みんなの心にも投資 … ソーシャルインベスター(社会投資家)への道

個人投資家の”いとすぎ ”が為替・株式投資を通じた社会貢献に挑戦します。すべてのステークホルダーに良い成果を!

保育士の月給は全業種平均より10万円以上低い、給付付き税額控除の適用を-確実に雇用が増える成長分野

2014-01-08 | いとすぎから見るこの社会-雇用と労働
安倍内閣のゴリ押しでポストを得たNHK経営委員の一人による、
墓場から掘り出してきたような時代錯誤発言が話題になっている。

選挙で何も考えず軽々しく自民に投票した衆愚行動が
あのような生きた化石を場違いな場所へと祭り上げたのだ。
よくよく自分達の愚行の結果を見るがいい。

待機児童問題の改善も、黴のはえたドグマに浸潤された
「保守退嬰」政党に期待する方が間違っている。
本質は大衆受けを狙ったポピュリズムに過ぎない。

小手先の誤摩化しに過ぎない安倍内閣の「早期解消プラン」のせいで
保育士の求人倍率が跳ね上がって人不足が深刻化している。
そして例によって根本対策を行わない厚労省は小出しの弥縫策ばかり。

経済合理性から言えば、女性就業率を高めて労働投入を増やし、
家事育児は集約化することが経済成長と税収増に結び付く。
そうした発想が完全に欠けている「次元の低さ」が問題なのだ。

しかもこれは日本の正しい伝統への回帰に過ぎない。
共稼ぎが常識だった(実は離婚も多かった)古き日本への回帰である。

▽ 高負担のスウェーデンは育児を集約化して女性雇用を増やし、一人当たりGDPと生産性を高めている





『スウェーデン・パラドックス』(湯元健治/佐藤吉宗,日本経済新聞出版社)


当ウェブログが何度も批判してきたシルバー・ポリティクスは
育児支援分野においても大きな歪みをもたらしている。

「日本の手取り所得はいまだにフランスや北欧よりも総じて高い。
 豊かな高齢層にも公費をバラ撒いて育児支援予算は先進国最低の
 日本の「失政」を直視しないから問題が深刻化するのだ」

「より根本的には社会保障予算が異様に高齢層に偏っているため
 他人の子供にフリーライドする方が得する日本社会の病弊がある」

「育休延長では税収も増えず生産性も上がらないので
 労働経済学の観点では話にならない愚策な訳で、
 おまけに非正規労働者を切り捨ててしまう社会的不公正拡大策でもある」

「正しい施策は育休3年ではない。労働者が育児支援対策予算を分担し、
 保育料金を低下させるとともに代用要員を確保する原資とすることだ。
 同時に保育バウチャーを導入し、利権に守られた認可保育所を公正な競争に導くことである」

古臭いイデオロギーを捨てられない安倍内閣が論外なのは論を待たないが、
官庁もまた自己革新ができないのだから日本経済が長期停滞に陥るのも当然である。

↓ 参考

日本の成長率が6%になる政策は「女性の北欧並み労働参加」- 税金の無駄の少子化対策白書は廃止せよ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/d594f2169807f6331026c4f7689b7bea‎

日本のGDPが16%増える真の成長戦略は「女性雇用増加」- 韓国と同類の不平等さ、中国にすら負ける
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/3e998a613e089a435b2e5bfd8c374dce

▽ 出生率をV字回復させたフランスやスウェーデンは女性労働力の活用が巧みである

『フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由』(横田増生,洋泉社)






