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日本の年金の最大の病巣は政治家の無知、株式運用拡大は明白なリスク要因 - 塩崎厚労相は大学生以下

2015-02-02 | いとすぎから見るこの社会-格差の拡大
ファイナンスの教科書では、リスクとリターンは表裏一体のものとなっている。
つまり、ハイリスクであればハイリターンであるし、
ローリスクであればローリターンである。
(ポートフォリオ理論を加えると話がややこしくなるが、基本的にはそうなる)

年金運用で大幅に株式のウエイトを高めるのは「ハイリスク・ハイリターン」に相当し、
「多くの運用益を望めるかもしれないが、多額の損失の可能性も高まる」ことになる。

だから、「株式運用の比率を高めるとリスクが高まる」のがファイナンスの常識である。
「株式運用の比率を高めるとリスクが低下する」などと言っていると大学すら卒業できない。

しかしそうした根本的な無知に基づいた発言を堂々と行った政治家がいる。
何を隠そう、それは安倍内閣の塩崎厚労相である。
現職の厚労大臣が大学生以下の発言を国会で行っている訳だ。

何しろ株高で年金財政が何とかなると思っているようなトンデモ大臣だから、
(株高を頼みとするような投機的な公的年金運用を行っている先進国は一つもない)
トンデモ発言が幾らあっても想定内ではあるが、これは余りにも酷過ぎる。

我が国の株式市場も国債市場も、日銀が操っている官製市場だ。
公的債務残高が異様な水準に達しているのも有名で、いつ崩落するか分からない。
しかも異常な速度で人口減少と少子高齢化が進む経済なのである。

GPIFのポートフォリオは、日本国債と日本株の下落の打撃が大き過ぎる構成だ。
急激な金利上昇が起きたら歴史に残る巨額の損失発生は必至で、
塩崎氏は永遠に経済史の教科書で年金制度崩壊の「A級戦犯」として嘲笑される。

塩崎大臣が全く分かっていない正しい年金改革は、
まず公的年金控除を全廃するとともにマイナンバーで資産を捕捉し、
資産家には公費を一切給付しないクローバック制度である。

次に、配偶者控除と第3号被保険者制度を原則廃止して
育児・教育支援に全額予算移転し、女性就業率を引き上げる積極的労働市場政策が必要だ。

また、公的年金控除の高齢者雇用を増やす非営利セクターに予算を移転すべきである。
年金給付を削減し、社会保険料を納める就業者を増やすのが本道であり、
GPIFのポートフォリオ程度で誤摩化す小手先改革は低能の証拠でしかない。

「公的年金の財政検証が発表されたが、予想以上にひどいものである。
 太平洋戦争前に行われた数値の「捏造」と殆ど変わらない」

「日経新聞が今年始めに出していた予言的な記事も参考にされたい。
 それは、運用利回り4%を確約している日本の公的年金が、
 詐欺商品も同然である
と厳しく指摘したものである」

「その背景には与党自民党からの強烈な圧力があり、
 有権者が納得するような数字にしろという
 馬鹿丸出しの要求に年金官僚が屈したものであると言う。
 (どうせそんなことだろうと思った)
 年金官僚も事勿れ主義で自民党の圧力に流されたのだから当然、同罪である」

と当ウェブログは書いたが、年金に関しては安倍内閣も官庁も話にならない。
見た目だけ糊塗する誤摩化しに終始している。

▽ 厚労省の悪しき体質は「局あって省なし」、年金制度の劣化を直視せず責任逃ればかり

『社会保障亡国論』(鈴木亘,講談社)


当ウェブログの指摘は基本的に的確であったと言える。

「公的年金に関する厚労省の「大本営発表」がまた明らかになった。
 国民年金保険料の納付率が底を打ったかのように発表しているが、
 実際には精力的に「免除」「猶予」を増やし、数字を操作していたのだ」

