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安倍首相の大学無償化案に不評の嵐、バラ撒きによるFランク大学救済策 -「教育困難大学」を増殖させる

2017-08-29 | いとすぎから見るこの社会-全般
安倍政権の「人づくり革命」の胡散臭さは隠し切れないほどで、
例えば日経新聞は、改憲を実現するために教育無償化をダシに使うのではないかと
安倍政権のこれまでの狡賢い手法から裏の狙いを見抜いて牽制している。

兎に角、権力が大好きで歴史に名を残したいだけの安倍政権の魂胆は、
今回の「大学無償化」騒動においても見え見えである。

教育に力を入れているかのようなアピールでバラ撒きを正当化し、
選挙においてはリベラル寄りの政策によって野党の公約を封じる。

若者支援、次世代育成に力を入れているかのように見せかけて
実際には歴代自民党政権が大学を粗製濫造した「大失敗」を糊塗し、
自民党の支援層である私大経営層に公費をバラ撒いて「買票」を図るのである。

表面の薄皮一枚はいかにも公益のため、日本の未来のためにと偽装しているが、
その実態は公費を歪んだ差配で分配し票田に注ぎ込む薄汚い党利党略でしかない。

だから胡散臭い安倍首相提唱の大学無償化案に対し、
四方八方から非難囂々であるのも至極当然の帰結と言える。

加計学園問題を見ても、安倍政権が国益やら公益やらを押し出してくる際には、
その裏に薄汚い癒着や党利党略が隠れている可能性が高いと考えねばならない。

これからはエヴィデンスをベースとした政策を行うなどと吹聴しているらしいが、
断言しておこう。エヴィデンスを偽装した利益誘導政策が出てくるだろう。
安倍政権の本性が何一つ変わっていないのだから、容易に予想できることだ。

恐らく近年、歴代自民党政権(実質賃金を減らした安倍政権も同様)の経済政策の失敗と
同じく歴代自民党政権による大学の粗製濫造政策の結果として、
日本の大学教育の投資収益率が急速に低下している筈だ。
大学間の投資収益率も極端に拡大していることも間違いない。

そうした政策の失敗を直視せず、「不良債権化」した大学に公費を投入するなど、
とんでもない話である。異常な緩和策に続き、異常なバラ撒きを開始することで、
目先しか見えない愚かな安倍政権は、近い将来の日本の災厄を極大化させている。

▽ 日本の大学経営劣化の最大の原因は、政府や文科省に長期的視野がないということ

『大学大倒産時代 都会で消える大学、地方で伸びる大学』(木村誠,朝日新聞出版)


日本の文教政策は、全く責任を取らず誤摩化しばかりという点で特異である。

「愚劣な責任転嫁を平然と行う中教審の議論の「猫の目ぶり」を見れば
 文教政策が頭の悪い「モグラ叩き」でしかないことは明白だ」

「大学乱立は自民党政権時の愚かな規制緩和の必然の結果である」

「日本では教育問題の議論が常に目先のことばかりで
 利害関係者の方では必死に姑息な情報操作を行い、
 しかもメディアや国民がそれを見抜けないという情けない状況にある」

「文科省の審議会や認可が大学の質向上において
 殆ど無意味に近いのは、議論の余地のない明白な事実である」

「だから文科省が認可した大学でも次々と定員割れと経営危機を起こしている。
 最近では法科大学院の惨状は100%間違いなく文科省の制度設計に原因がある」

「文科省はそもそも大学教育の質や大学運営の質を評価する指標を持たないし、
 指標に基づいて政策調整しなければならないとの意識が全くない」

「計量経済学や計量社会学の専門家を雇い、
 若年人口の変動が大学経営に与える影響を測定し、
 労働市場の変化と人材需要に基づいて政策決定をしなければ
 日本の大学は悲惨な状況に追い込まれてゆくだろう」

「自民党は今年春に「理数系教育の強化」を提唱していたが、
 図に乗ったそうした低次元の論をあざ笑うかのような報道があった」

「PIAAC(国際成人力調査)で日本が世界一となり、
 「数的思考力」もフィンランドを上回りトップだった」

「現代日本の停滞や閉塞の原因が教育にあるとする連中は
 基本的に大嘘つきであると立証されたと言って良かろう」

「そもそも日本の競争力ランキングを見ると教育水準や技術力は
 向上余地はあるものの常に高く評価されている。
 評価が低いのは公共部門(政府・自治体等)の非効率性と財政赤字である」

