英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『平清盛』 第26話「平治の乱」

2012-07-03 21:34:27 | ドラマ・映画
今回は平治の乱の前半部分。私が日本史に疎いせいかその背景がわかりにくかったが、それはさておき、今回の主題は信西の最期

1.信西と清盛の友情……「おれは誰なんだ?」「誰でもよ~い」
 信西(阿部サダヲ)の窮地に、「平清盛は断じて友を見捨てぬ!」と駆けつけようとする清盛(松山ケンイチ)。えっ、友だったの?という気がしないでもない。まあ、二人の回想シーンを見せられると、逆に友達だったんだなあと納得させられてしまう。
 「誰でもよ~い」という阿部さんの能天気な声が2回も聴けたので良しとしよう。(とは言え、若干、不満が残るので後述)

 この「誰でもよ~い」という台詞は、自分の出生に悩む清盛の「おれは誰なんだ?」の声に対してのものだったが、今回、清盛に「おれは平清盛ぞ」と力強く叫ばせ、信西の最期も「我は信西入道ぞ」であった。遠大で巧みな伏線の回収である。
 さらに「清盛殿…助けてくれ」と信西は呟くが、これも「誰でもよ~い。誰でもよいから、助けてくれ」との対比になっている。
 そしてまた、今回に入った信西であったが、これは史実に基づいているらしく、この最期を決定しておいての初登場の落とし穴に嵌ったシーンだったということか!

 ただ、不満を言えば、第24話「清盛の大一番」でも述べたが、第23話「叔父を斬る」で信西が心の内を明かし清盛に手を組むこと呼びかけた際の清盛の表情は、怒り、疑念、驚愕、困惑、傍観の呈で、信西と組むことを決断したようには見えず、清盛の決断に至るまでの心の内は描かれず、ナレーションで済ませてしまっっていた。
 今回、息子・重盛(窪田正孝)に清盛と信西の関わりを語り、信西の回想を重ねて、信西の最期を盛り上げる。清盛の決断の際に清盛・信西の回想シーンを挿入すると今回とダブってしまうという演出上の都合があるように思われるが、物語全編を通してみると、忠正(豊原功補)を斬らせた信西への恨みと、武士の世を興すという平氏の念願に心を揺らすシーンは省いてはいけなかったと思う。
 さらに、信西を救おうとする清盛が、友情か志のためなのかが曖昧である。多分、両方だと思うが、今回の印象では、そのシーンシーンの都合によって志しだったり、友情だったりであったように感じる。

2.信西と師光の師弟愛……いい奴だったんだ
 師光(加藤虎ノ介)は清盛にも信西にも皮肉めいたことを口にしていた。機知に富んでいると思っていたが、その腹の内は黒いのかと思っていたら、信西に出家までして(以後、西光)、信西の最期を見届けた。
 信西の意志は、西光は引き継ぐことが出来るのだろうか?

 「西光よ、私はどこかで道を誤ったのか?私は何者になりとうて、ここまで昇ってきたのであろうか?」
 事を急いてしまった信西であったが、この台詞も、信西と清盛の出会いの掛け合いを受けている。

 さて、今回は平治の乱の前半部分で、信西暗殺のクーデターであったが、
平治の乱の背景がどうにも分かりにくい。
 【筆者注】実際の史実ではなく、この大河ドラマでの平治の乱について語っています】

1.動機は分かるが、大義名分や目的が分からない
【動機】
 後白河上皇(松田翔太)派である信頼(塚地武雅)と二条天皇(冨浦智嗣)派と結託し、共通の邪魔者の信西の暗殺を企て、それに源氏を利用しようとし、源氏も信西への恨みと平氏への対抗心からこれに同調した。
【(最終)目的と大義名分】
 目的はもちろん信西の排除であるが、その先にあるものが分からない。形としては後白河院を幽閉し、囲った二条天皇を立てて権力をつかんだことになっている。
 しかし、これだと私怨によって信西を暗殺し、権力を得るため朝廷を牛耳っているだけで、大義名分のかけらもない。これで、政が成り立つのか?
 さらに、後白河院を幽閉しておいて、後白河院の側近である信頼が権力を握るのはおかしいし、今後も二条天皇を立てて権力を振るうのか、後白河院の扱いはどうするのか、まったく見えない。
 それにしても、「そなたはいずれは右大臣じゃ」「そなたは中納言も夢では無いぞ。」と言われ、ニンマリする経宗(有薗芳記)と惟方(野間口徹)、「いずれは」「夢ではない」って騙されてるんじゃないの?
 また、二条天皇が囲われているからと言って、美福門院(松雪泰子)や藤原忠通(堀部圭亮)が指をくわえて観ているだけというのも理解できない。

2.クーデター一派の平氏への対応
 平氏への対応は源氏に一任しているが、信西と親密であった平氏を警戒する必要があるはず。清盛の帰京の待ち伏せに同意しただけで、積極的に「平氏を討て」という命は出していない。
 清盛に対してだけではなく、清盛邸に残る平氏一族への警戒や討伐の話し合いもなされない。普通に考えれば、信西を討てば平氏が報復行動を取る恐れが強いと思うのだが。

