた。
「さあ、番頭さん、準備はokです。出かけましょう」
太郎達が並んで番頭に言った。
「では、出発としましょうか。問題の絹糸が切れていないことを祈るだけです。では、」
そう言うと番頭は、予備の新しい松明に火をつけ、絹糸の端を置いた所まで歩み寄った。
「どうか切れていませんように」
そうお祈りすると、床に落ちていた絹糸の端を掴んで、軽く引いた。
絹糸はピンと張って、動かなかった。
「ああ、よかった、今の所は大丈夫のようです」
番頭は額の汗をぬぐって、ほっとした顔を見せた。
「さあ、急ぎましょう。私が絹糸を巻いて歩きますので、太郎さんがまた松明を持ってください」
と言うと、二人を先頭に暗い洞窟の中を歩き出した。男達は、また金魚の糞みたいに後を付いていった。今度は行きと違って、重い袋を背中にかついでいた。
ところが、途中半分ほど来た頃、
「ちょっと待ってくれ、荷が重いから、休憩してくれ」
後ろの男達が怒鳴った。
すると、番頭は、あわてて振り向いて、
「休憩?とんでもない!いいですか、絹糸は洞窟の水を含んで伸びて弱くなっているのです。もう時間との勝負ですよ、続けて行きましょう」
と、いつもに似合わない怒鳴り声で言った。
しかし、男達は、荷の重さにその場に倒れこんでしまった。
「まあまあ、番頭さん、ほんのちょっとの間ですから、一息つくまで待ってください」
と太郎が間に入って、仲介した。太郎は余裕があった。どう言う訳か、今回は少しの黄金しか持っていなかったからだ。
番頭はイライラしながら、座っていても、絹糸を引いていた。
「太郎さん、これを見てください。絹糸が水を吸って伸びるんです。だから、引っ張ると、少し筒伸びて来るんです」
と言って、伸びる様子を見せた。
番頭は、早く出発したくて、太郎に男達に出発を促すよう自分が感じている緊張感を伝えたかった。
「これを太郎さん、持っていてください。伸びる様子が実感できます」
と番頭は絹糸を太郎に渡して、その場を離れた。しばらくすると、奥の暗闇で立小便の音がした。
「何だ、そう言うことか。しかし、こんな細い糸が命綱だとはな」
太郎はしばらく握ったままでいたが、少し退屈して来た。
「しかし、この糸って蜘蛛の糸とどう違うんだろう。蜘蛛の糸も細いけど、けっこう伸びて丈夫なんだよな。絹はどうなんだろう。。伸びて丈夫なんだろうか?」
と、ちょっと引っ張ってみた。ピンと張って、手ごたえが気持ちよかった。
「あれっ、けっこう丈夫なんだ、これは、蜘蛛の糸なんか比べ物にならないぞ」
と、もっと強く引っ張った。大丈夫そうだった。すると、さらに誘惑に負けて、強く引っ張ると、急に手ごたえがなくなってスルスルと糸が近寄って来た。
「あっ、しまった!」と、太郎は心で叫んだ。が、声には出さなかった。
番頭がもどって来て、
「さあ、もういいでしょう、出かけましょう!」
と男達を促し、太郎に絹糸をくれるように手を差し出した。が、太郎は絹糸の端を地面に置いていた。
大事な糸をこんな所にと思いながら、番頭は糸を掴んで上げた。
「あっ、切れている。大変だ。太郎さん、どうしたんですか?」
番頭はあわてた。太郎は、冷や汗をかきながらも、わざと知らないふりをして、
「いや、べつに、どうもしないけど、」
ととぼけた。
「どうもしないって、糸が切れているじゃないですか?」
と番頭がにらみつけるので、
「ええーっ、切れているって、おかしいな、さっきまでは、大丈夫だったよ。そこに置いて休んでいたんだ」
と嘘をついた。
「えっ、では、、いつの間に切れたんだろう。大変だ。もうもどれないかもしれない。どうしよう、どうしよう、!」
番頭は立ったり座ったり動揺して大声を上げていた。それを聞いて、男達も休憩していた体を起こして、何事が起こったのかを知ろうとした。
太郎が絹糸に触ろうとすると、
「駄目だ。触らないで!引っぱったら糸の切れ端が、その場所から移動してしまう。そうなると、帰り道が分からなくなる」
と番頭は怒鳴って、地面に横たわっている糸を辿り始めた。
が、しばらく進むと、
「ああ、細くて見難い。私一人じゃ、なかなか見つからない。誰か手伝って」
と大声で怒鳴った。
太郎や男達が袋を背負って近づくと、
