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夕張の石炭博物館にある大作レリーフ「炭鉱」

2016年10月06日 01時01分01秒 | 新聞などのニュースから
 毎日新聞の北海道版に「HBC・コラムDEガッチャンコ」という欄がある。

 HBC(北海道放送)は道内ではもっとも古い歴史のある民間放送局で、TBS系列であることから、毎日新聞に連載を持っているのだろう。

 今週(2016年10月5日)は、夕張の石炭博物館のロビーにあるレリーフの話題だった。

 コラムの筆者であるHBC広報担当者は
「題名は「炭鉱」。高さ約2メートル、幅4メートル以上ある大作です。フル回転で石炭を掘り出す機械やこぶしを握る太い腕。坑内で働く男たちの息づかいが聞こえてくるようです。」
と書いている。
 もともと1990年、炭労(日本炭鉱労働組合)から寄贈を受けたもの。戦後の労働運動をリードした炭労だが、相次ぐ閉山で組織も縮小し、レリーフを手ばなしたのだろう。

 当時のHBC東京支社の記者がローマ字の「ミナミ」というサインをヒントに、「南」姓の彫刻家をあたりますが、該当者はなし。実は、多田美波さんの作だったのだ。
 後に日本を代表する彫刻家となる多田さんの出世作なのだ。
 1957年、公募による作品という。

 コラムは、女人禁制の坑内に、彼女が髪を短く切って気づかれないように入り、炭鉱の現場を目に焼き付けたというエピソードを紹介した後、次のようにしめくくっている。

 「炭鉱の人たちが世に送り出してくれたから、今の私があります。なのに炭鉱は事故や閉山で苦しんでいる。ずっと申し訳ない気持ちでした」。多田さんは、記者の取材にこう打ち明けて、涙を浮かべました。

 博物館は先月、年内の営業を終え、来年改修が計画されています。26年前に作品が夕張に移される時、多田さんは「あのレリーフは故郷に帰るのですね」と語っていました。多田さんは一昨年他界。生前に一度博物館を訪ねています。


 簡潔でわかりやすい、いい文章だなあ。
 全文を読みたい人は毎日新聞をご覧ください。

 筆者は過去2度、石炭博物館を訪れたことがあるが、この作品については恥ずかしながら存在すら気がつかなかった。
 検索しても、この作品についてはまったくヒットしない。
 館の前に佐藤忠良さん作「鎮魂の像」と、山内壮夫のレリーフ「労働のモニュメント」があるのは知っていたが…。

 多田美波さんの作品は、道内では、旭川西武の前に大作「座標」が、札幌芸術の森野外美術館に「位相」がある。
(6日追記。稚内港に「光華」があるという)
 旭川西武は先日閉店したが、後継テナントは未定という。後継テナントの話題が出ているということは、しばらくは、百貨店の建物は解体しないということだろうし、「座標」が巻き添えをくらって撤去されることはないと思う。

 夕張の博物館は休業中だが、坑内を体験できるコーナーなど迫力満点なので、改修後の再開後に立ち寄って、多田さんのレリーフをこの目で確かめてみたい。
 札幌などの読者で行ったことのない人は、ぜひおすすめします。


関連記事へのリンク
彫刻家・多田美波さん死去 (2014)
多田美波「座標」





・夕鉄バス本社ターミナルから「社光」行きに乗り、終点の社光から、約650メートル、徒歩9分
・JR夕張駅から約2.9キロ、徒歩37分


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