「年金不信は必ずしも厚労省だけの責任ではないのだが、
 こうした所業を懲りずに繰り返しているのだから
 根強い不信感を向けられるのははっきり言って自業自得だ」

「河野太郎議員が入手した資料では、実際の納付率は
 公表されている粉飾数値から大きく低下しており、
 何と40%を割り込んでいると言う」

「厚労省はセクショナリズムが非常に強く、
 自動的に予算を膨張させる傾向が強い。
 一時凌ぎで国民を欺いてもツケは生活保護の方に回るので
 自分たちの部局は大して痛痒を感じないという訳であろう」

「無年金の者は遠からず生活保護になだれ込んでより多額の税を必要とする。
 厚労省の抵抗を廃し、歳入庁を創設して保険料を強制徴収するとともに
 積極的労働市場政策で彼らの自立を促さないと大変な事態になる」

目先だけ何とか取り繕うことに必死になり、より深刻な害悪を招く惨状である。

 ↓ 国民年金の納付率も、厚生年金の財政検証も詐欺的数字

国民年金の実納付率は40%以下、厚労省が必死に数字を操作している -「粉飾・問題先送り」の悪しき因習
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/1c52cb1127be26506f88a47f6fbb00c3‎‎‎

またも厚労省が年金で「大本営発表」、年利4%の運用と偽る詐欺的試算 - 不信を自ら招き墓穴を掘る
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/d465fac12caa23eca5c8284ddea2884f‎‎‎

株高でも日本の年金に未来なし、田村厚労相は制度を理解していない - OECDは支給年齢引き上げを勧告
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/da56727d3885056089e7d79ff6f6500f‎‎

▽ スウェーデンやカナダの年金改革に比べ、日本の年金制度の持続可能性は著しく劣っている

『世代間格差:人口減少社会を問いなおす』(加藤久和,筑摩書房)


厚労相、GPIF運用見直し「必要な積立金から下ぶれるリスク減った」(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL29H8K_Z20C15A1000000/
”塩崎恭久厚生労働相は29日午前、衆院予算委員会に出席し、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用資産に占める株式の比率を高めたことについて「(見直しの結果)年金財政上必要な積立金から下ぶれるリスクというものが少なくなった」との認識を示した。従来のポートフォリオ(資産構成割合)では国民に約束通り年金を給付するための利回りを確保できなかったという。
〔中略〕
 塩崎厚労相は「リスクはいろんなものがある。年金の場合は長期的な観点からみていくことが大事だ。将来の年金給付を確保するためには、年金財政上必要とされる積立金額から下ぶれるリスクというものを抑制することが大事だ」とも語った。〔日経QUICKニュース(NQN)〕”

それにしてもひどい発言だ。はっきり言えば、
「このままでは年金給付の削減が必要なので、運用で無理をしなければならない」
ということである。「長期的な観点」など全くない無責任な発言だ。


年金法人、株重視で26兆円赤字 リーマン時試算答弁書(共同通信)
http://www.47news.jp/CN/201501/CN2015010901001417.html
”政府は9日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が新たに決めた、株式を重視する資産構成割合をリーマン・ショックのあった2008年度の運用利回りに当てはめると、約26兆2千億円の赤字になるとの答弁書を閣議決定した。実際は国債中心の運用だったので赤字額は約9兆3千億円だった
 GPIFは昨年10月、資産構成割合を変え、国内株式、外国株式合わせて計50%と2倍にする一方、国内債券の比率を大幅に引き下げた。株式相場が下がると損失が大きくなるが、株価上昇時は利益が膨らむ構造に変わった。〔以下略〕”

GPIFは巨大なリスクを背負い込んだ。株式の変動率は大きいため、
市況が悪化するととんでもない損失が出るのである。
しかもGPIFの図体が余りにも大き過ぎるため、「逃げられない」。
経済危機の打撃をもろに受けるハイリスク運用になった訳である。
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