「ああ、切れてなきゃ、引っ張って、すぐ方向が分かるんだが、落ちたのは見難い。これじゃ、どれだけ時間が有っても足りない。誰か先に進んで、糸を探していて」
とまた怒鳴った。
一人の男が先に進んだが、ゴソゴソ暗い地面を探している内に、糸が足に絡み付いてしまった。
「あっ、足に糸が!」
と言うと、番頭があわてて来て、
「あっ、駄目だ。これじゃ、糸を引っ張ってしまったじゃないか。糸の切れた場所が、ますます分からなくなるぞ。背中に荷を背負っているからだ、今は、それどころじゃないだろ」
と番頭はヒステリックに叱り飛ばした。
男達もオロオロし始めた。
「あのさ。今は黄金どころじゃない、帰れるか命を失うかの、瀬戸際なんだ。荷なんか捨てて、早く糸の有る場所を探してくれ」
番頭はもう命令口調だった。
太郎は、一番先へ行って、糸を捜した。すると不思議なことに、絹糸がスッと入り口の方に引っ張られたように浮いた。
「ああ、見つかったぞ、この先は大丈夫だ。糸が空中に浮いている。これを辿って行けば早く行けるぞ」
その太郎の言葉に、番頭は信じられないと言う顔をしたが、空中の絹糸を見ると、無言で辿り始めた。太郎や男達は、遅れないようにあわてて付いて行った。
かなり進んだ所で、番頭がハタッと立ち止まった。
「はて、絹糸が脈打っている。どういうことだろう?」
太郎は持っていた松明を前に向けた。すると、ずっと奥に、見慣れた姿を見つけた。
「あっ、ケンだ、ケンだ!ケンが何か加えている」
と怒鳴ると、ケンもワンと吼えた。その瞬間、絹糸が緩んだ。
「あっ、糸の端をケンが加えていたのか?」
ケンが、あわてて地面に落ちた木の棒を加え直すと、また絹糸がピンと張った。
「何だ、ケン、お前が糸の切れ端を持っていてくれたのか?」
太郎が嬉しそうに叫ぶと、ケンはシッポだけをビュンビュン振っていた。
番頭はケンの傍までくると、
「ああ、糸はここで切れたんだ。さて、もうひとつの切れ端はどこにあるだろう?それが、肝心だ」
と辺りをキョロキョロ見回すと、かなり遠くに小さな松明が見えて、声が聞こえた。
「はーい、太郎さーん、ここですよ。糸はここにありますよ」
声と共に、小さな灯りが揺れた。
「あっ、ゴクウだ。ゴクウの声だ」
太郎が喜んだ。
皆がゴクウの傍に到着すると、ゴクウが、
「ああ、よかった。太郎さん達の後を、ケンの鼻で匂いを便りに付いて行くと、途中で、糸が切れていたんので、あわててケンに追いかけてもらったんですよ」
と嬉しそうに言った。
それを聞いて、番頭が、
「ああ、犬の鼻のお陰ですね。そうでしたか。本当に助かりました。でなければ、私達は無事に戻って来れたかどうか、ああ、冷や汗が出ます」
と胸を撫で下ろした。
ようやく、村人が待つ、屋敷の大広間に着いた。
お酒で、かなりご機嫌になっていた皆が歓声と拍手で太郎達を迎えた。
「まあ、太郎さん達、お帰りなさい。ずいぶん遅くなって、さぞかし、山のような黄金を運んで来るのかと、首を長くして待っていたんですよ」
と奥さんが言うと、太郎や男達は頭をかいた。運んで来た黄金は袋にわずかしかなかった。
「おお、どうしたんですか?そんなに大勢で出向いて、たったこれだけとは?」
村長が聞くと、太郎達は
「いろいろ事情がありまして」
としか答えられなかった。
「村長、明日、わし等はもう一度黄金を取りに出かけたいと思うんじゃが」
と金堀男達が言うと、番頭が、
「あの、申し訳ない。絹糸玉を、あせっていて、回収して来るのを忘れたんですが・・・」
と男達にも聞こえるように、主人に報告した。
主人は、初め何のことか理解できなかったが、次第に顔色が変わっていって、ついに、
「何?忘れた?お前は、よくよくしくじる男だな、じゃあ、この先はどうするんだ?」
と切れてしまった。
番頭も返答できず、黙ったままだった。
「まあまあ、また番頭さんのしくじりが幸いすることもありますから、ここは機嫌を直して、さあ、太郎さん達、本当にご苦労さま、さあ、お酒やご馳走を召し上がってくださいな」
との奥さんの声に、会場も再び和やかな雰囲気になって、女性達がお酌や食べ物の大サービスを始めた。
ハナや麗子もほっとしたように、話を再開し楽しんでいた。

