リスボン・ライブ


Z7 + NIKKOR Z 50mm f/1.8 S

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チェリビダッケ指揮、ミュンヘン・フィルの演奏で、「リスボン・ライブ」なる音源があるという。
曲はブルックナーの交響曲第8番で1994年4月23日のライブ録音である。
ところがこれがどうも海賊版らしく、正規には売られていない幻のCDだという。
チェリビダッケ自身が録音を好まなかったという話だし、何か販売に関してトラブルがあるのだろう。

何となく存在は知っていたが、今回CDをリッピングする際いろいろ調べていたら、普通にアマゾンで売られていることが分かった。
価格は4千円と少し高めであるが、一時はオークションなどで万単位で出ていたというから、今は価格が落ち着いているのかもしれない。
ちょうどいい機会だったので、1枚取り寄せてみた。

チェリビダッケはかつて来日公演を聴きに行ったことがある。
確か1993年のサントリーホールだったと記憶しているが、曲はブルックナーの4番であった。
さすがクラシック界の超大物、孤高の天才と言われるだけあり、凄い演奏であった。
ブルックナー特有の反復をこつこつと積み上げて、まるで巨大な建築物を作り上げていくような指揮ぶりに舌を巻いた。

で、今回買った8番であるが、これはルール違反の演奏だとか、これを聴かなければ話にならない、などとアマゾンに書かれるほどの別格の演奏であるという。
聴いてみて、確かにこいつはスゲーやと驚いた。
チェリビダッケは何より響きを重視してゆっくりと演奏するが、ここでもとにかく自分が納得するまで延ばしている。
当然2枚組であるが、第3楽章と第4楽章だけで65分近くもある。

この部分のメロディが最高なんだ・・というところを、どうだと言わんばかりにたっぷりと聴かせる。
しかもその間まったく緊張感が途切れないのだからたまらない。
下世話な例えかもしれないが、マッサージで一番効くところをグーッと押されっ放しになったような状態で、これはもう参りましたと言うしかない(笑)

たとえば頭の中で好きな曲を再現するとしたら、自分の好きなフレーズはじっくりと歌わせて楽しむと思うが、それをそのまま実演してしまったような演奏である。
すべてを受け入れて、その中にどっぷりと浸かって聴けば、正に天国的な気分になれる。
会場の人たちも熱狂しており、皆がチェリビダッケの演奏と一体となっているのが伝わってくる。

ブルックナーの8番自体が、数ある交響曲の中でも特別な完成度とエネルギーを持つ名曲である。
その上でこれだけ目一杯歌わせるのであるから、評価が満点であるのは当然であろう。
クラシックに興味のある人なら一聴の価値のあるCDであると思う。

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