「PIAACの結果からは日本はブルーカラーや中卒者の高い能力を
 経済分野で活用できていないことが推測されるが、
 これも日本の政治と行政、つまり公共部門の抱える問題点と言える筈である」

「少なくとも「失われた20年」を招いた責任が教育にないことは明らかであり、
 教育を犯人扱いしてきた低能な論者を黙らせる効果はありそうだ」

「確かに日本の高等教育には多くの課題がある。
 しかし日本の病巣は教育ではなく寧ろ程度の低い教育論議と政策にあるのである」

「権力に弱い官僚は、傲慢不遜な自民の圧力に負けて
 人文系学部と大学院の規模を縮小するそうだ。
 己の失態の責任も取らず、よくも若者に責任転嫁できるものだ」

「大学の粗製濫造やロースクールの大失敗は自民党と文科省が「A級戦犯」であり、
 これから確実に問題になるであろうポスドク量産の元凶も自民党と文科省である。
 平然と歳費や給与を得ている厚顔無恥な態度と無神経はおぞましいとすら言える」

「責任を取って役立たずの与党議員の歳費大幅カット、
 キャリア官僚の給与・退職金の大幅カットは理の当然であろう。
 どうして成果も出さずに国民のカネを受け取っているのか」

「これから確実に労働者の需要が増えるのは介護士と保育士、そして観光関連人材だ。
 (全て労働集約型なので、確実に労働力を必要とする)
 基本的にはみな人文系であり、自民と文科省のスタンスは根本的に間違っているのである」

「危険なほど速い少子化を放置して大学の粗製濫造を続けてきた自民党と官僚が、
 己の大失敗を隠して国民に責任をなすりつけている」

「教育・保育分野において雇用を創出したスウェーデンの積極的労働市場政策と比較すると、
 我が国の保守退嬰・自己保身の「選良」達は恥ずかしくなるほど程度が低い」

「福祉関連学部の惨状を見よ。
 労働者を低賃金でこき使い、選挙のためカネを高齢者にバラ撒き、 
 福祉利権と癒着してきた自民党と官庁がこの大失態を招いた元凶である」

「「社会的要請の高い分野」であるにも関わらず学生が集まらないのは、
 明らかに政策の失敗であり、与党政治家と官僚の能力が低く制度設計を間違えたからだ」

「日本の文教政策の最大の特徴は、農政以上の「猫の目」で
 明らかに失敗した政策でも全く検証されず誰一人として責任を取らない点だ」

「周知のようにロースクールが惨憺たる失敗になりつつあるのに、
 中教審は「専門職業大学」を構想しているらしい」

「理由としては「職業人に求められる能力も高度化・多様化している」とのことだが、
 「実務経験のある教員の配置」やインターンシップのように陳腐なメニューばかりだ。
 なぜ学部学科や課程の改変ではなく「大学」が必要なのか、まともな説明がない。
 そもそも審議会メンバーの能力に疑問があると言わざるを得ない」

「従来の文教政策も中教審の役割も厳しい検証が必要である。
 今までの失敗を誤摩化すために、安倍内閣のように
 新しい政策を打ち出して看板を代えるだけで終わっているなら税の無駄でしかない」

「文科相の「脱ゆとり宣言」も同じような無責任体質の象徴だ。
 「強靭化」というただの言葉遊びに過ぎず指標も数値目標も皆無、
 予算対効果も成果検証の概念も全く理解していない始末だ」

「おまけに流行のアクティブ・ラーニングまで持ち出して、
 政策検証ばかりかアクティブ・ラーニングも欠落しているのが
 中教審や官庁であることを自ら立証するものである」