ハイハイハイハーイ、時間となりました。無事迷路を戻れて、一応、よかったですね。それにしても、宴会とはうらやましいことです。ここは温泉も有るんでしょう?いいですね。
あっ、そう言えば、昨日の鹿ですが、下呂駅にでも電話して鹿がどうなったかを聞こうと思ったのですが、今、駅には昔のように直接電話できないんですね。ああ、知らなかった!はい、世の中、いろいろ変化で大変です。はい、では、またのお運びを願いまして、バイバイとさせていただきます。
あっ、列車事故の鹿って、獣医でも来るんですかね?その後どうなるんですかね?あっ、失礼、では、また!



鳥インフルエンザや口蹄疫対策にemを!

2011-02-24 10:00:09 | アイデア

現在、日本のアチコチで発生している鳥インフルエンザ対策に、周辺の鶏舎では予防的に、消石灰を散布して消毒している。
しかし、健康的な平飼いをしている鶏舎などは床面が真っ白になってマスクをしていても大変そうである。
ところが、昨年宮崎県での口蹄疫で、消石灰の代わりにemを散布して感染を防止して農林大臣から表彰されたとのことである。(em研究気候のパンフレット参照)
実は、鳥インフルエンザに対しても十分効果があり散布方法もem研究気候のパンフレットに載っている。消石灰の散布に比べ、人や家畜が吸い込んでも健康に問題なく、加えて、悪臭対策や健康対策にもなるので、お奨めしたい。emは糖蜜と水で拡大培養して、量も増やせるので、経費的にもあまり高くつかないと思う。
emは、乳酸菌や酵母、光合成細菌、有益な放線菌と言った、人体にも有益な菌の集合体で、農業や畜産や廃棄物処理の分野で多くの成果を上げて来た。
二十年以上の世界各地での実績を見ても、弊害は一切起こっていない。
今回のような地域全体での散布は、その地域の他の環境面でも素晴らしい環境を取り戻すことにもなるので、是非ともこの機会に補足的にでもいいから、普及が進んでほしいと思う
ついでに、微生物に関連した話題(昨年末に、掲載を忘れていた)について紹介したい。

最近面白い発明をテレビで紹介していた。
発明者は女性だが、池や水槽等を浄化するこんくりーとブロックである。
このブロックの中には汚れた水を浄化する納豆菌が混入されていて、池や水槽、プール等、このブロックで造れば自然に浄化されきれいな水になると言うものである。
発明者は主婦であるが、何千種もある納豆菌の中からこの菌を探すのに苦労したそうである。また、商品化するにも協力してくれる企業を探すのも大変だったようだ。
しかし、その苦労も報われて、日本で賞も獲得し、今では海外でも注目され、販売手続きをしていると言うことだった。
本人のコメントは、「素人だったので、ただ思いだけで進んでここまで来れた」と
言うことだった。
恐るべし主婦の思い!ではないが、二十年ほど前、微生物ブームがあった。あらゆる解決は微生物にある。と言うことで、糞尿を処理する菌、原油を掃除する菌等々あらゆる菌を皆が探したが、商品化するまで根気よく続けた人達はわずかだった。
最近、有毒な砒素を分解無毒化する菌や、特殊なレアメタルを回収する菌と言った実用性のある菌も発見されたと聞くが、炭酸ガスから原油を作る菌も必ずいるはずである。またどこかの素人がとんでもない実用性のある菌を発見するかもしれない。
それに加えて、昨年、ノーベル化学賞を受賞した根岸さん、鈴木さんの有機合成であるが、こうした有機合成で今までできなかったいろいろな物ができる可能性がでてきた。例えば、熱を光に変える物質等ができれば、今さかんに採用されているled電球に代わる、電気がなくても光を発する「光塗料」ができる。



春うらら?悟りのここち!

