電脳筆写『 心超臨界 』

嘘と作り話の上に自己を築くことほど
この世で恥ずべきものはない
( ゲーテ )

米国ではインフラの不備が、いまや大問題として浮上している――渡部亮さん

2008-02-13 | 04-歴史・文化・社会
【 このブログはメルマガ「こころは超臨界」の資料編として機能しています 】

先進国の後進インフラ――法政大学教授・渡部亮
【「十字路」08.01.29日経新聞(夕刊)】

先進国では交通、医療、住宅などの社会インフラは完備していると思いがちである。しかし昨年現地を旅行してわかったのだが、米国ではインフラの不備が、いまや大問題として浮上している。

まずは交通問題だ。昨年8月ミシシッピ川に架かる高速道路の橋が崩落した。ほかにも路線管理不足による鉄道事故、航空管制システム不具合による空の便の遅れ、配電設備の老朽化による停電などが頻発している。1950年代の州際ハイウエー網建設以来、公共投資があまりおこなわれてこなかったのが原因だ。

医療に関しては、米国人口の16%にあたる4千7百万人が健康保険に未加入だという。公的な健保が不備だから、会社が従業員に提供する職域保険が命綱なのだが、近年の雇用リストラでそのカバー率が低下した。失職すると確保も失う。毎月の保険料が十万円相当に達するから、個人では賄い切れない。保険に入っていないと、軽度の虫歯や皮膚病などでは病院に行かない。すると外見が悪くなり就職活動にも悪影響が及ぶから、保険加入はさらに遠のく。

住宅問題も深刻である。米国の住宅政策は、低家賃での公営住宅提供ではなく、持ち家促進に力点が置かれてきた。そのための方策として、住宅抵当借り入れの元利金返済にかかわる所得控除と、連邦住宅局による借り入れ保証の二つが、古くから実施されてきた。

加えて近年の規制緩和で新手のローンが組まれ、住宅価格の上昇を期待した家計が多額の借り入れを行うようになった。しかし、住宅価格の下落で元利金返済が滞り、差し押さえも多発している。

選挙民は、繁栄の裏側でこうした一連の問題が起きていたことに気付き始めたようだ。これは大統領選挙における経済政策の争点ともなっている。現在出馬を表明している候補者のほとんどは実務に明るい法律家だが、就任後大胆な政策を実行できるか、その力量を問われるであろう。

【 これらの記事を発想の起点にしてメルマガを発行しています 】
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 需要の塊のように見えた北京... | トップ | ハワーリジュ派は聖戦への参... »
最新の画像もっと見る

04-歴史・文化・社会」カテゴリの最新記事