「傲慢で現実を無視した軍上層部が無数の兵士を死なせた
 太平洋戦争とまさに同じ図式である」

「今回の「脱ゆとり」でも「専門職大学」でも
 学習能力のない愚かな失敗を繰り返すしかない」

「英米で欠点が見えつつある制度を、
 いかにもバラ色の素晴らしいものであるかのように偽り、
 日本の粗忽で目立ちたがりの連中が喧伝する事例が多い」

「そうした「政策を売り歩く」輩に騙されて周回遅れで導入、
 見事に大失敗するという愚行はこの日本でよくある話である」

「ゆとり教育もロースクールもそうした失敗の一つで、
 次には専門職大学院とアクティブラーニングも同じ末路に至るだろう」

「安倍政権や文科省がそもそもアクティブラーニングができておらず、
 まともに検証していない政策を有権者受けだけ考えて打ち出すから失敗するのだ」」

「今、英米で問題になりつつあるのは、「オーバーエデュケーション」、
 つまり教育過剰で相応しい職が足りないという問題だ」

「日本も教育をいじくり回せば経済が回復できるように偽る詐欺師たちが大勢いる。
 なぜ日本より大学進学率の高い韓国が経済低迷に陥り、
 日本より大学進学率の低いドイツが日本より成長率も賃金上昇率も高いのか、
 そうした現実を無視している連中だから、絶対に信用してはならない」

「雇用市場の現状を踏まえた教育改革でなければ意味がない。
 そうした本質を教えているのが英米の抱えている問題であるが、
 安倍政権も文科省も視野狭窄で何も見えないまま失敗へ突き進んでいる」

「大卒である必要のある高度な職種がないと大学も意味がない。
 殆どの大学生は研究界ではなく実社会に出て働くことになるからだ」

「まして、安倍政権の失敗により経済低迷、実質賃金マイナスのままの日本では、
 大学教育の投資収益もマイナスになる可能性が極めて高い」

「流行るドラマには、必ずその放映時の社会背景に一致し、
 心理的要求に応える要素が含まれている」

「『逃げ恥』のヒロインは大学院卒で就職失敗、
 家事能力で必要とされて自己承認を得られるという役どころである」

「『逃げ恥』がこれだけ話題を呼んでいるという事実は、
 高等教育を受けていてもそれに相応しい所得や職を得られない、
 何十万人、年百万人という「みくり」(みくお?)がこの日本に存在することを意味している」

と当ウェブログは警告してきたが、愚劣な安倍政権は教育の歪みを更に拡大させようとしている。

▽ アメリカでは大卒者の48%が大卒資格が必要ない職に就くという惨状、日本も恐らくそれに近い

『「教育超格差大国」アメリカ』(津山恵子,扶桑社)


安倍政権の「人づくり革命」は、最初の第一歩から間違っている。

「今回の天下りは、と言うよりも今回発覚した「氷山の一角」は、
 明らかに日本社会のためのものではないばかりか、公正でも透明性のあるものでもない」

「自民党政権がバラ撒いている補助金を利用して
 官僚組織上層部の利益と保身のために行われたものである」

「案の定と言うか、こうした天下り隠蔽は霞が関全体に蔓延しており、
 文科省などよりも大規模かつ組織的に行われているとの証言が出ている。
 (少し話を聞いたことのある者なら、大体あそことあそこが酷いのだろうと察しがつく)」

「安倍首相は相変わらず口先だけで、天下りを根絶するかのように大言壮語しているが、
 全くこの天下り問題の構造を分かっていない実態を自ら証明している始末だ」

「国民を欺く欺瞞的な天下りが起き、公益よりも組織益が優先される理由は明白だ。
 代々の自民党政権が補助金バラ撒き政策を実行してきたため、
 官僚組織による裁量余地が大きく拡大したからである」

「文教政策で言えば、場当たり施策を打ち出して検証もせず、
 ポスドクだのロースクールだので死屍累々の結果をもたらした自民党政権が、
 天下り隠蔽工作のチャンスを提供したのである」

「無責任で愚かな歴代自民党政権が、教育政策を散々に振り回してきたため、
 各学校が「ヒラメ」状態になって文科省との結び付きを強めようとしたのだ」

「相変わらず愚かな補助金バラ撒き政策を続ける安倍政権も、
 天下り問題をもたらす不透明な構造を支える犯人の一人である」

「いち早く、毎日新聞が文科省の本音と
 霞が関に蔓延っている天下り隠蔽の現状を伝えている。
 厳しく調査したら、ほぼ全での省庁で隠蔽問題が発覚するだろう」

「補助金行政が天下りの温床であることが明瞭に分かる。
 いま安倍政権は東京五輪関連分野や「働き方改革」でも補助金バラ撒きを行っているから、
 間違いなく天下りや癒着が今この瞬間も黴のように広がっている筈だ」