2011-02-23 10:30:53 | 俳句

急に春が来た。ここ何日か温かい日が続いている。
先日、バレンタインの日に、もう雪ともお別れかなんて思っていたら、突然、夕方から雪が降りだし、積もり始めた。
翌朝、再び真っ白の銀世界にもどっていた。

バレンタインデー 山路くまなく ホワイトチョコ  湧水

憐れみて 将軍さいごの ホワイトチョコ  湧水

だが、もう時は春、弐、三日ですっかり消えてしまった。

張りし弦 みな解きはなち 飛騨に春  湧水

矢はなたれ ゆるみし弦の 早春かな  湧水

雪きえて 白スニーカーの 散歩路かな  湧水

ぬぎ歩く うわぎの重き 早春路  湧水

そうそうに 雛のけらいか ふきのとう  湧水

散歩山路の日影の一箇所にわずかな根雪が残っていた。最後の雪塊である。

残り雪 そばに真冬の 冷機かな  湧水

残雪に ひたい冷やして 春散歩  湧水

山路も散歩人が増えた。後ろから女性の鼻歌が聞こえた。何か急かされているように歩き続けた。また、バス亭で待っていたら、女性の鼻歌が聞こえた。


寒風に 代わる鼻歌 春バス亭  湧水

鼻歌の 野やバス停や 飛騨に春  湧水

相乗りも 笑顔の春や 飛騨のバス  湧水

玄関の春陽に並ぶ 鉢花かな  湧水

閉じし窓 放てば声と 春風かな  湧水

帰りのバス亭には、福祉施設に通う男女が三人いつもいる。
その中の女の子が、祖母とのお別れで、しばらく来なかったようだ。

春風や 祖母見おくりし 子がもどり  湧水

大悟せし 覚者のごとき 春の風  湧水

大悟して 世は暖かき 春の朝  湧水

いい話を聞いた。四つのchの話しである。
それは、ピンチ、チャンス、チェインジ、チャレンジである。
人生のピンチには、良くなるためのチャンスと受け止めて、自分の生き方を変革(チェインジ)する。そして、負けることなく果敢に挑戦(チャレンジ)しよう!と言うものである。噛みしめて味わうべき深い内容の言葉だと思う。
また、アメリカの老夫婦が言っていた、「夫婦円満のコツは、forgiveとforgetだ」その、ホウギブ許すと、ホウゲット忘れるの、forgetは、getと言う言葉が含まれているが、何か深い意味がありそうだ。


連載小説「幸福の木」 その68 話 冗談だなんて冗談じゃない!

2011-02-20 23:07:27 | 小説

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水です。昨日今日と温かくなりました。やれやれです。が、問題はこれからの椙花粉ですね。何かいい方法はありませんかね?
それはそうと、今、中東では大変。独裁政権が次々にデモで、崩れています。どうも、富を独り占めして、多くの貧しい人達のことを省みなかったようです。やはり、国も社会も人もイノベイションを、つまり、常に進化しないとそうなるようです。
なんて、あっしも似合わぬ立派なことを言いましたが、その点、ウチの先生は、いつも変わっているみたい。でも、これは、単に、飽きっぽいだけだと思いますが、いかがなものでしょう?
要は「常に生まれ変われ」ですかね?はい、テレビをかけながらで、つい、堅い話になってしまいました。
はい、と言う訳で、小説に参りたいと思います。はい、では、開幕、開幕!

68 冗談だなんて冗談じゃない!

