飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

菜食の薦め (その 22 ) 肉食を招いた近代栄養学

2024-05-02 21:27:39 | エッセイの部屋
菜食の薦め (その 22 ) 肉食を招いた近代栄養学

昨今の日本の肉食志向は若い人達を中心に甚だしい。
その肉食ブームを招いた源は、いったい何処にあったのか?と言う事について私なりに調べてみる事にした。
よくよく考えてみると、やはりこんなにも広く日本やアメリカなど世界中に影響を及ぼしているからには、きっと世界的な栄養学のようなものが大きな後ろ楯になっているだろうと思った。
そこでまず近代栄養学を調べる事にした。
幸いにも、たまたま開いた本の中に(栄養学総論)近代栄養学の歴史が述べられていた。
その中に、リービッヒと言う名前を見つけて驚いた。
リービッヒはドイツの学者で無機栄養説と土壌肥料学で有名な世界的な農学の大権威である。
言わば、現在の化学肥料の父とも言われるべき有名な人である。
化学肥料は私が若い頃に取り組んでいた自然農法とは対立軸にあった。
なので、私は彼は学問的には自然農法の敵方の親玉格として憶えていた。
そのリービッヒが、今調べている栄養学に出てきたのには何で?と本当に驚いた。
元々農学には全く関係ない私がリービッヒと言う名を知ったのは、以前に編集部にいた頃、em(農業用の有効微生物群)の関係で比嘉照夫琉球大学教授の取材をした事がキッカケだ。
その後は、縁あって私はその比嘉教授の開発したemをブラジルで製造する事になった。
等々昔話になるとキリがない・・ので話を元の栄養学にもどす。
さて、何でリービッヒが出てくるのだろう等と想いながらいろいろ調べてみた。
難しい本をさけながら読み漁ると、結論的には人類に現在に連なる肉食思想を植え付けた黒幕は、やはり近代の栄養学だった。
ヨーロッパのドイツが中心で、年代敵には1800年代、日本の明治時代の少し前の事だ。
その中心人物が近代栄養学の父と称されているドイツ人医師のカール・フォン・フォイト(1831~1908)だった。
ところがこのフォイト氏は、驚いた事にリービッヒの愛弟子だった。
つまり1800年代の頃にヨーロッパではドイツ学派によるリービッヒ等中心に化学肥料の近代農業の基礎創りが始まった。
その後に弟子達の世代のフォイト氏を中心に近代栄養学が始ったようだ。
つまり大雑把に言えば農学における化学肥料重視思想や栄養学における肉食重視の思想の源はここに始まったようだ。
さて、そのフォイト栄養学の2大原理と言えば

1. 肉などの動物タンパクは最高の優良食品で、植物タンパクは劣等食品である。

2. 生命エネルギーとは、食物が体内で酸化燃焼する時に発生する熱量で、それが人を動かすエネルギーとなる。
これが有名なカロリー理論で、一日の成人の基礎代謝熱量は2400キロカロリーが必要とした。

こうした肉食礼賛の近代栄養学は新しい科学的な知識として明治初期の日本やアメリカにも積極的に導入された。
日本ではまだ一部の特権階級的な人達にしか浸透しなかったが、アメリカでは大々的に宣伝普及した。
(以下は引用文の概略)
「フォイトの弟子のマックス・ルブナーは肉は文明のシンボルで優良なタンパク質摂取は文明人の権利と宣言し、肉食をアメリカヨーロッパなどの先進国に普及させた。
その結果、アメリカは肥満、心臓病、ガンの大国になってしまった。
それに危機感を抱いたジョージ・マクガバン氏がアメリカの専門家たちの叡知を結集させ、1977年に5000ページにも及ぶ「マクガバン報告」として結実させ、アメリカが病人大国になった原因は、肉食、脂肪、高カロリー、砂糖の摂りすぎであると結論した」
ところが日本は1945年の戦後以降に、アメリカの小麦や牛肉や飼料用穀物などを大量に輸入を続けて、今では重要なアメリカ農業の消費国になってしまった。
なので、なぜか日本はこのマクガバン報告などに大騒ぎする事もなく、同じ肉食の道を歩み続けている。
一度目は明治初期の上流層だけだったが、二度目の今回は国民全体が肉食礼賛思想に染まってしまって、アメリカの二の舞を踏みつつあるように想える。
このような肉食礼賛の近代栄養学の間違いは、やはり人体や作物など命ある自然界全体の調和や循環を見ずに、無機的な要素だけしか見ていないことだろう。
これはリービッヒの無機栄養説の化学肥料中心農業と同じ考え方で、無機的な要素だけを見て土壌微生物等の有機的な働き方を見ていないので、様々な現象を説明できない。
同様にフォイト氏の近代栄養学も無機的な面だけを考慮して体内微生物(腸内フローラ)などの命ある微生物の働きなどは考慮しないので、まだ完全ではない。

例えば、
1、牛や馬が草だけ食べていても太い骨や大量の筋肉をつける事。
2、稲作が毎年わずかの収穫残渣(枯れ葉や茎)だけで何百年も連作が可能な事。
3、茄子科以外の作物はすべて連作すればするほど収穫が増す事。
等々。
このような事実は、土壌微生物や腸内微生物等自然界の命ある生き物の働きに注目しなければ説明ができない。

(つづく)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