「歴代自民党政権が裁量の大きい補助金バラ撒きを行っているから、
 このように隠れた天下りが温存されるのである」

「これまでの見当違いな施策への反省も全くなく、
 経済政策同様に大根芝居と口だけの成果を掲げて誤摩化すであろう。
 天下りもどうせ、一罰百戒で幕引きにするしか芸のない政権なのだから」

口だけ政権の口だけ政策は、高等教育においても同様である。

 ↓ 参考

「他省庁ではもっと大規模に天下りが行われ、人事課も関わっている」-隠蔽工作は、官庁全体に蔓延している
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/18e73eab1b641e3d783114fd4c6bf09d

「逃げ恥」が予言する、日本の大学改革の失敗 - 英国で「大卒者の増加が経済にマイナス影響」との警告も
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/5fd28cdf6aa2f330050b8d3b0db01af5

ロースクールを失敗させた文科省、専門職大学院もアクティブラーニングも同じ運命に - 反省皆無の惨状
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/9a0ef0c26d3a1876f3273a69f83a2156

文科省が認可した大学でも、続々と定員割れになっている - 問題の本質は田中真紀子大臣の不認可ではない
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/6839b2d4f7aa07d1ad724d2146a3415e‎

大学生に責任転嫁する中央教育審議会、自らの分析不足を認識せず -「勉強時間」しか判断基準がない貧弱さ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/62943717b497b8613c43f5d980ed62b1

▽ 日本より遥かに賢明で合理的な北欧では、労働市場の変化を踏まえ再構築された大学教育が行われる

『スウェーデン・パラドックス』(日本経済新聞出版社)


自民改憲本部 「大学無償化」明記に反対論相次ぐ(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS01H4X_R00C17A8PP8000/‎
”自民党は1日、憲法改正推進本部(本部長・保岡興治元法相)の全体会合を党本部で開き、大学など高等教育を含む教育の無償化について話し合った。貧困の連鎖を防ぐため、奨学金制度の拡充など教育の機会均等の必要性では一致したが、憲法に高等教育を「無償」と明記する改憲案には反対論が相次いだ。
 憲法26条は義務教育を無償と定めているが、無償化の範囲を高等教育まで広げ、家計負担を減らす改憲案が党内の一部や日本維新の会にある。安倍晋三首相も5月の憲法記念日にビデオメッセージで「高等教育も真に開かれたものでなければいけない」と発言した。
 1日の会合には約50人が出席。高等教育の無償化規定を憲法に盛り込む案に「自らの意思で大学に行かない人もいる。公平性の観点から問題だ」(石破茂元幹事長)「3兆円以上の財源が必要で、国民は納得しない」(山谷えり子氏)などの声が上がった。
 同本部内には無償化規定を盛り込むことは見送り、憲法26条に「経済的理由によって教育を受ける機会を奪われない」との趣旨の文言を追加する案もある。
〔中略〕
 改憲本部は教育無償化や9条改正など検討対象として挙げていた4項目の議論を一通り終え、今後、具体的な条文案づくりの作業に入る。自民党は同日付で、同本部の事務局を従来の「プロジェクトチーム」から「部署」へと格上げした。〔以下略〕”

石破氏の指摘は世論調査に表れた国民の本音を反映したものだが、
イデオロギーかシルバー民主主義の影響と思われる山谷議員の発言が意外に正論である。
と言うのは、日本国民は高等教育無償化に相応する負担を負っていないからだ。
今のまま大学無償化を行うと、高齢者三経費と同様のバラ撒きにしかならない。


私大再編、国立傘下で 地方で定員割れ深刻 諮問会議の民間議員提言へ(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO15634000R20C17A4SHA000/
”政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)の民間議員は25日、「国公私立大学の枠を超えた経営統合や再編」を提言する。若者の都市部流出などで私立大の経営悪化が深刻さを増しているため、国立大学法人が救済する形で経営安定を目指す。国立大を受け皿にした異例の集約化を通じて乱立する私立大の整理・淘汰を進め、大学教育の機会と質を確保する。
 文部科学省の「私立大学等の振興に関する検討会議」が5月にまとめる報…〔以下略〕”