「あれっ!息子のシンとハナさんがどうしてあの人達と一緒にいるんだ?」
主人はハナ達を見て近くの者に言った。
「はい、変ですね。確か、ハナさんは温泉にいて、息子さんは別の場所にいたはずですが・・・」
お供の者が答えた。
「それよりもご主人、あの人達は、もしかしたら滝の向こうの村人ですか?何故ここへ来たのですか?」
と周りの部下達が動揺して聞いた。
「それよ!私こそそれが知りたいわい。どうしてこう言うことになったのか、?ちょっと、番頭を呼べ」
主人はピリピリして怒鳴った。
すぐ、番頭が傍へ来た。
「はい、私にも分かりません。シンさんやハナさんが案内して来たんでしょうか?」
番頭が苦しまぎれに答えると、
「そんな馬鹿な!息子達がそんなことをして何になる?」
と、また怒鳴った。
「あの、ご主人、村人は今日滝の水が止まることを知っていたんでしょうか?」
と、またお供の者が聞くと、
「それなんだよ。どうしてこんなに大勢が?いや、でも、やはり偶然だろう。それしか考えられない」
と主人は首を傾けるばかりだった。
中央では、奥さんたち三姉妹はまだ抱き合ったり泣きながら話していた。
その反対側、では、村長や村人達が、中央の奥さん達や、向かい側の主人や番頭達をチラチラ見ていた。
「ああ、あの三姉妹はずいぶん久しぶりに会ったのだ。積もる話もいっぱいあるだろう」
と村長がつぶやくと、隣の村人が、
「村長、あの向こう側にえらそうな男達がいますね。あれが主だろう。何かゴソゴソ言ってますが、あいつが人攫いする張本人かな。とんでもない野郎ですね」
と、にくにくしげに言った。
「うーん、山賊の大将みたいなヒゲ面の男かと思ったら、色白のやさ男のように見える、やはり魔物が化けているのだろうか」
と村長も興味深そうに相手の男達を見始めた。
「もし魔物とすれば、妻の姉妹は魔物達に嫁いだことになる。わしも義理の兄弟になる訳だ。子供ができたとすればどうなるんだろう?」
と村長の興味は増すばかりだった。
村人達は、
「あいつが主だって、よくもわしらを長い間苦しめてくれたな。わしゃ、小さい頃から、滝の魔物の話しを聞かされると、こわくて寝小便をして叱られたものだった。今日はその仕返しをしてやる」
と、お年寄りは相手の姿がやさ男と見るや、とたんに威勢が良くなった。
そのうちに、三姉妹は積もる話もかなりできて落ち着いてきた。
「ところで、姉さん、あなたのご主人って、どの方なの?魔物が化けているのではないでしょうね。わたしも挨拶したいわ」
と村長の奥さんが言うと、
「あっ、そうそう、まだ誰も紹介してなかったわね。私の主人と、妹の夫の番頭さんよ」
と言って、奥さんは主人と番頭を呼んだ。
すると、村長の奥さんも、
「じゃあ、私も、夫と娘を紹介するわ、ねえ、あんた!それに、麗子!こちらへ来て!」
と村長と娘を呼んだ。
三組の夫婦と麗子が中央で互いに挨拶したり、握手をした。
「ああ、あなたの娘なの、まるで私達の若い頃にそっくりだわ。あっ、そうそう、私達にも息子がいるの。早速紹介するわ」
と言って辺りをアチコチ見回し、村人達の側にハナと一緒にいる息子のシンを見つけた。
「はーい、シン!こちらへいらっしゃい。そう、ハナさんも一緒よ」
と大きく手招きした。
「でも、どうして、そんな所にいるの。まるで皆さんと一緒に来たみたいじゃないの」
と冗談のつもりで言うと、
「はい、村の皆さんと一緒に滝の方から来たんです」
と言う息子のシンの言葉に、両親と番頭夫婦が驚いた。
「えっ、どうして?」
と言う顔に、息子がすぐ答えようとしないので、
「あっ、そうそう、それよりも大事な人の紹介を忘れていたわ。こちらが、ハナさんよ。この娘さんは幼いのに、麗子の身代わりの、いけにえになってくださったのよ。それに、今回手紙をくださったのでここへ来れたわ」
と奥さんは村長と共に、ハナを丁重に紹介した。