保育士の就業ミスマッチ 待遇、責任の重さ…若者を阻む“壁”(sankeibiz.jp)
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/131128/ecd1311280601000-n1.htm
”保育士が足りない。安倍政権が打ち出した待機児童の早期解消プランに沿って、全国の自治体が保育所の整備と保育士の確保に動いているためだ。責任の重さや待遇面での「ミスマッチ」により、保育士の資格をもちながら保育士以外の求職をしている人は全国で1万6千人に上るとみられ、厚生労働省は就業支援を強化する。
〔中略〕
 近畿財務局は25年度内に待機児童が多い大阪の北摂地域で同様の国有地処分を予定している。大阪市内の待機児童数は25年4月現在で287人。前年度の664人からは大きく減少した。しかし、25年度の新規入所申込者数は前年度比71人増の1万3642人で、24年度に入所枠を1080分拡大したにもかかわらず、287人の待機児童が発生した。
 市は25年度当初予算ベースで2260人分の入所枠拡大を計画しており、社会福祉法人以外にも認可保育所の門戸を開いたり、保育ママを増やしたりして待機児童の解消を急いでいる。ここでネックになるのが保育士の確保だ。保育士をめぐっては例年、採用のピークを迎える1月ごろに有効求人倍率が1倍を超え、5、6月ごろに底を打つ。
 しかし大阪府内では、今年度は5月の時点で前年同月より0.29ポイント高い0.95倍。6月が0.37ポイント高の1.01倍、7月は0.45ポイント高の1.14倍まで上がった。25年2、3月の有効求人倍率は1.73倍だったが、来年1~3月はこれを大きく上回るのは確実だ。
 同様の現象は待機児童が多い東京都や神奈川県でも起こっている。今年8月は東京が3.21倍、神奈川は1.39倍。都心での保育士不足は深刻な状況だ。背景には、安倍政権が掲げる「待機児童解消加速化プラン」がある。25、26年度の2年間で約20万人分の入所枠を整備できるよう、国が自治体を財政的に支援するものだ。入所枠の拡大はまかなえても、肝心の保育士不足解消には追いつけていない現状が浮き彫りになっている。
 国では同時に、認可外保育所で働く人に保育士資格を取得するための受講費用を支援▽私立保育所を対象に保育士の賃金上乗せ分を交付▽保育士の離職を防ぐための雇用管理に関する研修を所長向けに実施-といった取り組みも実施中。最終的に保育ニーズがピークを迎える29年度末までに、全国で待機児童を解消するとしている。
 だが、待遇面でのミスマッチもある。厚労省が5月に全国で実施した調査によると、保育士の資格をもつハローワークでの求職者3万2千人のうち、半数の1万6千人が保育士としての就業を希望していなかった。希望しない理由として最も多かったのは、「賃金が希望と合わない」で、47.5%。「他業種への興味」(43.1%)のほか、子供を預かる仕事ならではの「責任の重さ・事故への不安」が40.0%、また「健康・体力面での不安」も39.1%と多かった。
 一方で、これらの原因が解消された場合、保育士としての勤務を希望すると答えた割合は63.6%にも上った。
〔中略〕
 保育所は、日本経済の成長戦略においても重要な社会インフラだといえる。次代を担う子供を世話する保育士の就業環境の改善や意欲向上の促進は、待ったなしだ。(南昇平)”

執筆者は仏や北欧の育児システムを全く知らないようだ。
保育士の賃金が低いのは次世代育成を軽視する
日本の社会システムの問題である。

日本が同じような比率の社会保障予算を育児関連分野向けに確保すれば
保育士の待遇改善など容易にできる。
しかし実際には予算制約が強いであろうから
次善の策として「給付付き税額控除」を保育士と介護士に適用することを
当ウェブログは何年も前から提唱してきた。

財源は、悪質な差別政策に他ならない配偶者控除の原則廃止と、
安定職にありついた者の利権と化している退職金への控除縮小で充分確保できる。

▽ 「給付付き税額控除」について知るにはこちらが好適

『日本の景気は賃金が決める』(吉本佳生,講談社)


求職しない潜在保育士、「賃金合わない」47% 厚労省調査(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0501A_V00C14A1CR8000/
”資格があるのに保育士の仕事を希望しない人の半数近くが「賃金が希望に合わない」を理由に挙げていることが5日、厚生労働省の調査で分かった。待機児童問題が深刻化する中、政府は保育士不足の解消に向け、保育の仕事をしていない有資格者「潜在保育士」の活用を掲げている。
〔中略〕
 調査は昨年5月、ハローワークで求職した潜在保育士を対象に実施し、958人から回答を得た(回答率47.1%)。
 保育の仕事を希望しない理由を複数回答で尋ねたところ「賃金が合わない」が最多で47.5%。厚労省によると、保育士の平均給与(2012年)は月21万4200円で、全業種の平均より10万円以上低かった。
 そのほかの理由は「他業種への興味」43.1%、「責任の重さ・事故への不安」40.0%、「自身の健康・体力への不安」39.1%、「休暇が少ない・取りにくい」37.0%と続いた。
 こうした問題が解消された場合は保育士を希望すると回答した人は63.6%に達した。保育現場での勤務経験がない人は30.3%。経験者668人のうち、5年未満が50.7%を占めた。
 厚労省の推計では、「潜在保育士」は全国に60万人以上。政府は昨年4月、17年度末までの5年で40万人分の保育の受け皿を整備する「待機児童解消加速化プラン」を打ち出したが、定員の急速な拡大で保育士が約7万4千人足りなくなると予測している。
 保育士の待遇改善のため、厚労省は平均勤続年数に応じて賃金を上乗せできるよう私立保育所などに補助金を支給。全国のハローワークでは保育士の応募が一定期間ない保育所に求人条件見直しなどの相談に応じている。〔以下略〕〔共同〕”

日本経済新聞はより冷静な筆致だ。
給与の低さという問題を明確な数値で示している。
(これでは離職率が高いのも当然である)
なぜか産経記者が取り上げていない労働環境の問題にも触れている。

いずれにせよ、厚労省の対策など言い訳程度の戦力逐次投入で
根本的な問題解決につながらないのは間違いない。
Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 高齢層は不況を願い好景気を... | TOP | コイズミ登場で慌てふためく... »
最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Recent Entries | いとすぎから見るこの社会-雇用と労働