この報道から安倍政権の裏の狙いが分かる。
無償化は明らかに、経営が苦しい私立大学の経営陣と立地自治体幹部への救済策である。
加計問題と同じく、自民党を支持する高所得層へのバラ撒きだから最低の政策だ。


「教育困難大学」のあまりにもひどい授業風景(東洋経済オンライン)
http://toyokeizai.net/articles/-/181672
”2016年度の高校生の大学・短大の進学率は現役で54.8%、過年度生を加えると56.8%に及んでいる。4年制大学進学率は毎年過去最高を更新し、短大、専門学校の進学者も含めると、高校から上級学校への進学者は約75%だ(2016年度文部科学省「学校基本調査」)。かつてのように、上級学校への進学はエリートがするものという概念は消え去り、「ユニバーサルアクセス」の時代が到来している。また、日本には現在、777校の大学があり、その内私立大学は600校(2016年度文部科学省「学校基本調査」)にも上っている。
 すべての大学は、大手予備校が実施する模擬試験の偏差値によって完全に段階分けされている。そして、受験偏差値の低い、つまり志願者の少ない大学は、入学が選抜機能を果たさずフリーに入れる状態になっている。こうした大学は、「FREE」の頭文字を取って、「Fランク大学」と呼ばれていることは、周知の事実だろう。
 急速に大学進学者が増加する中で、大学生の学力低下が話題になり始めたのは、2000年ごろのことだった。あれから15年以上経ち、現在は大学生の学力問題はあまり取りざたされなくなった。これまでの間に、大学生の学力が十分なレベルまで向上したというわけではなさそうだ。

■小規模大学で教えている教員の実話
 筆者の耳には、低い学力は当たり前のことと関係者があきらめた結果なのかもしれないと思わせる話が入ってくる。大学教職員から話を聞くと、今でも学力不足は解決していないことがよくわかる。それどころか、驚くほど無知な大学生がむしろ増加しているのではと危惧させるような現実がある。以下のエピソードは、スポーツに力を入れている関東地方の小規模大学で教えている教員の実話である。
 彼は、一般教養科目として日本の自然環境に関する授業を担当しているが、以前から、大学生に考えさせること、発言させることに重点を置いた授業を行っている。最近注目されている「アクティブラーニング」の先取りのように見えるが、実は、学生の授業中の爆睡を防止する苦肉の策でもあるのだ。しかし、彼のように学生を寝かせまいとする教員はむしろ少数派。多くの教員は、「静かに寝ていれば、周囲の迷惑にもならないので放置する」というスタンスである。
 日本の植生と生態系についての講義の際に、その教員は「日本の自然林にはどのような野生動物がいるか」と学生に質問した。指名した数名の学生が次々と瞬時に「わかりません」と条件反射のように答えた後、指名される順番ではない1人の学生が突然「ブタ!」と大声で答えた。
〔中略〕
■教員は冷静に対応するも……
 予想しない学生の言動への対応が苦手な大学教員も多いが、この教員は経験豊富なので、このような突発的な言動には慣れている。学生の発言を無視したり叱責したりせず、まず受け止め、そこから正しい回答を引き出すように心掛けている。
 そこで、「う~ん、似てはいるな。でも、ブタは人間が改良して作ったもので、その基となった動物がいるよね。最近、住宅地にも出現して、ニュースになったりしている。その動物は何だろう?」と学生たちに質問を重ねた。すると、別の学生がすかさず「クマ!」と答えたという。確かにクマは日本の野生動物だが、ブタはそこから改良されたものではない。しかし、なんであれ学生が答えたことをよしとして、教員は授業を進めたという。
〔中略〕
 この大学は、スポーツ推薦や指定校推薦で入学した学生が多い。1つのスポーツ競技だけを幼い頃から一所懸命にやってきて、ほかの勉強をする余裕がなかったのだろうか。あるいは、生まれてからずっと都会で育ち、大学生になるまでに森や海に行って周囲の自然を体験する機会がなかったのだろうか。学校の授業で学んだ知識だけではなく、自身の体験からも回答できるはずの質問なのだが。
 筆者も同じようなレベルの学生が入学している大学で授業を担当しているが、あるとき、首都圏の中小企業経営者から、真顔で「就職試験をやると、高卒生と大卒生の得点がほとんど変わらない。場合によると、高卒生のほうが高得点のこともある。大学生は4年間かけて何を勉強しているのですか?」と聞かれたことがあった。