「手紙」と聞こえたが、何の事か分からない。あわてて言い間違えたのだろうと思った。
それよりも息子の結婚相手の事は聞き逃せない。、
「えっ、身代わり?ああ、それで、やっと理解ができたわ。それで、今回は年齢が少し若かったのね。と、言うことは、本来は、こちらの麗子さんが来る予定だったのね?」
と奥さんが言うと、番頭夫婦も驚いたように麗子を見た。
「すると、息子の本当の相手はこの麗子さんだったと言うことか」
と主人が言うと、皆も麗子に注目した。
麗子が視線を振り切るように、
「それよりも、太郎さんやゴクウさんはどこにいるのかしら?早く会いたいわ」
と言った。
「太郎さん」と言う言葉を聴いて、主人夫婦や番頭夫婦はギクットした。もちろん息子のシンもそうだった。
「太郎をもう亡き者にした」などとは口がさけても言えない。
何か言いたそうにモジモジしていた番頭が主人に思い切って言おうとした。
それを見て、主人も奥さんも息子もびっくりした。「この場ではまずいどころではない、空気を読めないのか?」と、青くなった。
すると、奥さんが、とっさに、機転をきかせて、
「ゴクウさん?ゴクウさんって誰のことですか?」
と話題を変えた。
「えっ、ゴクウさんをまだ知らないの?、あの野生のサルのゴクウさんよ。見かけよりも大変賢いわ。人の言葉も自由に話せるわ」
と麗子が言うと、
「えっ、人の言葉が話せる?野生のサル?」
と番頭と主人がまた真っ青な顔になった。
「あらっ、あなた、どうしたんですか?ご存知だったんですか?」
奥さんが心配して聞くと、
「いや、何でもない。いや、知らない、見たこともない」
と首を横に振るばかりだった。
「そう言えば、確か部屋の中にいつも獣の匂いがしていたわ。それってきっとそのおサルさんの匂いだったのね、これで、ようやく納得がいったわ、ねえ」
と奥さんが言うと妹は合槌を打った。
ハナは、太郎達の姿が見えないことが、少し心配になっってきた。確か太郎が、なかなか滝壺から出ないので、代わりに村人を滝まで迎えに行ってくれと、ゴクウに頼まれた。ハナはその通りにしたのだが、今、肝心の太郎やゴクウ達は、どこにいるのか?そう思うとキョロキョロ洞窟を見回した。
「あっ、そうだ!きっとケンなら探してくれるわ」
とケンの姿を探したが見当たらなかった。
太郎やゴクウの話題で、なごやかだった会話も途切れ、雰囲気も重苦しくなった。
それを見かねた村長が、
「まあまあ、何はともかく、こうして、めでたく姉妹も生きて再開できた訳だ。それに、恐れていたいけにえの風習も無くなる訳だ」
と大きな声で話し始めると、がやがやしていた皆も静かになって聞き始めた。
「。そもそもどうしてこんな風習ができたかは、おいおいゆっくり伺うとして、どうだろう。我々とこの洞窟の人達と親睦会をすることにしたら?酒でも交わしながらお互いに誤解をひとつづつ解いていったら?」
と提案すると、村人達も洞窟の住民立ちも安心したように歓声を上げた。
しかし、雰囲気が和やかになればなるほど、主人達の顔色が悪くなっていった。太郎のことを話さなければと、ますます青ざめていったのだった。
一方、会場の方は宴会と聞いて、盛り上がってきた。特に村人達は雪の中や洞窟の中を歩き疲れ、それにお腹も空いていたので、喜びもひとしおではなかった。
上機嫌になった、あの金堀の男達が、村長達のいる中央へやって来て、
「おい、村長よ、早く砂金のある場所を聞いてくれよ。俺達はそのためにこんな所までやって来たのだ。宴会でご馳走になったら、早速黄金堀に取り掛かりたいんだ。間違っても黄金が無いなんてことになったら、村長、俺達は黙っていないからな」
と柄の悪い冗談とも本気とも分からない口調で言って、洞窟の主人達もにらみ付けた。
主人達はさらにちじに上がっていった。
その時、ケンの泣き声がして、ケンがハナ達の傍へもどって来た。