3.クーデターに対する平氏の対応
 信西救出に対する平氏一門のそれぞれの考え方が面白かった。
頼盛(西島隆弘)……命を懸けて仇敵信西を救う筋はない。今、(謀反人を)攻めるのは我らが謀反人になる
時忠(森田剛)……良い政を行い、財の動かし方にも長けている信西を私憤に駆られて見捨てるのは平氏にとっても損失
経盛(駿河太郎)……兄・清盛が親しかった信西が朝敵となった今、一門の立場が危うい。ここは信頼に恭順の意を示すのが得策
教盛(鈴之介)……恭順は源氏に屈すること。すぐさま謀反人を攻めよう
時子(深田恭子)……殿(清盛)の目指す世に信西はなくてはならぬ。(清盛が)見捨てようとは断じてならない

 時子の鶴の一声で決着。でも、結局、何も動かないのね(無策)。

 一方、熊野詣の清盛に同行した重盛は
重盛(窪田正孝)……信西が滅ぼされた後で信頼と源氏を倒せばすべてが手に入る

 婚礼の儀では清廉だった重盛だが、ここではかなり黒い。
 忠正斬首の命を下した信西に私怨を持っていたのは確かだが、信西は平氏と源氏を利用しているだけで、信西がいる限り武士の世は来ないと考えた。まあ、黒いというよりは信西を仇敵と考え、それを基に冷静に考察していると言ったほうがいいのかも。


今回も面白かったが、回想シーンや悪源太・義平(波岡一喜)の待ち伏せを警戒して逡巡する、清盛が助けに来たと錯覚する信西など、少し間延び感があった。

信西も命を落とし、物語初期から活躍?している登場人物が減っていくのは寂しいが、大河らしいとも言える(番組サイトの登場人物紹介図がどんどん白っぽくなっていく)。


【ストーリー】(番組サイトより)
 1159(平治元)年12月9日、これまで信西(阿部サダヲ)に冷遇されていた義朝(玉木宏)が、後白河上皇(松田翔太)の側近・信頼(塚地武雅)らと結託し、ついに決起する。世にいう「平治の乱」のはじまりである。
 三条殿にいた後白河上皇と上皇の姉・上西門院統子(むねこ:愛原実花)は源氏勢に幽閉され、義朝率いる源氏の軍勢は三条殿と信西の館を襲うが、信西はすでに逃げ出していた。義朝はさらに二条天皇(冨浦智嗣)をも内裏に軟禁したのであった。
三条殿を抜け出した信西の妻・朝子(浅香唯)は清盛邸にかけこみ時子(深田恭子)に状況を伝え、信西を清盛に救ってもらうよう頼み込んだ。紀伊にいた清盛(松山ケンイチ)は、早馬で駆けつけた忠清(藤本隆宏)から事の次第を聞き、言葉を失う。すぐに熊野詣を中止し都へ戻るよう命じる。しかし熊野詣のため一同武装していないと重盛(窪田正孝)が心配すると家貞(中村梅雀)がひそかに用意していた鎧や弓矢を差し出した。平氏一門は必死に京へ向けて馬を走らせる。
 内裏では、摂津源氏の頼政(宇梶剛士)が今回の所業の理由を義朝に問いただしていた。すると義朝は、武士の地位を高めるのは政治ではなく力であることを世に示すためだと答えた。そのころ信西は山中を必死に逃げていた。つき従う師光(加藤虎ノ介)らが疲れきっているのを見て、ここに穴を掘り自分を入れてそれぞれ落ち延びよと命じた。
 12月14日、内裏では諸官を任命する除目(じもく)が行われた。信頼は念願の近衛大将になり、義朝は播磨守に任じられた。身勝手に振る舞う信頼に、とまどう藤原成親(吉沢悠)たち。美福門院(松雪泰子)や藤原忠通(堀部圭亮)は怒りをこらえていた。そこへ義朝の長男・義平(波岡一喜)が東国から到着し、阿倍野にて清盛一行を待ち伏せしたいと意気込む。
 六波羅の清盛邸では、京に残った盛国(上川隆也)らが方針について話し合っていた。頼盛(西島隆弘)は信西を救う必要はないと言う一方、時忠(森田剛)は信西は平氏にとって不可欠な方と言い、意見は割れる。そうした中、清盛が信西を見捨てるはずがないと時子が声をあげ、盛国は清盛の帰りを待つことを提案した。
 京へ向かう途中の清盛たちは、阿倍野で待ち伏せしているという源氏勢とどう戦うか話し合っていた。一日も早く帰京し、信西を救いたいと言う清盛に、重盛は信西が滅ぼされた後で信頼と源氏を倒せばすべてが手に入ると主張した。清盛は信西との思い出を語り、友である信西を絶対見捨てないと決意を固めた。
 穴に隠れていた信西は、そばで見守る師光に西光という法名を与え、自分に危機が迫っても決して助けようとは思わず、すべてを見届けろと命じた。信西は一人になり、自らの半生を思い返し、自分は一体何者になりたかったのかを考えていた。そして、いつか清盛が助けに来ると信じて、息を潜めた。だが、穴の中で衰弱した信西を見つけたのは清盛ではなく、源氏の者だった。覚悟を決めた信西は刀をのどにつきたてて自害した。

 12月17日、京にたどりついた清盛は路上につるされているものにがく然とする。それは亡き信西の首であった。泣き崩れた清盛はやがて震える手と足で体を起こした。怒りに満ちた目で義朝への怒りを叫ぶ。「これがお前の出した答えならば―――受けて立とう」平氏と源氏が雌雄を決するときがきた。

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