■形骸化した「学士」を量産
 この企業はこれまで高卒生中心に採用していたが、近年、大卒生にも求人をかけるようになった。当然、いわゆる有名大学生の応募は少なく、会社側も地元の中小規模の大学生にターゲットを絞っている。その採用活動の中で発せられた質問だが、同様の思いを抱いている企業人は少なくないだろう。
 受験生の志願状況から見てみると、少数の大規模大学が10万人を超える志願者を集めている一方、志願者数が伸び悩み、経営のためにどのような学力の志願者でも受け入れている大学が多数存在する。このような大学には、「教育困難校」と呼ばれる高校の卒業生が多数入学している。大学進学率が低く大学入試が難しかった時期には、進学できなかった学力層を多数抱えている高校だ。筆者は、高校からの連続性を踏まえて、どのような学力の志願者でも受け入れている大学を、「教育困難大学」と呼びたい。
 それらの大学では、学習面だけでなくあらゆる場面で学生への指導が難しくなっている。
4年間、学生がほとんど何も学ばないまま、形骸化した「学士」を量産して世に送り出しているのが現実だ。多方面で学生への対応に連日苦労している大学教職員は、全国に存在している。大学進学希望者への新しい経済的援助が考えられつつある今、本連載を通してリアルな現実の一部を描写することで、現在の大学が抱える問題の一端を、少しでも多くの人に考えてもらう機会になるよう願っている。
朝比奈 なを :教育ライター”

歴代自民党政権の大学粗製濫造政策により、底辺大学の質は劣化し続けている。
公費を投入する価値があるかどうか、よくよく考える必要があろう。


大卒者の3割が年収3百万以下、奨学金返済地獄…仕送り月10万、所得=学歴格差鮮明(ビジネスジャーナル)
http://biz-journal.jp/2016/11/post_17254.html
”文部科学省を中核に、政府内でも「新たな奨学金制度の創設」に対する取り組みが加速している。なぜ現状で新たな奨学金制度の創設が必要なのかをみると、日本の大学生が置かれた厳しい現実が明らかになる。文部科学省の「所得連動返還型奨学金制度有識者会議」資料を中心にその実態を取り上げてみた。
 今どきの大学生といえば、学業はそっちのけで遊び中心の生活を送っているというイメージが強い。
〔中略〕
 しかし、真面目に学業に専念しようとする大学生にとってもそれができるのは、現在の社会環境は非常に厳しく、自宅住まいか、親が裕福で十分な仕送りを受けている大学生に限られるようだ。
 OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の高等教育に対する公財政支出(2009年)は対GDP比で0.5%にとどまっており、OECD諸国の中で最下位の低さ。個人への支出を含めた同支出の対GDP比は0.8%と若干増加するが、それでも最下位だ。日本の高等教育機関は公財政支出が相対的に低く、財政的に保護者や学生からの学費に依拠するところが大きい傾向にあり、国際的にみて高い学費水準となっているという。
 こうした政府の教育に対する意識の低さを反映して、日本の大学生の置かれた経済環境は相当に厳しいものとなっている。幼稚園から大学卒業までにかかる平均的な教育費は、すべてが国公立でも約800万円、すべてが私立だと約2300万円と推計されている。特に、地方から東京の私立大学に通う場合には、下宿・アパート代や食費などの生活費が大きな経済的負担となる。一方、1997年に467万3000円だった会社員の平均給与は年々減少し、2014年には415万円にまで大きく減少している。
 親の所得状況を反映し、学生の生活費に対する家庭からの給付(いわゆる仕送り)は、02年度の155万7000円(月額約13万円)をピークに、14年度には119万4000円(月額約9万9000円)にまで減少した