「あらっ、ケン、どこへ行ってたの?太郎兄ちゃんやゴクウさんを探しに行ってたの?それで、見つかったの?」
ハナと麗子が心配顔で、矢継ぎ早に聞いた。
すると、金堀の男達が、
「いや、こいつは、ここ掘れワンワンで別の用で行ってたのだ。黄金のありかを探すように俺達が言いつけたのだ。おい、イヌ公、黄金を見つけたのか?」
と聞くと、ケンは彼等に向かってワンワン吼えた。
「おお、いいぞ、見つかったのか、どこだ?すぐ案内しろ」
と男達が言うと、ケンは、洞窟の隅に隠したように置いてある、大きな麻の砂金袋に駆け寄って、ワンワン吼えた。
「あっ!それは・・」
番頭があわてて何か言おうとすると、主人の奥さんが、
「あっ、それは主人がお祝いに来たお客様達にあげようと・・・」
と先に言い出した。
すると、主人が意を決したかのように、「私から言うから」と、奥さんを黙らせて、地面に座り、村長達に向かって、
「あの、どうか聞いてください。、この袋は私共が集めた砂金が入っております。どうぞ、皆さんで持って行ってください。差し上げます」
と平謝りに頭を地面につくくらい下げた。
「ええ、くれるのか、ありがとうよ、それにしても、大げさな言い方だな。そんなに頭を下げなくてもいいと思うけど、なあ、村長」
金堀の男達はそう言って、嬉しそうに村長の肩をたたいた。
「おい、お前達!いい加減にしなさい。そんなに者をねだるものではない。まるで乞食じゃないか、わし等の村の恥になる」
と村長が男達を叱ると、主人が土下座したまま、
「ええ、いいんです。その方が私達もありがたいんです。それは、あの太郎さんの形見のような物でして・・・」
と頭を下げたまま顔を上げようとしなかった。
すると、突然、ハナが怒ったように言った。
「形見?形見なんて、まるで太郎兄ちゃんが死んじゃったみたいな言い方をして、縁起でもない!」
しかし、主人はただ頭を下げているだけでハナに何も答えようとしなかった。
「まあ、ややこしいな。何でもいいから、早く砂金を拝ませてもらおう」
と言うと金堀の男達は、袋を二人がかりで引きずって来て中央に置いた。砂金の袋は、二つで、米一俵ぐらいの大きさだった。
ケンがシッポを振りながら傍を離れなかった。
「砂金にしては、少し軽いし、らしくない感じだ。さあ、開けてみよう。ああ、楽しみだな」
と金堀の男達はまるでよだれを出しそうな顔で袋のヒモをほどいていった。
奥さんが、主人の耳もとで、
「まあ、あなた、よかったですわね。あんなにたくさんの砂金をおみやげに用意していて」
と、ささやいた。
「いや、私は何もそんな指示は出していない、たぶん番頭の仕業だろう」
と主人が答えると、奥さんは、
「あらっ、そうなの?いえ、やっぱりね。私も、あなたにしてはずいぶん奮発したものだと感心していたのよ、何だ、そうだったの」
と、疑問が解けた思いだった。
「じゃあ、番頭はいったい何のために?」
主人夫婦は改めて顔を見合わせた。
番頭はと、見ると、地面に頭をくっつけて観念したように平伏したままだった。
「おい、これは、砂金じゃないぞ。ずいぶん酒臭い、酒粕かな?それとも酒粕の漬物かな?」
金堀の男が大声で怒鳴ると、周りでじっと見ていた人達からは、がっかりしたような声が漏れた。
「あっ、人間だ!生きている生身の人間だ!」
すると、別の袋を開けていた男は、
「毛むくじゃらだ。あっ、サルだ、サルが入っている!」
と大声をだした。
とうとう、着物をぬぐように袋をはいでしまうと、そこには、普段着のままのあの太郎とゴクウが横たわっていた。
そして、眠っていたのか、ゴソゴソとゆっくり起きだした。
「あれーっ、俺の布団は?何だ、急に明るくなったぞ。ああ、頭がガンガン痛む。二日酔いかな」
と太郎は頭を押さえながら起き上がった。ゴクウも同様に、ヨロヨロと起き上がった。
