まほろばの泉

亜細亜人、孫景文の交遊録にある酔譚、清談、独語、粋話など、人の吐息が感じられる無名でかつ有力な残像集です

逍遥録  伝、エリートの呟き

2024-03-27 01:10:31 | Weblog

  下北  カマブセ山

 

文化文明は興隆し、財貨を蓄え矛と盾を増大し、「高学歴」と称するものが増えても、世の中の「なぜ」に妙答も智慧もない。

世の先達たちは死生観もなく、いたずらに死を恐れ、繁栄の残滓を残したまま戸惑い生きている。

笑談の臨機に切り口が見つかったように突然、耳元で口からもれた至言があった。

 

伝とは、絵画の作者などの、゛そのように伝えられている゛作品だ。

掛け軸などで江戸時代の作者名が揮毫されているが、本物か偽物か真贋は判別しないが、その作者だと伝えられているという意味で「伝」と冠される。

 

ある晩のこと友人が、「安岡先生の文なり言葉は感性を以て理解しなければならない」と発言した。戸惑ったのは感性への理解だった。彼は学び舎エリートで派遣留学でスタンフォードで早々とドクターになって帰国、官域でも高位を得た人物である。巷の立身出世組と異なり現場認識に秀でるゆえか、将来を推考して醇なる問題意識を涵養している稀有な人物だ。

 

筆者も教育者,道学者としての安岡正篤氏と妙縁をいただき、幾たびか忠告、提言、文章添削をなど戴いたが、「感性理解」とは思ったことはなかった。

だだ、世俗の学び舎の合理を求める課題に汲々として答えを探るようなことはなかった。

自身の童のような稚拙な不思議感だが、たしかに己の視点や観察、行動への好転、結果への対処が多くの他者と少し違うのかなと感じてはいた。

 

感性での理解」帰宅後瞑想した。

何となく、こんなことを書き連ねていた。

 

学舎は合という理で充て、世間は非合理なるを万象の真理とする。

整理すれば 「合理は論で充て、非合理は感性で充て、不合理は無理に充て」

古諺に「平ならぬことを平すれば平ならず

もともと平らでないものを無理に平らにすれば不平を生ず、ということだ。

生まれながらの天爵と人為で成る人爵もある。

それを無闇に平ら(平等)にすれば夫々に不平が生ずるだろう。

人の特徴に、モノ覚えがよく暗記が得意なものは試験に向いているが、人格は問えない。

計算が得意で、組織人として従順なら官吏か銀行家だが、無償の情感は乏しい。

暑さ寒さをいとわず肉体的辛苦を問わないが計算が苦手なものは、秀逸な匠や篤農にもなれる。つまり自然界からの自得だ。

昔は「あの子は計算が立つので心配だ」と親は注視していた。多くはオットリ好人物の長男ではない兄弟だ。

ならば、試験に向いているものや組織人を、肉体的衝撃をいとわない戦士に任じては国は護れない。いや似つかわしくない。

 

  

   東郷は運がいいからと  感性と直感の人事

 

容姿も天爵がある。

青ひょうたんのように軟弱な者はヤクザ渡世の世界では威圧感が乏しい。いかつい男にはナンパな口説きは似合わない。心根はあるのだが似合わないと人は勝手に感ずる。

 

ある国では、幹部登用に外国高官と比して見栄えが劣らない顔はともかく、長身の者を任用する。稀に出現するが、往々にして隠れた実力者として権勢をふるっている。あるいは国民は貧困で痩せていても為政者はふっくらと太っているが、姿かたちも威厳になるようだ。

 

  

  官界の変わり者 後藤新平と任用した児玉源太郎  人事は何を見るか

    

 

はたして、人権や平等という主義の謳う人間社会理想の合理だとしても、論の立て方は難儀になる。ましてや学び舎の課題としてもどこに論拠を充てたらいいか答えも数値評価も、世間の実利からすれば詐学、利学、錯学の類でしかない。

近ごろは錯学や詐学を頭がいいエリートと称して素餐をむさぼっているが、まさに不特定多数への利福増進を妨げ、錯覚を誘い、欺く不合理ではないだろうか。

 権力あるものに課題を与えられれば、疑問さえ持たず、好むような答えを出そうと努力する。忖度などではない、教育奴隷のなれのはてだ。

故に人物を育て観る目を養うことを為政者の学びに求められているのだが、「観人則」のかけらもない組織の末路は歴史の証にもあることだ。

不合理は無理と書いたが、無はゼロないしナッシングではない。西洋的合理からすれば無意味な「無」だが、ゼロ概念発祥地東洋では、ゼロは「無限」の端緒であり、創造の種と考えられていた、いや今でも活学されている。

 

それが友の呟いた感性で覚え、察する境地だと思う。

まさに入道の観がうかがえる合理を含有した人間科学認知への端緒に立った呟きだった。

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