●所得格差=学歴格差
 当然、親の所得状況により大学への進学状況には格差が生まれ、親の年収が400万円以下の子供の大学進学率は27.8%にとどまる一方で、年収1000万円以上では60%以上の子供が大学に進学するなど、教育機会に大きな差ができている。
 九州大学の10年の調査では、長崎県の高校生で国立大学に進学できる学力の生徒のうち、主に家計の困窮で大学進学を断念した・するかもしれない生徒が3%に上っている

  大学生のアルバイト収入は年間30万円台前半で推移しているが、アルバイトだけでは生活が厳しく、奨学金を受給する大学生の割合は02年度の31.2%から14年度には51.3%に増加している。また、奨学金の金額は02年度の22万6000円から14年度には40万円に増加している。
 それでも、高校生の保護者に対する調査で「返済が必要な奨学金は、負担となるので、借りたくない」と回答する者の割合が、どの所得層でも半数以上を占めており、奨学金の返還に対する不安・負担を多くの保護者が感じている。
 こうした背景には、大学卒業後の雇用環境が大きく影響している。大学を卒業しても正規雇用を得ることができず、非正規雇用の状態で奨学金を返還する安定的な収入を得ることが困難な者が増加しているという現実が重くのしかかっている。総務省によると、大学院を除く高等教育機関を卒業した者のうち、30代から50代では約3割が年収300万円を下回っている。
 奨学金を使って大学を卒業し、奨学金の返済年齢になっても年収が300万円未満という実態がそこにはある。

〔中略〕
 こうした格差の実態を政府は目を背けることなく、しっかりと受け止めて対処するべきだろう。 (文=鷲尾香一/ジャーナリスト)”

余り指摘されていないが、現下の奨学金問題の根底には
大学を増やし過ぎたため大卒の平均賃金が相対的に下落し
大学教育の投資収益率が著しく低下しているという深刻な現実がある。
しかも歴代自民党政権の失政が招いた所得低迷によって問題は一層深刻化している。


安倍政権の「出世払い型教育国債」は低レベル大学を延命させる(ダイヤモンド・オンライン)
http://diamond.jp/articles/-/139066
”● 秋の目玉政策は“人づくり革命” 「教育国債」で失敗を繰り返すか?
 内閣改造で担当大臣を任命したことからも明らかなように、安倍政権の秋の経済政策の目玉は“人づくり革命”です。
 そこで目指す政策の方向性が8月13日の日本経済新聞で報道されています。「記事枯れ」の日曜の1面トップで政策が報道される場合、政府内部からの情報リークに基づくものであることが多いので、記事の内容はおそらく正確ですが、概要は以下のように報道されています。
 ・安倍首相は教育無償化の実現を掲げており、人づくり革命の具体策を検討する「人生100年時代構想会議」では、こども保険による幼児教育の無償化と、出世払いでの教育国債による大学の無償化を検討する。
 ・出世払いでの教育国債については、オーストラリアのHECS(高等教育拠出金制度)を参考に制度設計する方針。この制度は、国債を原資に大学の成績優秀者の授業料を優先的に免除し、その学生は卒業後に所得が一定水準を超えた年に一部を国に返済するもの。
 この記事を読んで感じたのは、出世払いでの教育国債という構想でまた過去の政策の失敗を繰り返すのかということです。
 過去の失敗とは、海外で成功した政策をパクって導入するけれど、その政策が成功した国と日本との社会風土や習慣の違いを無視して政策だけを真似した結果、日本ではうまく機能しないことです。典型例としては、金融庁が英国の制度を真似て導入した非常に使いにくいNISA(少額投資非課税制度)が挙げられます。
 それでは、出世払いの教育国債という構想について具体的に何が問題かというと、オーストラリアと日本では大学をめぐる状況がかなり異なっているということです。

