崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「毎日新聞」掲載リレー6回目

2009年04月20日 05時52分01秒 | エッセイ
「毎日新聞」掲載エッセイリレー6回目分が2009年4月18日(土)に「日韓を生きる」と題して掲載された。以下全文である。

 毎日早朝ブログにエッセーを書いている。もうすでに十年近くになる。その中からまとめたものを妻の菅原幸子との共著夫婦エッセーとして『下関を生きる』を昨年刊行し、本誌にも紹介された。私が粗書きしたものを、幸子が添削したり文章を整理したりする。時には検閲されるような感もあったり、意見が違って議論したりすることもある。幸子は秋田出身で、看護師として東京で働いていた、三十数年前に教会で知り合い、結婚し、日韓を往来しながら日韓の友人、知人をたくさんもっている。
 私崔は韓国で生まれ育ち、文学少年として国文学(韓国)を専攻し、民俗学、後に文化人類学へ変わった。陸軍士官学校の教官、そして文化広報部の専門委員などをへて1972年日本に留学して、日本の植民地を研究するようになった。職場も数多く変えながらさらに日韓を往来している。日本で暮らしてさまざまな体験の一つ一つにもいろいろな思い出がある。下関に来てからは縄張り意識の強さを感じた。しかしそのような所でも中に潜り込むと楽になり、暖かく人間関係を作り直すことができる。
 私たち夫婦は日韓の混血ともいえる。基本的には両国を愛し肯定的にみている。真摯に、時には皮肉に書いても、わが人生そのもの。それをエッセーから感じていただければと思う。地方出版ではあるが、広く反応があって、続編として夫婦愛の合作、日韓の間で感じたものを中心に『日韓を生きる』(クォリティ出版刊)を刊行した。花や季節、食べ物、健康、言葉、教育、日韓関係、人間関係、信仰、人生観、教育や研究生活など十五項目に分け、約二百五十点を掲載した。
 日本人は「アジアの国々では、礼儀正しく人に迷惑をかけない」「あいさつがなさすぎる感じがする一方で、結婚式などの行事での演説的あいさつは非常に多い。あいさつは人間関係を縮めるか遠ざけるかの機能がある」と形式的あいさつだけでは人間関係の希薄化につながりかねないとも書いた。日本人の怖いところは復讐心、嫌なものは慇懃無礼である。大好きなものは変わらない友情と思いやり、親切さである。