中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

復職支援「リワーク」広がる(続々編)

2014年05月27日 | 情報
次に、実際に現場で起きていることを、検証しましょう。

最初に取り上げるのは、「リワーク」を就業規則に規程し、職場復帰を希望する休職者に、
リワークの受講を義務化している企業があります。
これは、「やりすぎ」と言っても過言ではありません。
何故か。まずはじめに、病気の治療は、あくまでも休職者の自己責任です。会社が休職者の療養方法に介入してはいけません。
もし、リワークが不調で、病気が再燃したら、悪化したら、どうなるでしょう。
会社の責任であるとして追及されことも懸念されます。
また、軽症者の場合には、休職期間も短期で済みますから、リワークをする必要がないことも考えられます。
何れにしろ、リワークは、会社の指示で行うのではありません、あくまでも主治医の先生の承認・指導のもとに行わなければなりません。

もし、休職者から会社に、リワークをしたいと問い合わせがあったら、
まず、主治医の先生の承認があったことを確認します。確認が取れたら、複数の施設を紹介し、その中から休職者が
自分の意思で施設を選択するようアドバイスをします。施設を指定することは止めましょう。
なぜ施設を指定することがまずいのか、お分かりになりますか?

つまり、会社は、あくまでも「アドバイス」に徹することが大切なのです。
多くの企業・事業所が、親切心から往々にしてやってしまう「過剰介入」を慎まなければなりません。
繰り返しますが、治療はあくまでも休職者の「自己責任」であることを、理解してください。

次に、多くの産業医や弁護士の先生も犯す過ちなのですが、
「リワーク」と「試し出勤」を混同している、誤って理解しているのですね。
「リワーク」を「試し出勤」の一環であると説明する識者や、
反対に「試し出勤」を「リワーク」の一環であると説明する識者の先生がいらっしゃいます。
小生は、「リワーク」と「試し出勤」とは、別ものであると理解しています。
なぜ、別物か?リワークは主治医の承認・指導のもとに、休職者の自己責任で行うものに対して、
「試し出勤」は、会社の管理下で行うものであるからです。つまり、全くの別ものなのです。
これを混同して行うと、余計なトラブルに繋がりますので、くれぐれもご注意ください。
どのようなトラブルが想定されるか、研究してみてください。

さらに、「リワーク」は「復職前」におこなうもの、「試し出勤」は「復職後」に行うものと、
解説される識者の先生がいらっしゃいますが、これも誤りです。
確かに、「リワーク」は「復職前」に行うものですが、「試し出勤」は「復職後」に限定されるものではありません。

因みに、「復職前」と「復職後」とは、何か?理解いただけていますか。
「復職前」とは、病気療養のために休職している期間のことです。
「復職後」とは、休職者が会社に復職申請して、認められた後のことです。

小生は、「試し出勤」は「復職前」と「復職後」に分けて行うものであると提案しています。
なお、多くの識者が試し出勤の必要性を訴えていますが、このような提案をしているのは、今日まで小生以外にはいません。
「復職前」に行う「試し出勤」と、「復職後」に行う「試し出勤」とがあるのか、
詳しくは、拙著「中小企業の『うつ病』対策」を参照してください。
また、橋本社会保険労務士事務所まで、お問い合わせ・ご質問ください。
s-hashi@ya2.so-net.ne.jpまで。

このあたりの実務が最も繊細で、難しいのです。
場合によっては、復職者の病気が再燃することもあるからです。
これまでの休職者の病気療養と会社の支援が無駄になってしまうのです。
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