● 大学の数も進学状況も違う 日本とオーストラリアは比較できない
 第一に、大学の数からして大きく違います。オーストラリアの大学の数は全部で43と非常に少なく、かつその教育水準は法律によって管理されているので、全体として高い教育水準が維持されています。ちなみに、HECSの対象は主に公立大学ですので、そのうち40の大学が対象となります。
 それに対して、日本では大学の数は779(2015年)とオーストラリアの20倍です。オーストラリアの人口が2400万人なので、人口比で考えても4倍あります。
かつ、8割近い604校が私立大学で、当然ながら大学の教育水準も千差万別となっています。
 第二に、大学への進学のあり方もだいぶ違います。オーストラリアでは、パートタイムの学生の割合が29%もあります。かつ、大学入学者に占める25歳以上の割合が24%と、社会人を経験してから大学に入り直す人の数も多いのです。これらの数字から、オーストラリアの大学生は学ぶ意欲がかなり高いと推測できます。
 これに対して日本では、大学生の大半は高校を卒業してそのまま(または浪人して)大学に入り、かつフルタイムの学生です。言い方が悪くなってしまいますが、学ぶ意欲も目的も不明確だけれど、周りに合わせて取りあえず大学に入ったという大学生も多いのではないかと思います。
 第三に、日本の大学進学率は先進国の中で高くないと言われます。実際、日本の大学進学率が51%であるのに対して、オーストラリアは96%(2010年、OECD調べ)という数字もあります。格差が拡大する中で大学に進学できない人も多いので、だから大学も無償化すべきだという主張です。
 しかし、この大学進学率は、留学生も含めた入学者数を人口で割っただけです。よって、留学生が非常に多いオーストラリアについて留学生を除外して計算すると57%となり、日本とあまり変わらない数字となります。かつ、日本は若年層の人口減少が進んでいることを考えると、今後は一層大学に入りやすい“大学全入時代”になることもあり得るのではないかと思います。
 このように考えると、オーストラリアの仕組みを日本にそのまま持ってくるのには無理があることがわかります。

 というのは、もちろん学ぶ意欲がある学生や成績優秀な学生への支援は必要ですが、大学の数が多過ぎて水準にもかなりの差があり、かつ高校からストレートに大学に入る学生が圧倒的に多いなかで、学ぶ意欲や「成績優秀」の客観的な判断基準をつくれるのかが疑問だからです。
 調べたところ、オーストラリアのHECSは公立大学が対象で、かつそれらの大学ではHECSの対象外の生徒は全生徒数の35%までと定められているようです(この点、“成績優秀者が対象”と書いている日経の記事は不正確)。つまり、半数以上の学生がHECSを受給しているのです。
 これを日本の全大学に当てはめると、凄まじい数の大学生が出世払いの対象になるでしょう。将来返済できない人も多くなるでしょうから、財政の負担はかなり大きくなると想定されます。

 だからと言って、たとえば国公立大学や一部の偏差値の高い私立大学だけに対象を限定するのも無理なはずです。たとえば、国立大学で中くらいの成績の大学生と、偏差値が低い私大でトップクラスの大学生を比較して、どちらが学ぶ意欲や成績から受給対象にふさわしいかの判断は非常に難しいからです。

● 出世払いと国債の組み合わせは 出来の悪い大学の補助金と化する
 このように考えると、単純に出世払いと国債の組み合わせというオーストラリア方式を導入するだけではダメで、少なくとも出来の悪い大学は潰す(=教育の市場から退出させる)仕組みを同時に導入することが必要なはずです。それなしには、政策目的は教育無償化と耳触りがよくても、結果的に出来の悪い大学が生き残るための補助金に化けてしまい、文科省の権限と予算が膨張するだけです。
〔中略〕
 高等教育の無償化という方向性自体は非常に大事です。私自身、かつては母子家庭で非常に貧しいなか、奨学金で4年間の授業料支払いを免除されたからこそ大学を卒業できて今があるので、誰よりもその重要性は痛感しています。
 しかしだからと言って、日経の記事でも指摘されているように、憲法改正の手段として教育の無償化を安直に実現してもダメです。この秋から「人生100年時代構想会議」で、単にオーストラリアの仕組みを持ってくるだけでなく、正しい方向で検討が行われるよう、私たち国民の側も注視していく必要があるのではないでしょうか。
岸 博幸”

生兵法で他国の制度を猿真似する安倍政権の失敗は、今の段階で容易に予想できる。
岸氏は出来の悪い大学は潰すべきと主張しているが、
その前に大学・学部別に投資収益率を調査公表して不採算の大学教育は公費カットした方が良い。
そうしないと「教育過剰」が深刻化し、第二第三の加計問題が生じるであろう。
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