「ちょっと、太郎兄ちゃん、何してたの?なんで酒臭いの?」
ハナが駆け寄って、顔の前で大声で詰問した。
「おっ、ハナか?もっと静かに言ってくれ。何でお前がここにいる?あれっ、村長も奥さんも、あれっ、麗子さんも!夢かな?いや、頭が痛いから、夢じゃないな。でも、なんで?」
太郎は一人で叫び続けた。
「こっちこそ、知りたいわ。なんで太郎兄ちゃんが砂金の袋の中にいるのよ?それに、なんで酒臭いのよ?おまけにゴクウさんまで?」
もう二人は、完全に兄弟ケンカの雰囲気で、他の人達が割り込めそうもない剣幕だった。
その様子を見ていて、
「いや、どう言うことだ?なぜ、あの男の子が生きているのだ?」
と、主人は奥さんに小声でささやいた。
「あの砂金袋は番頭達が持って来たのよ」
との奥さんの言葉に、二人で番頭をにらみつけたが、相変わらず番頭は平伏したままだった。
「ああ、分かった!番頭は気が弱くて二人を袋の中に隠していたのよ、でも、今となっては、返って、よかったかも。私達も悪人にならなくて済んだわ」
と奥さんがささやくと、
「おお、そうだな。そういうことになるな」
と主人の顔色も明るくなり、笑顔も出てきた。
そんな様子をずっと見ていたのか、村長がゆっくり近寄って来て、
「いやいや、ご主人、まいった、まいった!なかなか念の入った冗談を!いや、土下座する所などは真にせまっていたよ。なかなかなもんですな、いや、恐れ入った!ワッ、ハッハッハー」
と高らかに笑った。
「えっ、冗談?太郎兄ちゃん、これって冗談なの?」
ハナが、驚いて聞くと、
「ええーっ、冗談?これって冗談か」
太郎も驚いて聞き返した。
「馬鹿、私が聞いているんじゃない!どうなの?」
とハナが改めて聞けば
「ええーっ、これが冗談だと?冗談じゃないわい。番頭が、末期の酒だと言うので、思いっ切り飲んだんだ。本当にこの世最期の酒だと思ってゴクウも飲んだんだ、これが冗談なんて、冗談じゃないぞ」
と太郎が真赤な顔をして怒ると、その怒りぶりが面白いのか、周りの皆が大笑いした。
「でも、今まで、いい気持ちで寝ていたんでしょう?砂金の寝袋で、私達は大変だったのに」
とハナが言うと、
「それじゃ、まちがいなく、砂金の山の楽しい夢でも見てな」
と金堀の男達が大笑いした。
すると、皆も釣られて大笑いになった。そして、会場全体がお笑い劇場のような楽しい雰囲気になった。
「番頭さん、もうばれましたよ。さあ、頭をあげて、本物の黄金のありかを教えてくださいな。ご主人の許可も出てますし、それに村人が大喜びしますから、ねえ、ご主人?」
と村長の奥さんが言うと、ウンウンうなづく主人に代わって、傍の奥さんが、
「ええ、そうよ。ああ、よかったわ。この悪い冗談のお詫びに、黄金もたくさんいただいていってください。とにかく、全員が無事で何よりだったわ。さあ、これから、屋敷でお酒やご馳走をたくさん召し上がってください。今日は、めでたい日だからって、皆が来るのを待っていたんですよ」
と言って、皆を屋敷へ案内するよう支持した。
「めでたい日って、何ですか?」
と村人達が聞くと、奥さんは、
「もちろん、皆さんがここへ来て私達と、初めての交流をすることですよ。そして、滝の村と洞窟の村の新しい姉妹提携ですよ」
と答えると、
「ああ、あなた達姉妹がこれから仲良くするから姉妹村なんだ。これがほんとの姉妹提携なんて。またまた、うまい冗談を。いや、洞窟の人達は本当に冗談やシャレが好きなんだな、はっ、はっ、はー!」
と、また、大笑いが洞窟内に大きく響きあっていた。

ハイハイハイハーイ、時間となりました。冗談かい?本当に冗談じゃないですよね。あんな恐ろしい魔物伝説が冗談で片付けられてしまうとは!あっ、失礼、興奮してしまいました。いや、遅くなりました。はい、と言う訳で、またのお運びを願いまして、はい、バイバイです。ついでに、グッナイ!